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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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仲間の時間(2016/05/16 一部修正)

 
前書き
こんばんは、お久しぶりです。

今回は難産で、完成までに時間が掛かってしまいました。

お待ちしていた方々、お待たせしてすみませんでした!!

あっ、あと今回はあとがきにちょっとしたアンケートがあります。できればご協力ください。 

 



【視点:樹】



普久間殿上ホテル8階コンサートホールで俺達――出撃組が相対することになったのは牙の試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を持った3人目のプロの殺し屋。

しかも、試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)の扱いがここに至るまでに相対した2人とは錬度が段違いで、推定(バトル)LV100超えの猛者だった。


「……モバ律。義体を操作している本体とリンクして、あの殺し屋の(バトル)LVを測定できるか?」
「可能です」
「なら測定してくれ。相手の(バトル)LV次第でこの階を攻略するのに、こっちの疑似玉璽(サブレガリア)持ち――いや、この場にいる全員の協力が必要になる」
「了解です」


モバ律は俺の指示に対してそう返答すると、俺のスマフォから一度姿を消した。まぁ、測定には時間が掛からないだろう。それにしても、今回の相手は今の俺にとって相性が悪い。

恐らく、相手は銃撃と牙による攻撃を得意とする遠距離型。対する俺は全距離対応が可能とはいえ、基本的な戦闘スタイルは近距離型。特に今履いている炎の試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)は速度重視の近距離戦型玉璽(レガリア)といえる代物だ。

無論、ノーマルA・Tでも無理をすれば牙を放つことができるのだから、炎の玉璽(レガリア)でも牙を放つことはできる。だが、牙の玉璽(レガリア)で放つ牙と比べたら威力が格段に劣る上、連発もできず足に掛かる負担も大きい。

ぶっちゃけ、威力に対して足に掛かる負担が半端無いから割に合わないんだよ。ってか、今回の暗殺計画で炎の試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)による牙を何発か使ったせいで、既に足には負担が掛かってるしな。

近距離戦闘型にとって相性の悪い相手だ。救いがあるとすれば、放たれる牙の威力がLeviathanやBloody Blade Fangより弱い点か?

棘より威力はあるけど、それでもコンサートホール内の客席――金属部位を切断する程の威力ではないのが救いといえるだろう。

まぁ、それでもクッション部分を斬り裂く威力はあるみたいだから、数で攻めたら人間の身体をズタボロにする位は容易だろうけど。

俺がそんなことを考えていると、姿を消していたモバ律が再び俺のスマフォに現れた。


「イッキさん、敵(バトル)LVの測定が完了しました。敵の(バトル)LVは試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)による能力も含めて138です」
「………試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を使って(バトル)LV138か。ってことは、試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)の性能に頼らない純粋な暴風族(ライダー)としての(バトル)LVは100丁度って所か?」
「はい。ですが―――」
「分かってる。リードを使って測定可能なのは飽く迄暴風族(ライダー)と使用A・Tの能力値を足したものだ。そこに暴風族(ライダー)やA・Tとは無関係な技術・装備は測定されない。
相手の銃器と銃技を含めて総合能力を考えると、本当の意味での(バトル)LVは190って所か?」
「はい。イッキさんを除けばこちら側の暴風族(ライダー)としての最高(バトル)LVは疑似玉璽(サブレガリア)による強化補正を含めても神崎さんの172。カルマさんが161、烏間先生でも158と相手の総合(バトル)LVに届きません。
もっとも、烏間先生に関しては本気になった所を一度も見たことが無いので、本気になった状態での空挺式戦闘術等を含めば総合(バトル)LVは230を超えると思いますが―――」
「状況が悪いか。いくら烏間先生の最大総合(バトル)LVが200を超えていても、今いる場所が最前列から2列目だ。迂闊に動けば簡単に察知され、ステージから牙と銃で狙い撃ちされる。
行動が制限されれば、当然(バトル)LVも下がる。今の烏間先生の(バトル)LVは高く見積もっても190前後。相手と同LVだけど、それでも相手に飛び道具がある以上、烏間先生の不利は変わらない」


ある程度時間を掛ければ、俺1人でも銃使いのおっさんを倒すことはできる。が、今回に限って言えばその時間を掛けることができない。

安全第一で俺と烏間先生の2人だけで挑んでも短縮できる時間は多寡が知れている。結局、この場にいる全員の力が必要になるって訳か。

銃使いのおっさんを倒す方法は今の所特攻覚悟の近接戦一択。俺が陽動を担当するとして、特攻役が烏間先生以外にも2人は欲しい。

一応、さっき後退する際に全員の配置を確認したから、全員に指示を飛ばすことはできるが、命の危険が十二分にあるこの場で仲間の命を背負って支持する覚悟が俺にあるのか?

