魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第1章:平穏にさよなら
第7話「契約と加護の力」
前書き
今の所一切目立ってなかった織崎神夜の魅了...。今回もあまり目立たなさそう(´・ω・`)
設定はちゃんと出ますが。
...タイトルが合わないかもしれません。
=優輝side=
「...着きました。」
メイドさんがそう言い、金持ちが住むような大きな家...月村邸に着く。
「すご.....。」
「家と大違いだな...。」
僕と緋雪はその家の大きさに驚く。...いや、これホントに家?
「こちらです。ついてきてください。」
「あ、はい。」
メイドさんに連れられ、僕達は客間っぽい大き目の部屋に案内される。
「....さて、なにから話せばいいかしら...。」
それぞれが席に着くと、月村忍さんがそう切り出す。
「まずは自己紹介をしておくべきじゃないか?彼ら二人は俺たちを知らないかもしれないしな。」
「それもそうね。」
“二人”って言うのは僕らの事だろう。あまり接点もなかったし。
「じゃあ私からね。私は月村忍。すずかの姉よ。よろしくね?」
「俺は高町恭也だ。あっちにいたもう一人は俺の父さんで高町士郎と言う。すずかちゃんの友人の兄でもあるな。」
二人が自己紹介する。
「僕は志導優輝です。こっちは...。」
「妹の緋雪です。月村さんやバニングスさんとはクラスメイトです。」
こっちも自己紹介する。これで話が進められるだろう。
「まずは今回の誘拐の経緯を知りたいのだけれど...。誰か詳しく分かるかしら?」
「私達は少ししてから辿り着いたのでそれ以降なら...。」
聖奈さんがそう言う。確かに、僕もそれ以前の状況は知らないし、緋雪がどうしてああなったかの原因も分からない。
「...じゃあ、私が説明します。」
「緋雪?...大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。もう、完全に落ち着いたから。」
多分、一番何がどうなってたか分かる緋雪が説明を打って出る。あの正気を失った事とかも説明するのかと心配したが、大丈夫そうなので、任せる事にする。
「...誘拐されたのは私が月村さんの忘れ物を届けに行った時です。多分、偶然でしょうけどちょうど私と月村さんとバニングスさんが三人でいたところを誘拐されました。」
聞けば、誘拐の目的は夜の一族である月村さんを正義の名の下に断罪とか言う訳のわからない偽善だったらしい。...いや、なんだそりゃ?
「それで、よく..分からなかったんですけど、何かの感情が湧いてきて...気が付いたら、私は狂っていたというか...そんな感じになってました。そして、気が付くと私はお兄ちゃんに取り押さえられた状態になってました。」
その後は僕も知ってる通りの展開だ。そこからは僕や聖奈さんも説明に混じり、それが一通り終わり、二人の反応を待つ。
「...貴方達、魔法が使えたの?」
「使えたと言うか...使えるようになったと言うか...。」
〈お二人共、今まで魔法の“ま”の字も使ってませんでいたよ。デバイスである私が証明します。私たちがお二人に出会ったのは今日が初めてですから。〉
リヒトが代わりに答えてくれる。
「....少々...いや、かなり気にするべき所があるが...まずは...。」
「夜の一族についてね...。すずか、大丈夫かしら?」
「う、うん。大丈夫...。」
話にも出てきた“夜の一族”。どうやら、吸血鬼の一種らしい。...緋雪も吸血鬼になれるけどそれはどうなるんだろうか?
「貴方達は夜の一族について何か聞かされたかしら?」
「...特には。」
「じゃあ一応一通り説明しておくわね。」
どうやら吸血鬼だという事ぐらいしか聞かされていないらしい。と言う訳で、忍さんが簡単に説明してくれた。
「まんま吸血鬼と言うかなんというか...。」
「あまり驚かないのね...。」
そりゃあまぁ、妹が吸血鬼ですし。
「あ、でも弱点がないってのは羨ましいなぁ。あるとしても血を吸わなきゃ長生きできないって所だけだし。」
「今はそう言う話じゃないよ志導君...。」
聖奈さんに言われて自粛する。いけないいけない。
「んん゛...。まぁ、そうして特に何とも思わないのはこちらとしても嬉しいわ。」
「私達は魔法も使ってますからね...。探せば同じような種族とかいそうですし...。」
聖奈さんがそう言う。...あー、確かにいてもおかしくないかな。ファンタジーだし。
「それはそれとして、夜の一族の事を知った場合、私達と契約をしなければいけないの。」
「契約...ですか?」
「そうよ。ちなみに私と恭也とで既に結んでいたりするわ。」
とりあえず契約内容を聞いてみれば、ずっと裏切らずにいるか、夜の一族と言う事を忘れるかという至極簡単なものだった。...実際はもっと複雑だけどさ。
「てっきりこういうのって“永遠を共にする”的な感じな奴だと思ったんだけどなぁ...。」
「お兄ちゃん...なんか変なマンガでも読んだ?私もそう思ったけどさ...。」
ほら、吸血鬼で契約ってなんかそんなイメージあるし。
「あー...一応、そんな感じの意味もあるわね。伴侶とかそっちの意味で。」
「は、伴侶って...婚約者ですか!?」
バニングスさんが反応する。...女の子だからそういうのに興味あるのか?
