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零から始める恋の方法

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カラオケ

 「やっぱり利英さんはお上手ですね」


 「よくわからなかったけど、こんな感じでいいのかな?あ、次雪ちゃんだよー」


 初めに央山先輩が手本を見せ、続いて上元先輩が歌った。
 二人とも80点台という大山先輩の経験からして結構いい点数を取っていた。
 が、やはり利英さんは別格だった。


 「・・・98点なんて初めて見たよ。で、これ初見でしょ?」


 「そうですね。お店とかでたまにかかってるのを聞いてたりするだけなので、ちゃんと聞いたのはこれが初めてです」


 それで、98点である。
 よくテレビでカラオケがうまい人とか出てるけど、出れるんじゃない?
 ほぼ初見でこれでしょ?



















 「雪菜ちゃんもなかなかだねー。京介もそうだったけど、初カラオケにしては二人とも上出来だよ。いや、むしろ脱帽レベルだね」


 「そうなのか?俺はよくわからないな。ただ、好きな曲があったからやってみただけだ」


 「私これぐらいしか知ってる曲ないんです・・・」


 みんなポップスをうたっている中一人だけクラシックという。
 しかし、頑張ったかいあって93点という央山先輩の経験からしてクラスに必ず一人はいるカラオケうまい奴ぐらいの点数はとれたという。
 頑張ってよかった・・・。


 「じゃ、もう一曲行くか!」























 最後はデュエットということになった。
 簡易的にストローの入った袋でくじを作りペアを決めて行った。
 それを何度か行ったが、私と利英さんのペアのときは見事相性度87というとても良い結果が出た。
 というか、相性度なんてはかれたんですね。


 「歌、うまいんだな」


 帰り道、利英さんは紗由利さんに迎えに来てもらったらしい。
 なんでも初カラオケについて話したかったからだとか。
 こういうところは子供っぽいというか利英さんらしいというか・・・。


 「そんなことないです・・・。上元先輩も格好良かったですよ!」


 上元先輩が歌った曲は央山先輩が言うには懐メロという少し昔に流行った曲が多かった。
 私はみんないい曲だし、男性特有の渋い声もうまくマッチしているなーとは思ったけど・・・。


 「そうか?古臭い曲ばっかだから親父くさいとか思われないか心配だったんだがな」


 若干苦笑いしつつ、それでもなんだか楽しそうだった。


 「あの、上元先輩・・・」


 「ん、なんだ?」


 「あ・・・あの・・・えーと・・・今度、またカラオケに行き・・・ませんか?」


 不意に立ち止まってこんなお願い事をするのもなんだか不自然な話だ。
 どうして私はもっとうまく自然な流れにすることができないのだろうか。
 自分の不器用さ加減に腹が立つ、とはこのことか。


 「ああ、別にいいぞ」


 少し雰囲気が変わっていたので身構えていたものの、思いのほか軽いものだったので安心したようだ。
 だけど・・・。


 「あ・・・あの・・・できれば・・・その・・・」


 「まだ何かあるのか?遠慮することはないさ、言ってみろ」


 「そ・・・その・・・二人っきりで行きたい・・・です・・・」


 言ってしまった。
 これは私の勝手な思い込みかもしれないが、もしかしてデートと言うやつなのではないだろうか。
 だとしたら私は今上元先輩をデートに誘っていることになる。
 

 そ、そもそもアレだけくじを引いたのに、なんで上元先輩とペアになれないのかが不思議です!
 央山先輩と3回ぐらい歌って、利英さんとは二回ぐらい歌いました!
 でも、上元先輩だけ来なかったんです!
 だから、今度こそは一緒に二人で楽しく歌ってみたいんです!


 「ああ、別にいいぞ。ただ、そろそろ顧問が返ってくると思うから少し時間が空くかもしれないけどな・・・。ま、そこは我慢してくれよ?」


 「は、はい!」


 そう言って、私の頭をまた少し乱暴に撫でてくる。
 でも、この瞬間が今日一番の幸せだったのだろう。




















 
 で、翌日。
 昼休みに利英さんが私力作の海苔弁当を食べながらこんなことを言ってきた。


 「そういえば、雪ちゃんって携帯持ってたっけ」


 「あ、最近買おうか悩んでるんです」


 「んー・・・よければ、放課後見てくる?」


 なんというか、最近利英さんはなんでもその日中に済ませようとしてくる気がする。
 気のせいだろうか。


 「別にかまいませんが・・・お金がちょっと・・・」


 「大丈夫だよー。どーせ、私も買い換えたかったから一緒にかっちゃおう!二人で買うと半額なんだって!」


 ということは、実質一台分で二台の携帯が買えるということか。
 これはかなりお得だ。


 「でも、数量限定だから急がないといけないんだよね・・・。今日部活大丈夫?」


 「ええ・・・少しいけないことですけど、なんとか休めそうですので・・・」


 「そっか・・・。なんかごめんね?」


 「いえいえ、別に大丈夫ですよ。携帯電話があると部活内での連絡なども便利になりますし」




















 「・・・行ったか。雪ちゃんには悪いけど・・・これも仕方ないことだから・・・」


 本当は携帯なんて持っている。
 あの心配性の紗由利が連絡手段もなしに私を単独行動させることなんてまずないことだ。


 「本当に・・・ごめんね・・・。でも、絶対幸せにして見せるから・・・。今度こそ、絶対に・・・」


 上元の連絡先は央山から聞いている。
 そして、セッティングもできている。
 今回はかなり順調だ。


 「・・・あとは、紗宮だけか」


 私は想夢に電話を入れる。
 多分自宅で通じるはずだ。


 「あ、想夢。うん、ちょっとお願いがあるんだけど・・・うん、うん。そう、できるでしょ?」


 多分これで紗宮はでしゃばってこないはず。
 実際このケースは初めてだからどうなるかはわからない。
 だが・・・紗宮さえ押さえつければ・・・。


 「大丈夫だよ、雪ちゃん。雪ちゃんの幸せは私が絶対にかなえてあげるからね・・・」


 
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