魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第1章:平穏にさよなら
第13話「面倒事」
前書き
天使奏の容姿は、名前から連想してると思いますが、Angel Beats!の立華奏です。
=優輝side=
「(絶対関わってくるよなぁ...。)」
原作組+αを見ながら僕はそう思う。...というか、知り合いになってる司さんがいる時点で関わってくる確率が高い。
「(...いっそのこと、今回の面倒事は諦めるか。)」
もう今回はとことん関わってやる方が無難に済みそうだ。
「それにしても、随分混んどるなぁ...。」
「....昼、だから...。」
店内をキョロキョロ見渡す八神はやてと、その言葉に答える天使奏。
「...おっ、あそこが空いてるぞ?」
「あ、ホントだ!」
そして、織崎神夜が空席を見つけたのか僕らの近くに座る。
「あれ?そこに座ってるの、聖奈さん?」
「あ、ホントだ。」
そして、僕ら...と言うより司さんに気付く一行。
「お~い、聖奈さ~ん。」
「はやて、他の人といるみたいだし、呼びかけたらダメだよ。」
うん。できれば関わらないでくれ。これでも面倒事は嫌なんだ。
「...どうしよう、優輝君。」
「...僕としてはあまり関わりたくないんだけど...司さんの好きにしていいよ。」
と言っても、司さんの優しさなら無視はしないだろうなぁ...。
「無視するのも悪いし、会釈だけでもしておくね?」
「いいよー。」
そう言ってあっちのグループに手を振る司さん。...寄ってこなけりゃいいけど。
「よぉ!俺の嫁たちよ!ここで会うとは奇遇だな!」
火にガソリンどころか爆弾投下するような奴が来やがった....!!
「また来たの...。」
「...面倒...。」
「なんで来るのかな?」
「奇遇でもなんでもないくせに...。」
「どっか行けばええのに。」
次々と文句を言う女子勢。...いや、僕からしたらアレに反発する際に騒がしくするのも迷惑なんだけどね?
...まぁ、突っかかっていくアリサちゃんが居ないからマシだけどね。
「っ、織崎ぃ!!てめぇ、また嫁たちと一緒にいやがって!嫌がってるだろうが!」
「.....。」
織崎神夜に突っかかる王牙帝。やっぱり織崎神夜も関わりたくないのか無視を決め込んでいる。
「あ、あの、優輝君?騒がしくてイラつくのは分かるけど、落ち着いて?」
「えっ、あ、ゴメン。」
いつの間にかコップを持っていた手が震えていた。やばいやばい。
「もう!さっさとどっか行ってよ!奇遇とか言って、私達をストーカーしてたんでしょ!」
「ははは。何を言っている。俺の嫁たちとはいえ、そんな事する訳ないじゃないか。」
アリシア・テスタロッサが女性陣を代表してそう言うが、まったく堪えた様子はない。
「それに、ストーカーしてるのはコイツの方だろ?」
「神夜はそんな事しないよ!というか、私達が神夜を誘ったんだからね!」
「なに?...てめぇ、また無理矢理ついてきたんだな!!おまけにアリシアにこんな事まで言わせやがって...!」
いや、どこをどう解釈したらそうなる。
「まさかとは思うが、てめぇはなのは達に好かれてるとでも思ってんのか!?そんなの、ありえる訳ねぇだろ!!万が一あったとしても洗脳とかだろ!」
...やべぇ、この転生者、半分当たってる。主に洗脳の所。
「(...どの道、うるさい事には変わりないけどね。)」
というか、席が近いから余計にイラつくんだが。緋雪はよくこんなのがいる教室で授業ができるな。僕、感心するぞ。これは。
「....ちっ、いい加減、黙らないのか?他の人達の迷惑だぞ?」
「うるせぇ!てめぇがなのは達に無理強いするからだ!」
ようやく反論した織崎神夜。そしてそれに暴論で返す王牙帝。
...それはともかく、店の奥に形容しがたき形相の士郎さんがいるんですけど。
「...お兄ちゃん。」
「あぁ、止めるか。」
ふと見れば、司さんも席を立っている。目配せをすると、目的は同じのようだ。
「...なぁ、そこの男子。さすがに騒ぎすぎだ。ここのマスターも、そろそろキレかねないぞ?」
「お客さんにも、店の評判にも迷惑なんだし、そこでやめようね?」
僕と司さんが止めに入ったことで、王牙帝と織崎神夜のグループが驚く。...まぁ、転生者達は僕が止めに入ってる事に驚いているが。まぁ、見た目モブだし。
「あぁ?なんだてめぇは?」
「...一応、先輩に値するんだから言葉には気を付けるようにな。」
「はっ!そんなの俺には関係ないな!モブは引っ込んでろ!」
やばい。実際に会話すると思ったよりもイラつく。...もう殴ってもいいよね?
