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ダンジョンにSAO転生者の鍛冶師を求めるのは間違っているだろうか

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ダンジョン

 
前書き
第一話がかなり手抜きだったと思い、かなり加筆修正させていただきました。
それと、SAOのスキルModの存在を忘れていましたので、それを設定に新しく加えました。
なので手数をかけることになりますが、第一話をまた呼んでいただくことになります。
まことに申し訳ありません。
こんなことはこれ以後無いように精進していく所存です。
 

 
 部屋、というか工房の机の上にある銀光沢の分厚いガンドレットを腕にはめ、黒い鞘に収まった剣を腰のベルトからつり下げて俺は外に出た。
 この装備はよく使うので、アイテム欄(ストレージ)に入れたいが、これに慣れると、うっかり人前で使ってしまいそうだから、他のアイテムも含めて、できるだけ控えている。
 外は真上に昇った太陽に日光で照り輝いていて、光源が炉の炎だけだった薄暗い工房にいたこともあって、思わず(まぶ)しさに目を細めた。
 だけど、目はすぐに慣れ、工房から出た開放感で不意に背伸びをしながら、外の澄んだ空気を吸い込んだ。凝った背や腰からのぽきぽきという心地のいい音を聞きながら、目的地に向かって歩き出した。


    ◆ ◆ ◆


 歩くこと一〇分、目の前に蒼穹を衝くようにそびえ立つ白亜の塔が見える中央広場に着いた。
 『中央広場』の『中央』は何の中央を示すのかというと、この迷宮都市オラリオの中央だ。
 ほとんど工房とファミリアの本拠と目の前の白亜の塔の地下に広がるダンジョンぐらいにしか足を運ばないからこの都市の地理に悲しいぐらい暗いけど、知っているかぎりで説明させてもらうと、この都市は、長大で重厚な市壁に囲まれた広大な面積を誇る円形状で八方位に巨大なメインストリートが伸びている、という感じ。
 それで、俺は、この都市が迷宮都市と呼ばれる所以の場所に向かっている。
 それが、前述のダンジョンだ。
 ダンジョンは沢山の階層に別れていて、それぞれの層から固有のモンスターが絶えず生み出されている。
 フロアの広さは深く潜れば潜るほどに広くなり、モンスターの強さは深く潜れば潜るほどに強くなる。
 そのモンスターを狩りにダンジョンに潜る者をこの『世界』では冒険者と呼んでいて、彼等はモンスターから得られる『魔石』や『ドロップアイテム』を換金して所属ファミリアに寄与するのだけど、俺の目的は違う。


    ◆ ◆ ◆


 ここはダンジョンの四階層。
 一階層~四階層は初心者のための階層、という感じ。
 どの階層もそれほど広くなく、入り組んでないし、出てくるモンスターがゴブリンとコボルトだけ。
 お節介な俺の担当のアドバイザーいわく『ゴブリンとコボルトは弱いけど、油断した冒険者が群がられて亡くなってるんだから!絶対に気を抜かないでね!!』らしいんだけど、俺にはあまり意味のない助言だった。

 『ギギッ』

 薄青色の通路の角を曲がると、そこでゴブリンが俺を待ち構えていた。
 俺の金属製の靴の底が立てる音を聞き付けたのだろう。
 だけど、ご愁傷様と、言うしかない。
 Lv.1の冒険者にさえ(ほふ)りまくられているゴブリンはLv.4の俺にとって雑魚中の雑魚モンスターだ。
 腰に釣り下げていた剣を居合切りの要領で抜剣して、そのままゴブリンに水平切りを放った。
 振るった剣はあっさりとゴブリンを腹部を境にして両断した。
 俺は普通に振るったつもりだけど、ゴブリンには自分の身に何が起きたのか理解できないぐらいの一瞬のことだったと思う。
 余波で二つの肉塊になって吹っ飛ぶゴブリンの頭の上に見えるModと示す赤のカラーカーソルの下の緑色の横棒、《HPゲージ》が見る見るうちに短くなり、半分で黄色、更にその半分ほどで赤色になって、完全に消えた。
 すると、それと同時に通路に転がったゴブリンの上半身も下半身も同時に灰と化した。
 これは、モンスターの体内にある生命の源である魔石を失ったから起きたのだけど、本来ならば、というかLA(ラストアタック)が俺でなければ、起きない現象なのだ。
 こっちの世界でも何故か俺のドロップアイテムのシステムはSAOと同様で、モンスターを倒すと、そのモンスターのドロップアイテムはLAをとった俺のものになるようで、魔石やその他のドロップアイテムが自動的にストレージに格納されるようになっている。
 だから、普通ならば倒したモンスターの死骸から魔石を回収して初めてその死骸が灰になるのだけど、俺の場合は自動で回収されるので、倒した瞬間灰になってしまうのだ。
 これだと、まず怪し過ぎて他の冒険者とはパーティは組めないだろう――初めから組むつもりはなかったけどね………………ぼっち希望という意味じゃないよ?
 そんなことはさておき、俺は別に雑魚を狩りに来たわけではない。
 目的の場所はまだ奥だ。


