極短編集
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短編67「幽霊家族」
家族旅行も最終日、最期に立ち寄りたいお店があった。個人経営の2階立ての焼肉店。なんとこの店、幽霊が来る事で有名なのだ。店に入ると、まだ客も少ないかった。
「2階に行かれますか?」
店の主人が尋ねて来た。
「はい、見晴らしが良いんですってねえ」
と、言うと主人は、僕らを2階に案内した。
「そうそう、良く幽霊が家族で来るんだそうですね?」
と、聞くと……
「そうなんですよ!色んな幽霊の家族が来ては、消えていくんですよ。幽霊の中では噂のスポットなんですかねえ」
と、主人は苦笑いしていた。
「どの席とかってあるんですか?」
「それが……うちで一番見晴らしがいい場所なんで困ってんですよ~」
主人は頭をカキカキ、目線はその場所へ……
「パパ!ここ良く見えるよ~」
すでに息子が席を陣取っていた。
「ね!あははは……では今、お冷やをすぐにお持ちいたします」
主人は1階に下がって行った。
「美味しい!」
息子は焼き肉に夢中だ。僕はビールをもう1本頼んだ。主人がやって来た。
「この場所が天国に一番近いのかな?」
と、僕が冗談を言うと……
「あははは!お客さん上手い事言うねえ」
と、笑っていた。
「本当に美味しいお肉だねえ」
と、笑顔になる僕。
「ここのお肉食べたから天国に行けるのかも、ウフフ」
と、妻も笑っていた。息子は……
今度は特製アイスクリームでホクホク顔になっていた。
◇◇◇
「やっぱりかあ……」
店の主人が皿を取りに来た時の事だ。主人は、何日か前の新聞を思いかえしていた。行楽帰省中の家族の交通事故。
「なんとなくそうじゃないかと思ったんだ。ナンマイダ、ナンマイダ」
主人は手を合わせ、全く手付かずのままの、皿やビールなどに向かい……
冥福を祈ったのだった。
おしまい
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