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真田十勇士

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巻ノ二十二 徳川家康という男その十四

「最後は羽柴殿につくしかないとしてもな」
「侮られてはならぬ」
「そして家は守らなくてはならない」
「そういうことですな」
「我等としましては」
「羽柴家についても一目置かれなければ意味がない」
 家康はこうも言った。
「さもなければ後々天下に侮られる」
「侮られればそれで終わり」
「そういうことですな」
「だからこそここはですな」
「侮りを受けぬ様」
「槍も取りますか」
「そういうことじゃ。もっとも領地と地位を守れればな」
 それで、ともだ。家康は言った。
「よいがな」
「守る為の戦ですな」
「結局のところは」
「それを戦い」
「そして生き残るのですな」
「そうじゃ、別に攻めることはない」
 秀吉の領地をというのだ。
「守りに徹するぞ」
「戦の時は」
「そうするのですな」
「その用意もしておこう」
 こう言ってだ、家康は今は新たに領地になった場所まで治め兵をさらに進めていた。上田まではまだ距離があり真田家には使者を送るだけだった。
 しかし上田にいる昌幸は嫡子である信之にこう言っていた。
「徳川にはつかぬ」
「そうされますか」
「どんな話を出されてもな」
 こう言うのだった、強い確かな声で。
「むしろどの家にもつかぬ」
「上杉にも北条にもですか」
「つかぬ、真田は真田でじゃ」
「この上田にいますか」
「従ってもじゃ」
 それでもというのだ。
「その下には入らぬ」
「そうされますか」
「例え戦になってもじゃ」
「どの家にもですな」
「従わぬ、それは羽柴殿でも同じじゃ」
「では天下を敵に回しても」
「どの家にも入らぬ」
 そうするというのだ。
「絶対にな」
「真田は真田として生きていく」
「そのつもりじゃ、だから徳川の話にもな」
「従いませぬか」
「そうする。ただ」
「ただ、ですな」
「徳川家とは親しくしたい」
 その中に入ることはなくとも、というのだ。
「徳川家はこれからさらに大きくなる」
「天下において」
「北条、上杉、毛利と並ぶ家になる」
「そこまで大きくなりますか」
「甲斐と信濃の殆ども手に入れてな」
 そうなって、というのだ。
「そうなる、だからじゃ」
「その徳川家とはですか」
「親しくしたい、だから御主の女房は徳川家から迎えたい」
 ここで信之自身に縁組の話もした。
「あの家の縁者からな」
「そうされますか」
「そして徳川家とも縁を作ってじゃ」
「仲よくしていくのですな」
「そうする、上杉にも北条にもそうしてな」
「勿論羽柴家とも」
「どの家とも親しくしていく」
 この考えを言うのだった。 
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