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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第1章:平穏にさよなら
  第6話「導きの光」

 
前書き
ようやく...ようやく優輝が主人公します。
 

 


       =優輝side=





     ギィイイン!!

「っ....!」

「ぁあっ!」

     ギィン!

  蒼き軌跡を描く白い槍と、豪快に薙ぎ払われる赤き大剣がぶつかり合う。

  ...均衡するのは一瞬で、すぐに槍の方が押し切られる。

「くっ...せぁっ!」

  それを聖奈さんは横に体を逸らすように受け流し、そのまま後ろ回し蹴りを繰り出す。

「ぐっ...!?」

「シュライン!」

〈はい!〉

  その蹴りを受けて間合いが離れ、その隙に聖奈さんが魔力弾を放つ。

「...シャル!」

〈はい。〉

     ドドドォン!

  けど、その魔力弾は緋雪も放った魔力弾に相殺される。

「...シッ!」

  しかしその相殺による煙幕を突っ切るように聖奈さんが不意を突き、大剣の鍔の辺りに引っ掛けるように槍をぶつける。

Magilink break(マギリンクブレイク)

     パキィン!

「しまっ....!?」

  その瞬間に使った魔法の効果なのか、赤い魔力の大剣が消失し、緋雪のデバイスが元の杖の形状に戻る。

「せいやぁっ!」

「くっ...!」

  聖奈さんはそのまま後ろ回し蹴りで、杖を弾き飛ばす。

「はぁっ!」

  そして、蹴りによって後ろを向いた体勢のまま、槍の柄で突きだす。

  しかし、

「嘘っ!?」

「はぁあ....!」

  柄を手で掴まれ、見た目からは想像できない力で引っ張られて体勢を崩す。その隙に、緋雪は力を込め、殴りの体勢に入る。

「っ...!シュライン!」

「ああっ!」

     ギィイイイン...!

  咄嗟に聖奈さんは殴られる箇所に防御魔法を展開し、ギリギリ防ぎ切る。

「このっ...!はぁっ!」

「あぐっ!?」

  防御魔法で均衡している状態から、聖奈さんは宙返りの要領で上に跳び上がり、そのまま膝蹴りを緋雪にお見舞いする。

「シュライン!」

〈すみません、まさかあそこまで力が強いとは。〉

「ううん。私も予想外。」

  膝蹴りから空中で回転して間合いを離してから着地した聖奈さんは、何らかの魔法でデバイスを手に寄せ、そう呟く。



「緋雪...聖奈さん...。」

  そんな緊迫した戦いを、僕は落ち着かない状態で見守っていた。

「(....僕はなんのために...。)」

  確かに僕は誘拐された緋雪を助けにここに来た。...でも、今頑張っているのは聖奈さんで、緋雪は暴走してしまっている。緋雪()を護るために前世から心得ていた護身術とかを鍛えて来たのに、こんなのでは全く役に立たない。

「....くそっ!」

「ちょっ...。」

  自身の無力さの悔しさで思わず近くの壁を殴る。後ろにいる二人が驚いたけどそんなの関係ない。

「あの、落ち着いてください...。」

「落ち着いてる...!落ち着いてるからこそ、悔しいんだ....!」

「アンタ....。」

  両親がいなくなって、でも前世と違って緋雪がいたから護ろうと強くなって。でも、結局何もできなくて。ただ悔しくて悔しくて、現実を突きつけられて嫌になる。

「兄は...妹を護る者だろう...!」

「お兄さん....。」

「っ....!」

  キッと睨みを効かせるように未だに続く戦いを見守る。

「...そうだよ...。僕が、しっかりしなきゃ...緋雪を立派に育つよう、導かなきゃ...。緋雪だって、あんな風に暴走したくないんだ...。」

  力不足だからなに?止めたらダメなのか?

   ―――そんな訳がない。

()が、緋雪()を正しい道へと導くんだ...。」

  力なんて関係ない。必要なのは、覚悟と、それを行う意志の強さだ。

   ―――“あの時”と同じ事を、繰り返さない...!

「(っ...!?今のは...?)」

  ふと、どこか荒廃した地で、誰かを庇って倒れる自分を幻視した。

「...そうだ。あの時とは違うんだ...。」

  幻視した光景が、何かは分からない。だけど、自然と口から言葉が出る。

   ―――強さは低くなっている。

「お兄さん....?」

「何を...?」

  二人が僕の様子を心配してくる。

「力が足りなくてもいい、ただ、止めたいんだ。」

   ―――でもそんなのは関係ない。

「自ら望まない事をしている人を...。」

   ―――行動に移すか移さないか、それだけ。

「僕が大切だと思う、その人を...。」

   ―――覚悟を、意志を固め、それを貫け。







「ただ、救われるその道へ、導きたい!」

   ―――人を幸せに導くのは、それだけでもできるから。







  ....瞬間、目の前が閃光に包まれる。

「何っ!?」

「っ!?」

  戦っている二人がこっちを向いて動きを止める。

Sprache suchen(言語検索)....。検索完了しました。〉

  目の前に現れたのは、光を放っているかのように白いクリスタルだった。

「え....?」

〈ようやく...ようやく巡り合えました...!〉

  目の前に浮かぶそのクリスタルは、僕に向けてそう言葉を放った。

〈一体幾つの年月を待ったか...。ようやく会えましたね。マスター...!〉

「な...に....?」

  このクリスタルを見ていると、懐かしい気分になる。なんで...?

