ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第107話 眠れる森の姫
~第22層・コラル 湖畔のログハウス《レイナ・リュウキ宅》前~
沢山遊んで……いろんな所へ行けて……、そしてリュウキとの関係ももっと深く結ぶことが出来たレイナ。毎日がくすぐったくて、恥ずかしくて……でも心地よい。
そんな生活がずっと続けば良いなぁ、とレイナは芝生に寝転がり空を眺めていた。リュウキの太腿を枕にして……。
「くすっ……」
「ん? どうした?」
レイナは、リュウキの顔を見てニコリと笑った。その笑みを見てリュウキは気になったのか、レイナにそう聞いた。レイナはただ笑って。
「んーん……何でもないよっ……。ただ、幸せだな~って思ってね」
「……ああ、同感だよ」
リュウキも笑顔になって、彼女の額に手を当てた。そして、目に掛かりかかっている髪の毛をすっと梳きつつ撫でる。
「くすぐったいよぉ、リューキくんっ」
「悪い。……ただ、癖になってしまいそうだな。心地良い感触だから」
「……もうっ///」
レイナはふにゃりと表情を緩ませた。リュウキの掌の感触、そしてその温度の全てを感じられる。
温もりを感じられる。2人は暫く日光浴を、その一瞬一瞬の幸せを堪能していた。
そしてその後。
「ん? あれは……」
「あ、お姉ちゃんとキリトくん。どこに行くんだろう?」
ふと、湖畔の沿道を見たらキリト達がいるのに気がついた。キリトはこちらに気づいて軽く手を振っていたのだけど、アスナの反応が何処となくぎこちない。……少し気になったから、レイナはひょいっと起き上がって、2人の方へと向かったのだった。
――……そのアスナの反応が、仕草の原因がなんだったのか、それを聞いた時、後悔するのも知らずに。
……話によるとキリトとアスナは、どうやら森へと向かうとの事。何でも心霊スポットがあるとかないとか。アスナはしきりにリュウキに『そんなのあるわけないよね?』と言っていたが……。確か、以前にも言ったとおり、デジタルデータは数列の1つでも変われば大幅に変わってくる。だからこそ、バグはどんなものにでも存在する。
その原因ははっきり言えば解らない。だからこそ、何十時間、何日もかけて、プログラマーは確認、潰していくんだ。
それでも……残っていたりは必ずする。なぜそんな事が起きるのだろうか、その引き金は一体何なのだろうか。……そして、それこそがデジタル世界の心霊現象だと言っても否定は出来ないんだ。
リュウキがそう真顔で真面目に答えたら……、アスナは一気に蒼白になっていった。
でも最後には、キリトの挑発も少なからずあったせいか。
『絶対無いよ!! 証明するもんっ!!』
って言いながら最後は意地で向かったのだ。この時、レイナはそそくさと、行かない方向へと持っていっていた。どうやら、姉妹共々にオカルト系は苦手のようだ。
この世界のモンスター。アストラル系ででも普段の倍増しで声を上げているのだから。
リュウキは、この時レイナが行きたい場所に65,66層が無い理由がはっきりと理解したのだった。
そして、家に着くなりレイナは。
「わ、わたし別に怖くないよ~?? だ、だって 折角の休暇なんだからさ、お姉ちゃんとキリト君の2人きりにさせてあげたいでしょっ!? そ、それに私達と一緒で新婚さんなんだから! 新婚さんなのっ! 邪魔しちゃ悪いのっ!」
そう言っていた。
……でもレイナは明らかに、声が裏返っている。ここまで解りやすければ、リュウキでも解るだろう。
「……なるほどな」
「な、何が なるほどな、なのっ!! 怖くなんかないんだからねっ!」
