ガンダムビルドファイターズ ~orbit~
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動き出す未来
「ついてねぇ……」
退院はしたはいいものを、俺は自室で机に向かって勉強をしていた。すぐに学校に行こうと考えたが、レイナが『だったらまず、高校一年生の範囲を全て熟知してから通ってください。テストとかは私が先生から沢山預かっておりますので』と言っていたので、どうやら先生達もテストで平均点以上の点数をとらない限りは留年確定らしい。
「まあ案外簡単だからいいんだけどな…次は暗記が主の世界史か。これまた面倒くさいものを…」
どうやら俺は記憶喪失になっても、今まで得た知識までは失われておらず、すぐに内容を理解する。まあ記憶喪失だから、失った分容量でも空いたんだろうな。ははっ…。
勉強を開始してまずは一学期最初のテストでクラス平均54.1点らしく、俺は初っぱなだから74.6点で無事通過。一学期終了前のテストでは59.3点に対して78.4点。二学期最初のテストは50.5点に対して76.6点。てかクラス平均低いな。
「はいレイ君。最後のテストです」
「あ~はいはい」
「全く。ちゃんとやる気あるのですか? 」
「いや無い。けど安心しろ。ちゃんと勉強はしたから」
「はぁ……。まあ頑張ってください」
レイナは部屋から出ていき、俺は最後のテストへと取りかかった。
ーーー--
「って一年生終わってんじゃねーか!! 」
テストが終わり見事に条件をクリアするも、なんと既に四月に入っていた。
「この時期なら行っても不自然では無いでしょう。気にしなくて問題ないです」
「俺の人生に問題ありまくりだ!記憶喪失のオマケにさらに十ヶ月も寝ていたんだぞ!?どんだけ時間たたせる気なんだよ!?どんだけ俺の記憶を飛ばす気なんだよ!? 」
「冷静になってくださいレイ君。ツッコミを入れた所で何も変わりません」
「ぐっ……! 」
「さあレイ君。そろそろ学校に行く時間ですよ」
「……分かった」
制服に着替え、鞄を肩にかけて靴を履く。
「そんじゃ行ってくる」
「「「「「レイ兄ちゃんいってらっしゃーい! 」」」」」
「行ってらっしゃいレイ君」
ーーー--
俺は入学式の日と同じように通学路につく。まわりの人は『学校嫌だー! 』や『カムバック春休み! 』と叫んでいる奴もいるが、俺からしたら、転校生の気分である。だって一日しか学校来てねえんだもん。
そのまま昇降口に行き、クラス変えをしたらしくズラーッと名前が書かれている表が貼られていた。『二年四組』が俺のクラスだ。
ーーー--
入学式兼始業式を終えてクラスに戻る。そのまま一人一人が自己紹介をする。ちなみに担任は我妻だ。生徒の気持ちをきちんと理解し、入学式兼始業式が始まる前に『校長の話は右の耳から左の耳に通しておいてくれ』と言っていた。要は聞き流せってことだ。
おっと、そうこうしている俺の番か。
「カグラ レイ。趣味は家事全般に体を動かすことだ。部活は入ってない。よろしく頼む」
自己紹介を終えると、まわりから何やらキャーキャー聞こえるが無視しよう。
余談だが家事全般はレイナの手伝いで身に付き、体を動かすのは子供達の遊び相手をしているからだ。部活?一日しか来れてない人間が部活に入っているわけねえだろ。
そのまま全員の自己紹介を終え、SHRをやってそれぞれ帰路についたり部活に行ったりした。
「あーー、終わった」
背もたれに寄りかかり腕を頭上に伸ばす。レイナの言った通り、この時期に来ると不自然ではないらしいな。
「カグラ君ってもしかして一年生の時いなかったよね? 」
前言撤回。一発でばれてんじゃねえかレイナ。
「確かにこんな二枚目した奴なんて一年生の時見なかったような…」
「カグラは一年生の時クラスどこだ? 」
次々と俺の机のまわりに人が集まってきた。俺は多少うろたえていると、突如襟を掴まれて椅子から落ちるように引っ張られ、そのまま俺は教室から連れ去られた。
誰だが知らんがこの状況を打開は出来た事には感謝するが、襟を引っ張られて首を絞められているので感謝する気持ちが半減している。
「お、お前!息が出来ないんだよ!自分で立って移動するから手を離せ! 」
「ん?あーごめんごめん」
襟から手を離され、俺は咳き込みながらも立ち上がって連れ出してきた奴を見た。栗色の髪の色で、それを腰まで伸ばした女だった。
