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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第三十九話  超電磁砲組・アイテム組と木山先生


「あっ、木山先生」

 事前に気配で気付いた俺が前もって御坂さんに伝えていたので、廊下の奥からやってくる木山先生に御坂さんが声を掛ける。

「ずっと待っていたのかい?」

「ええ、まあ」

「どうも、こんにちは」

 木山先生に聞かれて答える御坂さんの隣で俺は挨拶をした。

「おや、君は……ほう、なるほどな。君も来ていたのか」

 やはり木山先生はすぐに気付いたようだ。まぁ、騎龍と姫羅では双子と思えるほど似ているわけだから、俺のことを知っている木山先生なら当然だろう。

「ウチは知り合いが倒れたんで来たんですけどね」

「ほう、それが君のそっちの状態での一人称なんだな」

 一応、御坂さんと別の件で来ていたことは伝えてみたものの、木山先生が気に留めたのは俺の一人称のことだった。

「ええ、そうです」

「しかし、暑いな。ここは真夏日でも冷房を入れない主義なのか?」

 俺が答えると木山先生は話題を変える。何というか、そろそろ脱ぎそうな気がするし、多分アニメでも脱いでいたはずだ。

「すみません、昨日停電がありまして復旧に時間が掛かってるんですよ」

「なるほど、非常用電源は手術や重篤患者に回されるからな」

 木山先生の疑問には丁度良いタイミングで通りかかった看護師の人が答えてくれたが、それを聞いた木山先生の手が自らのネクタイをつかむ。

「あ……また始まった」

「なぁっ! 何をストリップしてますの!」
「こんなところで超何をしてるんですかっ!」

 いきなり脱ぎ始めた木山先生を見た御坂さんが呟くと、白井さんと絹旗さんが慌てて木山先生を止めていた。

「いや、だって暑いだろう」

「そう言う問題ではありませんのっ!」
「早く服を超着て下さい!」

 単に理由を答えただけで脱ぐのをやめようとしない木山先生に、白井さんと絹旗さんの二人が服を着せようとしている。

「下着を着けてても駄目なのか?」

「駄目に決まってますのっ!!」
「超駄目に決まってるじゃ無いですかっ!!」

 二人に服を着させられた後でまだ納得のいってない木山先生が尋ねると、二人が怒鳴っていた。

「そ……それで、専門家としての立場から、先生の意見をお伺いしたいのですが」

「ふむ、そうだな。しかしここは暑い」

 御坂さんが無理矢理話題を本筋に戻すと木山先生がそう呟いたので、停電していないファミレスへ移動することになったのである。





「滝壺さん、木山先生からAIM拡散力場って観測できた?」

 病院からファミレスへと移動している途中、俺は御坂さんの後ろを少し離れて歩いている滝壺さんに小声で話しかけた。

「いや、ずっと観てたけど全く分からなかった」

 滝壺さんが首を振る。そうなると、御坂さんや白井さんに木山先生が怪しいと伝えるための根拠が無いわけだ。それが伝えられればこの事件の解決を少し早めることが出来ると思ったのだが、もう少し様子を見るしかなさそうである。

「本当にあの人がレベルアッパーの元締めで超間違ってないんですか?」

「うん。そこは間違いない」

 御坂さんに気付かれないよう注意しながら絹旗さんが小声で聞いてくるが、そこはアリスからの情報で間違いないということが確認できている。

「どうしたの? 早く行きましょ」

 こそこそと話しているのに気付いた御坂さんが振り返って俺達に声を掛けてきたので、俺達は話を切り上げて歩く速度を上げたのである。





「それで、同程度の露出でも水着は良くて何故下着は駄目なのか、ということなのだが」

 ファミレスに到着し、席について早々木山先生が口を開く。

『いや、そっちではなく』

 木山先生の言葉に、御坂さんと白井さん、そして絹旗さんの声がハモった。

「実は木山先生にお願いしたいことがございますの」

 こう前置きをしてから白井さんが事の経緯を話し始めた。最近になって能力で暴れる学生が増え始め、そのことごとくがバンクに登録されたレベルとの差異があったこと、その後意識不明に陥っていること、そしてそのほとんどもしくは全員がレベルアッパーを使用していたらしいこと、なので大脳生理学者である木山先生にレベルアッパーの解析をお願いしたいといった内容である。