    ◆ ◆ ◆


 所変わって、現在地は六階層。
 五階層~七階層は外観が一階層~四階層の薄青色から薄緑色の壁面に変わるだけでなく、ダンジョン自体の構造も複雑になっている。
 お節介な俺の担当のアドバイザーいわく、『いやらしくて気持ち悪いモンスターが、いーーーーーっぱい!出てくるようになるし、モンスターが生まれ落ちる間隔もすーーーーーっごく!短くなるから気をつけてね、絶対だよ!!』、みたいだけど、俺の感覚では、一階層~四階層とそれほど変わらないと感じる。
 …………レベルがレベルだからだと思うけど。

 『――――――』
 「………………」

 それで、前方五メートル――この世界ではメートルを(メルド)と呼んでいる――にいるのは『ウォーシャドウ』なるモンスター。
 見た目ならSAOでLv70ぐらいありそうな不気味さを持つ黒い人型のモンスターで、異様に長い腕の先には鋭い詰めが三本並んでいる。
 とは言っても、モンスターの頭上にある淡い赤色のカラーカーソルはそれがまるで俺の敵じゃないと示してくれている。
 SAOではモンスターが自分に対して強ければ強いほどカラーカーソルの赤が濃くなり、逆に雑魚であれば雑魚であるほど、赤が薄くなる仕様だった。
 ちなみにカラーカーソルは常時表示されているわけではなく、モンスターとかプレイヤーに視線を合わせていると――つまり、フォーカスしていると――浮かび上がるようになっていて、こっちの世界でも適応されているようだ。
 それはさておいて、閑話休題。
 前方にいるウォーシャドウは声帯がなく、俺の出方を見るように静かに佇んでいる。
 もしかしたら被我との差を理解していて、逃げる隙を探しているのかもしれないけど、逃がすつもりはない。
 俺は周りに他の冒険者の気配がないことを確認してから、刃を真っすぐに立てるように上段に構え、足を踏み出した。
 すると、体が薄青色の淡光に包み込まれて、背後から目に見えない力で押されるように常人では出しえない速度で突進した。
 一瞬後には無防備に棒立ちで佇むウォーシャドウを間合に捉え、剣を振り下ろす。
 薄青色の円弧を描いて剣先がウォーシャドウの正中線をなぞって、完全に突き抜ける。
 これがさっき言ったソードスキルだ。
 詳しく言うと、片手重直剣スキルにカテゴライズされている基本突進技《プロペラント》で、一番最初に習得する技の一つだ。
 ソードスキルを喰らったウォーシャドウは綺麗に縦に線が入り、左右に裂けて、HPゲージが消失すると同時に灰となった。
 それに続いて眼前に紫色のウィンドウが開いて獲得アイテムが表示される。
 そこにはしっかりと魔石の文字があって、隣には《ウォーシャドウの指刃》とあった。
 このモンスターを倒すと時たま出てくるレア度のそれほど高くないドロップアイテムだ。
 SAOではこのウィンドウに獲得経験値とコル――SAOでの通貨――も表示されていたが、この世界に転生したときにコンバージョンで削除されたみたいだ。
 まあ、モンスターが何で金を持ってるんだ、という話しだし、【経験値】は神の領分だ、ということなんだろう。
 少ししてメッセージウィンドウが閉じるのを見てから、足を踏み出した。


    ◆ ◆ ◆


 更に所変わって、十三階層。
 お節介な俺の担当のアドバイザーいわく、『見た目だけじゃなくて肌触り(?)が洞窟っぽくなるんだけど、最初の死線(ファーストライン)とも呼ばてるんだから気をつけてね!!暗いし、下の階層に繋がる落とし穴もあるんだから足元をお留守ちゃんにしたらダメだよ!!絶対だよ!!』らしいんだけど、俺にとっては、モンスターは少し強くなったかな、それと見た目も強く見えるようになったかな、というくらい。
 大方SAOの各階層にいるフロアボスがどれも(いか)つ過ぎた所為だからだろうけれど。
 それに、落とし穴に至っては、欝陶(うっとう)しいモンスターを蹴り落として有効利用させてもらっている。
 のだけど、必要なものは必要になったときに大概ない。
 現在地は十三階層のとあるルーム。
 ルームとは、少し広くなっている空間のことで、どの階層にも、数の差はあれど、点在している。
 そのルーム――縦横一〇メートルぐらいかな――で、俺は七体の犬頭モンスター『ヘルハウンド』に包囲されていた。
 お節介な俺の担当のアドバイザーいわく、『ヘルハウンドの群れとは絶対に闘わないで!見付けたらすぐに逃げるんだよ!!ヘルハウンドの群れの一斉火炎放射で骨も残らなかった冒険者もいて『放火魔(バスカヴィル)』って呼ばれてるんだからね!!絶対逃げるんだよ!!』と言われて、群れる前に瞬殺していたが、不幸にも会敵した時点で、七体で群れていた。
 落とし穴があれば、まとめて蹴り落とすところだけど、こういうとき落とし穴がない。
 ずっと唸り声を上げていたヘルハウンドが火を噴きそうな感じになったので、仕方なく、