〈っ...。今は、それどころではないみたいですね。マスター!〉

「え、えっ!?」

〈...防護服の展開を。...大丈夫です。マスターならできます。〉

  そう言って僕の手に収まるクリスタル。

   ―――分かる。

〈正式に起動するための詠唱を。〉

「え、詠唱...?」

  どんなのかは分からないはずなのに、自然と頭に浮かんでくる。

   ―――このデバイスの使い方が。

「...“我が身は、人を導きし者”。」

   ―――そう、これは。このデバイスは。

「“世を照らし、護るべきものを護りし光を持つ者”。」

   ―――元々、僕の...僕のための。

「“悪を敷き、善と為り、絶望を消し去る力を手に”。」







   ―――相棒だ。

「“導きの光をこの身に―――”フュールング・リヒト(Führung Licht)、展開!!」









       =out side=



  優輝が光に包まれる。その光景に、アリサもすずかも、司や緋雪までもが動きを止めて見ていた。

〈マスター、防護服の形状は以前のものが残っておりますので、今はそれを使います。〉

「分かった。任せるよ。」

  優輝の服装が変わる。上は鮮やかな赤を基調とした民族衣装のような服になり、下は黄色のラインのある蒼いズボンで、白銀のガントレットとタセットつけている。そして、白いマントのような外套を羽織った姿になる。

〈武器の形状は杖です。行けますか?〉

  そして、手には黄色のシャフトで、先端には白いクリスタルを中心に十字架のように装飾が施されてる杖が握られていた。

「もちろん...!元々、お前が来なくても、行くつもりだった!」

  優輝は剣を扱った事はないが、護身術の一環として会得した棒術が使える杖ならば、使いこなすことができた。

「...緋雪!」

「っ....!」

  優輝は緋雪に大声で呼びかける。

「....来ないで...!」

「“救う”“止める”なんて大層な事は言わない...だけど、僕は兄として!お前を絶対に元の状態に導いてやる!」

  そう言って優輝は緋雪に向かって駆け出す。

「...来ないでって...言ったでしょ!」

「っ!」

  瞬間、緋雪から大量の魔力弾が放たれる。

「志導君危ない!...シュライン!」

〈防ぎ切れるかは分かりませんが...やってみます!〉

  司が祈るようにシュラインを握ると、魔力弾を阻むように防御魔法が展開される。

「くぅっ...!」

  しかし、それでは防ぎ切れずに、シールドは割れてしまう。

「志導君っ!」

「大丈夫!」

  司の悲痛な叫びを跳ね除けるように答える優輝は、まだ残っている魔力弾の弾幕へと突っ込む。

「(やり方は分からないはず。...だけど、分かる!)」

〈存分に扱ってください!私はマスターの全てに応えて見せます!〉

  優輝の集中力が極限まで高まる。迫りくる魔力弾を紙一重で避け、当たりそうなのは杖で弾く。普段はしないはずの動きでも、護身術などによって鍛えられた判断力で見事に全てを凌いでいた。

「ひっ....!?」

「緋雪!」

  魔力弾の弾幕を抜け、突っ込んでくる優輝に怯んだ緋雪に、優輝は一気に間合いを詰める。

「(動揺している...!今がチャンス!)リヒト!」

〈はい!〉

  優輝がリヒトに呼びかけると、緋雪が手足を拘束されて動けなくなる。拘束魔法であるバインドだ。

「(今の緋雪は、あまりの吸血衝動に理性を保てない状態...つまり、正気じゃない。なら、正気へ戻す魔法があれば...!)」

  優輝はそこまで考えてとある魔法が頭に浮かぶ。本当は知らないはずなのに、すぐに理解できたその魔法を優輝は使う。

「自らの志を見失いし者よ、今こそ思い出せ...。ゲッティンヒルフェ(女神の救済)!」

Göttin Hilfe(ゲッティンヒルフェ)

