極短編集
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短編68「1ドル高いボールペン」
私が学生の時、アイツが短期留学から帰って来た。
「お土産だよ」
と、くれたボールペンは、握って温めまると、描かれたお姉さんが裸になるという、たわいもない物だった。
「これで試験、頑張れ!」
と、アイツは言った。
「おっと!忘れてた。このボールペンは、他のより1ドル高いんだせ!!」
と、アイツは付け加えて言った。
◇◇◇
時は過ぎ。あれから、5年たった。私は、もう社会人だ。毎日、深夜まで仕事に追われている。ある日、仕事終わりに飲んで、深夜に帰った日の事……
バキッ!
あっ、なんか踏んだ!
見ると足の下に、いつだったか学生時代に、好きな人からもらったボールペンがあって……
粉々になっていた。
「あ~あ」
私は特段、何も感じる事なく、ただ片付けが面倒臭いとばかりに声をあげた。粉々になったボールペンを片付ける。
「あれっ?」
……。
目から涙が溢れて、こぼれた。
忙しくって、忙しくって、忘れていたよ。私……泣けたんだなあ。
粉々になったボールペン。ボールペンの芯には、紙が巻き付いていた。広げるとそれは、1ドル札だった。裏返すと何か書いてある。
「そういう意味だったんだあ……私、わからなかったよ」
1ドル札には……
僕は、キミが大好きだよ。いつか一緒に行こうね!遥か大陸の上より
と、書きしるされていた。
◇◇◇
あれから私は、彼に連絡を取った。そして……
「まさか俺たち、本当に二人で来るなんて!」
彼は驚いていた。そう私たちは新婚旅行で来ていたのだ。
夢に見た、遥かなる大陸に。
おしまい
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