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そこにある美

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2部分:第二章


第二章

「ではお言葉に甘えまして」
「うん、存分にね」
「楽しんで下さい」
「そうさせてもらいます。ところで」 
 ここでだ。オルフェウスは式の場を見回したのだった。
 そのうえでだ。こう二人に尋ねた。
「お客人ですが」
「うん、そうなんだ」
 友人が笑顔で彼に応える。
「ケンタウロスも呼んだよ」
「あの方々もですか」
「反対する人も多かったけれどね」
 ケンタウロスは酒好きで乱暴な種族として知られている。酒に酔っては暴れたりするのだ。だから彼等を快く思わない者も多い。
 場にはだ。その腰から下が四本足の馬の彼等もいる。彼等は杯を手にして御馳走や美酒を楽しんでいる。その彼等を見てだ。
 友人はオルフェウスにだ。こう話すのだった。
「僕が御願いしてね」
「そうしてですね」
「うん、あの人達にも来てもらったんだ」
「そういえば貴方は」
「昔からケンタウロスとも付き合ってきたから」
 彼はケンタウロスの間にも多くの友人がいるのだ。オルフェウスをはじめとした人間の友人達ばかりではない。そうした器の人物なのだ。
 だからその彼がだ。こう言うのだった。
「それでね。僕の結婚の祝いの場にね」
「いいことだね。ただ」
「うん、大丈夫だとは思うけれど」
 葡萄の美酒を笑顔で飲んでいるケンタウロス達を見てだ。彼も言う。
「お酒がね」
「ケンタウロスの悪い癖です」 
 そのことはオルフェウスも彼も知っていた。それで今話すのだ。
「酒癖はどうしても」
「そうなんだよね。何もなければいいけれど」
「どんな種族にも欠点はあります」
 オルフェウスもケンタウロスとは付き合いがある。だから公平に言えた。
「思えば人もですし」
「酒癖の悪い人が多いね」
「それを考えればケンタウロスだからというのもよくありません」
「そういうことになるね」
「はい。ただ」
 それでもだというのだ。
「お酒がありますから」
「人もケンタウロスも」
「気をるけましょう」
「うん、そうしないとね」
 こうした話も為されるのだった。そうしてだ。
 誰もが若い二人の幸せを祝い杯を空にし肉を平らげていく。とりわけ酒がよく飲まれだ。葡萄の美酒は次々と口の中に入れられる。
 その中でだ。人間の中年の男がだ。
 不意にだ。こんなことをケンタウロスの若い者に言うのだった。
「飲め」
「飲んでるよ」
「いいから飲め」
 こうだ。そのケンタウロスに絡んで言うのだ。
「俺の酒を飲め」
「だから今飲んでるから後で」
「今すぐ飲め」
 後で飲むという彼にだ。男はさらに絡む。
「それとも俺の酒がっていうのか?」
「だから待ってくれって」
「待てるか。今すぐ飲めよ」
「おい、そんなこと言っても」
 ケンタウロスの若い男は困った顔になる。相手は赤ら顔で一言喋る度に酒臭い息を吐き出す。目は充血し完全にできあがっている。
 その彼がだ。さらに言うのだ。
「お偉いケンタウロス様は人間風情の酒は飲めないのか」
「何でそんな話になるんだよ」
「そうだろ?あのイクシロンがヘラ様の姿の雲と交わってできたな」
「それを言うのか?」
「高貴な生まれだからな」 
 あからさまにだ。ケンタウロスという種族の出生のことを誹謗しだした。この出生のことはケンタウロス達にとってはタブーなのだ。
 
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