  杖を中心に、巨大な魔法陣が展開され、術式の環もそれを中心に廻るように展開される。

「....綺麗....。」

  そう呟いたのは、誰だったのだろうか。倉庫内が優しい光に包まれて何も見えなくなる。







       =優輝side=





「...大丈夫だよ、緋雪。お兄ちゃんが、間違った事をしても、導いてあげるから。」

「お兄...ちゃん....。」

  光で何も見えないそんな中、僕は緋雪に近寄り、抱きしめる。

「辛かったら、我慢しなくてもいい。今まで僕らは支え合ってきたでしょ?だから、僕を頼ってもいいんだよ?」

「でも....。」

  落ち着かせるように、僕は緋雪の頭を優しく何度も撫でる。

「僕としては、僕に迷惑を掛けるより、一人で抱えっぱなしの方が困るかな。お母さんも前に同じような事言ってたでしょ?僕もそう思うんだよ。」

「お兄ちゃん....。」

  光が晴れると同時に、緋雪から小さく嗚咽が聞こえてくる。多分、泣いているんだろう。

「...ほら。吸血衝動はまだ収まってないはずだから、吸っていいよ。」

  緋雪の顔を僕の首筋へと近づける。

「え?でも、そんな事したら...。」

  吸血鬼の常識だと、吸血鬼に血を吸われた人物も吸血鬼になる。そう言う所とかを緋雪は気にしてるのだろう。

「吸血鬼とかそう言うのは気にしないでいいよ。別になっても気にしないし、....多分、リヒトなら吸血鬼化を防げると思うから。」

〈良くわかりましたね。その通りです。〉

  なんか、直感的にリヒトはチート染みてるからできると思ったけど、その通りだった。

「ね?ほら。」

「あう....。」

  まだ渋ってるので、頭を押してさらに首筋に近づける。

「ぁ....。」

「我慢は体に悪いよ。」

「うぅ...!」

  意を決したかのように、僕の首筋に噛みつく緋雪。

「っ...!」

  血を吸われていく感覚を実感するけど、構わず僕は緋雪を撫で続ける。

「....っ、ぷは...。」

「落ち着いた?」

  しばらくして、緋雪が僕から顔を放す。

「...うん。」

「そっか。よかった。」

  緋雪の口元と、僕の傷跡から少し血が垂れてしまってるけど、別に気にしない。緋雪が満足してくれたなら。

「...ねぇ、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だって。今だって何ともないし。」

「なら、いいんだけど...。」

  やっぱり吸血鬼化が気になるのだろう。緋雪が心配してくるので、大丈夫だとちゃんと返しておく。

「ごめんね聖奈さん。また出しゃばっちゃって。」

「あ、ううん。無事だったらそれでいいよ。でも、もう無茶な事はしないでね?」

「あはは...善処するよ...。」

  後ろで見守っておいてくれた聖奈さんに声を掛ける。

「...あ、結界がそのままだ...。」

「あ、それなら大丈夫だよ。私とシュラインが解析しておいたから今すぐにでも解除ができるよ。」

  そう言うや否や、辺りの雰囲気が元に戻り、地味に結界に巻き込まれていなかった気絶した黒服の男達が姿を現す。

  ...あれ?人が増えてるような...?

「あ、士郎さん達...すいません、結界が張ってあったので...。」

「なんだ、それで現場に来ても気絶してる連中だけだったんだね...。」

  一番年上そうな人に聖奈さんがそう言う。...聖奈さんが呼んだ人たち...つまり、高町士郎さんやその息子である恭也さん、後は月村さんの姉である忍さんか。他にもメイドさんもいるようだ。

「...あまり見ない子達がいるようだけど?」

「あ、クラスメイトの志導優輝君と、その妹の緋雪ちゃんです。緋雪ちゃんはなのはちゃん達のクラスメイトなんですけど、今回巻き込まれたみたいで...。」

  僕達がいる事を説明していく聖奈さん。

「...詳しい事は場所を変えて聞こう。彼らは僕に任せて、君達は恭也について行ってくれないか?」

「...分かりました。皆もそれでいい?」

  場所を変えるらしく、それでいいか聖奈さんが聞いてくる。

「緋雪、どうする?」

「...お兄ちゃんに任せる。」

「じゃあ、僕らは大丈夫だよ。」

「あ、あたしも。」

  満場一致でついて行く事が決まる。月村さんが何も言わなかったのは行先が月村さんの家だからかな?

「...じゃあ、行こうか。ノエル。」

「分かりました。皆様、こちらへ。」

  メイドさんに促され、車に乗る。

「じゃあ、父さん。後始末は任せたよ。」

「あぁ、任せておけ。」

  恭也さんが士郎さんにそう言い、士郎さんを残して僕らは出発した。

「...一つ聞いておきたいが、誘拐された時、とんでもない事を聞かされたりはしてないか?」

「とんでもない事...ですか?」

  出発した所で唐突に恭也さんがそう聞いてきた。

「それって、夜の一族...っていう奴ですか?」

  バニングスさんがそう聞き返す。...僕、そこら辺の会話知らないんだけど。

「っ、あぁ。それだ。....知ってるなら話す事が増えたな...。」

「(...なんか、この後の不安が増えたんだけど...。)」

  虫の知らせ(シックスセンス)はもう発動してないから大丈夫なんだろうけど...。

  なんか不安だ...。面倒事に巻き込まれていきそうで。





 
 

 
後書き
フュールング・リヒト(Führung Licht)…優輝の持つアームドデバイス。名前の由来である“導きの光”の名のままに、人を導くためにあるデバイスとも言える。愛称はリヒト。優輝に会えるのを待っていたようだが...?
防護服のテーマとしては“戦う王族”をイメージしています。...本文中の文章では表しきれてませんが。ちなみにチートデバイスです。夜天の書以上かもしれません。(イメージcvM・A・O)

士郎さんの口調などが分からない...。あ、ちなみに誘拐犯達は士郎さんが呼んだ知り合いの人(警察)に連れていかれました。

感想、待ってます。

 
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