ホウエン地方LOVEな俺がゲームの中に吸い込まれちゃった
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
初バトルは驚きと共に
「えぇぇぇえええええ!?!?」
チャンピオン!?俺が!?
「な、何故本人が一番驚いてるんですか……」
いやこの特徴的な服装にユウキなんて名前言ったもんだから正直そんな予想もあったし、ポケットモンスターシリーズという括りで一纏めの世界なら間違われるのも無理はないかなぁとは思っていたけど。
……チャンピオンってことにしといた方が都合がいいかもしれない。
「い、……いやぁ。こんなところにまで俺の名前を知っている人が居るとは思わなくってさ」
「そうか! 私も何処かで聞いたことあると思ったら……ホウエン地方のチャンピオンだったのね!」
「……ま、まあね」
罪悪感がががが。心臓バクバクですよ。
「そうと決まれば……」
「「バトルしてください!」」
「ん?」
「え?」
「「……私(僕)が先だ!」」
セレナとお隣さん。……お前ら息合いすぎだろ。
「まあなんでもいいけどさ。ーー俺、ポケモン持ってないよ」
「え?何言ってるの、腰にモンスターボール下げてるじゃない」
……なぬ。
おおっと、気づいてなかった。これは……俺のポケモン? まじかよ!
つまりバトルが出来るのか。
ほう。
「うおおぉ! やろうバトル! 決めんのもめんどいから二人同時にかかってこい!」
「さすがチャンピオンね」
「でも……」
「「二対一で負けるほど甘くないぞ!」」
いいね、このポケモンアニメみたいの流れ。そうこなくっちゃ。
***
俺とセレナとお隣さんのカルムくん。ジムの前でいざ戦おうとなった時に現れたヒヨクジムのトレーナーに案内され、何故か貸してもらえたジムのバトル場で向き合っていた。
「いやー、すいませんねフクジさん。わざわざジムをお借りしちゃって」
「いいんですよ。間近でチャンピオンの戦いを見る機会なんぞ滅多にありませんから」
そう言うと、朗らかな笑みを浮かべた優しいおじいちゃんもといヒヨクジム・ジムリーダーのフクジさんは快く許可してくれた。
「さぁて、セレナとカルム。早速バトルと行こう」
「望むところだ!」
「ちょっとお隣さん?せいぜい私の足を引っ張らないようにして下さいね」
「何を!」
おいおい、またケンカ始めたぞ。……いや、もうなんだ。お前ら仲良いなおい。
「夫婦漫才かな……」
「なに?」
「いやなんでもないです」
セレナさんこわいです。
「じゃ、じゃあルール説明をば。……俺の使うポケモンは一体。その一体を倒せばお前らの勝ち、逆に俺はお前らの手持ち全てを戦闘不能にすれば勝ち。簡単だろ?」
「チャンピオンといえど流石に一体で勝ち抜こうなんて……その余裕へし折ってやる!セレナ!」
「そうね、今回ばかりは協力しましょうかカルム」
準備が整ったことを確認して、俺は腰からモンスターボールを引き抜き投げた。恐らくフクジさんが広めたのであろうチャンピオンの噂にこのバトル場の周りは沢山の人が押しかけている。ここでヒンバスでも出れば笑い者だっただろうけど、俺の予想が正しければ中身は……。
「シャァァモ!!」
「うおおおお!バシャーモ!!!俺の最初のポケモン!!俺の相棒!!!!」
落ち着け俺。
……やっぱりバシャーモだった。これで俺の予想はほぼ確信にかわる。チラッと他のボールの中身も見るとやはり予測通りのメンバーだった。
そう。俺がエメラルドで常に行動を共にしていたレギュラーメンバー。彼らがそこにいた。
そしてこのことは俺の立場を決定付ける。
つまり、俺は本物のホウエン地方チャンピオンとしてこの世界に君臨しているということだ。
勿論他に『ユウキ』というチャンピオンがいてもおかしくはない。
推論はこうだ。
俺はバシャーモのぬいぐるみに押し倒されXの起動中だった3DSに吸い込まれた。……と仮定する。何も俺だって信じてる訳じゃない。
その次。てっきり夢だと思っていたが、アブソルの背に乗せられる前。俺は声を聞いていた。
『まず始めに君の名前を聞かせてくれないか?』と。
確か俺はそこで《ユウキ》と答えたのだ。ユウキはエメラルド、ルビー、サファイアの男主人公のデフォルト名。俺はいつだってその名前を使用してポケモンをやっていた。
ここの地方が何処だか分からない(X起動中だったためXの世界の可能性が高い)が、トロバくんがユウキを知っていたことからこの世界は確かにホウエンと繋がっている。
そして極め付けは、直前に掴んだゲームボーイアドバンス。
良く確認していなかったが、前に遊んだ時ソフトを入れ替えた覚えはない。おそらく入っていたソフトは『ポケットモンスターエメラルド』。
ユウキという名前と、掴んだゲームソフト。その二つが合わさってなんらかの作用をしたとするならば、
チャンピオン『ユウキ』は何か目的があってこの地方にきたという設定になっているのではと。
突拍子もない発想だがなぜだか俺は納得出来た。
さて、そんな思考の渦に俺がハマっているとセレナとカルムがそれぞれポケモンを繰り出してきた。
「いけっニャオニクス!」
「頼んだルチャブル!」
「ニャオニー!」
「ルチャーーブル!」
……?
