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真田十勇士

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巻ノ二十二 徳川家康という男その十五

「そして家を守る」
「そうされますか」
「うむ、ただ戦になれば」
 その時はというと。
「上田を守り死ぬ気で戦うぞ」
「わかりました」
「幸村が帰って来れば」
「そういえば幸村は東国に行くと」
「駿河からじゃな」
「そう話が来ました」
 真田家の忍は密かに幸村と連絡を取っているのだ。その者達が逐次上田に戻って報をしているのだ。
「あちらから」
「そうか、よいことじゃ」
「東国に行くことも」
「旅で色々なことを見るのも学問じゃ」
 だからだというのだ。
「それはよいことじゃ」
「ではそれから上田に戻ることも」
「よい、どうやら暫くは他の家と戦にならぬしな」
「だからですな」
「それはよい」
 こう言うのだった。
「別にな」
「左様ですか、では」
「源次郎には東国も見てもらう」
 引き続いて、というのだ。
「そしていざという時にその見聞が役立つ」
「あ奴のそれが」
「だからよい」 
 東国を巡ってもというのだ。
「それを許す」
「ですか、では」
「この旅はあ奴に任せる」
「そうしますか」
「そういうことでな。ただな」
「ただ?」
「思った以上にじゃ」
 昌幸はその目を少し動かしてから信之に述べた。
「収穫があったな」
「幸村の旅は」
「優れた者達が加わった」 
「家臣に」
「それも十人もとはな」
「天下の豪傑ばかりとか」
「そこまでとは思わなかった」
 到底、というのだ。
「十人の天下の豪傑か」
「その豪傑達が家臣となった」
「これは宝じゃ」
「当家にとってもあ奴にとっても」
「そうじゃ、宝となる」
 双方にとってというのだ。
「これは源次郎の星じゃな」
「人を集める」
「十ものな、その家臣達と共に何を為すか」 
 父としてだ、昌幸はそこに大きな期待を感じていた。そのうえで信之に言った。
「それも見ようぞ」
「では」
 信之も応えてだ、そしてだった。
 昌幸は信之と共にだ、幸村を待ちつつ政を行いそして戦の用意もしていた。昌幸は先の先を読み動いていた。


巻ノ二十二   完


                          2015・9・2 
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