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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第12話「IS学園」

 
前書き
ようやく原作です。原作の小説を見ていないので、大体がwikiや二次創作頼りになると思うので、設定が曖昧です。ご了承ください。(今更)
 

 


       =秋十side=



「(.....やばい...。)」

  周りを見渡し、緊張と同時に冷や汗を掻く。

「(ガチで周りが女子しかいねぇ....!)」

  見渡す限り女、女、女。男なんて一人もいない。

  ...実際は前の方と後ろに二人男がいるけど。

「(桜さんは全然男に見えないし、あいつは論外だ。)」

  というか、桜さんは男らしくなるつもりはあるのか?

「ははは、まぁ、落ち着け秋十君。会社でも女性に囲まれてただろう?」

「...それは気を許せる相手だから大丈夫だっただけですよ...。」

  それに、意外と男性もいましたし。

「皆さん、このクラスの副担任になる山田麻耶です、よろしくお願いします。」

  ...っと、副担任の先生が来たという事は、もうすぐHRが始まるな。

「......え、えっとぉ....。」

  シーンと反応がない教室。....まぁ、あれだ。世にも珍しい男性操縦者がいるから、それに注目しすぎてるんだよな。
  ...後は、山田先生の容姿が中学生みたいで背伸びをした大人にしか見えないからか。

「...あー、これからよろしくお願いしますね。山田先生。」

「っ...!はい!よろしくお願いしますね!」

  桜さんが見かねて返事をする。それが嬉しかったのか、山田先生が語気を強くしてそう言った。

「えー、では、名簿の順で自己紹介をしていきましょう。」

  一応、名簿はあるのだが、席順は自由と言う事になっているらしい。ちなみに、俺と桜さんは真ん中の後ろの方に二人で並んで座っている。

  そうこうしている内に自己紹介が進んでいき、アイツの出番になる。

「えー.....えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします。」

  女子全員がアイツに注目する。...タジタジになってるように見えるけど、あれ、ただの見せかけだな。頭ん中じゃ、どうせ下らない事でも考えてるんだろ。

「...以上です!」

     ガタタン!

  すっぱりと切ったアイツに対して、半分くらいの女子が漫才よろしくズッコケる。

「(見てられねぇ。寝る。)」

  アイツの見るに堪えない演技なんていらん。そう思って俺は机に突っ伏した。





   ―――キャァアアアア!!

「っ!?」

  いきなり聞こえた歓声に、うとうとしてきた俺の意識が覚醒する。

「(っ....なるほどね...。)」

  見れば、千冬姉が前に立っている。恐らく、担任なのだろう。いつの間にIS学園の教師になったのかは知らないが、やっぱり久しぶりに見ると胸の奥が痛む。

「...残りの男子生徒、挨拶しろ。」

  いつの間にか話が進んでいたのか、俺たちが自己紹介する事になっている。
  俺が前にいるので、俺からするか。

「篠咲秋十だ。趣味は鍛錬。特技は家事...かな。好きなものは俺自身よく分かっていないが、嫌いなものは女尊男卑のように、自分を驕っているような奴だ。ワールド・レボリューションのテストパイロットとなっているが、そんな肩書きに関係なしに仲良くできると嬉しい。これから一年間、よろしく頼む。」

  そこまで言って一礼してから座る。
  当然のように女子が騒ぎ出すが...

「静かにしろ!」

  という千冬姉の一声で静まる。...次は桜さんか。

「篠咲桜だ。こんな容姿と名前だが、男なのでそこの所は分かっていてほしい。...秋十君とは、義理の兄弟でもある。ちなみに、俺の年は23歳だが、年上だとかを意識せずに接してくれると一番助かる。それと特技だが...容姿から何となく分かると思うが、篠ノ之束のモノマネだ。」

  そう言って桜さんはどこからともなくウサ耳(機械)を取り出して頭に装着し...

「ハロハロー、私が天災の束さんだよー。」

     パァアン!

  あまりにも似すぎていたため、クラスの女子達が噴出しそうになった瞬間に、千冬姉の出席簿によるチョップが決まる。...って、出席簿の出す音じゃねぇ!?