リュウキが笑いながら言っているからレイナも意地になったようだ。その笑顔を見たら、何がなるほどなのか、判るから。リュウキはそんな彼女を見てニコっと笑うと……。
「そうか。なら……、後で行って見るk「やだぁぁっ!!」」
リュウキが『行こう』そう言おうとしたと同時にレイナが、ぎゅっ!っと両手を握り締めながら首をぶんぶんと左右へと振った。そして、若干涙目になっている。……その怯えている姿が……リュウキには何処と無く可愛く見えて。
リュウキは、笑っていた。
「あぅ……リューキ君がSになったよぉ……」
レイナは笑っているリュウキを見てそう言う。
SかMか?って聞かれたら……、はっきり言って解らないんだけれど、リュウキの事はどっちでもないとレイナは思っていたんだ。でも、今の姿を見たら……、どう見てもSにし見えないと思った様だ。
「……ん? ……S??」
リュウキはレイナが言っている《S》と言う意味が解らなかったようで首を傾げていた。それも本気で言ってるから、自覚がなくそう言う事をしているのか?っとレイナが思った瞬間。
「もーーっ! Sは、サディズムって事だよっ!! その頭文字からSって言うのっ!! リュウキ君、今、楽しんでるように見えるからっ! どSだよぉ~~!」
レイナは少し顔を赤くさせながらそう言った。握りこぶしを作って、リュウキの胸目掛けて振るう。
「……ああ。なるほど」
リュウキは1つ理解したように頷くと。再びレイナの方を向いて笑う。
「何も別に喜びを感じている訳じゃないぞ?」
「えー……だって、私をいぢめてるもん……。すっごく、いぢめてるもんっ」
レイナはぐすっ……っと涙を拭った。本泣きしてるわけじゃない。これはデフォルメ泣きだ。それはリュウキも重々承知な訳で本気にはしてないけれど。
「ああ、虐めていたわけじゃないんだが……、何だか、レイナが 可愛くて……その……」
ここまで言うと少し照れくさいからリュウキは直ぐにそっぽ向いた。そんな事をそんな顔で言われても……。
「む~~///」
ただただ、レイナは顔を赤らめ頬を膨らませる事しか出来なかった。
その後は、22層を中心に2人でデートを続けた。
その道中、キリト達以外にもプレイヤーは何名かいた。主にこの綺麗な湖で釣りをしているようだった。釣りはこのゲームのサブイベントでもあり、娯楽の1つでもある。だが、デスゲームとなってしまった今では、攻略に参加しないプレイヤーにとっては娯楽である以上に貴重な生活資源だ。釣った魚のグレード次第で、収入源にもなるし食料にも勿論なる。早い話、釣りスキルをコンプリートすれば、かなり使えるスキルとなるんだ。
それに、ここ22層はアインクラッドで最も人口が少ないフロアの1つ。
その理由が、フィールドにモンスターは出現せず、更にはこの層の迷宮区の難易度もかなり低い。リュウキやキリト、そして 各ギルドの面々たちが攻略に乗り出し、僅か3日で攻略される程のもの。だから、安全に釣りをしようと思えば此処が最適な場所だろう。
「私たちも今度試してみようかな?釣りっ!」
レイナはリュウキにそう言う。
「ん。そうだな。そう言えばこれまで試した事は無かった。」
リュウキも釣り人たちを見ながらそう呟く。戦闘以外のスキルは見向きもしてなかったから。
たまには悪くない……と。
「ん~……。あっ!」
レイナは何かを思ったのか……、リュウキの顔を覗き込んだ。
「リュウキ君が、お魚を釣って調達してきて、私が美味しく料理するっ!って言うのも有りだよね?」
専業主婦になる! と言う事だ。
――……旦那さんが稼ぎ……奥さんが支える!