俺がそんなことを考えていると、その思考を読んだ様な殺センセーの声がコンサートホール内に響いた。


「イッキ君、色々と考え過ぎて思い悩んでいる様ですね。何でも1人で背負おうとするのは君の悪い癖です。この場の指揮は先生が敵を見ながらしますので、何も考えず従って下さい」
「何だ?どこから喋って――って、何最前列でかぶりつく様に見てやがんだ!テメェ!!」


……ああ、そういえば殺センセーは烏間先生が持ち運びしてたな。多分、烏間先生が背もたれから最前列の席に落とす様に殺センセー置いたんだろう。

ってか、銃使いのおっさんキレ過ぎだろ。完全絶対防御形態の殺センセーに銃を乱射してるし。まぁ、どうせ殺センセーが挑発する様なニヤケ顔を浮かべてるから、キレたんだろうけど。


「木村君!左へ5列移動して下さい!!」


うおっ!殺センセーと銃使いのおっさんが何か話してたかと思えば、急に指示が飛んできた!


「寺坂君と吉田君は左右に別れて3列ずつ移動!」
「なっ!?」
「死角ができました!今の内に茅野さんは2列前進!カルマ君と不破さんは同時に右に8列!磯貝君は左に5列!神崎さんと矢田さんは右に5列!イッキ君は左に6列移動後3列前進!!」


俺達は全員が一ヵ所に固まってるんじゃなくて、バラけた場所にいる。それに銃使いのおっさんは俺を一番警戒して、俺に意識を向けていた。その状況を利用しての移動 兼 シャッフルか。

相手の牙が客席のクッション部分を斬り裂く程度の威力であったことも移動を可能としている要因だな。短距離であれば、牙が到達するより早く移動できる上、客席そのものを盾にしながら前に進める。

けど、相手も一流の元軍人暗殺者。指示する毎に名前と位置が把握される筈。その点についてどう対処する気だ、殺センセー?


「出席番号12番!右に1列移動で準備しつつ待機!!」
「へ?」


成程、今度は出席番号か。銃使いのおっさんだけでなく、鷹岡も含めた相手側の全員が警戒していたのは俺だけだろうから、クラス全員の出席番号まで記憶してないだろう。



「4番と6番は椅子の間から標的(ターゲット)を撮影!28番は目視確認!モバ律さん通して舞台上の様子を千葉君と速水さんに伝達!!
ポニーテールは1列前進!バイク好きも左前に2列前進!最近竹林君一押しのメイド喫茶に行って、ちょっとハマりそうで怖かった人!撹乱の為大きな音を立てる!!」
「うるせー!何でテメェが行ったこと知ってんだ!!」


……寺坂。お前、メイド喫茶に行っただけでなくハマりそうになったのか?ご主人様とか言われて、重度のオタクに目覚めちまったのか?


「夏休みに入って彼女とファーストキスを済ませた王様は3列前進!!」


おいーーー!?何でお前がそのこと知ってる!!?ってか、こんな所でそんなこと暴露してんじゃねぇよ!プライバシーの侵害にも程があるだろうが!!下手したら有希子が羞恥の余り再起不能になるかも知んないんだぞ!!

触手タコの指示のお蔭で銃使いのおっさんの死角を縫って、距離を詰めれたことは称賛してもいい。けど、色々と繊細な年頃のカップルの秘め事をこんな所で暴露するとかあり得ないだろう!!

俺自身の精神年齢は24で繊細な年頃に該当しないかもしれないけど、それでも有希子は誕生日の関係でまだ14なんだから、その点を考慮して発言しろよな!

…………もし、これが原因で有希子と別れることになったら、椚ヶ丘に戻り次第空の玉璽(レガリア)の能力を最大解放して、触手タコの分子結合を分解してやろう。うん、そうしよう。

……まぁ、何はともあれ、触手タコの指示のお蔭で俺達全員、銃使いのおっさんとの距離を最前列から3列以内まで詰めることができた。さて。一応王クラスの暴風族(ライダー)でもある銃使い相手に、触手タコはどうやってチェックメイトを掛ける?


「これで近接戦担当の配置も完了しました。では、そろそろ狙撃の時間です。千葉君。次に先生が指示した後、君のタイミングで撃って下さい。速水さんは状況に合わせて千葉君のフォローをお願いします。
他の皆さんはモバ律さん経由で2人の邪魔にならない様、自由に動いて下さい」


