東方変形葉
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変化は永遠に……
終章 東方変形葉
最終回 「成長」
前書き
変化し続ける現実。不変を目指す平和。
その二つは無慈悲にも別々のところにあり、決して交わることはない。例えば、民主主義で“平和”を築けたと思っているうちは、その先の崩壊に気付くことなく前進する。たとえ認識していたとしても、それだけではその現実を変えることはできない。
ならばどうすればいいのかッ!
今何をすべきなのかッ!
知るか。
さらりとそれっぽいことを述べる者は真実を知らない。知るはずがない。むしろ知ってたら怖い。
その答えは、自分だけが持っているのだ。他人がとやかく言ってはい解決とはいかないのである。なにせ、規模は世界を超越しているのだから。
変化を求めずして人は変われず、人が変わらなければ世界も変えられない。
さて、幻想郷は今日もにぎやかである。
見届けようではないか。
幻想の“変化”を。
「けほっ」
情けないくらいに弱い咳をひとつして、俺はまた立ち上がった。
さすがは妖怪の賢者、八雲紫。一筋縄ではいかない。それどころか俺が一方的にボコられているという有様である。
俺は何故か紫に勝負を挑まれて今に至る。勝負は勝負でも、真剣かつ本気の勝負である。
そういえばいつか美鈴に聞いたことがある。たくさんの武道をかじった専門家みたいな武術家よりも、一つの武道を徹底的に極めた武術家のほうが強いのだと。
今まさにそれだ。俺は変化を操ることができる。変化を操る力をしのげる能力はどこにも存在しないと紫は言った。しかしそれを使いこなせていないがゆえに、“境界”を難なく操りこなす紫には歯が立たない。
「あら、どうしたのかしら。もう終わり?」
「まだだ……っ!」
しかし諦めるものか。
紫は何かを企んでいる。それは恐らく、俺に何かを学ばせるため。幻想郷にやってきてだいぶ経つが、彼女から教わったことは一つ一つがとても大きなもので、俺の成長の糧となった。
紫は、俺を“変化”させてくれているのだ。
不思議と、そのことに心躍る感覚がある。子供みたいな知的好奇心にも近いものだ。
だから、戦う!
俺は変わらなくちゃいけないのだ!
今まで数々の困難を乗り切ったが、次も乗り切れる保証なんてどこにもない。万が一のことがあれば、この美しき世界、幻想郷を護ることができない。
幻想郷が踏みにじられることなどあってはならない!
「行くぞ、紫!」
「っ!」
変化「天と地のラストダンス」
一瞬にして、地盤が持ち上がった。
そして砕けた地盤が空中に静止した。無重力状態である。
「あら……」
さらにもう一つ。天と地の境界を弄り、上が地面で下が空になっている。
……ように見せかけている。
実際は、結界による錯覚である。
「ずいぶんと、楽しませてくれそうね。やっぱりあなたを連れてきて正解だったわ」
紫はそう言うと、スッスと扇子で何かをした。
……しかし。
「っ……!?」
「残念だったな」
さっきも言ったように、天と地がひっくり返っているのは結界による錯覚だ。しかしそれは副作用に過ぎない。本当の狙いは、紫の能力を封じること。境界をほいほい弄られては勝ち目はまずないのだ。
「まさか……さっきまで手ごたえがなかったのは、こっそり結界を張るためっ!?」
「いや、あれはほんとにやられてた。ただ、ただやられるだけじゃつまらないなと思ってね」
変化「小惑星帯の訪問者」
巨大な光弾を生み出し、紫に向かって放つ。
静止している砕けた地盤を小惑星帯とし、光弾を彗星と見立てて行う攻撃である。紫の能力を封じた結界は、いわゆる束縛結界。ついでに岩石の耐久力も縛ったため、そう易々と砕かれることはなくそれらを避けながら彗星にも対処しなければならないのだ。
「くっ……!」
「え、あの強力な光弾を素手で押さえつけてる!?」
さすが最強の妖怪。能力が桁違いなら妖力も桁違いか。
しかし妖力は神力に勝つことはない。
「……全力全開ッ!」
「ぬ……!」
体がみるみる熱くなっていくのを感じながら、彗星が岩石と紫を飲み込むのをじっと見守った。
そこで俺の意識は途絶えた。
なんてことなの。
あの子はもうすでに自分で変化を起こしていた。
変化を操る自分自身が“不変”の象徴であることも知らずに?
あはははははは!
何よ、もう私の出る幕ないじゃない。
私はやり遂げたのだ!
幻想郷を預かる者としての最大の責務を!
あとは見守るだけ……。
もう、貴方に教えることなんてたかが知れているわ。
よくがんばったわね、葉川裕海……。
目を開くと、俺は青い空を呆然と見つめていた。
そうだ、あれからどうなった。
「やっと起きたの」
呆れたように笑う紫が、目の前に現れた。
服はどこもかしこも汚れており、ある意味では妖怪らしい姿と言えた。
むくりと体を起こすと、頭がくらくらした。
「……俺、もしかして負けた?」
「いいえ、引き分けよ」
「引き分け……か」
「なによ、その満足そうな顔」
「べつにぃ?」
くすくすと子供っぽく笑ってやると、じーっとジト目でこちらを睨んだ。
よかった。引き分けで。
もし勝ってしまったら、紫がどこかへ行ってしまいそうな気がしたから。本当に良かった。
……いや、トラブルメーカーが一人減ってよかったのかもしれないけれど、それはまた別の話。
「さて、紫。忘れてないだろうな」
「あら。私が忘れるとでも思ったの?」
そして頷き合い、空へと浮いた。
美しく輝くこの幻想郷を見渡しながら。
―――さぁ、今日は宴会だ!
後書き
ということで、完結しました!処女作ということでかなり模索状態で書き続けたために大変見苦しくなってしまった箇所があり、また何度も何度も更新が途絶えてしまったことをお詫びするとともに、重大発表があります。
続編である『東方月変化 東方変形葉~変遷~』、また別の作品である『東方桜輝境』を削除し、そのかわりに何か東方作品を投下したいと思います!それに加え、変形葉の番外編などもちょいちょい投下できたらなと思っております!
一年と半年もの間、ご愛読ありがとうございました!そして、他の作品をこれからもよろしくお願いいたします!
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