「痛い痛い!ちーちゃん、痛いよ~!」

「...ふざけるな。いいな?」

  ...これ、洗脳とかの性格関係なしに千冬姉怒ってね?すっげぇ怖いんだけど。

「...はいはい。..とまぁ、これぐらい得意だ。織斑先生が怒るからするのは控えるけどな。それじゃあ、一年間よろしく頼む。」

  そう言って桜さんは座る。さすがにインパクトが強すぎて歓声は起こらなかったな。







「うわーお、これはひどい...。」

「むしろ怖いですね。」

  HRが終わり、廊下を見てみると何かの群れのように女子生徒が群がっていた。
  ...中には二年生や三年生らしき人までいるし....。

「ちょっとよろしくて?」

「うん?」

  皆が遠慮して俺たちに話しかけない中、誰かが話しかけてくる。
  見れば、金髪のいかにもお嬢様な髪型の生徒が立っていた。

「まあ!何ですのそのお返事は!私に話しかけられるだけでも光栄なことなのだからそれ相応の態度があるのではなくて?」

「(うわぁ...態度が...。)」

  横暴過ぎる態度に、俺は呆れて何も言えなかった。

「イギリス代表候補生、セシリア・オルコットだな。代表候補と言う肩書きと、相手が男という事で高飛車な態度を取るのは結構だが、そうしていると程度が知れるし、国家代表にはなれんぞ?」

「な、なんですって!?」

  桜さんがきっぱりとそう言う。
  ...結構当然な事だな。国の代表なんだから、代表の人柄で国そのものに影響するしな。

「それと、男だからって侮るなよ?こっちは二年前から危険から身を護るため、知識や技術だけでなくISの事まで叩き込まれたからな。」

「(...俺、なんも喋れてねぇな。)」

  桜さんが全部対応しちゃっている。

「この...!女々しい容姿をしている癖に...!」

「容姿と中身は別だろ。」

  主にアイツみたいにな。桜さん曰く、アイツの場合は本来の魂と別の魂が入っているとの事だけど...なんで桜さんはそんな事が分かるんだ?

「...あ、そういえばマドカとユーリはどこのクラスなんですか?」

「うん?あー、確か二人共四組だったはずだ。上手い具合に二人ずつで固まったな。」

「そうですね。」

  少し疑問になった事を桜さんに聞く。

「ちょっと!?私を無視しないでくれます!?」

「あー、忘れてたわー。」

  凄く棒読みですね桜さん。まぁ、俺も態とだったんですけど。

「そりゃぁ、男だからと見下しに来た奴を相手にしてられないしな。」

「っ....ふん、所詮、男なんて立場を弁える事もできない生き物なのですわね。」

「あー、はいはい。そろそろ時間だし、席に戻りなよー。」

  桜さんが適当に受け流す。...滅茶苦茶面倒臭そうにだけど。







「(...IS学園の授業って、やっぱりISが中心なんだな。)」

  会社で散々勉強をさせられたから全て理解できるけど。...まぁ、アイツは分からないだろう。突然の入学だし。同情はしないけどな。

「ほとんど全部わかりません...!」

「えっ....全部ですか..?」

  とか考えていたら、案の定分からなくなっていた。...いや、まだ最初の方なんだからいくら突然の入学でも勉強しときゃ分かるだろ。

「今の段階で分からない人はどのくらいいますか?」

「「「「......。」」」」

  山田先生が他の人に呼びかけるが、当然全員分かっている。

「篠咲君達は大丈夫ですか?」

「大丈夫です。一応、二年前から勉強していましたから。」

  俺がそう答える。...桜さんの場合、全部暗記してるだろうけど。
  すると、アイツが小さく舌打ちして俺を睨んでくる。...なんだ?

「...織斑、入学前の参考書は読んだか?」

  教室のドアの近くで腕を組んで立っていた千冬姉がアイツにそう聞く。

「いや...電話帳と間違えて捨てましt」

     スパァアン!!

「必読と書いてあっただろうが。...後で再発行してやるから、一週間以内に覚えろ。いいな?」

「いや、一週間であの厚さはちょっと...。」

「やれと言っている。」

  凄い威圧感で千冬姉はそう言う。...なぜだろう。以前の俺なら思いっきり怯んだはずなのに、平然としてる...。...桜さんや束さんで慣れてしまったか...?

「っ....はい...やります...。」

  さすがにアイツもこれには耐えられないようだ。

「あーっと...織斑先生?」

「なんだ?」

  唐突に桜さんが発言する。

「再発行はしなくていいです。俺のを譲るので。」

「....お前はどうするつもりだ?」

「俺は暗記してるので。もし忘れても、秋十君のがありますから。」

  やっぱり覚えてたんですか。...そう言えば、桜さんは俺の参考書を適当に見ながら俺に教えてたような...。まさか、あれで覚えたのか?

