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真田十勇士

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巻ノ二十三 箱根八里その五

「どの様な城でもな」
「陥ちる」
「殿はいつもそう仰っていますな」
「敵の数が多ければ」
「そして守る者達が至らねば」
「城は大事じゃ」
 それは、とも言う幸村だった。
「堅固な城はやはりよい、しかしな」
「人は城ですな」
「人は石垣」
「そして壁であり堀ですな」
「ただ堅固な城は通りにくいだけじゃ」
 そうしたものに過ぎないというのだ。
「しかし守る者達がよければ」
「これ以上はないまでに堅固になる」
「そうなるのですな」
「だから人も必要だと」
「いつも仰っていますな」
「そしてじゃ、やはりそれでもじゃ」
 これ以上はないまでに堅固な城を優れた者達が多くいてそれで守っていたとしてもとだ、幸村はさらに言った。
「陥ちぬ城はない」
「難攻不落と言えど」
「決して陥ちぬ城はない」
「そうなのですな」
「それがわからぬのでは兵法を知らぬということ」
 幸村は一言で言った。
「愚者と言う他ない」
「そういうことですか」
「では幾ら小田原城でもですか」
「陥ちる」
「そうなりますか」
「謙信公も信玄様も攻められたがな」
 幸村はこの二人の名将の名前を出した。
「しかし陥ちなかったが」
「それでもですか」
「陥ちる時は陥ちる」
「そうなりますか」
「とてつもなく大きな城ですが」
「守る将兵も多いですが」 
 将兵が多いのは北条家の勢力が大きいからだ、関東のかなりの部分を領有しているだけにその兵の数も多いのだ。
「しかしですな」
「それでも陥ちる時はですか」
「あの城でも陥ちる」
「そうなりますか」
「そうじゃ、しかしそれでも見るべきじゃな」
 幸村は相模の方を見つつ述べた。
「小田原にもな」
「ではこれより」
「この箱根を越えて」
「そして、ですな」
「小田原に行きましょう」
「そうしようぞ、ただここはただ通るだけではない」
 幸村は笑みになってだ、十人の家臣達に言った。
「この箱根はただ険しい山が連なっているだけではない」
「そういえば確か」
「この箱根は温泉もあり」
「それがかなりいい湯だとか」
「では、ですか」
「そこに入ろうぞ」
 その箱根の温泉にというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「箱根の湯に入り」
「そこで一休みですな」
「それと共に垢も落とすぞ」
 旅のそれもというのだ。
「まだ旅の途中だがな」
「はい、では」
「箱根の湯にも入りましょう」
「そしてそこで楽しみましょうぞ」
「風呂もまた」
 家臣達も幸村に笑顔で応えてだった、そのうえで。
 箱根を進む中温泉を訪れてだった、そうして。
 湯に入り疲れを癒した。家臣達は幸村と共に湯に浸かりながら生き返った様な顔になってそのうえで言った。
「いやあ、いいですな」
「やはり風呂はいいものです」
「身体が温まりです」
「汚れも落ちます」
「いいことばかりですな」
「身体は常に奇麗にすべきでな」
 幸村もだ、彼等と共に湯に入りながら言った。 
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