「ええ。...あ、でも二人は好きな子がもういたわね。確か、織崎神夜君だっけ?」
「え、あ、は....あれ?」
バニングスさんが忍さんの言葉を肯定しようとして詰まらせる。...なんだ?
「あら?違ったかしら?」
「あ、あれ...?確かにアイツの事は好き...だったはず...。」
「なにか違和感が...。」
二人の様子が少しおかしい...。まさか...。
アリサ・バニングス
状態:正常、導きの加護▼
概要(一部)▲
つい最近まで魅了をされていたが、導きの加護を
授かった事で魅了が解除された模様。
...やっぱり洗脳が解けていた。月村さんの方も見たけど同じだった。
“導きの加護”とやらが気になるので詳細も見てみる。
導きの加護▲
人を正しき道へと導くための加護。この加護を受けた
際、洗脳などの精神異常が解除され、精神が崩壊する
事も防がれる。時間経過で解除される。
...これのおかげか。しかしいつの間に?
「どうしたのお兄ちゃん?」
「いや、別に...。」
緋雪が“視てた”事に勘付いたのか聞いてきたのではぐらかしておく。
〈お二人共、もしかして洗脳か何かに掛かっていたのでは?だとすれば、その違和感にも納得がいきます。〉
リヒトが突然そう言いだす。
「何か知ってるのか?」
〈はい。もし、その月村すずか様が言われた“違和感”が洗脳によるものだとすれば、マスターがさっき使ったあの魔法の暴発で偶々お二人にも効果が出たのだと思います。ですから、洗脳が解除され、今のように違和感を感じるのです。〉
あの魔法にそんな効果が?いや、緋雪を正気に戻した魔法だからそんな効果があってもおかしくないか。
「...ちょっと、待て。今、暴発って言ったよな?」
〈はい。マスターは初めて魔法を使ったのであのような大魔法をしっかり成功させる事は出来ていませんでした。ちなみに本来ならもっと強力な効果が出ますし、倉庫内を光で包むほどの光の量はありません。今回は暴発でも何とかなりましたけど、これからはしっかりと制御できるようにしてくださいね?〉
「あ、はい。」
今回は回復系の魔法だったから大丈夫だったのか...危ない危ない。
「洗...脳....?」
「なんで、そんな事が...。」
バニングスさんと月村さんが顔を青ざめさせながらそう言う。
〈何か以前と変わった事は?そこから洗脳を施した人物を推測してみましょう。〉
「...その必要はないよ。リヒト。」
面倒な手間をしようとするリヒトを止める。...怪しまれるだろうけど、言っておこう。
「洗脳...と言うか、魅了を使った人物は分かってる。」
「誰なの!?」
忍さんが詰め寄ってくる。まぁ、妹を洗脳した奴だからな気になるのだろう。
「織崎神夜...好いていた相手本人が魅了を使っていたんです。」
「嘘...神夜が...?」
信じられない顔をするバニングスさんと月村さん。
「信じられないのも分かるけど...多分、緋雪と聖奈さんもそう思ってるんじゃないかな?」
「そうなのかい?」
恭也さんが二人に聞く。
「...はい。彼が魅了を使っていた事は知っていました。...それと、彼と仲良くしている人たち全員が魅了されていた事も。」
「私も知っていました。クラスの女子皆が魅了されていましたから...。」
聖奈さん、緋雪とそれぞれが答える。
「二人には魅了とやらが効かなかったのかしら?」
「えっと、それは...。」
忍さんの質問に口籠る緋雪。...まぁ、神様特典とか意味わからんよな。
「そういう体質なんでしょう。二人とも。」
「...それにしても、どうして優輝君はそれが分かってたんだい?」
恭也さんが僕にそう聞いてくる。まぁ尤もな意見だよね。
「...これを見てくれませんか?」
目の前にパネル型のステータスを表示させる。
「これは....?」
志導優輝
種族:人間 性別:男性 年齢:10歳
ステータス▲
Level:5 種族レベル:50
体力:200 魔力:500 筋力:100 耐久:110
敏捷:120 知力:60 運:20
「僕の持つ能力...ですかね。」
僕のステータスを皆に見せるように表示する。
「ステータス?まるでゲームみたいね...。」
「まぁ、そんな感じにわかりやすくした奴ですね。他にも、こういう風に表示したりとか。」
技能:護身術、棒術、合気道、柔術、etc.
