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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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●●の時間(2016/05/16 一部修正)

 
前書き
取り敢えず、タイトルでは伏字にしていますが、本来のタイトルは「鷹岡の時間」です。

ちなみにタイトルの鷹岡は今話で下種の極みとなっています。
(ってかロリコン?いや、中学生はロリに入るのか?まぁ、いいや)

取り敢えず、本編をお楽しみください。あっ、あとがきにプチアンケートがございます。(笑)


追伸

異世界系暗殺者×ゲート 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり
タイトル「GATE 暗殺系暴風族 彼の地で斯く戦えり」を公開中!プロローグだけですが、良ければこちらもご覧下さい。 

 



【視点:樹】



銃使いのおっさんを倒し、普久間殿上ホテル8階コンサートホールを突破した俺達――出撃組は一気に目的地である最上階――10階VIPフロアへと向かう。

そして、その間にモバ律が鷹岡と思しき黒幕の情報を現在進行形で集め、報告してくれた。どうやって情報を集めたかというと、敵側がホテル内の監視カメラとリンクさせているパソコンにハッキングして、パソコンカメラから黒幕のいる部屋を観察できる様にした様だ。

出撃組ほぼ全員のスマフォには、ウィルスに感染させられ苦しんでいる皆をTVで鑑賞している黒幕の後ろ姿が映し出される。後姿とはいえ、体型から見るに軍人の類であることは察せられる。


「TVの逆光のせいでハッキリとした姿は確認できねぇけど、体型はガッシリとしてる感じがするな。敏捷さを感じさせない大柄レスラーを彷彿させる。黒幕は格闘術を得意とする軍人の類か?」
「……それって、黒幕が鷹岡先生って断言してる様なもんなんじゃ……?」
「渚、俺は別に黒幕を鷹岡と断言してる訳じゃないぞ。ただ、スマフォから得られる情報を元に黒幕の正体を予想しているだけだ。今まで会った暗殺者で、こんなガッシリとした体型の奴がいたか?」
「………確かに、ロヴロさんやこのホテルで戦った人達も含めてレスラー体型なんて見たことが無いけど……」
「暗殺者の特徴の1つは敏捷さだ。それがなきゃ、瞬く間に捕まっちまうからな。標的を素早く殺し、素早く離脱する技能がないと暗殺者としては三流以下。
この黒幕は、上半身がガッシリし過ぎて敏捷さを犠牲にした様な体型だから、暗殺者とは考えられないんだよ。そうなると、立場的に殺センセーを狙えるのは職業軍人しかいないだろ?まぁ、軍人としても一兵卒の域を出ない凡才だろうけど」
「一兵卒の域を出ないって、何でそう思うの?」
「人の使い方が全くなってないからだ。この黒幕が優秀な指揮官なら、ここに至るまでに俺達の何人かは対峙したおっさん達に殺られてる。
そもそも1人目の轟のおっさんとか、明らかに薬物暗殺に特化した科学者型暗殺者だ。単独で敵と対峙させるタイプじゃない。
2人目のぬのおっさんも、極力自分の存在をその場にいる者に悟らせず、殺気を隠して近付き、標的を仕留めることに長けた近接型暗殺者だってのに、その本領を発揮できない廊下の見張り 兼 防衛役だった。
近接型暗殺者を侵入者と真正面からぶつかる役割に回すとか、どう考えても雇った人材の能力を把握できてない無能だろ?」
「……そう言われると、指揮官としては凡才――っていうか、もはや無能としか思えないね」


俺と渚の会話を聞いていたカルマがそう言うと、他の出撃組メンバーも同意する様に頷いていた。すると―――


「交渉期限まで残り時間も少ない。その話は後にしてくれるか?」


烏間先生が俺達の会話にストップを掛けてきた。まぁ、のんびり駄弁ってる暇がないのは確かだしな。他の皆も烏間先生に指摘され、緩み掛けた気持ちを引き締め直す。

そして、極力音を立てず最上階に辿り着いた俺達は、9階にいた見張りから奪って置いたカードキーを使って部屋に侵入。

気配を最大限に消し、俺は暗歩で、他の皆は体育の時間に教わった音を極力抑えるナンバという歩法を使い、黒幕の背後へと移動した。

黒幕の足元を見てみると、案の定A・T――炎の試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を履いていた為、全員で一斉に襲い掛かって拘束できる様、黒幕を扇状に取り囲む。

