零から始める恋の方法
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約束
「あ、これかわいいですね」
「そうだねー、でも、これもいいよ。ほら」
「わー!すごいです!あ、でもデザインはこっちの方が・・・」
と、こんな感じで無事携帯電話も購入した。
一応二人で仲良く半分ずつ出すことにした。
なんか友達っぽいですね。
これが青春ってやつですか。
「利英さま」
雪ちゃんとの買い物を済ませ、家に帰宅したとき。
想夢が頼んでいたことを済ませてくれたみたいだった。
多分その報告だろう。
「・・・うまくいった?」
「はい。ですが、ここまでする必要があったんですか?」
「ええ・・・これも全部雪ちゃんのため・・・。私は約束を守る子だから」
十数年ほど前。
まだ紗由利や想夢、雪ちゃんや私の両親がいたころの話だ。
私たちの両親は共同で研究をしており、その関係で私たちは小さいころから交流があった。
初めて雪ちゃんとであったのはまだ私が満足に言葉もしゃべれないような頃の話だ。
雪ちゃんは忘れてしまったが、私たちには昨日のことのように鮮明に思い出せるほどの楽しい日々だった。
しかし、私たちは雪ちゃんに対してひどいことをしてしまった。
想夢にしてしまったことのようなことを雪ちゃんにしてしまった。
まだ何をされるのかわかってすらいないのに、ただその純粋な思いを利用してしまったのだ。
すべては私のせいだ。
私が病弱な存在でなければこうはならなかった。
雪ちゃんが私たちとの思い出を忘れることも、引っ越しをしてしまうこともなかった。
ずっとずっとみんな仲良く遊ぶことができたんだ。
私のせいだ、みんな私が悪いんだ。
だから、あの子と私は約束をした。
あの子がすべてを忘れる前の日に私はあの子を幸せにすると誓った。
「内容は・・・まだ変わっていないか・・・」
私はある一冊の本を机から引き出す。
その本には現在過去未来すべてのことが書かれていた。
いわゆる未来予知ができる本だ。
どちらかというとデバッグといったほうが近いかもしれないが。
「8月26日・・・この日の結末だけは絶対に変えてみせる。この日さえ乗り越えればあとは幸せな未来が待っているんだ・・・」
・8月26日(水)
紗宮京が持上雪菜により殺害される。
死因は鋸のような刃物によるもの。
遺体は首、手足などいたるところが切断されており、なおかつ顔面などはつぶされ、全身の骨は粉みじんという表現が正しいほど粉々に砕けていた。
その数十分後、上元京介が持上雪菜により殺害される。
死因は同じく鋸のような刃物によるもの。
こちらは急所を的確に貫いており、凶器なども放置されたままであった。また、遺体は比較的きれいな状態であった。
また、上元家、紗宮家、持上家の三家は持上雪菜の放火によって全焼した。
その数十分後、持上雪菜が線路に飛び込み、自殺する。
目撃者などによると、何かうわごとのようなことを言っており、遠目から見ても危険な状態であることは明白だったらしい。
「・・・いつみても本当のことだとは思えませんね」
「そうね。だから紗宮は絶対に止めないといけない。あの女は危険すぎるからね」
おそらく晩御飯ができたのだろう。
紗由利も部屋に入ってきた。
「さて・・・では、ご飯にでもしましょうね。せっかく作ったハンバーグが冷めてしまいますので」
「はーい!」
想夢は晩御飯が好物のハンバーグと知るや否や食堂へと駆けて行った。
それを見て、紗由利も食堂へと行こうとするが私が引き留める。
「なんでしょうか」
「お父さんとお母さんの行方はつかめてる?」
「いえ・・・。申し訳ございません」
「そう・・・。あと、なんか最近嫌な感じするんだけど変な動きとかある?」
「そうですね、何か工事が増えているようです。しかし、その工事の内容や説明などもでたらめでなんだか怪しい雰囲気があります。くれぐれもご注意を」
工事・・・ねえ・・・。
こういうのはカモフラージュのテンプレだけど、まさか・・・ね・・・。
「ありがとう。じゃあ、ご飯にしましょうか。引き留めて悪かったわね」
「いえ、いずれにしろ報告しようと思っていたことですので」
その工事のことについて少し雪ちゃんに注意を促したほうがいいかな・・・。
一応雪ちゃんのことだから一人で帰るようなことはないと思うけど・・・。
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