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第七章

「あの教授辞めさせろ!」
「嘘言う教授なんか教授じゃない!」
「あいつのせいで米農家の人が困ったんだぞ!」
「賄賂貰ってただろ!」
「懲戒免職にしろ!」
「大学はすぐにコメント出せ!」 
 大学の電話はパンク状態になった、そして。
 新聞にも総合雑誌にもこの討論は掲載されてだ、それでさらにだった。
 教授の正体が明らかになった、それで。
 彼の発言はあらためて検証され何の科学的根拠もないことが明らかになった。挙句にはキムダイグループの麦の不買運動まで起こり。
 キムダイグループはこの国から撤退することになった、そして。
 教授は大学を懲戒免職になり全てを失った。その末路は誰も知らない。地位も名誉も何もかもを失った。
 その状況を見てだ、秘書は議員に言った。
「天罰だな」
「はい、まさしく」
「私が暴いたにしても」
「それでもです」
「ああなることはな」
「当然の結果です」
「そうだな、まさにな」 
 議員も秘書のその言葉に頷く。
「それはな」
「はい、学者が嘘を言いそれを吹聴するなぞ」
「どの職業でもそうだがな」
「あってはならないことです」
「学者は権威だ」
 その知識故にだ。
「ましてやあの大学の教授ともなるとな」
「権威の中の権威です」
「その言葉なら誰もが信じる」
「そこを逆手に取ってのことですから」
「許される筈がない」
 到底というのだ。
「ましてやな」
「はい、そこで収賄まで働いているとなると」
「特定の組織なり個人なりの利益の為にな」
「悪と言うべきです」
「しかし。学者といってもだ」
 ここでだ、教授はこうも言ったのだった。
「常に正しいとは限らないな」
「はい、嘘を言うこともありますね」
「そして収賄をすることも」
 そのうえで嘘を言うこともだ。
「あるな」
「全くです、今回はこのことを世の中に知らしめることにもなりました」
「その通りだな」
 議員は秘書のその言葉に頷いた、そうしてこの件のことはここで終わった。学者といえどもその背後関係には気をつけその主張が真か否か確かめなくてはならない、権威に惑わされるなということを世の人々に教訓として与えたうえで。


麦   完


                           2015・2・21 
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