最近は共働きが主だけれど、……そう言うのだっていいじゃん!とレイナは思った様だ。男女平等と銘打って、女の子だって働く時代だ。……自分の母親も……そうだから。
「そうだな。レイナが作るのなら、……更に気合入る。毎日が楽しみだ」
リュウキは笑顔で答えた。レイナが作る料理は文句なく美味しい。一緒に食べれば尚更だとリュウキは思っているし、何度も言っていた。その度に、レイナは顔を赤らめて礼を言うのが恒例となっている。
「あはっ……! 頑張るからね~!」
レイナは、ぎゅっ……とリュウキの腕を取った。その2人の微笑ましい姿は釣りプレイヤー達からもよく見える。まさか……同じようなカップルが2組もいるとは思ってもいなかったから、初めこそは少し驚いていたようだけれど、直ぐに笑っていた。
そして、レイナもそれに答える様に手を振った。
「ほらっ! 手、振ってるよ? リュウキ君もっ!」
「……それは、カンベンしてくれ」
リュウキだけはそっぽ向いていた。どうやら、大っぴらに見られている……とは思っていなかったようで、やっぱり恥ずかしいようだ。
「あはっ!」
レイナは再度手を振るとリュウキの腕を取り……再び歩き出した。太陽の光の中へ向かって。レイナは、光に向かって手を伸ばす。このまま、願った未来へと……ずっと2人で行きたい。
そう強く想っていた。
そして、更に暫くして。
2人が木陰で休みレイナが作ってきてくれたお弁当を楽しんでいるときだ。
「あれ?」
レイナが何かに気づき、右手でメインウィンドウを開いた。どうやら、メッセージが来たようだ。
「ん? どうかしたか?」
リュウキが覗き込むように……、まぁ プライバシーもあるから実際には覗いていないけど、リュウキは聞いていた。
「んー……、メッセージが来たみたい。お姉ちゃんからだったよ」
レイナは、メッセージを読みながらそう言う。……でも、その内容がよく解らない様子で首を傾げていた。
「ん~っとね……、子供がなんとか、だって」
「子供?」
「うん」
レイナは、ちょっと頭に『?』を浮かべながらそう言う。リュウキも同様だ。
「あはは……、ひょっとしてもう子供が出来たのかなぁ?」
内容が内容だから……、どうやら、かなり慌ててメッセージを打ったみたいだ。
その内容は以下のとおり。
『子供が……!森で、オバケかと思ったら!兎に角、リュウキ君と一緒に来てっ!』
と言うものだった。
確かに長くはない文面、……うん。よくわからない。リュウキもレイナから見せてもらったようだが、確かによく解らない。
レイナは、ありえないと思えるが、もしも子供が出来たとすれば、おめでたいだろう。……けれど、そんな感じはしないのだ。アスナは慌ててメッセージをうったのだけは伝わってきた。
「新しい生命が、この世界で生まれる……とは考えにくいな。AIならありえそうか?だが、それはイベント系だろう。……だから、何かしらのイベントが……?いや、なら キリトやアスナだったらわかる筈だが」
リュウキは考え込んでいた。イベントの発生かどうかを見分けるのは簡単だ。クエスト開始のアイコンがNPCの頭上に現れる。そして、受けるか否かを入力するのだ。ここまで1年以上やってきているんだからわからない筈がない。キリトだってアスナだってそうだろう。
「ん~~。そうだよね? お姉ちゃんたちなら解ると思うけど、こんなメッセージくれてるし。とりあえず行って見ようよ。いけばきっと解ると思うしね?」
レイナはメッセージを消しそう言った。リュウキは勿論頷いた。混乱するような事態が少なからず興味をそそるのだ。
「さっ! 行こっ!」
レイナはリュウキに手を伸ばす。……レイナは、ちょっと気になることもあったんだ。
それは、≪子供≫と言うワード。
その……倫理解除コードがあるんだから 子供だって……と。この世界で……、結ばれたんだから、2人の愛の結晶である子供を授かる事が出来たらどれだけ幸せだろう……と。
(ッッ!!! わ、私ってば何をっ///)
レイナは、ぼひゅっ!!っと顔が一気に紅潮する。火炎ブレスどころか……、火山噴火……太陽の紅炎が顔に直撃した様な…。そんなの喰らったら死んじゃうけど、悶え死にそうになっていた。
「……ん? どうかしたか?」
リュウキは突然止まったレイナにそう聞く。
「やっ! な、なんでもないヨ? 早くイコっ!」