烏間先生の指示を待ち、ゴーサインが出たことで黒幕を取り押さえ様と動こうとした瞬間、今まで微動だにしなかった黒幕が口を開いた。


「……かゆい」


黒幕の声を聞いた瞬間、その場にいたほぼ全員の動きが止まった。予想通りではあったが、やはり聞き覚えのある声の主が黒幕ということには誰もが動揺してしまうものの様だ。黒幕はそんな皆の動揺を知ってか知らずか、顔をボリボリと掻きながら話を続ける。


「思い出すと火傷と切傷の痕がかゆくなる。けど、そのお蔭かな?いつも傷口が空気に触れているから、感覚が鋭敏にもなってるんだ」


黒幕はそう言い終えると、俺達の目の前であるものをブチ撒けた。それは治療薬の入ったスーツケースを爆破する為の起爆スイッチが付いたリモコンだった。


「念には念を。相手はマッハ20の超スピードで動く怪物なんだ。起爆リモコンも俺が倒れ込んだ拍子に押せる位の予備を用意しておくのが普通だろ?」
「……まぁ、予想通りではあったけど。やっぱりあんたが黒幕か」
「……地に落ちるとは正にこのことだな。鷹岡ァ!!」


烏間先生が黒幕の名を叫ぶと、黒幕――鷹岡は座っている事務用椅子(?)を反転させ、俺達に今の姿を見せた。……正直言おう。俺は鷹岡の姿を見て、「この黒幕が本当に鷹岡か?」と怪しんでしまった。

何故なら、まず髪型が初めて会った時とは異なりボサボサ。顔は火傷と切傷以外に引っ掻き傷で傷だらけ。デブ腹も何故か引っ込んでいて、Uネックから見えている肌にも火傷と切傷の痕が見える。

無限の煉牢獄(インフィニティ・インフェルノ・ジェイル)で刻み焼きした火傷と切傷の痕だろうから、明らかに俺が原因だろう。


「久しぶりだな、お前ら。けど、恩師に会うのに裏口を利用するなんて非常識なこと、父ちゃんは教えた記憶がないぞ」
「奇遇だな。俺らもお前を父親に持った覚えがない。父親を語るなら、まず母親を連れて来てからにしろよ。この素人童貞が」
「……お前は相変わらず口が悪いな。まぁ、いい。今から夏休みの補習をしてやるから俺に付いて来い」
「俺らがあんたの指示に従う必要性があるとは思えないね。俺らならそのスイッチを押すより早く、あんたの動きを封じられる自信がある」
「本気で言ってるのか?あの時と違って、俺も炎の試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を履いてるんだぜ?スイッチを押す余裕を得る位の抵抗はできる自信が俺にもある。
それにお前と違って、他の奴らは多少なりとも動揺している。そんな奴らがお前のサポートをできるとも思えないな」


確かに、鷹岡の言う通りではある。今の皆じゃ、サポートもあまり期待できない。何より鷹岡の(バトル)LVが分からない以上、鷹岡の動きを俺だけで殺さずに完全に封じられると断言もできない。


「分かっただろ?なら屋上――ヘリポートへ移動しよう。愛する生徒を歓迎する用意もしてある。勿論、逆らわねぇよな?下で苦しんでるお前らのクラスメイトは、俺の慈悲で生かされているんだから」


狂喜と憎悪で彩られた笑みを浮かべる鷹岡に逆らえる者は、俺達の中には1人もいなかった。そして、俺達は鷹岡の指示に従い移動。屋上に着くと、鷹岡は再び口を開いた。


「南樹!お前のせいで俺は防衛相の三下からも見下され、上からの評価もガタ落ちになった!それだけじゃなく、痴漢と下着泥なんて冤罪で捕まりかけもした!!この屈辱は倍返し程度じゃ済まない。俺は、俺の未来を汚したお前を絶対に許さん!!」
「……で?どうしたいんだよ?こっちは時間がないんだ。要求があるなら簡潔に言えよ」
「……いい度胸だ。なら、お前1人でヘリポートまで登って来い」


鷹岡はそう言い終えると、治療薬の入ったアタッシュケースを持ったまま先にヘリポートへ続く階段を登って行った。そして、俺も鷹岡の後に付いて行こうとする。が―――


「…………」
「……有希子?」


無言の有希子に袖を掴まれ、俺は行く手を阻まれてしまった。有希子の顔は青く、不安一色に染まっている。そんな有希子を安心させる為、俺は有希子の頭を優しく撫でながら口を開いた。