「はぁ....。(士郎さん、つまみ出していいですか?)」
視線でそんな思いを送ってみる。
...あ、首掻っ切る仕草から親指が下向いた。しかも恐怖すら感じる笑顔で。
「(りょーかいっと!)」
士郎さんもキレてるんだなと思いつつ、王牙帝の襟を掴む。
「おいてめぇ!離せ!この野郎!」
「うるさいからね。つまみ出すよ。」
「あ、おい....。」
ギャーギャー喚くのを無視して引きずっていく。織崎神夜が何か言いたそうにしてたが、おそらく普通の人間(だと思っているのだろう)の僕が踏み台扱いとは言え、転生者を連れて行くことに危機感があったからだろう。主に僕が危ない的な意味で。
「(まぁ、そんな心配は杞憂だろう。)」
さすがに街中でモブだと思っている相手を本気で殺そうとはしないだろう。いくら踏み台的な過激な思考の持ち主でも。
「くそっ...この...モブ野郎が!!」
引きずり、店を出た所で暴れ出すように僕から離れる。
「俺と嫁たちの邪魔をしやがって...何様のつもりだ!」
「お客様の一人ですが。なにか?...というか、絶対お前さ、何回も同じような事してただろ?士郎さんがあんな形相するとは思えないぞ。」
まだそこまで関わりあった訳ではないけど、それでも士郎さんは優しい人物だと思っている。そんな士郎さんがあんなにキレてるとか...。
「うるせぇ!モブのくせに!」
「あー、もう....。」
こいつどうしようか?中に残っている司さんや緋雪を見ると、同じように呆れていた。
「おい、モブ野郎。これ以上邪魔すると...!」
「邪魔すると...なんだ?」
殺気を込めて睨んでくる王牙みかd...もう王牙でいいや。いちいちフルネームはメンドイ。
王牙が睨んでくるが、適当に流す。この程度の殺気、恭也さんのがやばい。
「...はっ、少しばかり、立場を分からせてやる...!」
「うん?これは....。」
周りの雰囲気が変わる。それに僕と王牙以外の人が消えている。
〈『マスター、これは結界魔法です。それも、マスターを閉じ込めるための。』〉
「(っ...!なるほど、これが結界か...。)」
頭に直接響くようにリヒトの言葉が聞こえる。これが念話なのだろう。それよりも、まさかここまで過激な行動にでるとはな...。
「ククク...!驚いているようだな...ここはてめぇが俺に逆らわなくなるための場所だ!さぁ、身の程を知るがいい!!」
そう言って王牙の背後の空間が歪み、そこから剣が飛んでくる。
「っと!!」
それをなんとか、避ける。すると飛んで行った剣は地面にぶつかった瞬間、爆ぜるような衝撃を生み出した。
「うっわ、厄介だな。少しでもミスると死ぬじゃん。」
「避けた?...いや、そんな訳ないな。ただの偶然だな。...だが、次はそうはいかんぞ!」
今度は三つ程空間が歪む。つまり剣などが三つ飛んでくるのだろう。
「(落ち着け、思い出せ...。)」
思い出すのは、昨日の恭也さんとの戦いで使っていた導王流の動き。流れるような動作で剣すらも素手でいなすその技術を、今ここにもう一度!
「っ....ふっ!!」
ガィン!ガィイン!!
先行して飛んできた一つ目の剣の腹を叩いて逸らし、その勢いで回転しながら後ろ回し蹴りを高めに繰り出すことで、二つ目の剣を躱しつつ、三つ目の剣を弾く。
「(まだだ!まだ、昨日の状態じゃない!)」
今のはまだ護身術の応用だ。昨日の導王流で、いくらか技術が上がっていたから対処できたが、これではまだまだ足りない。
「(だけど、悠長に昨日の技術を思い出している暇はない!魔力も使えない今、できるのは...。)」
―――短期決戦!
