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髪を切ってみると

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第二章

「それを維持する為によね」
「毎日シャンプーしてね」
「頭自体もよね」
「しっかり洗ってね」
「シャンプーかなり使ってるわね」
「リンスもコンディショナーもね」
「それで、よね」 
 さらに言う七海だった。
「乾かす時も」
「しっかり拭いてドライヤー当ててるわ」
「ほら、ここまでやればね」 
 髪は奇麗になるが、というのだ。
「結構負担かけてるでしょ」
「髪の毛に」
「しかもね」
 さらにとだ、七海は言葉を続けた。
「洗う時に抜け毛があるでしょ」
「うん、どうしてもね」
「条件揃い過ぎよ」
「髪の毛に負担をかける」
「そう、伸ばしてもいいけれど」
「私の場合はなの」
「伸ばし過ぎなのよ」
 そうだというのだ。
「だからね」
「もっとなのね」
「そう、切ってみたら?」
 こう珠緒に言うのだった。
「私が決めることじゃないけれど」
「私が決めることね」
「そろそろ」
 七海はあらためて珠緒の髪を見た、膝まで普通にある髪の毛はさらに見ればだ。
「踵まできてない?」
「いや、そこまではだけれど」
「あんたの背より長くなるわよ」
 このままでは、というのだ。
「そうしたら床に着くし踏んだりして」
「危ないわね」
「自分の髪の毛に足を取られてこけるとか」
「そうしたことは」
「もうお話にもならないから」
 だからだというのだ。
「幾ら何でもね」
「ううん、長過ぎるから」
「だからなの」
「加減よ、加減」 
 髪の毛の長さもというのだ。
「適度なところでいいんじゃない?」
「平安美人になるんじゃなくて」
「今は二十一世紀よ」
 七海はその核心を言った。
「平安時代じゃないでしょ」
「そう言ったらそれまでね」
「そんなこと言ったら男の子なんか」
「ちょん髷?」
「公家髷よ」
 武家のものではなく、というのだ。
「古典に出て来るそのままの」
「光源氏とか在原業平とか」
「そう、そんな風になるわよ」
「ううん、一歩間違えたらそれこそ」
 公家髷とそこから連想される丸くさせた眉と白化粧、そしてお歯黒からだ。珠緒がここで想像した人はというと。
「今川義元さんね」
「あの人残ってる木像見たら結構男前よ」
「あっ、そうだったの」
「そう、桶狭間で死んだから色々言われてるけれど」
 それでもというのだ。
「実際は能力も気品もあった人だったみたいよ」
「ただのお公家さんもどきじゃなかったのね」
「そう、別に義元さんでも悪くないから」
「いいのね」
「別にお公家さんであの人を想像してもね」
 特に、というのだ。 
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