「レベルアッパー……それは一体どういう物なんだ? 名前と今の話を聞いた限り、レベルを上げるための物だというのは分かるのだが」

「それは神代さんの方から……」

 木山先生が聞いてきたので白井さんから俺に振られる。

「まー、簡単に言ってしまえば音ですね。うにょ~とかびゃ~とかって感じの音でした」

「ん? それはもしかして、以前言っていた過剰演算の実験というやつか?」

 俺が話をすると、木山先生はたった今気付いたかのように聞いてきた。もしかしたら過剰演算の実験という話をしていた時に、それをレベルアッパーの事だとは本当に気付いてなかったのかもしれない。もし気付いていて今の反応なのだとしたら、かなりの演技力である。

「ええ、そうです。ただ、ウチの仮説はちょっと間違ってたかもしれなくて、現時点の仮説はAIM拡散力場をネットワークとして繋いで、他人の演算を利用した演算補助じゃないかと思ってるんですが」

「ふむ、他人の脳を利用した補助演算か。しかし、AIM拡散力場をネットワークとして利用するとか色々考えては居るようだが、それならばまだ脳のオーバードライブによる過剰演算ということにしておいた方が現実味は有りそうに思えるのだが……」

 俺が新たな仮説を披露すると木山先生が意見を言う。確かにレベルアッパーという物が能力者のレベルを上げるためだけに演算速度を上げる物ならば、木山先生の意見の方が実現の可能性は高いのだろうが、それでは木山先生がツリーダイヤグラムの代わりに演算装置として使うことが出来ない。この木山先生の意見は、俺達が真実に近づくのを阻止するための物なのか、それとも単に自分がレベルアッパー制作者であることを隠すための一学者としての意見なのか、判断が難しいところである。

「確かにウチも最初はそう思ってたわけですが、前提条件が変わってきまして」

「前提条件?」

 木山先生の意見に対してこちらの情報を追加すると木山先生がその内容を聞いてきた。

「はい、滝壺さんが言うには、AIM拡散力場が単におかしくなったというわけでは無くて、どうやら他人のAIM拡散力場と繋がってるらしいっていうことが分かったんです」

 この情報を出すことで木山先生が別の一手を打ってくることも考えられるのだが、御坂さんや白井さんにはすでに話している情報を、ここで隠すのはどう考えてもおかしいので開示しておく。

「ほう、それでネットワークという訳か」

「そう言う事です。まあ、あくまでもまだ仮説なんですけどね」

 木山先生も滝壺さんの能力を前にするとミスリードが出来そうに無いと判断したのか、すぐに納得してくれた。ただ、あまりにもAIM拡散力場のネットワークのみで押していくと、木山先生に俺達がある程度気付いていると思われかねないので、まだ仮説だという部分も入れておくことにする。

「だが、どうやってAIM拡散力場が繋がっていると分かったんだい?」

 木山先生から尋ねられて、俺は木山先生にまだ滝壺さんの能力を説明していなかったということに気がついた。

「それは滝壺さんがAIM拡散力場を観る能力者だからです」

「なるほど、確かにそれならばそっちの方は間違ってないのだろうな」

 俺が説明すると木山先生もすぐに納得する。こうなると恐らく木山先生も何か新しく動き出すのでは無いだろうか。

(アリス、この先木山先生の動きには注意しといてくれ)

(了解)

 木山先生がどう動くのかは、アリスに見ておいて貰うことにして俺はパフェをつついていた。すると知覚範囲に知り合いの気配を感じた。

「あ、この気配は初春さんと佐天さんだわ」

「ん? こっちに向かってきてるの?」

 思わず呟いた俺に御坂さんが聞いてくる。

「うん、もうすぐここを通るわよ」

「何で超分かるんですかっ!?」

 御坂さんに答えると今度は絹旗さんが聞いてきた。というか、絹旗さんには昨日話したはずなんだけど……。

「だから、気配で分かるって昨日言ったでしょ」

「昨日も超言ったような気がしますが……、どこの格闘家ですかっ!!」

 俺が答えると、絹旗さんは昨日と同じツッコミをしていた。よく考えてみると、今回こそ前置きに『超』が入っているが、昨日の時はその前置きが無かったので入ってなかったはずである。昨日は『超』を付け忘れるぐらい余裕が無かったと言うことだろうか。

「まあまあ。あ、来た。おーい、佐天さーん」

 昨日と同じように絹旗さんを宥めつつ、窓の外を通りかかった佐天さんに手を振りながら声を掛ける。さすがに俺の声が聞こえたのかどうかは分からないが、佐天さんは気付いてくれて初春さんと一緒にファミレスに入ってきた。

