戦国異伝
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第二百十八話 太宰府入りその十三
「疲れが心にも出る、下がるしかない」
「では」
「一旦下がりましょう」
「無念ですが」
「皆の者、よいか」
義久はすぐにだった、全軍に告げた。
「ここは一旦退く、そうしてじゃ」
「後はですな」
「どうするかは」
「それを、ですな」
「決めますか」
「そうじゃ、その為にも今は下がるぞ」
こう告げてだった、そのうえで。
喜久は軍勢を下がらせた、後詰は歳久が務めた。その退きは見事で隙のないものだった。その退き
見てだった。
信玄は笑みを浮かべてだ、こう言った。
「流石四兄弟よのう」
「はい、実に」
謙信も答えた、信玄のその言葉に。
「よい退きです」
「そうじゃな」
「流石島津四兄弟です」
「退きも心得ておるな」
「まさに天下の逸材です」
「ですから」
それで、というのだ。
「見極めていますね」
「そうじゃな、ではな」
「はい、我等も」
「ここで追ってもじゃ」
追撃を仕掛けてもというのだ。
「兵を失うだけ、だからな」
「攻めるのを止めて」
「大友家の方々と合流しようぞ」
「高橋殿をお救いして」
このことは謙信から言った、こうしたことを話してだった。
織田家の先陣は島津の軍勢を追わず今は高橋、立花の軍勢と合流した。こうして岩屋城は救われた。この報を受けてだ。
玄界灘に向かっていた信長はにやりと笑って周りに言った。
「これでよしじゃ」
「高橋殿をお救い出来た」
「だからですな」
「そうじゃ」
こう加藤と福島にも答えた。
「岩屋城も守れたしな、これでな」
「島津家に九州を全て渡さずに済みますな」
大谷も言って来た。
「そうなれば厄介でしたが」
「島津を滅ぼすつもりはない」
信長もこの考えはなかった。
「別にな」
「はい、島津家は代々薩摩と大隅の守護であります」
石田もこのことについて語る。
「それ故に薩摩を治められるとなれば」
「島津家しかない」
「しかも天下への野心はありませぬ」
「なら滅ぼすこともない」
信長もそのことがわかっているのだ。
しかしだ、それでもというのだ。
「だがな」
「はい、しかし」
「うむ、九州全てはじゃ」
「とてもですな」
「そこまで渡せばじゃ」
島津家にだ。
「強くなり過ぎじゃ」
「それ故に」
「あそこで岩屋城を渡す訳にはいかなかった」
そうだったというのだ。
「若し岩屋城を渡せば」
「はい、それでです」
「後は一気にでした」
石田と大谷が信長に話した。
「九州を併呑していました」
「瞬く間に」
「岩屋城を攻め落とされるとな」
信長は大友の立場に立って言った。
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