幸運E-のIS学園生活
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人生、諦めも肝心
夏休みに突入した今でも俺は寮で生活を送っている。偶に家に戻って掃除と洗濯程度はしているが基本的に寮に居る事のほうが多い。家にはもう誰も居ないし、っというか家だとクラスカードが襲撃しに来た時に対処しづらい。寮なら大急ぎでアリーナに移動すれば迎え撃つ事が出来る。こちらに居る方が利益が圧倒的に高い。………まあ、お陰で夏休みなのに遊びに行けないという事実があるんだがな。本日も貸切状態のアリーナで、一人精神統一という名の待ち伏せ待機中です。
「………」
「やはり、今日もアリーナでああしていたが………」
クラスカードの襲撃に備える為に毎日のようにアリーナに座り込み待機し続ける衛宮、本来衛宮も他の生徒のように夏休みという学生にとって大切な時間を友との時間に費やしたり恋人と過ごしたりしたいだろうにそれを押し殺しながら、戦いの為にそれを諦める。そんな衛宮の姿は、私には見るには辛かった。結局臨海学校では力について語られたが、命については語る事はなかった。その時が来たら姿を隠してひっそりと死ぬと言っていたな衛宮。
「………絶対に、そんなことはさせんぞ衛宮………!!お前はもう一人の弟のようなものだ!!」
えっくしょん!!うう………誰か俺の事噂してる………?って誰かはするよな、俺ってそういう存在だし………。まあ今は戦いに備えるだけだ、どうせまた管制室には千冬さん居るだろうし。何故か俺がアリーナに居る時、必ずと言っていいほどに千冬さんが管制室に居る事が多い。後片付けとか鍵締めとかの管理は使った本人である俺がやっているのに、やっぱり心配してくれてるのかなぁ………。そういえば結局、俺の寿命の事皆に話せなかったなぁ……はぁ、まあそれはクラスカードが片付いてからで良いか。
「………身体は、剣で出来ている。血潮は鉄で心は硝子。幾たびの戦場を越えてっ!!千冬さん、アリーナのシールドをONにして下さい!!クラスカードが来ます!!」
『っ!!解った!!』
さぁて、きやがれっ!!
空間を食い破るように、侵食するように突如闇が心の前に出現した。その闇の黒色が空間を墨を垂らした水のようにじわじわと空間を喰らっていく。空間を自らの糧にして出現したクラスカードは、その姿を現した。
「さあ、姿を見せろ!!」
怨念に穢れた声を耳で受け止めながら呪いを槍を操る槍兵へと姿を変えた心は闇に対する為に全身に力と魔力を込める。闇から伸びる影、咄嗟に後ろへと跳ぶとそこは燃え盛る炎で包まれていた。まだ完全に実体化していないというのに攻撃を仕掛けてきた、しかも地面が融解しかかっている。なんという威力の炎。しかし、それが単純な魔力によるものである事には気づいている心であるが、それが魔術ではない事とは気付かなかった。
「クカァァァァァァ………」
「っ!!」
地面に根を下ろした植物のように、現世に現れた亡霊は泥で出来た身体を少しずつ実体化させながらその姿を露わにした。黒き和装を纏いながら血が滴るその腕の先には鋭く尖った爪、口からは隠しきれていない欲を表現しているかのような牙が覗かせている。そして頭の上には何かの耳のような物が生え、何本もの尾を揺らしながら、魔力の塊である心に狙いをつけた。その姿を視認しながら心は考えていた、これはどの英霊なのかと。
「………魔術師である事には間違いは無い、だが一体何処の英雄だ?」
「………フフッ」
「笑ってやがっ!?」
刹那、本能的に防御姿勢をとった心を爆弾がさく裂したかのような常識では考えられない暴風が襲った。それは防御の壁を一撃で破壊しながら心の動きを止めた。敵は出現させた円状の武器を高速で回転させなが、心の懐に抉りこませるように叩き込んだ。
「ぐっ!!このぉおお!!」
痛みが走り痺れる身体に鞭を打ちながら槍を振るうが捉えたのは空のみ。既に射程圏外へと移動している敵を恨めしげに睨みながら強く歯軋りをする。だが心は落ち着いていた、ISを一時的な肉体としているクラスカードは、現界し続けるためにSEを消費し続けるということを心は掴んでいた。そこから、心は今とるべき戦術は持久戦であることを導き出した。
「行くぜっ、削ってやるぜ。お前の命!!」
「フフフッ」
―――可笑しい…可笑しい。疑惑の念で心の頭を埋め尽くされていた。。既に戦闘開始から1時間は経過している。それなのに、何故敵は普通に立っていられる?ライダーはここまで戦闘を長く続けられなかった。それは現界するためだけでなく攻撃にもSEを使ってしまっていたからだ。やつはキャスター、確かに貯蔵魔力はほかのクラスカードに比べ多く、魔力を用いない物理攻撃も用いているとはいっても、圧倒的に魔力を要する攻撃のほうが多いことを考えると、いくらなんでも貯蔵魔力の量が多すぎる!!
「てめぇ、本当に何処の英雄だ!?こんなにすげぇ魔術師は俺も知らねぇぞ!?」
「フフフッ」
「余裕こきやがって……」
優雅たれ、それ言葉が正に当てはまる貴婦人のように優雅にそして余裕の笑みを浮かべるキャスター。自分はまだまだ余裕がある、如何した私を倒すのではなかったのか?とでも言いたげな顔をしている。何か秘密があるのかと思考をめぐらせる、どれだけ名が高き魔術師でもここまで魔力を使った普通は倒れこむ。
「これで如何だっ!刺し穿つ死棘の槍!!」
遂に切り札を切った槍兵。あふれ出した赤い光は爛々と輝きながら、変則的で、鏡で反射させた光のように曲がりながらキャスターの心臓を穿った。確かな手応えに勝ったと微笑む心、だが
「フフフフッ」
「なっ!?」
キャスターは笑いを溢しながら現界し続けていた。余りの不気味さに距離を取る。距離をとったことにより槍が抜けたできた傷痕は、すぐさま塞がり、扇で口元を隠すように手で口を隠して笑うキャスターにある種の恐怖を感じる。
「(如何いう事だ………刺し穿つ死棘の槍を喰らいながら生きているだと?んな事出来るのか?原作の士郎だって凛に魔力で新しい心臓を……新しい心臓)?まさか!?」
そう、確かに心臓は破壊された。だがキャスターはすぐさま新規の心臓を魔力によって作り出し傷を塞いだのだ。水に何かを刺しても直ぐに塞がるように。だがそんな魔力が何処から…、これではまるで魔力を消費していないみたいではないか…魔力を…消費しない……?ここで心は先程まで打ち合っていたキャスターの武器に注目した。近接戦闘できるキャスターなど数えるほどしか居ない、そこから奴を割り出せると考えた。持久戦に必死になりすぎて真名を打破するのを忘れていた。
「あれは、武器っつうよりもまるで鏡だな………鏡ってまさか!?」
直感、っというそれは濃厚な確信だった。辻褄が合う、最後の一ピースがピッタリ嵌るかのような核心と恐怖が溢れ出してくる。
「まさか、ここはもう奴の宝具の中だったのか!?」
キャスターの真名を確信した心だがそれと同時に沸きあがったのは絶望感だった。
キャスターの真名は『玉藻の前』日本三大化生の一角。そしてその宝具は水天日光天照八野鎮石。国すら覆う規模の対界宝具、そして既に奴はその宝具を展開していた。嘗て無い絶望を、心を襲う。
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