触手タコがそう指示すると同時に、モバ律によってスマフォにコンサートホールの全体図と全員の配置が表示された。しかも、トリック・パースの様な最短ルートのおまけ付だ。


「と、その前に感情をあまり表情に出さない仕事人の2人にアドバイスです。君達は今、凄く緊張しているでしょう。先生への狙撃が失敗したことで自分達の技量に迷いが生じている。
普段から言い訳や弱音を口にしない君達です。周りから勝手な期待を押し付けられたり、苦悩していても誰にも気付いて貰えなかったでしょう」
「「…………」」
「しかし、それは昔の話です。今は違う。この場には同じ訓練を行ってきたクラスの仲間がいます。失敗した時は狙撃手を代えればいいだけの話です。2人がプレッシャーを抱え込む必要はありません。
いざとなれば空と石の人が如何とでもしてくれます。失敗を恐れず、仲間を信じて気楽にやってみましょう」


俺は異様に耳がいいから、このコンサートホール程度の広さなら客席が満員でも普段から聞き慣れているクラスの奴らの心音を聞き分けることくらいは容易だ。

で、聞こえてくる龍之介と速水の心音から察するに、2人とも触手タコのアドバイスで緊張が解れた様だ。これなら失敗する可能性も低いだろう。が、失敗した時のフォローがほぼ俺と烏間先生だけってのは解せぬ。


「では皆さん、いきますよ。出席番号12番!立って狙撃!!」


触手タコが指示を出すと同時に銃を持った影が客席下から立ち上がる様に飛び出し、それから1秒も経たない内に俺も飛び出した。

飛び出した俺の視界に最初に入ってきたのは、俺より先に飛び出した影に銃を向けている銃使いのおっさんの姿だった。

ちなみに俺より先に飛び出した影の正体は、菅谷が作ったダミー人形だ。出席番号12番は菅谷の番号だからな。恐らく、待機している間にダミー人形を作ったんだろう。

ダミー人形は見事にヘッドショットされている。流石はプロの元軍人。しかし、撃ち抜いたのがダミー人形ということもあって、銃使いのおっさんは固まってる。

当然、俺達はその隙を見逃す様な間抜けじゃない。銃使いのおっさんから見て斜め右方向の客席から龍之介が飛び出して銃を構え、俺は左方向から攻撃を仕掛ける。

銃使いのおっさんは硬直が解けると、俺と龍之介のどちらに銃を向けるか一瞬迷ったが、龍之介の方に銃口を向け、俺の方には後ろ足で牙を放ってきた。

俺の方の距離が近かったということもあって、銃を撃つより先に牙を放ってきたが、それも僅かにできた隙のお蔭で対処は容易だった。

俺は1体分の炎分身を作ると同時にAFTER BURNERを使い、龍之介の射線の邪魔にならず、かつ銃使いのおっさんを攻撃できる位置に移動。

炎分身が牙で斬り裂かれると同時に俺は高速打撃を銃使いのおっさんの神経節に撃ち込み、その体の自由を奪う。そして、龍之介が発砲すると同時に俺は龍之介の狙った攻撃に巻き込まれない様、銃使いのおっさんから距離を取った。

ちなみに龍之介が狙った攻撃は吊り照明の金具を撃ち抜き、背後から照明を銃使いのおっさんにぶつけるってものだ。吊り照明の直撃を受けた銃使いのおっさんは柱型の照明に勢いよくぶつかった。アレは痛い。

あっ、銃使いのおっさんが俺に銃を向けてきた。照明直撃の衝撃で体の自由が戻ったか?でも、体が震えてるしな。気力だけで銃を向けてるのか?

……まぁ、どっちでもいいか。今の銃使いのおっさんなら引き金を引くより早く対処できる。そんなことを考えていると、龍之介とは別方向から銃声が聞こえてきた。

狙撃先に視線を向けると、そこには速水が銃を構えたまま立っていて、再び銃使いのおっさんに視線を向けると、その手からは銃が無くなっていた。銃を狙って弾いた訳だ。


「チェックメイトだ、おっさん」


俺がそう告げると同時に銃使いのおっさんはその場に崩れ落ちた。その後、銃使いのおっさんは他のおっさんたち同様、ガムテープで拘束。バレルが唾液塗れの銃と牙の試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)を没収した。


 
 

 
後書き
そんな訳で記念すべき50話(プロローグ除く)でした。

そして、今回が記念すべき50話だったこともあり、ちょっとしたアンケートを行いたいと思います。それは新作SSのアンケートです。

私は今、「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」に嵌っています。そのせいもあって、異世界系暗殺者(完結から10年後)×ゲートのクロスSSを書こうか迷っています。

この作品を書く場合、原作ゲートにおける第3偵察部隊ポジが25歳まで成長した3-Eメンバー、伊丹ポジがイッキとなる上、未だ本編では判明していないイッキハーレム(予定)メンバーがネタバレすることになります。
(ちなみに3-Eメンバーが特地に行くことになったのは、烏間先生の要請によってという設定の予定である上、烏間先生は狭間陸将ポジとなります)

読者の皆さん、異世界系暗殺者と並行する形で気まぐれ執筆してもいいでしょうか?
(ちなみにメイン執筆は異世界系暗殺者です) 
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