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戦国異伝

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第二百十八話 太宰府入りその十四

「それで一気にじゃった」
「大友は滅んでいた」
「それで、ですな」
「我等の目の前で」
「そうなっていましたな」
「間違いなくな、確かに我等は出陣した」
 三十万の大軍でだ、安土から。
「しかし普通に進んでおるとな」
「間に合いませんでした」
 島が言って来た。
「残念ですが」
「そうじゃ、紙一重でな」
「島津は九州を飲み込んでいました」
「そしてじゃ」
「上様に自分達のを治めることを認めさせていましたな」
「到底認めぬがな」
 最初からだ、信長もそのつもりはない。
 しかしだ、それでもなのだ。
「そこから九州に攻め入るとなるとな」
「はい、厄介でした」
「中々難しいところじゃった」
「だからですか」
「信玄と謙信を先陣にしたのじゃ」
 この二人をというのだ。
「あの二人の用兵は速い。しかもわかっておった」
「どうすべきかと」
「何としてもじゃ、騎馬隊を先に行かせてもな」
「岩屋城を助けるべきでしたな」
「それで果たしてくれた」
 信玄と謙信がというのだ。
「よきことじゃ」
「その通りですな」
 島も信長のその言葉に頷いた。
「あれが並の将で槍や鉄砲の足軽なら」
「間に合っておらぬ」
「島津は我等が玄界灘に入るまでに大友も龍造寺も滅ぼしておった」
「岩屋城を攻め落としてな」
「まことに危ういところでした」
 大谷は瞑目する様にして述べた。
「実に」
「そうじゃった、しかし岩屋城を救うことが出来て」
 それにとだ、信長はまた大谷に話した。
「それにな」
「はい、しかも」
「九州において島津と戦う足掛かりも出来た」
「太宰府に入りそのうえで」
「あそこを足掛かりとしてじゃ」
 そうしてというのだ。
「島津と戦う。よいな」
「では」
「さて、ではじゃ」
 信長はあらためて言った。
「我等もじゃ」
「玄界灘を渡り」
「そのうえで」
「島津と戦おうとも」
「九州をまとめますか」
「そうじゃ、島津は九州を一つに出来ぬ」
 到底というのだ。
「ではな」
「はい、では」
「これより」
 周りの家臣達も応えた、そうしてだった。
 信長が岩屋城を救えたことを喜びつつ先に進んでいった。彼もまた限界灘を渡り九州に入ることとなった。


第二百十八話   完


                       2015・2・23 
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