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真田十勇士

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巻ノ十六 千利休その五

「必ず、ただ」
「ただといいますと」
「幸村殿の道は険しいですな」
「険しいでござるか」
「はい、様々な難の相も出ています」
 やはり幸村の顔を見て言う、そのうえでの言葉だ。
「女難はありませんが」
「他の様々な難の相がですか」
「出ています」
「そうですか」
「驚かれませんか」
「天下一の武士になるということは途方もない夢」
 自分の夢がどれだけのものかもだ、幸村はわかっている。だからこそ利休にそう言われても驚かないのだ。
 それでだ、利休にこう答えたのである。
「それならば」
「どれだけの難が来ようともですか」
「跳ね除けてです」
 そしてというのだ。
「必ず天下一の武士になりましょうぞ、そして」
「そしてとは」
「拙者は一人ではありませぬ」
 ここで幸村は微笑んで言った。
 そしてだった、十人の家臣達に顔を向けてそのうえで答えたのだった。
「この者達が共にいます」
「ご家臣の方々が」
「家臣であり義兄弟であり友である」
「そうした方々ですか」
「十人、常にいてくれております」
「だからですか」
「どの様な難も難とは思いませぬ」
 全く、とだ。幸村は利休に答えた。
「全て乗り越えます」
「そう言われますか」
「はい」
「では家臣の方々の難も」
「無論です、我等は生きる時も死ぬ時も共にと誓った仲」
 家臣達のこともだ、幸村は答えた。
「それならばです」
「家臣の方々の難の時もですか」
「共に乗り越えます」
「左様、我等はまだ会って短いですが」
 猿飛が利休に確かな笑みと声で答えた。
「その絆は確か、まさに生きるも死ぬも共です」
「では」
「一人の難は我等全員の難でござる」
「皆様で、ですか」
「乗り越えます」
「左様、我等生きるも死ぬも同じ」
「そのことを誓い合った仲」
 猿飛以外の者達も言った。
「共にどの様な難儀も越え」
「殿と共にあります」
「そうですか、見れば貴方達も」  
 利休は十人の家臣達それぞれの顔も見た、そのうえで彼等にも言った。
「非常によい相をしておられる」
「我等もですか」
「顔の相がよいと」
「そう言われますか」
「はい、どの方も天下の豪傑であられ」
 そしてというのだ。
「絶対の忠義をお持ちですな」
「少なくとも何があろうと殿と共にあります」
「地獄の果てまで行きます」
「そして地獄で鬼達を相手に思う存分暴れます」
「そうしてみせます」
「確かに貴方達なら」
 利休は十人をさらに見つつ言った。 
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