今度は僕が扱える技能を表示する。...多いから省かれとる...。
「これは他人のステータスも視れるので、それで彼を怪しんで使った結果が...これです。」
織崎神夜
無意識の魅了▲
異性を自覚しない内に魅了し、虜にする能力。
目を合わせる、会話をするなどのコミュニケーションを
取らずとも発動する。かなり無差別。
能力を持つ本人も自覚せず、魅了された者は対象に妄信
的になる節がある。一種の洗脳でもある。
他にも、魔法の資質が高い程、魅了の効果は高くなる。
逆を言えば、一般人なら比較的効果が薄い。
相応の耐性がないとこの魅了は防げない。
ただし、既に想い人がいる場合は無効化される。
解除するためには強力な洗脳などを解除する力が必要。
「何よ、この能力...。」
表示された文章を読み、そう呟くバニングスさん。
「あたし達は!今まで騙されていたって言うの!?」
「ひどい...ひどいよ、こんなの....!」
机を叩き付けるように激昂するバニングスさんと、手で顔を覆い、泣きじゃくる月村さん。...どちらも、ショックが大きかったのだろう。
「...まさか、なのはもか?」
「...はい、なのはちゃんも、魅了されています。」
恭也さんの呟いた疑問に、聖奈さんが答える。
「...どうして...。」
「...?」
忍さんが俯いたままそう呟く。...なんだ?
「どうして!それを知ってて放置してたの!?こんなの、見過ごせるような物じゃないわよ!?」
「そうよ!分かってたんなら、助けてくれてもよかったじゃない...!」
忍さんの悲痛な叫びに、バニングスさんも便乗する。
「...できなかったんだ!!」
「っ....。」
確かに、尤もな言葉だ。でも、僕だって万能じゃない。
「確かに、早い時期に魅了の件については知ったよ。だけど、僕には何もできなかったんだ!ただどういう状態になってるかだけ分かって、何もする事ができずに、いつ、緋雪が同じ目に遭ってしまうか怖くて...怯えるだけしか、できなかった...。」
平常に振る舞ってはいた。緋雪のステータスから洗脳されないだろう事も分かってた。だけど、周りの女性がどんどん魅了されていくのが耐えられなかった。いつか、緋雪の洗脳耐性を超えた魅了をしてくるんじゃないかって...。
「...志導君は、悪くないよ...。」
「聖奈さん...?」
「私なんか...私の方が...!」
今までの優しい雰囲気は引っ込み、悲痛な雰囲気を見せる聖奈さんに、皆が注目する。
「...魔法と関わった時から、私は皆が魅了されている事に薄々感づいていたの。だけど、皆が魅了されていくのを、私は見ているだけしかできなかった!フェイトちゃんとアリシアちゃんと、八神家の人たちは助けられたはずなのに!私は...私は、何もしてあげられなかった...!」
〈マスター...。〉
...そうか、聖奈さんも、自分だけが無事で周りが魅了されていくのに助けられなかったのが苦痛だったのか...。
「...二人共、ごめんなさい...。失言だったわ...。」
「...ごめん...。」
忍さんとバニングスさんが謝ってくる。
「...大丈夫、もう魅了を解く事ができるようになったからさ。」
〈...お言葉ですがマスター。そうはいきません。〉
「えっ?なんで?」
僕が言った言葉をリヒトに否定される。
〈今回、あの魔法が使えたのは今まで体内に溜まっていた余剰魔力と、あの場に溜まっていた緋雪様の魔力、さらにはマスターの魔力を限界まで使った事によって何とか発動したものです。しかも、暴発しなければ緋雪様を完全に正気に戻すのも確実ではありませんでした。さらには暴発した事により今のマスターは魔法がしばらく使えません。〉
「....つまり?」
〈もっと精進しなければあの魔法を完全には使えません。〉
...マジかよ。しかもしばらく魔法が使えないのかよ...。
「あの魔法、どれくらい魔力を使うんだ...?」
〈そうですね...。今でいう魔力ランクAAA分の魔力全ては必要ですね。ちなみにマスターはCランクです。〉
「随分多いな...。」
それに比べて僕の魔力って低いな。
「...待ってくれ、それじゃあ、また二人は魅了されてしまうって事か?」
「えっ...。」
恭也さんが放った言葉に、バニングスさんと月村さんが怯える。
〈それに関しては大丈夫です。〉
「シュライン?」
聖奈さんが自身のデバイスが言った事に反応する。
〈マスターなら、魅了を事前に防ぐ事ならできます。〉
「そうなの!?」
デバイスの言う事に聖奈さんが驚く。聖奈さんも知らなかったのか?
