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馬人

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3部分:第三章


第三章

「ですからその裁判をです」
「そうですね。フウイヌムの裁判ですか」
「何も変わりはありませんよ」
 フウイヌム達は静かな面持ちで彼に話した。
「人間の裁判とね」
「そうなのですか」
「御覧になられればよくわかります」
「わかりました、それでは」
 こう話してだった。そのうえでそのフウイヌム達の裁判を見るのだった。見れば裁判所も裁判席も弁護士も検事もだ。人間社会、それもガリバーのいるイギリスのそれとだ。全く変わりがなかった。
 ガリバーもそれを見てだ。案内してくれたフウイヌム達に対して話した。
「あの、本当に」
「同じですよね」
「はい、同じです」
 こうフウイヌムに対して述べた。
「全くです」
「我々も最初聞いて驚きました」
「これまでこの国に来た人間達にですね」
「あまりにも。貴方達の社会の裁判と我々の裁判がそっくりなので」
「それでなんですか」
「はい、それでです」
 彼等もまたガリバーに対して述べる。
「驚いたものです。しかも犯罪もです」
「そうですね。あのフウイヌムは」
 ガリバーは被告人席にいるフウイヌムを見た。見れば馬相の悪いフウイヌムだ。目が濁っていて表情もどす黒く見える。
「詐欺の常習犯ですね」
「前科五犯です」
「立派な犯罪者ですね」
「そして今回もです」
 今回もだというのだ。
「捕まったのです」
「懲りない奴ですね」
「人間社会にもそうした輩はいますね」
「それも大勢」
 ガリバーはありのまま答えた。
「います。犯罪者が特産品になっている程です」
「それは我々の社会も同じでして」
「おや、それについてもですか」
「刑務所はいつも満杯です」
 半ば自嘲しての言葉だ。
「その種類も千差万別です」
「千差万別ですか」
「はい、詐欺だけではなくです」
 その犯罪の種類も述べられる。それはだった。
「強盗に暴行、殺人にと」
「我々の社会と同じですね、それも」
「そういうことです。我々の社会にも犯罪はかなり多くあります」
「犯罪があるからこそ裁判もある」
「そういうことです」
 こうだ。フウイヌム達はガリバーに対して淡々と話す。
「おわかりになられましたね」
「よく。そうですか、同じですか」
「全く同じ。戦争もやっていますしね」
「それではですが」
 ここまで聞いてだ。ガリバーはまた言った。
「異端審問もありますか」
「異端審問ですか」
「はい、教会の教えに逆らっていると思われる者を裁判にかけるあれです」 
 ガリバーはこれが嫌いだった。異端審問においては欧州中において非常に多くの犠牲者を生み出している。欧州の歴史の汚点である。
「拷問も行いますが」
「ああ、あれですか」
「あれですかといいますと」
「はい、あります」
 フウイヌムは当然といった口調で述べた。
「勿論です」
「勿論ですか」
「あれは大きな口では言えませんが」
 語るそのフウイヌムの口調がだ。歪んだものになっていた。
 
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