「さて、それじゃついてきなさい」
「はあ?そもそも誰だよお前? 」
「相手に名前を聞くなら、まず自分から名乗りなさいよ」
一瞬イラッとしたが、相手の言う通りなので言われた通りにした。
「カグラ レイだよ。おま「まあ知ってるけどね。私はアマネ マヒル」 」
俺の言葉を遮るように自己紹介をしてきた。なんか聞いたことあるなーと思ったら、隣の席の奴だった。ちなみに席は教卓の前から二番目の席だ。てかそれよりも
「知ってんなら聞くなよ。だいたいどこに連れて「黙ってついてきなさい」……このやろう…! 」
俺は仕方なくアマネの後についていくと、校舎から出て外に連れ出された。
「……んで、俺に何の用だ?こんなところまで連れてきてよ」
「いいからついてきなさい」
「黙って言うこと聞いてりゃ、好き勝手言ってんじゃねえよ。そもそもなんで俺がお前の言う通りにしなきゃいけないんだよ」
「あの人混みから助けてあげたでしょ? 」
「首を絞められるというオマケ付きでな」
「なら無理矢理言うことを聞かせればいいのかしら? 」
アマネが突然そんな事を言い出したので、俺は何かするつもりかと身構えると、無防備のまま俺のところに歩いてきた。
アマネが俺の右腕を掴むと、そのまま自分の胸に一瞬当ててすぐに離した。
「はい、これであんたは晴れて犯罪者よ」
「……テメエ図ったな!? 」
「何のこと?実際に私の胸を触ったじゃない」
「あんな当たったかどうかもわからないのに犯罪者呼ばわりすんな!俺は戻らせてもらうぞ! 」
「だったら、この事を学校中に言いふらすわよ? 」
背を向けて教室に戻ろうとすると、アマネから言われた言葉に固まってしまった。
「……お前ぶっ飛ばすよ? 」
「なんなら殴られて無理矢理触られたって言ってもいいのよ? 」
結論、この女は悪魔だ。最悪の奴だ。
「さあどうするの? 」
「……お前いつか殺すからな」
「やれるものならどうぞ。それじゃあ行くわよ」
そこからある程度の距離を歩くと、外装からボロッボロの部室に着いた。看板が入り口のところに掛けられていたので見ると、『ガンプラバトル部』と書かれていた。
「さあ入りなさい」
「言っとくが部活には入らないからな」
そのまま扉を開けて中に入ると、既に一名、メガネをかけたTHE・ガリ勉がいた。
「部長。新入部員を連れてきました」
「いや入らねえよ」
「おっ?お手柄だねアマネ。ようこそガンプラバトル部へ。俺は部長で三年のアキザワ セイヤ。よろしく」
「あ、カグラ レイだ。よろしく頼む」
「カグラ君。あなたにお願いがあるの」
「ん?三回目だがガンプラバトル部に入る気ねえよ? 」
「私と組んでくれないかしら」
どうやら馬鹿でも三回も言えば言葉が通じるらしくて助かった。
「組むって何をだよ? 」
「いいから答えを聞かせてちょうだい。まあもし断ったら……」
アマネが自分の胸に手を当ててどうだと言わんばかりの顔をしている。この悪魔女……。
「…ああわかった!なんだが知らんが組んでやるよ! 」
「男に二言はないわね? 」
「ああ!当たり前だろ! 」
「じゃあ入部届を書いて出してもらいましょう」
はっ?
呆気に取られてると、アキザワが引き出しから一枚の紙と鉛筆を俺に渡してきた。
「……なあ。そういえば組むって何をだ? 」
「ガ・ン・プ・ラ・バ・ト・ル」
「地獄に落ちろ」
と言いながら、またさっきみたいに脅してくるだろうと判断し、しぶしぶ入部届に名前を書いた。
「ほ~らよっ……と! 」
鉛筆に入部届を巻き付け、そのままアマネに向けて思い切り投擲する(もちろん尖ってない方を先にして)と、見事に額にヒットした。
「~~~っ!痛ったい!何すんのよ! 」
「お前は馬鹿か?入部届を渡したに決まってんだろ」
「どう考えても鉛筆を投げてきたでしょうが! 」
「どう考えても入部届を渡しただけだろうが! 」
「まあまあ二人とも落ち着きな。とりあえず、改めてガンプラバトル部へようこそ。カグラ レイ」
アキザワの仲裁が入り、俺とアマネはそのままお互い顔を背け席に座った。
こうして悪魔女の策略により、強制的にガンプラバトル部に入部されられたのであった。
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