真田十勇士
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巻ノ二十一 浜松での出会いその四
「しなかったのじゃ」
「左様か」
「女房は欲しい」
妻は、というのだ。霧隠も。
「しかしな」
「遊ぶことはか」
「その時はよくても後が怖いからな」
「鰻屋でもか」
「そうしたことはしなかった、しかし鰻は好きじゃ」
食べること自体はというのだ。
「好きじゃ」
「左様か」
「そういうことじゃ」
「花柳病が最も怖いか」
「そう思う、身体が腐っていくからな」
「わしも気をつけねばな」
「御主は女も好きじゃしな」
猿飛が清海に言った。
「そこにも気をつけねばな」
「そうじゃな、そんな病になってはことじゃ」
「殿の為に働けぬぞ」
「全くじゃ」
「ではよいな」
「うむ、そうしたことには気をつける」
清海は猿飛の言葉にも頷いた、そうした話もしつつ一行は鰻屋に入ってだった。そこでまずは先に出された料理や酒を楽しんだ。
その酒を飲んでだ、伊佐は言った。
「この般若湯も」
「よいな」
「はい」
根津に答える、見れば根津も酒を飲んでいる。
「中々」
「三河の酒は素朴で」
「この国の酒は垢抜けています」
「そうした感じじゃな」
「やはり今川殿のご領地だったので」
「それが出ておるか」
「確かにな、垢抜けた感じがする」
穴山も遠江の酒を肴と共に楽しみつつ述べる。
「すっきりとして飲みやすい」
「肴もよい」
海野は海から採れた魚を食べている、飲みながら。
「食べやすいわ」
「駿河はよりよいというが」
望月はこの国のことを話した。
「どういったものであろうな」
「それを見るのも楽しみ。しかし今は遠江を楽しもう」
筧は自らの言う通りにしていた。
「実際に美味い酒と肴じゃ」
「味噌もよい」
由利はそれを食べている、肴のうちの一つの。
「こうして味噌が食えるだけでも違う」
「そうじゃな、味噌といっても国によって違うがな」
「この味噌もまたよしじゃ」
幸村もその味噌を食べている、そのうえでの言葉だ。
「味噌をこうして食べられるだけでも違う」
「そういえば殿は」
「道中よくです」
「味噌を召し上がられていますな」
「酒は焼酎が多く」
「それもお好きですな」
「信玄様がお好きでじゃ」
それで、というのだ。
「その後もな、武田家ではよく食べておってな」
「それで、ですか」
「殿もなのですか」
「武田家にお仕えしているうちに」
「味噌を好きになられたのですか」
「そうじゃ、基本嫌いなものはないが」
それでもというのだ。
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