「神代さん、何してるんですか。御坂さんや白井さんも居ますけど、こちらの人は?」

「白井さん、皆で集まってどうしたんですか? それと、こちらの方々は?」

「レベルアッパーの件でね」

 佐天さんと初春さんがそれぞれ俺と白井さんにほぼ同じ事を聞いてくるので、取り敢えず俺が小声で答える。

「え? レベルアッパー見つかったんですか?」

「いえ、それはまだなのですが、こちらの方々からお話を聞いておりましたの」

 俺の言葉に佐天さんが聞いてくるが、それには白井さんが答えていた。

「まず、紹介しますね。こちらは佐天さんと初春さん、ウチの同級生で初春さんは白井さんと一緒にジャッジメントやってます」

「どうも、初めまして。佐天涙子です」

「初春飾利です、よろしくお願いします」

 一応、佐天さんと初春さんから聞かれたことは俺と白井さんで答えたことになるはずなので、俺は佐天さんと初春さんを木山先生やアイテムの二人に紹介する。

「それから今度はこっちね。ウチの友達で例の研究所でレベルアッパーを知らない内に聞かされてた仲間、絹旗さんと滝壺さん。そしてこちらの方が大脳生理学者の木山先生。レベルアッパー関連で何か手がかりが掴めないかと色々話を聞いてる途中だったのよ」

 今度はアイテムの二人と木山先生を佐天さんと初春さんに紹介しつつ、御坂さんや白井さんが一緒に居る理由も説明しておく。

「あー、そうだったんですかー」

「それで初春さん、レベルアッパーについて何か新たな情報は無い?」

 俺の説明に納得の声を上げてくれた初春さんに、折角なのでそのままの流れで尋ねる。

「それがですねー、レベルアッパー使用者とみられる人たちの書き込みがある掲示板をいくつか見つけてはいるんですが、今の所特に新しい情報はありませんねー」

「そっかー、だとしたら、取引現場でも特定してジャッジメントとして白井さんに押さえて貰うしか無いでしょうね」

 初春さんもレベルアッパーそのものを入手するには至ってないようなので、俺が今後の方針について少し方向性を示しておく。

「そうなりますね」

「そういうわけで、レベルアッパーの現物が見つかりましたら木山先生に解析をお願いしたいと思いますの」

 俺と初春さんの会話が終わったことで、今度は白井さんが木山先生に依頼をする。

「なるほど、そう言う事なら喜んで協力させてもらうよ。大脳生理学者としてもとても興味深いし、むしろこちらからお願いしたいくらいだ」

 木山先生が白井さんに答えている間、アニメ版なら現時点でレベルアッパーを持っているはずの佐天さんに意識を向けていたのだが、佐天さんはただメニューを眺めているだけで特に後ろめたい気持ちなども持っているようには見えなかった。

「ありがとうございます。それでは、よろしくお願いいたしますの」

「あ、それなら連絡先の交換お願いできますか?」

「ああ、もちろんだとも」

 ジャッジメント組が木山先生と話している間も、佐天さんは普通に店員を呼んで注文をしているだけだったので、恐らくレベルアッパーを入手していないのだろう。そう言えば、レベルアッパーを持っていたことが原因だったのかどうかは覚えていないものの、佐天さんが水かお茶をこぼして木山先生が脱ぎ始めるというイベントがあったはずなのだが、それは発生しないようである。

「佐天さん、佐天さん」

「何?」

 俺が小声で佐天さんに話しかけたら佐天さんも小声で返してくる。

「写メ撮るなら今の内だよ」

「ん? なんで?」

「前言ってたでしょ、脱ぎ女の写メ撮ってって」

「うん、言ったけど。どういうこと?」

 以前に木山先生の写メを撮り忘れた時は、佐天さんから「何で写メ撮らなかったのか」と散々言われたので、それならば自分で撮って貰おうと話してみたものの、佐天さんの前では脱いでいないので木山先生が脱ぎ女だということには気付いていないようだ。

「この木山先生が、その脱ぎ女だよ」

「えぇ~っ!? 本当にっ!?」

 俺が木山先生のことを教えると、佐天さんはまるで漫画のように立ち上がって驚きの声を上げたので、仲間内だけで無く周囲の他の客からも注目を集めてしまった。少し恥ずかしそうにしながら、佐天さんは周囲へ少し頭を下げてからすぐに座りなおす。

「うん。あ、でも撮る時はちゃんと本人の了解を得てからね」

 周囲の人たちから向けられていた意識がまたそれぞれの方へ戻ったようなので、俺は佐天さんへ答えて普通に注意事項を告げたのである。
 
 

 
後書き
お読みいただいた皆様、ありがとうございます。
アイテムが加わったのでプロットの練り直しが……
 
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