IS~夢を追い求める者~
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第1章:修正の始まり
第6話「真実」
前書き
ちょっと無理矢理な展開になりますが、どうか見逃してください。
=遼side=
「さー君、おっまたせー!」
「つ、疲れました...。」
「い、いきなり移動させられるとは...。」
束たちがここにやってきた。
「やっとか.....。」
「あれ?さー君疲れてる?」
「春華さんが落ち着きない...。」
事あるごとに秋十君に抱き着くからな。それを抑えるのに苦労する。
「あら、束ちゃん。しばらく会わない内に立派になって...。特にこの辺りが...♪」
「っ....!もぅ!やめてよ!」
春華さんが束に気付くと、そんな事を言いながら胸の辺りを示す。
「...あの束さんが、恥ずかしがってる...?」
「束の奴、昔から春華さんが苦手気味だったからな...。」
それは今も変わらない...と。
「...私としては、総帥とあなた達が知り合いって事に驚いてるのだけれど。」
「あれ?知らなかったのか?」
スコール・ミューゼルが俺にそう言ってくる。
二人を見知ってるならそれぐらい分かってもおかしくはないはずだけど...。
「総帥を見たのは、数えるほどだけよ。しかも、名前も知らされていないわ。」
「あー、そう言う事。」
...あれ?さっきまでの取引的な雰囲気はどこいったっけ?...ま、いっか。
「あら?あらあらあら?」
「えっ...?」
「あ、あの...?」
束の後ろに控えていたクロエとユーリちゃんに春華さんが近寄る。
「あらあら~?何かしらこの子達。すっごく可愛いのだけど!?」
「落ち着いてください!<スパァン!>」
いい加減落ち着かせようと、はたく。春華さんの事だから効いてなさそうだけど。
「いっつ~...!さすがに力があるわね...。」
「春華、そこまでにしておくように。...ところで俺も気になるのだが、どういうことだい?」
四季さんも春華さんを諭しながら聞いてくる。
「くーちゃんは私が、ゆーちゃんはさー君が拾ってきたよ!」
「保護したの間違いな。」
後、名前が愛称だと分からん。
「...なるほど。」
「大体わかったわ。」
「ちなみに名前はクロエ・クロニクルとユーリ・エーベルヴァインですからね。」
事情は大体察したらしいので、名前だけはちゃんと教えておく。
「あなた達が実験体だった子と、家に捨てられた子だったのね?」
「「えっ....?」」
春華さんがそう二人に言い、二人は困惑の声をあげる。...ちょっと待て。
「春華さん、もしかして二人の事知ってたんですか?」
「これでも組織の総帥よ~?これぐらいは知ってるわ。」
...それだけであっさり分かるもんか?亡国機業、侮れないな。
「そういえば、君達は結局、どうしてここへ?」
「...あ、そうだった。えっと―――」
軽く二人にも説明する。
「―――という訳です。」
「なるほど...。よし、協力しよう。」
さすがに立場があるから早々協力してくれるわけ....えっ?
「...即決ですね。」
「そろそろ本格的に動こうと思ってた所でね。」
「二人が協力してるなら私達亡国機業穏便派も協力するわぁ。」
...理由が軽い...。まぁ、この二人には何を言っても無駄だな。
「そんな簡単に決めてよろしいのですか?」
「いいよいいよ。この俺たちがいなかったらこの二人も警戒してただろうけど、俺たちがいるからには互いに心を許せるようになるだろう。」
「...あながち否定する所がないのが悔しいな。」
二人共、俺と束とは違ったベクトルのチートですからね。
「洗脳された千冬たちを解放するのにも、桜君の力が不可欠だからね。」
「...洗脳の事、知ってたんですか。」
もう、驚かん。
「自分達の子供の事なんだから、知ってるわよぉ。」
「...さすがに、こうやってマドカを亡国機業に連れてきても解除はできなかったけどね。」
...まぁ、科学的な洗脳じゃなくて、オカルト的な洗脳だからな。
「あ、でもさー君なら洗脳を解除できるんじゃないかな?私の時もそうだったし。」
「なに?それは本当かい?」
あっさり暴露する束の言葉に、俺に詰め寄る四季さん。
「....できますが、条件があります。」
「それは....?」