〈当然です。私は祈祷特化型デバイス。マスターが強く想えば、洗脳などを防ぐ事はできます。それこそ、限界まで極めれば解除もできるほど。〉
「そう...なんだ...。」
「聖奈さん...?」
「...良かった...。私にも、できる事が...。」(ボソッ)
...そうか、今まで何もできなかったから、嬉しいんだな...。
〈では、早速。〉
「分かったよ。強く想えばいいんだよね?」
〈はい、ただ祈る。それだけを。〉
「...行くよ。」
聖奈さんが早速魅了を防ぐための魔法を掛けるため、バニングスさんと月村さんの前に祈りを捧げるように手を合わせて座り込む。
〈天に祈りを捧げる巫女の願いを叶えたまえ...。〉
すると、聖奈さんの服装が変わる。
薄水色を基調とした白い布で肩などに装飾があるワンピースの上に、透けた薄レモン色の衣を羽織っている、まさに祈りを捧げる聖女のような姿になる。
「汝らの御心を護りし加護を...。」
〈天駆ける願い、顕現せよ。“Wish come true”〉
白く光り輝く魔法陣が展開され、バニングスさんと月村さんを光が包む。
「暖かい...。」
「これは....?」
光に包まれている二人はそう呟く。...それよりも、凄い澄んだ魔力なんだけど...。
「......!」
聖奈さんは強く祈り続けている。誰も邪魔はしない。いや、普通に邪魔する事なんてないんだけど、あまりの神聖さに誰もが固唾を呑んでいる状態だ。
〈......マスター。もう終わりました。〉
「....ふぅ....。」
魔法陣が消え、聖奈さんは力が抜けるように床にへたり込む。
「...この魔法、凄く魔力を使うのね...。」
〈効果に応じて使用魔力が増減しますので。今回はAAランク程使いました。〉
「...ほとんどじゃん。それ。」
僕のあの魔法程ではないけど相当魔力を使ったみたいだ。
「これでホントに効かなくなったの?」
〈そのはずです。〉
忍さんの言葉にシュラインが答える。...視てみるか。
アリサ・バニングス
状態:正常、導きの加護、祈りの加護
月村さんも視ると同じようだった。
祈りの加護
天巫女の祈りによって宿った加護。その力は精神への干渉を
防ぎ、心を惑わされないようにするもの。
その加護は強き想いと祈りにより強固であり、術者である天
巫女が死なない限り、解除される事はない。
...なにその永続バフ。というか聖奈さんマジ聖女。
「大丈夫ですよ。ちゃんと効かなくなります。」
とりあえす皆に祈りの加護について説明しておく。
「効果が分かりやすくなっていいね。その能力。」
「“分かる”って事には優れてるからね...。」
聖奈さんの言葉に皮肉りながら返事する。
〈...マスター。これからは私もいるんですから何もできないと思わないでください。〉
「...ありがとう、リヒト。」
そう言えば、リヒトについても、緋雪のデバイスについてもほとんど聞いてないな。後で聞いておかないと。
「...あのー、これで魅了に関しては防止できるって分かった所で悪いんですけど...夜の一族の契約に関しては...?」
ふと緋雪が思い出したようにそう言う。...忘れてたなんて言えない。
「あっ、そうだったわね。有耶無耶になってたんだけど...それで、この事について忘れるか、私達を裏切らないようにすr「忘れたくありません!」そ、即答ね...。」
忍さんの言葉に被せるようにバニングスさんは言った。
「すずかとは親友ですし、裏切る真似は絶対にしないししたくありません。それに、今回の事を忘れてしまったら魅了の事とかも忘れてしまいますし...。」
「...そうね。都合を合わせるように記憶を改竄する事になるから、それも忘れてしまうわね。」
バニングスさんの言い分に忍さんも納得する。
「あなた達はどうするのかしら?」
「僕も契約を結びます。」
「私も。」
「私もです。」
僕らもこの事は忘れずに覚えておく選択をする。
「...あ、ただ、伴侶とかそこら辺の事は保留でお願いします。と言うか、絶対ではありませんよね?」
「ええ。そこに関しては大丈夫よ。」
よかった。絶対とか言われたらどうしようかと思ったよ。
「...ふぅ。何とかメインの話は終わったわね...。」
「なんか、話が逸れて行きましたからね...。」
魅了とか魅了とか...。織崎神夜許すまじ。(責任転嫁)
「...これ以上は暗くなってきたからまた別の日にしよう。今話さなければいけない事はないか?」
「いえ、特には...。」
あるとしたら緋雪とデバイス達とだな。
「なら、解散だ。いいな?忍。」
「ええ。ノエルに送らせるわ。」
「優輝君と緋雪ちゃんは家の人は心配してないか?アリサちゃんと司ちゃんの所は俺達の方から連絡しておいたから大丈夫だが...。」
恭也さんが心配してそう聞いてくる。...どうしよう、正直に答えるか?