ニャオニクス? ルチャブル?
おいおいまさか。これでも全国図鑑丸暗記してるんだぞ。その俺が知らないってことはコレ!
ーー新ポケじゃねえか!!!
「くっ、まさかそう来るとは思ってなかったぜ」
でもいよいよここがXの中って可能性が濃厚になってきた。俺がまだ把握してねえポケモンなんて新作以外あり得ない。
「こっちから行くわよ!ニャオニクス、ねこだまし!」
「ルチャブル!つるぎのまい!」
おいこら待ちやがれ。まだこっちは準備中だぞ。
「……バシャーモ、まもる」
取り敢えずニャオニクスのねこだましを防ぐ。しかしその間ルチャブルにつるぎのまいされた。やっべ、翼あるからどうせ飛行だろ。しかも絶対確一技持ってるよな。
しかしパッと見た感じバトルルールで判明したことがある。
一つは完全リアルタイム。まあこれでターン制だったらどうしようかとも思ってたが、ゲームというよりアニメ準拠に近い感じだ。
次に二体一という変則バトルも可能ということ。リアルタイム変則ルールありということはきっとこの世界で『バトル』は基本自由なんだろう。公式戦の伝説、幻禁止もないかもしれない。
もう一つは技の制限がないこと。それはバシャーモに命じた『まもる』から分かったことだ。要するに技を覚えられる限度『四つ』の制限がない。まもるなんてバシャーモが覚えてもほぼ意味のない技を俺が覚えさせる訳ないからな。
「ニャオニクス!てだすけ」
「ルチャブル、ゴットバード!」
「うお!いきなり飛行最強来んのか!」
手助け1.5倍、剣舞攻撃二段上昇。更にパワフルハーブでも持っていたのか即発動したゴットバード。なんというか地上最強にオーバーキルな状態だった。
「いや……いけるか。バシャーモ、つるぎのまい」
「う、受け切る気!?」
「俺のバシャーモなら耐えられる」
パワフルハーブを使い1ターンでゴットバードを使ってきたルチャブルは、技の影響か特性でもあったのか超スピードで急速接近し、バシャーモに突撃した。
……馬鹿め!
「ルチャブルにブレイズキック」
「な、何故耐えられるんだ!」
「待って、バシャーモが持ってるの……あれって『きあいのたすき』!!」
そうそう。バシャーモは紙耐久だからね。普通効果抜群で二倍のゴットバードなんか耐えられる訳がない。
ただ、ゴットバードで大きな隙の出来たルチャブルはたまったものではない。案の定ブレイズキックはルチャブルに直撃。完全にHPはなくなっただろう。
「はいはい続けてーとびひざげり」
「くっ、よ、よけて!」
……そんなアニメパターンありなんですか!? いやさっき自分でアニメに近いって言ったんだった。
なんにせよ危なげなくとびひざげりは当たった。かわされたら終わるとこだったぞ。
「だ、大丈夫。格闘タイプならきっと……耐えられる!はず!」
そこで一つ気づいた。バシャーモがさっきのルチャブル以上に速い。なんだあれ、高速移動なんて使ってねえぞ。
そしてセレナはどうして耐えられると思ったのだろうか。そいつ絶対ノーマルだろ。効果抜群で攻撃の上昇したバシャーモのとびひざげりだぞ。
やはり、ニャオニクスは倒れた。そりゃそうだ。
「バシャーモ、今の内にこうそくいどう」
ターン制じゃないなら交代する間に技を積んでおくことも出来る。
……まあこっからの展開は大体予想つくだろう。つるぎのまいとこうそくいどうを積んだってことは、もう一方的な虐殺だった。先制技も持ってる奴が手持ちにいなかったらしく、全てブレイズキックで済んでしまった。
更にこの世界にも《レベル》は存在するようだ。
つまり、セレナとカルムはゲームでいうバシャーモを相手に戦っていた……ということになる。
だからおそらく特性だろうルチャブルの超スピードをバシャーモはあっさりと抜いたのだ。まあレベル差がとんでもなかったということだな。
ページ上へ戻る