「....洗脳された人物が、洗脳される前の印象に残っている出来事を思い出す事です。」
厳密には、思い出すというより切っ掛けにするんだけどな。
「なるほど...。」
「...秋十、マドカの強く印象に残ってそうな思い出とか分からない?」
「え、えっと....。」
未だ親だと実感が湧かないのか、戸惑いつつもマドカちゃんについて思い出そうとする。
「....分かりません...ただ、仲良くしていただけしか...。」
「...私みたいに、キーワードとかがないと難しいかな...?」
秋十君の答えに、束もそう言い、諦めムードになる。
「......秋十君、仲良くしていた時に具体的に何をしていたか覚えてるか?」
「何を...?...えっと...ゲームしたり、一緒にテレビを見たり...。」
思い出しながら呟いていく秋十君。
「...偶に、膝枕とかしてたっけ。...懐かしいな...。」
「「「「っ、それだ!!」」」」
最後に言った言葉に、俺・束・四季さん・春華さんが一斉に反応する。
「それだよあっ君!」
「さぁ、今すぐマドカに膝枕をしてあげなさい!」
「えっ?ええっ!?」
捲くし立てるように言う束と春華さんに秋十君はタジタジになる。
「秋十君、膝枕がおそらくキーになると思う。」
「そ、そうですか...?」
「ああ!俺の勘がそう言ってる!」
四季さんも便乗してそう言う。
「仲良くしていて、偶に膝枕をする仲だったんだろう?秋十君、君が膝枕をしている時、彼女はどんな顔をしていた?」
「えっと....安らかって言うか....顔が緩んだみたいな感じでした。」
...うん。表現がおかしいけど大体わかった。
「つまり、彼女は膝枕で安らいでいたと思う。だから、膝枕をするんだ。」
「なんでそうなるんですか!?」
「いや、だって他に印象に残りそうな思い出とかないんでしょ?」
「うっ...そうですけど...。」
...あー、もしかして人前だからあまりやりたくないのか?
「...よし、秋十君以外外に出よう。」
「...なるほどね。さぁ、出るわよ。」
俺の考えをあっさり汲み取った春華さんが皆にそう指示する。
「えっ?あの、桜さん?」
「じゃあ、二人っきりにしといてあげるからごゆっくり~。」
「えええええええっ!!?」
驚く秋十君を余所に俺たちは一旦部屋の外へ出た。
「(...後は伸るか反るか...だな。)」
それまでゆっくり待つか。
=マドカside=
―――....心地の良い、感覚がした。
「(...懐かしい....?)」
覚えのない。そのはずなのに、妙に心地が良かった。
「(..ここ...は....?)」
ふわふわ。ふわふわと。まるで水の中を漂っているような空間。
「(....夢....?)」
こんな空間、ありえるはずがない。ISとかがあってもこんな空間は創りだせないはずだからだ。
「(...そうだ。私は....。)」
さっきまで、何をしていたのか思い出した。
「(なんで...なんで、私は負けたの?)」
あんな出来損ないの兄に、どうして負けた?
―――...出来...損ない...?
「(...本当に、そうなの?)」
自分で思って自分で違和感を持った。本心から、そう思っていたのか?
「(違う...何かが、違う...!)」
否定するように考えを巡らすと、ふと記憶が蘇ってくる。
―――「秋兄ー!」
―――「マドカ、どうしたんだ?」
―――「えへへー。呼んでみただけー!」
「(...これ...は....!?)」
秋兄と、仲良くしている私の記憶。まだ小学生になった頃の、私が知らない記憶だった。
「(知らない...!知らない...!あんな、出来損ないと、仲良くしてるなんて...!)」
―――本当に?
「(あいつは、私が教育してやらないと、ダメな出来損ないなんだ!)」
―――本当に、そうなの?
囁くような“私”の声と、私の叫びが響き渡る。
「(私が、私があんな奴にあんなやつに...!)」
―――...思いだしなよ...。
「(嫌だ..!嫌だ嫌だいやだいやだいやダいヤだイヤダイヤダイヤダイヤダ...!!)」
―――.......。
壊れたように否定し続ける私に、“私”は黙り、溜め息を吐く。。
―――...しょうがないなぁ...。
「(イヤダイヤダイヤダ...!いやd......ふえっ....?)」
途端に、最初の心地いい感覚に包まれる。
―――ほら、懐かしいでしょ?