 「ふっ」

 一息で一頭に肉薄した。

 『!!』

 目を剥いて固まるヘルハウンドを純粋な斬撃で両断する。
 ソードスキルは強力だけど、発動後の隙が大きいので、相手が複数の場合は自粛している。
 SAOならパーティーメンバーでスイッチしていたが、この世界ではもうすることはないと思う。

 (…………仲間……か……って、危ない危ない)

 つい過去の思い出に(ふけ)って沈みそうになる心を現実に引き戻し、襲い掛かってきたヘルハウンドをバックステップでよけて、代わりに袈裟切りを見舞う。
 再び包囲されるのは面倒なので、俺の攻撃で包囲網が乱れているうちに一撃につき一体のペースで屠って、数分もしないうちに全滅させた。
 この戦闘での戦果は魔石×七、ヘルハウンドの牙×三、ヘルハウンドの火炎袋×一。
 …………火炎袋は初めてゲットしたけど、これをオブジェクト化したらぼてって、胃袋みたいなのが、出てくるんだろうな。
 SAOでこんな感じのグロいドロップアイテム――〇〇〇の眼球とか、〇〇〇の心臓――はちゃんとあって、ある程度慣れているが、できれば見たくない。
 それはさておき、

 「ふぅ~」

 一瞬ひやっとするところはあったが、結局一撃も(もら)わず、HPゲージは満タン。
 何回か肩を回してルームの奥にある目的地に繋がる通路に向かった。


    ◆ ◆ ◆


 通路は数一〇歩歩いたところで途絶えていて、先程のルームより一回り小さい半球型の空間が広がっている。
 その奥、壁が剥がれて、ボコボコになっているところがある。
 俺はそこに先客がいなかったことに胸を撫で下ろしてからそこに向かう。
 その前で立ち止まってメニューウィンドウ呼出しコマンド――つまり、人差し指と中指を揃えて上から下に振る――をすると、小気味のいい鈴の音とともにメニューウィンドウが浮かび上がる。
 ぽんぽんと手慣れた手つきでストレージを開くと、その中にあるアイテム、小型鶴嘴(マトック)を押した。
 オブジェクト化したそれを手に取ると、早速壁に振り下ろした。
 それでできたひびに続けてマトックを振り下ろす度、壁のひびが広がり、壁のかけらが剥がれ落ちた。
 そうして、振り下ろすこと一〇回、僅かに汗で額が濡れてきた時、壁が大きく欠落した。

 「うぉっ」

 と、言いながら、さっと後ろに下がってことなきを得る。
 まあ、下敷きになってたとしても、それほどダメージはないと思うけど。
 もうもうと立ち込める土煙がおさまると、求めていたものが姿を現した。

 「おっ、ラッキー」

 崩れた壁から突き出すように色とりどりの鉱石が顔を覗かせていた。
 ダンジョンからはSAO同様、鉱物が産出されていて、さらにダンジョンから生み出されているモンスターにもその鉱物が含まれている。
 それを聞いて試しにドロップアイテムで作ってみたのだが、形になったものの性能のいい武器はできず、今はしていない。
 それと産出される鉱物は階層が深ければ深いほどそのレア度が高くなり、性能のいい武器ができる。
 で、今採掘している場所は色々なところを掘ってみた結果現時点で最良のスポットと定めた場所だ。
 そんな俺の努力を裏切らず、今回も一気に鉱石を吐き出してくれた。
 普通はこうはいかないと、ヘファイストス様が言っていたけど、きっと《鍛冶》スキルの共通スキルMod【鉱石誘導(マグネファイス)】のおかげなのだろう…………きっと、じゃなくて、絶対だろうな。
 それはそれとして、全ての鉱物をストレージに納めて、再び採掘再開。
 一〇分後、俺は合計二〇個の鉱物をストレージに抱えて、ほくほく顔で帰路に()いた
 ダンジョンで得られる鉱物は、驚くことに、俺の知る磁鉄鉱、赤鉄鉱などの鉄鉱石や黄銅鉱、輝銀鉱の他に架空の金属、ミスリルやオリハルコンを含有するものまでもあるらしいけど、俺は掘り当てたことはない。
 今回の収穫の内訳は鉄鉱石×一〇、輝銅鉱×五、獄黒石×二、朱雀鉱×一、白雷石×一、紅炎石×一。
 後ろの四つはこの階層ではかなりレア度の高い鉱物でこれで作った武器は大概性能がよくなる。 
 

 
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