そそくさとレイナは飛び出した。リュウキに今の顔を見られないように。自分でも、明らかに真っ赤に茹で上がっているのが判るから。
「?」
リュウキは勿論わかっていなかった。
そして、場所はキリトとアスナの住むログハウス。
2人は森で出会った少女。
厳密に言えば、森の中で倒れた少女を見つけ保護したらしい。ここ、SAOでは心臓の鼓動や呼吸を感じ取る事は出来ない。人間の生理的現象の殆どの再現が省略されているのだ。自発的に息を吸い込む事は可能で気道を空気が動く感覚はあるが、仮想体自体は無意識呼吸を行う事は無い。既に心臓の鼓動も緊張したりしてこうしてドキドキすると言う≪体感≫はあるものの、他人のそれを感じ取る事はできないのだ。
「でも、消滅してない……ってことは生きてるって事、だよな」
「う、うん……、こうして家に移動させられたからにはNPCじゃないみたいだし」
ベッドに寝かせている少女。
何度目を凝らしても、カラー・カーソルが出現しないのだ。この世界では、通常 存在し動的オブジェクトならプレイヤーだろうが、モンスターだろうが、NPCだろうがターゲットした瞬間に必ず表示されるのだ。
何かのイベントならアイコンが出現し、クエスト謳い文句の文章も表示される。それが何も無いんだ。ただ、見ているだけでは生きている,くらいしか判らない。
「……リュウキなら何かわかるかもしれないな。アスナ、いい判断だ」
「あ……ははは。慌ててメッセージ出したから、ちょっとおかしい文になっちゃったけどね」
アスナはキリトにそう言われて苦笑いをしていた。
このシステム的な異常な事態には、彼の助言は頼りになるのだ。キリトは負けず嫌いと言えば、負けず嫌い。ゲームの世界ならば基本的にどんなプレイヤーでも根っこにはその感情がある。だが、リュウキのそれに関しては、完全に上と自分の中で認めているんだ。
あの≪眼≫に関してもそうだから。
「でも、どうしてこんな小さな子がSAOの中に……」
アスナは直ぐに表情を直し、唇を噛んだ。
今はデスゲームとなってしまっている危険な仮想空間にこんな小さな子供がいる事に驚愕を隠せないのだ。それに必ず守っているか?と言われれば少ないかもしれないけど年齢制限だって存在するのに。
「10歳……いや、8歳くらいかな」
「それくらいだね。私が見た中ではダントツで最年少プレイヤーだよ」
「そうだな、以前にビーストテイマーのシリカ、女の子と知り合ったけど、それでも13歳くらいだったからなぁ」
アスナははじめて聞く話に思わずキリトの顔を見やってしまっている。
「ふぅん……、そんな可愛いお友達がいたんだ」
「ああ、たまにメールのやり取り……って、いやそれだけで、何もないぞ!? あの時はリュウキもいたし、結構状況が状況だったし」
「ふぅぅん……、どーだかねー。キリト君もリュウキ君もすっごい鈍いし。……それに、そんなに前って事はレイとリュウキ君が付き合う前だよね……? 正直、2人揃ったら、超鈍感チーム結成ってヤツじゃん!?」
アスナは、つんっ!と顔を逸らせた。鈍感鈍感と言われてキリトは少し心外そうだったが、リュウキの事も見ているし……、周りから見れば自分も??と思ってしまった為、風向きを変えようとした。
「おっ! こんな時間だな! そろそろ2人だって来るかもしれないし」
「そーだね……。でも、その話は2人が来たらちゃーんと、話し聞かせてもらいますからね」
「うっ……」
そんなこんなでレイナとリュウキもその後到着した。
――……到着するなり、突然メッセージとは関係の無い、そのシリカの事から始まった。
レイナは、初めはメッセージ内容と違うから、困惑した表情だったが……、話を聞くに連れて、どんどん喰らいついてきたのだ。シリカの件はレイナもリュウキから聞いていなかったから。リュウキ自身は、別に隠していたわけじゃないが、レイナにはそう見えたようだ。それに レイナは直ぐにやきもちを妬いてしまう。
所謂、彼女は独占欲がやや高い?と言う事はもうリュウキも判っているから。
「はぁ……、キリト、あの時の事ちゃんと説明してれば良かったんじゃないか?」
「う……それはそうだが、お前もそうだろ!」
「話す必要ないって思ってたからな。あまりいい話でもないから」
「「え!」」
レイナとアスナは、少し驚き声を上げた。
女の子の話であまりいい話じゃない、と言う事は……。
(ひょっとして……)
(振られちゃったとか?)