「....いいだろう。再発行の手間が省けるからな。そう言う事だ。後で貰っておけ。」

「....わ、分かりました。」

  訝しむような目で俺と桜さんを見てくる一夏。...どうせ、碌な事考えてないだろうな。

「では、授業を進めます。テキストの12ページを―――」

  この後は、特に何事もなく授業が進んでいった。





「桜さん、ここってどういうことですか?」

「そこか?そこはだな....。」

  休み時間、少しだけ分からなかった事があったので、桜さんに教えてもらう。

「ねぇねぇ、さくさく~。」

「....俺の事か?」

  間延びしたような声色で桜さんが(多分)呼ばれる。

「そうだよ~。ホントに参考書の内容覚えてるのー?」

「まぁな。なんならいくつか質問してみてくれ。」

「ん~、じゃー遠慮なく~。」

  しばらく話しかけてきた少女と桜さんの問答が続く。...桜さんが暗記しているのはもう慣れたけど、彼女もなかなか凄いな。それなりに覚えてるし...。見掛けに寄らねぇ...。

「お~!ホントに覚えてるんだね~。」

「だろう?...ところで君は?」

  しばらくしてからようやく桜さんが彼女の名前を聞く。

「私は布仏本音(のほとけほんね)だよ~。」

「そうか。よろしくな本音。」

「うん~。あっきーもよろしくね~?」

  あっきーって...俺の事か?

「さっきからさくさくとかあっきーとか...俺たちの渾名か?」

「そうだよ~?桜だからさくさく。秋十だからあっきーだよ~。」

「なんというか...まぁ...。」

  ネーミングセンスがずれているというか...。まぁ、気にしたら負けか。

「あ、あなた達!あなた達も教官を倒しましたの!?」

「ん?」

「なんだ?」

  いきなり甲高い声が掛けられる。見れば、オルコットだったか?そいつがアイツの近くにいて俺たちを指差していた。

「教官だ?...試験の時の奴か?」

「それ以外何がありまして!?」

「(会社の誰かとか?)」

  生憎、教官と呼ぶような立場の人はいないけど。強いて言うなら桜さんか。

「あーそれか...。訓練機だったからなぁ...引き分けだ。」

「え?桜さんがですか?...あ、ちなみに俺は勝ったぞ。」

  意外な事に桜さんが引き分けたらしい。とりあえず、オルコットの方に俺も答えておく。

「そりゃあ、相手が訓練機とはいえ本気で来たからな。」

「...桜さんなら、本気でも倒せると思いますが。」

「いや、織斑先生だし。」

  その瞬間、空気が固まった。

「あ...あなた...織斑先生と..引き分けたんですの...?」

「試験だから本気で来ないと油断してたからなぁ...それがなければ勝てたのに...。」

  さらに空気が凍る。...桜さん?とんでもない事言ってる自覚あります?

「なんで織斑先生は本気になったんですか?」

「うーん...俺が篠ノ之束に似ているのと、同い年だからかな。」

  なるほど。...なぜか納得できました。後、幼馴染ですもんね。

「な...あっ....!」

「うん?」

  オルコットが震えながら桜さんを驚愕の目で見ている。...よく見ればアイツも同じように桜さんを見ていた。

「お、覚えてらっしゃいー!!」

「お、おう...。」

  逃げるように自分の席に座ったオルコット。...そう言えばチャイムもなってたな。

「ほら、お前ら座れ。授業を始めるぞ。」

  千冬姉が教室に入ってきて、クラスの皆は速やかに席に座る。

「あの...織斑先生。」

「なんだ。」

「...篠咲君が織斑先生と引き分けたって、本当ですか...?」

  一人の女子生徒が恐る恐る質問する。

「....そうだ。もちろん、訓練機とはいえ、私は本気だったぞ?」

     ―――ざわ...!ざわざわ...!

「ええい!喧しいぞ貴様ら!静かにしろ!」

  さっきの桜さんの言葉が事実だったことにざわめくが、千冬姉の一喝で静かになる。

「それでは授業を始める。」

  そして、何事もなかったかのように、三時間目が始まった。





「...っと、そうだ。再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな。」

  少ししてから、思い出したかのようにそう言う千冬姉。...忘れてたのか?

「あの、代表者って?」

  アイツが質問をする。

「代表者とはそのままの意味だ。クラス対抗戦だけでなく、生徒会が開く会議や委員会に出席...まぁ、所謂クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間は余程の事情がない限り変更はないから覚悟しておけ。」

  分かりやすく簡潔に説明する千冬姉。...桜さんでも推薦しておくか?