「(あ.....。)」
懐かしい感覚と共に、記憶が思い出されていく。
秋兄と共に遊んだ記憶。仲良くしていた記憶。出来損ないと呼んだ時、実は心が痛んでいた事。それらが思い出されていく...。
「(...そうだ...私...は.....。)」
―――やっと、思い出したんだね...。
「(...っぐ...ぁああああああああ!!?)」
思い出したのも束の間、突然私は激しい頭痛に見舞われる。
―――記憶の強制改竄による妨害!?くっ...頑張って...!
「(あ...ぁあ...ああぁ....――――)」
―――あなたは私で、私はあなた。これさえ乗り越えれば、きっと....。
その声が薄れて行くと同時に、私の意識も薄れて行った...。
=桜side=
―――あああああああああ!!!?
「マドカ!?」
突然、部屋の中から聞こえてくる悲鳴に、四季さんが反応する。
「...俺が行きます!」
「っ...任せたよ、桜君!」
もしかしたら束のように洗脳に抵抗しているかもしれない。だから俺が先行した。
「<ガチャッ!>秋十君!無事か!?」
「さ、桜さん!マドカが...マドカが!」
部屋の中では、壁際で秋十君が驚愕した様子で尻餅をついており、マドカちゃんは頭を押さえながらのた打ち回るように苦しんでいた。
「任せろ!」
束の洗脳を解いた時の感覚は一応覚えている。...確か....。
「こう!....だったはず。」
「桜さん!!?」
お、覚えてると言ってもあの時も感覚だけでやったし...。
―――カッ!
「ほ、ほら...。」
「...これからは曖昧な感じでやらないでください。」
....反省してます...。いや、でも使い方知らないし...。
「...と言うか、これだけでいいんですか?」
「...束の時も同じだったさ。洗脳に抵抗もしていたみたいだし、後は目を覚ますのを待つだけだな。」
そういえば、地味にこの能力の使い方は知らないんだよな。
「....う....ん....?」
しばらくして、マドカちゃんが目覚める。
「こ..こは....?」
「マドカ...目が覚めた?」
再度膝枕をしていた秋十君がマドカちゃんを心配してそう言う。
「あっ、秋兄!?」
膝枕された体勢から驚きの声を上げるマドカちゃん。...この様子だと洗脳はちゃんと解けたか?
「わ、わたっ、私....!.....はふぅ....。」
「....洗脳は、解けたんだな...。」
慌てたように声を上げた直後、気の抜けた声を上げるマドカちゃんに、秋十君も洗脳は解けたのだと安堵の息を漏らす。
「っ....!」
“洗脳”という言葉に反応して、マドカちゃんは飛び起きる。
「マドカ?」
「ごめんなさい....ごめんなさい...!」
突然、秋十君に謝りだす。...そうか、洗脳されてる時の記憶もあるんだったな...。
「私...私、秋兄に今までなんてことを...!」
「マドカ....。」
泣きじゃくるようにそう言うマドカちゃんに、困った顔をする秋十君。
「ごめんなさい...ごめんなさい....ごめんnふえっ....?」
「.....。」
懺悔するように謝り続けるマドカちゃんと秋十君は抱きしめる。
「...いいんだ。俺は、マドカが戻ってきてくれただけで、いいんだよ...。」
「秋....兄....?」
優しく諭してあげる秋十君に、マドカちゃんは若干戸惑っているようだ。
「ぁ....。」
「....お帰り、マドカ。」
「....うん...ただいま...!」
家族の一人がやっと戻ってきた。それが嬉しいのだろう。秋十君は涙を流してそう言った。マドカちゃんも、その想いが分かったのか、同じように涙を流しながら返事を返した。
「(...いい雰囲気なんだが...。)」
俺、蚊帳の外だしな...。
「(それに...。)」
部屋のドアを開ける。
「うん、うん...感動的だ...!」
「良かったわ...!」
そこには、二人の両親が涙を流しながらそう言っていた。
「(...事情の説明がてら、この人達も何とかしないとな...。)」
ふと束の方を見ると、同じような事を考えていたのか、苦笑いをしていた。
「(...ま、嫌な気はしないけどな。)」
そんな事を考えつつ、俺は秋十君達の方へと歩いて行った。
後書き
この小説では束が大人しめな代わりに、オリキャラの春華さんがはっちゃけてます。
原作の束らしさは春華が吸収してる可能性が微レ存...?
後半のマドカ視点は所謂精神世界での本当の自分との問答です。原作にも精神世界(?)が出てくるし、別におかしくないよね。(白目)
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