足を踏み込み、縮地の要領で一気に距離を縮める。
「っ...調子に、乗ってんじゃねぇ!!」
「(来るっ...!)」
王牙の背後に大量に武器が展開され、それらが一斉に掃射される。
「っ...ぜぁっ...!!」
一秒も満たない内に僕へと辿り着く武器群に、僕は立ち止まらずに、むしろ走り出した。
最短距離を、最速で、最小限の被害で突き進むために。
ガィン!ズザァッ!
一つの剣を左手で受け流し、狙いが甘く隙のある地面スレスレをスライティングで抜ける。
「っ...!」
ダン!
すぐさま起き上がるために右手を左側の地面を叩くようにつき、飛び上がるように起きる。この際、足で飛んできていた武器を払っておく。
「っぁ....!」
見事に起き上がり、体勢を立て直す間もなく地面を蹴り、武器群の中に飛び込む。
飛んでくる武器群に対して、いつまでも立っている体勢では命中しやすく、絶対に凌ぎきれない。だから武器群に平行になるように突っ込めば、命中率は低くなる。もちろん、ちゃんと飛び込む際に武器の弾幕が最も薄い所を狙ってある。
「ぐっ...らっ....!」
一瞬。ほんの一瞬武器の弾幕が薄くなった所で僕は空中で体を捻り、踵落としの要領で当たりそうな武器を逸らし、一度着地する。
「(残りの距離は、ほんの三メートル!)」
上手い具合にしっかりとした体勢で着地できたので、そのまま縮地で一気に距離を詰める。
「なっ!?」
「....っらあ!!」
ついに攻撃が届く距離になり、驚愕に染まる王牙の顔。それに対し、僕はまっすぐ、勢いを利用した強力な掌底を両手で放った。
「ぐはぁっ....!?」
「(捉えた....!!)」
動揺していた王牙に、その掌底は見事に決まって吹き飛ばした。
だけど....。
「てめぇええええええ!!!」
剣を構え、突っ込んでくる王牙。
「ちっ...やっぱり一撃じゃ、無理か!」
元々魔力の篭っていない体術の一撃。対して奴はバリアジャケットという普通に殴った程度じゃ一切ダメージの通らない服を纏っている。当然、衝撃を徹すような攻撃じゃなかったから耐えられるだろうな。
「(だけど、激昂して武器の射出がなくなっている。これなら...!)」
突っ込んでくる王牙を迎え撃とうとして身構える。
ガキィイイン!!
「ストップ!そこまでだよ!」
王牙が手に持つ剣を振りかぶり、僕はそれを受け流そうと手を動かした瞬間、剣の進路をふさぐように槍が差し込まれる。
「お兄ちゃん!」
「緋雪!?それに司さんも!」
緋雪が僕に駆け寄ってくる。王牙の攻撃を防いだのは司さんだったようだ。
「つ、司!?」
「...はぁ。ねぇ、何をやってるのかな?一般人相手に魔法だなんて...。」
さすがに司さんも呆れている。
「こ、こいつが俺の邪魔をするから...。」
「優輝君は、店のためを思って君を追い出したんだよ?...もしかして、迷惑なんて掛けていないなんて思ってる?」
「っ.....。」
言葉を詰まらせる王牙。...一応、自覚はあったのか。
「.....んだよ...。」
しかし、俯いた状態で何かを呟く。...嫌な予感がする..。
「っ、お兄ちゃん、下がって。」
緋雪が僕を庇うように前に出て、吸血鬼の姿を晒す。
「なんだよ...転生者でもない癖に、出しゃばってんじゃねえ!!!」
「っ....!危ない!」
さっきの戦いよりも多い数の武器を射出してくる。
「“アフェクション・シールド”!!」
ギギギギギギギィイン!!
「くぅっ....!」
司さんは、僕達を庇うように防御魔法を使って武器を防ぎだす。だけど、数が多すぎるせいか、押され始めている。
「...任せて。」
「緋雪?」
「決定打にはならないけど、怯ませるくらいはできるはず....!」
両手を王牙の方向に翳し、何かを“視る”ように念じ始める。
「“ツェアシュテールング”!!」
ドォオオオオオン!!