「はい!織斑君を推薦します!」

「あ、私は篠咲君の弟さんの方を!」

「じゃあ私はお義兄さんの方を!」

「なんかニュアンスが違くない!?」

  一人変なのがいた気がするけど、皆男性操縦者を珍しがって俺たちを推薦してくる。

「候補者は織斑一夏と篠咲秋十、篠咲桜か...。他にいないか?自薦他薦は問わないぞ。」

  推薦で名が挙がったのはやはり俺たちだけなようだ。

「...推薦された者に拒否権は?」

「ない。推薦した者の気持ちを汲み取ってやれ。」

「....なん...だと...!?」

  桜さんも代表は嫌なのか、質問するが、キッパリと拒否権がない事を言われ、頭を抱える。

「あー...一つだけ言わせてもらいたいんだが―――」

「納得いきませんわ!!」

  桜さんが再度何かを言おうとした瞬間、オルコットが机を叩いて立ち上がる。

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!この、セシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

  喧しい声でそう言うオルコット。...もう、無視でいいや。

「...桜さん、さっき、何を言おうとしたんですか?」

「...推薦するのは構わないが、せめて物珍しさだけじゃなく、実力や人柄から選ぶようにしてくれって、言いたかったんだ。」

  至極真っ当な事だな。既に推薦された俺たちはそのままだが。

「...けど、それって余計に桜さんが推薦されるんじゃないんですか?桜さん、ちh..織斑先生に勝ったって事が分かっているんですし。」

「いや、それはもう諦めてるから...。」

  諦めたんだ....。まぁ、推薦された者には拒否権がないしなぁ...。

「―――大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」

「イギリスだって大したお国自慢はないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ。」

「なっ....!?」

  未だに続くオルコットの言葉に、アイツが勝手に突っ込む。

「あ、あなたねぇ!私の祖国を侮辱しますの!?」

「先にバカにしたのはそっちだろ!」

  俺からしたらどっちもうるさいだけなんだが...。

「....男と日本を侮辱したオルコットに織斑がキレた。以上が今の状況だ。」

「あ、ありがとうございます。」

  桜さんから簡潔に状況を伝えられる。正直、無視してたから話聞いてなかったしな。

「はぁ...なぁ、オルコット。」

「なんですの!?口を挟まないでくださいまし!」

「お前さぁ...死にたいの?」

「は....?」

  桜さんが唐突に言った言葉に、一時的に固まるオルコット。

「織斑に加担するつもりでいう訳じゃないが、このクラスの大半は日本人だ。その中で日本を侮辱してみろ。日本人の怒りを買う上に、イギリスの評価が下がる。そうなるとお前はイギリスから切り捨てられるぞ?」

「なっ.....!?」

  あり得るかもしれない事に、オルコットの顔が青くなる。

「第一、日本を侮辱する前に少し考えてみろ。ISを作ったのは、第一回モンド・グロッソで優勝したのは、どこの国の人物だ?」

「ううっ....。」

「世界の最先端を行くISの発祥地である日本を後進的な国?ちょっと不用意な発言すぎるぞ?」

  桜さんの言葉にタジタジなオルコット。...千冬姉と引き分けたという事実もオルコットをビビらせる要因になってるのか?
  ...というか俺、今の所桜さんのオマケだな。

「あ、それとな。」

  そう言って桜さんは一度立ち上がり、そして....。

「男をあまり、舐めるな。」

「っ.....!?」

  一瞬でオルコットの背後に立つ。いや、あの、それは桜さんが特別なだけじゃぁ...。

「よく世間で女性が優れてるとか言われてるけどな、優れているのはISであって女性じゃない。今のように一瞬で背後に回られてみろ。ISを展開するまでもなく、死ぬぞ?」

「そこまでだ篠咲兄。」

  強い威圧感を放って周りをビビらせている桜さんに、千冬姉のストップが入る。

「...どちらも納得しないというのなら、一週間後の月曜、放課後の第三アリーナで戦え。それで最終的な代表を決めろ。」

「俺は実力と人柄さえ伴っていれば誰でもいいんですがね...。」

「そうか。だが今決定した事だ。織斑とオルコット、篠咲兄弟は一週間後の用意をしておくように。」

「りょーかいです。」

  そう言って桜さんは席に戻る。

「..........。」

  そんな桜さんを密かに睨みつける一夏。アイツ...まるで自分の思い通りにならないって顔をしているな。お前の考えなんか知るかっての。

「(初日から面倒臭い事になったなぁ...。)」

  原因の一端に桜さんも絡んでいるから何とも言えんが。





  それ以降の授業は滞りなく進み、放課後になった。ちなみに、俺たちを見に来る女子生徒たちの所為で、俺たちは碌に廊下を出歩けなかった。
  ...マドカやユーリに会いに行っておきたかったんだがなぁ...。

「....なぁ。」

「うん?」

  放課後になって、アイツが俺に話しかけてくる。

「ちょっと話があるんだ。屋上へ行かないか?」

「.....。(どうしますか?)」

「(好きにしていいぞ。秋十君ならどうとでもできる。)」

  桜さんにアイコンタクトを取り、とりあえずついて行くことに決める。

「ああ。いいぞ。」

「よし、なら行こうか。あ、箒、悪いが男子だけで話がしたいんだ。席を外しておいてくれ。」

「分かった。」

  一夏は箒にそう言い、箒が引き下がる。男子だけって、桜さんもか?