「お兄ちゃん...。」
「...家族は、もういません。」
...正直に答えよう。別に、月村さんの秘密に比べたら微々たるものだ。この程度の秘密ぐらいは伝えておこう。
「っ、すまない。」
「いえ、別に謝る必要はありません。...確かに、両親を失った事は悲しかったです。でも、いつまでも引きずっていたら、それこそいなくなった両親に悪いですから...。」
「そうか...。」
それに、遺体は見つかっていない。だから僕は心のどこかではきっと生きていると信じている。
「...とにかく送ろう。すまないが、家の場所を案内してやってくれ。」
「分かりました。」
ノエルさんに車を運転してもらい、家に送ってもらう事となった。
「...正直、私も彼が魅了を使っていた事が信じられませんでした。」
「...ノエルさん?」
帰り道の案内の途中、いきなりノエルさんがそう言ってきた。
「もう一人メイドで妹がいるのですが、おそらく私もその妹も魅了されていたのでしょう。“信じられない”、“ありえない”と言う感情が強いです。」
そう言えば、ちらっともう一人メイドさんを見たような...。あの人か?
「私達は貴方の魔法を受けていないので、魅了は解けていません。ですから、今でさえも信じられない感情が強く、貴方に敵意さえ持ってしまいます。」
「ノエルさん...?」
しまった。この人はあの魔法の余波を受けていないから、魅了が解除されていないんだ...!
「...御安心を。私達は元々自動人形と言う、人間ではない存在...詰まる所ロボットです。なので、この程度の精神干渉なら、抵抗できます。貴方の言う事を正しく認識する事ができます。」
「そうですか...。あ、そこ右です。」
ロボットって言う事に少し驚くけど、それよりも魅了に抵抗できる事に驚いた。...おかげで助かってるんだけど。
「ただ、やはり魅了されているだけあって、抵抗するのに少しばかり骨が折れます。」
「....。」
顔を見れば、無表情ながらも、少し冷や汗が出ているように見える。
「...ですので、無理強いはしませんが、できれば早急に魅了を無効化できるように、お願いします。」
「...はい。」
本来なら、メイドである彼女はここまで意見を主張しないのだろう。だけど、抵抗しているのに無理をしているとなれば別だ。自分の感情が勝手に歪められるのならこうやって意見ぐらい主張するだろう。
僕としても、早急に魅了を解除できるようにしたいしね。
「...あ、そこを曲がればすぐそこです。」
「分かりました。」
そうこうしている内に、家に辿り着いた。
「送ってくれてありがとうございました。」
「いえ、当然の事をしたまでです。...では。」
そう言ってノエルさんは帰っていった。...あれ緋雪が静かだな。
「緋雪?どうした?」
「....ふえっ?な、なんでもないよ?」
反応が鈍い。...これは...。
「もしかして緋雪、疲れてる?」
「えっ、う、うん。...今日は、色々あったから...。」
誘拐されたり、吸血鬼化して暴走したり、なんか魅了とかそこら辺の話したり...確かに色々あったな。
「...よし、じゃあ今日は早めに寝よう。」
「うん。」
そう言って、僕達は家に入る。
「「ただいま。」」
例え、返事が返ってこないと分かっていても、僕達はこう言う。...だって、ここは僕達の家なんだから...。
後書き
Wish come true…天巫女の祈りによって掛けられる加護。術者が人として死なない限り解除されず、永遠に護られ続ける。英語に関してはノリです。意味は全然違います。
今更ですけど、主人公も緋雪も一応原作知識は持っています。
それと、ステータスにあるレベルについてですが、種族レベルはそのままゲームとかでありがちなレベルそのものだと思ってください。Levelの方は、魂のレベルみたいなもので、普通が1~2で、転生者が2~3です。Level×100が種族レベルの上限でもあります。(つまり優輝と緋雪は規格外...?)
感想、待ってます。
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