「安心しろ。俺はあいつ程度に殺されたりしないよ。まぁ、治療薬を手に入れる為にボコられはするだろうけど、絶対にお前の所に戻って来るから」
「………うん」


俺の説得に有希子は蚊の鳴く様な声で返事をすると、掴んでいた袖から手を離してくれた。そして、俺が鷹岡の指示通りヘリポートへと移動すると、鷹岡は俺に新たな指示を出してきた。


「……そうだな。まずは履いてるA・Tを脱いで烏間達に投げ渡せ。あと、腰に差してるのは日本刀か?それも俺に渡せ」
「……分かった」


俺は鷹岡の指示に従い、炎の試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)を脱ぐと烏間先生達のいる所に投げ、腰に差している日本刀も鷹岡へと投げ渡した。


「よし。なら次だ。この場で土下座して俺に謝罪しろ。地面に頭を擦り付けながらな。しなかったらどうなるか、分かるよな?」


鷹岡はニヤけ面を浮かべ、起爆リモコンをこれ見よがしと見せつけながら、そう指示してきた。全く以って不愉快極まりない。

が、いまは病欠組の命が掛かってるんだ。そんなことを言ってる場合でもない。俺は鷹岡の目の前で土下座し、謝罪の言葉を口にしようとした。


「俺は鷹――」


俺が謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、強い衝撃が俺の頭部と身体を襲い、謝罪の冒頭で言葉が止まってしまった。衝撃の正体は当然のことながら、鷹岡の炎の試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を使った蹴りだ。

炎の試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を使った蹴りということもあって、俺の頭部からは血が垂れて来ている。


「おら、どうした?謝罪の言葉が聞こえてこねぇぞ!」


鷹岡はそう言い終えると、更に蹴りを放ってくる。俺の身体はゾル家体質の恩恵で拷問等の痛みに対してある程度の耐性も付いていたから、どれだけ鷹岡に蹴られても苦痛の声を上げることもない。

が、痛くない訳ではないので、俺の中でストレスが着実に溜まって行く。謝罪の言葉が聞こえねぇ?てめぇが言わせようとして無いだけだろうが!!

……それからどれだけの時間が経っただろうか?土下座状態の俺は微動だにすることなく鷹岡に蹴られ続け、鷹岡は肩で息をしながらも、狂喜の笑い声を挙げていた。


「ぎゃはははは!所詮お前はA・Tが無ければ何もできないガキだったってことか!?俺に蹴られて、服もズタボロの状態で無様だな、おい!」
「……………」
「けどな、俺が受けた屈辱はこんなもんじゃないんだよ!!」


鷹岡はそう叫ぶと、今までで一番いい一撃を俺の背中に放った。常人なら背骨が折れてたかもしれない一撃だ。


「そうだな。ここでお前を殺すのは簡単だが、それじゃあ面白くない。………よし!お前の女を犯そう!!」


………今、こいつは何と言った?


「お前、付き合ってる女がいるんだろう?確か、クラスのマドンナ―――神崎有希子だったか?お前の手足を斬り落として、達磨にしてからお前の目の前で神崎を犯してやろう」


有希子を犯す?今、こいつはそう言ったか?舌舐めずりの音が聞こえる。俺の聞き間違いではなく、本当に言った証拠だ。


「いや、どうせならクラスメイトの女子全員をお前の目の前で犯してやろう。自分のせいでそうなったと思うと、相当堪えるだろ?都合よく、お前のクラスの女子は上玉が多い。俺もそれなりに楽しめそうだ。
それに男の前で泣き叫び、よがり狂う女と何もできず怒り狂うお前を想像するだけで、俺は今にも絶頂を迎えそうだ」


冷静に考えれば、烏間先生や他の男子がそんなことを実行させる訳が無い。が、基本的にフェミニストを自称する俺にとって鷹岡の発言は許しがたいものであり、その発言によって常日頃から入ることのなかった俺の中のスイッチが入ってしまった。


 
 

 
後書き
という訳で、今回はここまで!決着は次話に持ち越しです!!

ってか、鷹岡は完全に地雷原を踏んだ。その結果、イッキの中にある暗殺者スイッチがオンになってしまいました。

ゾル家+十本刀(三強中の二強)に形成された暗殺者スイッチ。鷹岡の末路は次話のお楽しみということで……。


さて、暗殺者スイッチの停止はどうしよう?(汗)
①有希子の背中抱き着き
②渚のクラップスタナー
③烏間先生の水晶振動周波(クリスタル・クォーツ)による硬直
④①~③の全て(具体的には有希子の抱き着きから始まり、渚のクラップスタナー。駄目押しの烏間先生の水晶振動周波(クリスタル・クォーツ)による硬直による連携コンボ) 
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