緋雪の両手に赤い光の球のようなものが出現し、それを緋雪は両手で潰す。すると、巨大な爆発が武器群の中で起こり、飛んでいた武器が全て吹き飛ばされる。もちろん、爆風で王牙は怯み、武器の射出も止まる。
「っ、今!“エモーションシューター”、シュート!!」
その隙を突き、司さんが素早く、貫通力のある水色の魔力弾を放ち、王牙の脳天にぶち当てる。
「がっ...!?」
「...ふぅ、これで...。」
「っ!まだ!」
緋雪が上を向いてそう叫ぶ。
「なっ....!?」
上を見れば、大量の剣が浮いていた。...しかも、そのどれにも魔力が込められている。
「くそっ....!」
〈マスター!?ダメです!魔法は...!〉
「お兄ちゃん!?」
「優輝君!?」
二人を庇うように咄嗟に前に出て、手を翳す。...僕自身、無謀な事をしてるのは分かっている。司さんなら防げていたのに、僕が咄嗟に出たせいで反応が遅れたのも分かっている。
...だけど、今更引けるか!皆に庇ってもらってばかりじゃ、いられないんだ!
「リヒト!魔力を絞り出せ!」
イメージするは、強力な盾。僕の持つ魔力変換資質は、fateの衛宮士郎に似ている部分がある。...ならば!
「行くぞ...!“熾天覆う七つの円環”!!」
創造したのは、あの七つの花弁を繰り出して防ぐ防御型の宝具。だけど、今僕の目の前に展開されたのはたったの三枚。...なら、この三枚に残りの魔力全てを込める!
「ぐぅううぅう....!」
「...シャル!」
〈分かりました。〉
圧倒的に魔力が足りず、一枚砕け散る。すると、緋雪が僕の後ろで何かし始める。
「...“スターボウブレイク”!」
七色の色とりどりの魔力弾が、僕の背後から援護するように飛んでいく。ふと後ろを見てみれば、緋雪が杖形態のシャルラッハロートを弓のように引いた後だった。
「ナイス緋雪!これで....!」
もう一枚、砕け散る。だけど、射出された剣は残り少し。王牙は司さんの一撃で気絶したため、追加の攻撃はない。...行ける!
「はぁっ、はぁっ、はぁ....!」
し、凌ぎきった...!!
「...優輝君っ!!」
「うっ、司さん....。」
見るからに顔が怒っている司さん。...まぁ、怒られるよなぁ...。
「なんて危ないことをしたの!?魔力も回復していないのに、あんな大量の攻撃を防ごうだなんて!緋雪ちゃんの援護がなかったら、死んでたかもしれないんだよ!?」
「...返す言葉もありません...。」
我ながらなんであんなことをやったんだってレベルだし。
〈私も同意見です!...おかげで、リンカーコアの回復が遅くなってしまいましたよ。〉
「反省しています...。」
リヒトにまで言われる始末だ。...何やってんだか...。
「...ところで、この後どうするの?」
「あっ...そういえば..。」
地形の被害は結界を解けば元に戻るが、さっきの戦いで僕の服は所々切り裂かれ、所々掠ったり、素手で武器を弾くのには無理があったため、結構傷もある。それにここは一応道端だ。王牙を放置したらあらぬ噂が立つ。
「あー、こういう時の対処は任せて。以前にもあったから。」
すると、司さんがそう言って王牙を掴んで見つかる事のなさそうな茂みに投げ入れる。
「これでオッケーだよ。」
「よ、容赦ないな...。」
確かに人に見つからないようにするには良い手かもしれないけどさ。
「後は優輝君の傷と服をなおさなきゃね。」
そう言って司さんは祈る体勢に入って魔法を使う。するとみるみる内に僕の格好が戦闘前に戻る。
「じゃ、結界を解除するよ。中に入る際、結界の術式を乗っといておいたから。」
「準備いいな...。」
「あっ、羽を隠さなきゃ。」
〈お任せください。〉
司さんが結界を解除する前に、緋雪が羽などの吸血鬼の要素を隠す。
そして、景色が元に戻る。道を行く人達も元に戻り、結界が解かれた事が分かる。
「じゃ、店に戻ろうか。」
「そうだね。」
司さんの言葉に従い、僕らは店の中に戻る。...一応、まだ食事中だったからね。
「すまないね。まさか、彼があんな暴挙に出るとは思わなかったよ。」
「あ、士郎さん。」
店に戻ると士郎さんが出迎えてくれた。
「まぁ、なんとかなったんでいいですよ。」
「司ちゃんも悪いね。」
「いえいえ。」
