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2部分:第二章


第二章

「それ以外は全て取ってしまえ」
「わかりました」
 腹心の者達は平然と答えた。そうして何とか逃れようともがく捕虜達を次々と押さえそのうえで目をくり抜いていく。くり抜かれた目は無造作に落ちその付け根は汚れた血で塗れていた。
 顔も血糊で染められた深い穴が顔の奥にありそこから外を睨んでいる。最早目はないがそこから睨んでいる様であった。そうしてそのうえで痛みと怒りに震えながら叫んでいた。
 まさに地獄絵であった。周りの者達はそれを見てある者はその場に卒倒しある者は倒れ込んだ。しかしモンフォールはそのおぞましい絵を見て一人残忍に笑っていた。
「そしてだ」
 最後の方になって彼は言うのであった。
「目は一つだ。最初に言ったな」
「はい」
「一つですね」
「最後の一人の目だけは置いておけ」
 こう腹心たちに告げるのであった。
「わかったな」
「わかっております。それでは」
「目は一つだけ残します」
「他の目は全てくり抜いてしまえ」
 何でもないといった言葉であった。そうして実際に目は一つだけ残されたのであった。
 シモンはその目をなくした者達を追放した。追放された彼等はその一つだけ目を残された者に先導されて路をふらふらと歩いていく。誰もがそれを見て怖気付いた。
「シモン=ド=モンフォールのしたことだ」
「あれこそが」
 誰もがそれにえも言われぬ恐怖を感じた。やがてそのふらふらと彷徨う彼等に血糊の匂いを嗅ぎつけた烏達が群がり彼等をついばんでいく。こうして追放された者達は無惨に食い殺されていった。
 その残された目は城の城門に晒されていた。しかしそれにも烏達が群がりそのうえでついばんでいく。モンフォールはその様子を見て笑っていた。
 そしてそれだけではなかった。ラヴォールを攻めた時だった、この城は一旦投降してから寝返った城だったのでその処罰は苛烈にする必要があった。
 ということだったが実際にはモンフォールは最初から例によって残忍な処刑を考えていた。そしてそれを実行に移す段階になるとだった。
「縛り首の用意をしろ」
「縛り首のですか」
「捕虜の数だけだ」
 それだけ用意しろというのであった。
「いいな、まずはそれだけ用意するのだ」
「それでは全員処刑ですか」
「そうだ。そしてだ」
 ここでまたしてもであった。モンフォールは残忍な笑みを浮かべた。そうしてそのうえでさらに述べるのだった。いつもの様に残忍な処刑をだ。
「領主の奥方もいたな」
「はい」
「そちらはどうしますか」
「その分の処刑台はいい」
 それはいいというのであった。
「それはな。ただしだ」
「ただし?」
「生かしはしないのですね」
「そんなつもりは最初からない」
 酷薄な笑みでの言葉であった。
「最初からな」
「そうですか。ですが」
「一体どの様にして」
「まずは他の者を全て処刑しろ」
 最初はそれだというのだった。その奥方を残してだ。
「わかったな」
「はい、それでは」
 こうして他の捕虜達が全員処刑されたのだった。まずはそれからであった。
 彼等は横に並べられてそのうえで吊るされた。無惨にだらりと垂れ下がった死体が風に揺られていた。しかしそれだけではなかった。
 その奥方だった。既に夫はなく未亡人になっている老婆であった。しかしモンフォールはその老婆に対しても何の慈悲も見せなかった。
 その老婆に処刑を一部始終見せたうえで。あらためて部下達に告げるのだった。
「井戸の中に放り込め」
「そのうえで餓死させるのですね」
「違う」
 そうではないというのだった。
「そこから石を投げ込め」
「石をですか」
「石で打ち殺すのだ」
 そうしろというのだった。
 
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