儒家の武
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
4部分:第四章
第四章
「逞しいよな」
「ああ、贅肉とかないよな」
「じゃあやっぱり」
「あの人もかなりか」
「そうだよ、強いんだよ」
ここでまた話されたのだった。
「尋常じゃない位にな」
「ううん、そんな人だったんだな」
「いや、聞いてびっくりしたよ」
「本当にな」
「文だけじゃなくて武もだったんだな」
「そうだったんだな」
皆驚く他なかった。孔子のそうした一面を知ってだ。
そしてなのだった。その孔子はだ。この日弟子達と共に弓を引いていた。
弟子達に囲まれていながらもすぐにわかった。顔が完全に出ていたのだ。その大柄さがこれ以上はないまでに出ていた。
その彼がだ。弟子達に話すのだった。
「さて、弓だが」
「はい」
「思いきり引かれるのですね」
「そうだ、まず思いきり引く」
孔子はここで実際に弓を思いきり引いてみせた。かなり大きな弓だがそれでもだ。彼は一気に引いてみせたのである。
そしてそのうえで矢をつがえて放つ。弓は的の中心に突き刺さった。
そうしてみせてからだ。彼はまた弟子達に話した。
「こうするのだ」
「弓も計りもしっかりとする」
「そうしてからですね」
「何ごとも基をしっかりとするのだ」
これが孔子の言葉だった。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「しかし先生は」
「そうだよな、相変わらず」
「お見事だよな」
弟子達はここで話を変えてきた。
「そんな重い弓を一気に引かれるとはな」
「物凄いお力だよ」
「全く」
「ははは、幼い頃から鍛えていたからな」
孔子はその長く白い髭を動かして笑って述べた。
「これはな」
「だからですか」
「そしてその御身体もあり」
「そこまでのお力があるのですね」
「武芸はいいものだ」
また言う孔子だった。
「こうして身体を鍛えれば心まで澄み切る。だからだ」
「はい、こうしてですね」
「学ぶだけでなく」
「そういうことじゃ。武芸にも励まなくてはいかん」
言いながらまたその大きな弓を引いて矢を放つ。その矢も的の中心に突き刺さる。孔子は弟子達と共に武芸も楽しむのであった。
儒者の武 完
2010・11・26
ページ上へ戻る