「俺もか?」

「...ああ、そうだ。」

「まぁ、いいだろ。」

  とりあえず桜さんもついて行くみたいだ。屋上へ行くために俺たちが歩き出すと、見に来ていた女子生徒がモーゼの奇跡のように割ける。
  ...ある意味圧巻だな...。





「....で、話ってなんだ?」

「......。」

  屋上に着き、俺がそう言う。着いたばかりでまだ背を向けたままの一夏の表情は見えない。

「っ!?がっ...!?」

  すると、突然振り返り、睨みつけながら俺の襟を持つ。

「てめぇ、何のこのこ出てきてんだ?」

「はぁ....?」

「誤魔化せてるとでも思ってんのか!?てめぇはどう見ても織斑秋十だろうが!?出来損ないの癖に今更出てきてんじゃねぇよ!」

  脅すように俺に怒鳴りつける一夏。襟を持ち上げられているので少し締め付けられる...!

「おい....。」

「おう、動くんじゃねぇぞ?動いたらコイツがどうなるか分かってるだろうな?」

「....チッ....。」

  桜さんが動こうとして俺を人質に取る。大方、桜さんが俺の事を大事にしているから人質が効くとでも思ったのだろう。

「俺が織斑一夏で主人公なんだ!てめぇみたいな他の転生者で紛い物は、俺の踏み台にでもなってりゃいいんだよ!!」

「ぐっ...何言ってんだ....?」

  主人公?転生者?踏み台?頭おかしいだろ、コイツ...。

「しらばっくれんじゃねぇ!てめぇなんざ原作に存在しなかっただろうが!」

「原作...?なんの話だよ....。」

  息苦しい。喋りづらいんだが...。

「それとてめぇもだ!束さんの姿を真似やがって...ぶっちゃけキメェんだよ!男の癖に束さんの容姿になるとか!」

「あ゛?」

  ちょ、桜さん!?青筋立ってますよ!?

「どっちも転生者なんて事はお見通しなんだよ!いつまでもしらばっくれてんじゃねぇぞ!?」

  どうやら、コイツの中で俺たちは転生者とか言う者だと断定しているようだ...。

「(...もう、やっていいですか?)」

「(ああ。いいぞ。俺もちょっとキレてる。)」

  うわぁ...。桜さん...と言うか束さんは桜さんの容姿を大事にしてるからなぁ...(似てるからとかそんな理由で。)。だから、それをバカにしたら最悪束さんが...。

  ...っと、それどころじゃなかったな。

「....ふっ!」

「ぐぅっ!?」

  襟首を掴んでいる手を思いっきり捻る。
  たったそれだけで俺は解放される。

「てめぇ....!」

「いつまでもやられるだけの俺だと思ったか?」

「なんだと....?」

  昔の俺なら怯んでいた睨みを俺はあっさりと受け流す。

「ほら、かかってこいよ?“自称天才”さん?」

「っ...調子乗ってんじゃねぇぞっ!!」

  殴りかかってくるのを避け、腕を掴んでそのまま関節技を掛ける。

「がぁあああっ!?」

「はぁ...バカだねぇ..。俺がさっき手を出さなかったのは、秋十君が人質に取られたからじゃなくて、秋十君だけでも対処できるからなんだよなぁ...。」

  なんか、こんな奴に俺はいつもやられていたのかと思うと、怒りさえも萎える程馬鹿らしくなってきた。

「ぐっ.....。」

「いいのか?」

「はい。物理的に仕返ししても、空しいだけだと思いましたから。」

「そうか。」

  手を離し、解放する。

「てめぇ....!」

「じゃあな。」

  睨みつけてくる一夏を無視し、俺たちは荷物を取りに教室へと戻っていった。







 
 

 
後書き
何気に一部の原作の流れ(ハンデとかのセリフ)を乱している桜さん。おかげで一夏はぐぬぬ状態です。それが目的なんですけどね! 
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