...にしても、織崎(こっちも名字で呼ぶようにした。)のグループは見ていただけで何もしなかったみたいだな。...大方、司さんが出向いたから大丈夫だと思ったんだろうけど。
「あちゃぁ...冷めちゃってる。」
「あ、でもまだ美味しい。」
料理は冷めてしまったけど、美味しさはしっかり残っていた。さすが翠屋。
「ごちそうさま...。..ちょっとあっちの皆が私に話があるみたいだし、行ってくるね?」
「んー、分かったよ。行ってらっしゃい。」
そう言って司さんは織崎のグループに向かう。話っていうのは多分さっきの戦いだろう。
「(まだ僕が魔法を使えるって事は知らないみたいだな。...緋雪は怪しまれたみたいだけど。)」
ちらりと織崎の顔を見て、そう判断する。
「(天使奏...毎回思ってしまうけど、まさか...な。)」
彼女を見て、僕は少し考えてしまう。
前世に知り合った、立花奏というキャラに似た境遇の少女の事を...。
「(そうそう都合良く同じ世界に転生とかしないだろう。...いや、この場合は都合悪く、か?死んでしまったという事になるからな。)」
おそらく、立花奏の能力を特典として願った転生者ってだけだろう。...キャラクターステータスで見ても転生者って事しか分からなかったしな。
「(第一、あの子はドナーの心臓が必要だったから、ドナー登録していた僕の心臓で生き永らえてるはずだしな。...いや、でも...。)」
なんかどんどん思考が暗い方向に行くから頭を振って強制的に思考を切り替える。
「どうしたの?お兄ちゃん。」
「いや、なんでもないよ。」
確信はないし、それに彼女の方は洗脳されている。前世の事云々よりも、洗脳を解く方を考えるべきだ。
「...ん...?」
「今度はどうしたの?」
ふと、司さんの方を見ると、織崎がなんか照れ臭そうにしていた。
「いや...まさか....。」
「もー、司さんの方を見て何を...。」
緋雪も司さんの方を見る。
待て待て。まだ決まった訳じゃないって言うか、そもそも照れ臭そうにしている時点でそう思うのは間違いな気がする。だけど、あの反応は....。
「まさか、織崎の奴...司さんの事を好いてる?」
「えっ?そんな訳....あれ...?」
緋雪も気づく。やっぱり本当に好いているのか?
「(司さんって、前世が男だったらしいから、恋愛感情が結構複雑だと思うんだよなぁ...。)」
少なくとも、そう簡単に男の事を好きになれるとは思えないんだけど。
「ま、これは司さんが決める事だからな。僕らには関係ないよ。」
「そうだね。」
すると、ちょうど会話が終わった所で司さんも戻ってくる。
「もう、あんなに聞いてくるんだったら、自分が助けに入ればよかったのに。」
「...何言われたんだ?」
どうせ碌な事じゃなさそうだけど。
「優輝君や緋雪ちゃんに魔法がバレただろうから、口外しないように伝えてだとか、無事だったかだとか。他にも色々だよ。」
「人任せにしてそれか...。」
第一、僕が巻き込まれた時点で魔法バレは確定なのに。...もう知ってたけどさ。
「まぁ、いいや。どの道、しばらくはリンカーコアの回復と魔力運用の向上に専念するし。」
後、恭也さんとの試合で身に付けれそうな技術とか。
「一応、口外しない事は伝えておくね。」
「任せるよ。....さて、と。」
「あれ?もう行くの?」
僕と緋雪が席を立つと、司さんがそう聞いてくる。
「まーね。もうここでやる事はないし。士郎さんに一声かけて帰るとするよ。」
「そっか。私はもう少しここにいるね。」
「じゃあ司さん、一緒に食事、楽しかったよ。」
緋雪が最後にそう言って、僕らは士郎さんに一声かけてから翠屋を後にした。
あ、ちゃんと士郎さんの奢りだったから出費はなかったよ。
...これから、どんどん魔法に関わるんだろうなぁ。あぁ、平穏が遠のいていく...。
後書き
今回はここまでです。次回はようやく魔法をメインにできます。(魔法を使うとは言っていない。)
踏み台転生者の名前を忘れてた人、結構いるんじゃないですかね?...作者自身も書いている時忘れてたので4話を見直してきました。(おい
緋雪のツェアシュテールング(破壊のドイツ語訳)は所謂フランの“きゅっとしてドカーン”です。一定以上の威力を出そうとすると無詠唱は無理です。
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