2人がそう思ってしまうのも無理はないだろう。……だが、正直ありえないとも思えてしまっていた。
難攻不落、超絶鈍感リュウキ君とそれ程でもないが鈍感に分類されるキリト。そんな彼らがこれまでに異性と付き合ってた……なんて、思えないし、思いたくもない。
だから、その2人に回避わされる事はあっても、逆なんて……と。
でも、告白とかするだろうか?とも……思ってしまうのも仕方がないだろう。
「……オレンジギルドのひとつを叩き潰した話だ。その内容が内容だからあまり話したくなかったんだよ」
リュウキはレイナに、そしてアスナに伝えた。あのオレンジギルド・タイタンズハンドの事を。
ある壊滅したギルドの生き残りに依頼されたことも。その過程で、ビーストテイマー・シリカと出会い彼女を助けた事で知り合いになったと。そこまで聞いたアスナは、ちょっとブスっとした表情で。
「もう。それを早く言ってくれたら私だって……」
「わ、悪かったって」
キリトはアスナに謝っていた。あの時の自分とキリトは、そこまで話をしていたわけではないけれど……、攻略組、血盟騎士団でも危険ギルドに関しては、ちゃんと取り締まる姿勢を見せている。その事から、キリトとの切っ掛けがもっと早く生まれたかもしれないのに。とアスナは思ったようだ。そして、レイナはと言うとリュウキの脇辺りを肘でつついていた。
「……ほんっとに何もなかったの?」
「……ん? 何も? どういう事だ?」
それを持ち前の天然鈍感で軽く回避したリュウキ。そんな姿を見たらレイナは何も言えない。鈍感だけれど、あることは、流石にリュウキは黙っていた。
彼女に《エメラルド・リング》を渡した事、だ。
あの時は50層以下と言う事で、生き残りの率が圧倒的に上がるからと言った理由で渡したのだが、……当時は指輪を渡す事を深く考えていなかった。
でも……後々に何も無ければいいけどね。
別にキリトと口裏あわせをしたわけじゃないから。
「それは兎も角、一体何があったんだ?アスナ。あの内容じゃいくらなんでもわからない」
「あぅ……///」
アスナは、慌ててメッセージをうった事を思い出し顔を赤らめていた。大急ぎでメッセージを送ったから、物凄く端折った内容になってしまっていたのだ。そして、経緯を2人に伝えた。森で少女に出会ったこと、その少女の不可解さ、カーソルに表示されず、よく判らないプレイヤーなのか、すら断言できなかった事。
……何よりもまだ目を覚まさないと言う事を。
「ふ……ん」
皆は、その寝ている少女の所へと向かった。リュウキは、その眠っている少女を≪視た≫。
確かに妙な違和感を感じる。
だが、NPCとは間違いなく違う。
デジタルデータの数列が常に変化しつつプレイヤーや、オブジェクトを構成している。プレイヤーは人間。意志が存在しているものだが、NPCは違う。予め決められたデータ、アルゴリズムに基づき行動、言動をしているんだ。だから、その情報量はプレイヤーとは圧倒的に違うし簡略的だから。
でも、目の前で眠っている少女のそれは遥かに違ったのだ。
「……確かに、妙だな。キリトが言うようにバグの可能性も高い……が」
リュウキは腕を組み考える。
NPCではなく、プレイヤーだろうとキリト達は思っている。それはそうだろう、何故ならNPCであればホームに連れてくる等出来る訳が無い。無闇矢鱈に連れて行こうとしたら、NPC用のハラスメントコードが発動してしまうからだ。それが無いということは、十中八九人間だろうと、普通なら思える。
だけど……違和感が拭えないのは事実だ。だから、深く探る為にも、もっと集中して彼女を視る必要があるのだけど……。
(リュウキ君……、その あまり≪あの眼≫、使わないでね)
レイナはそっとリュウキに耳打ちをした。彼女にはもう既に判っている。眼の事とそのリスクも。
以前にリュウキは、レイナに追及されて、話をちゃんとしたからだ。使い過ぎたら、疲弊してしまう。
ステータスに関係なく動きが鈍る、現実世界でいう立ち眩みににた症状が出たり、最悪失神もする事もあるんだ。
心配する彼女を見たらリュウキは従う以外ないだろう。
自分の事を心配してくれているのだから。
「ああ、大丈夫だ。……それに、無茶をする場面でもないからな」
「……うん」
レイナは安心して、眠り続ける女の子の頬に手を添えた。鼓動は触覚通して伝わる。
間違いなく此処に存在しているし無事なのは確実。ならば、無理に視る必要も無いだろうとリュウキは判断した。
「私達もギルドにいて色んな子に会ったけど……。この子が最年少だよね。7,8歳かな」
「やっぱり同じ見解よね。私達もそうだよ」
アスナはレイナの言葉に頷いた。レイナとは同じギルドだから当然だろう。
「……まず間違いなく生きてる事は正しいな。消滅してないと言う理由もあるが、視た所それは間違いない」
「……それなら安心だ。だけど」
「ああ。この子が目を覚ますまで 目を離さない方が良いのも間違いは無いだろう。目を覚ましたら、このコに直接、聞いてみるのもいい」
キリトの言葉にリュウキも頷き、皆頷いた。
そしてまた明日も来ると言う約束を交わしたのだった。
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