そこにある美
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3部分:第三章
第三章
だがそれをあえて言ってだ。男は絡むのだった。
「所詮土くれの人間の酒はまずいってのか」
「おい、あんた」
出生のことを言われだ。それまでは引いていた若いケンタウロスもだ。顔付きを険しくさせてそのうえで人間の男に対して言い返すのだった。
「それを言うか?」
「言って悪いか?」
「それだけは言うな」
その彼等にとってのタブーをだというのだ。
「許さないぞ、絶対に」
「許さないっていったらどうするんだ」
「外に出ろ」
場のだ。外にだというのだ。
「話をしよう。じっくりとな」
「おいおい、逃げるのか」
男は酔っていてだ。こうとらえてしまった。
「流石はヘラ様の御子だな」
「・・・・・・まだ言うのか」
再び言われだ。若いケンタウロスもだ。
切れた。そのうえでの言葉だった。
「おい、じゃあ今すぐここでな」
「どうするんだ?」
「殺してやる」
剣を抜いた。それで男に返す。
「もう我慢できるか」
「何だ?やるってのか?」
「ここまで言われて何もしないでいられるか」
種族の出生のことを言われだ。ケンタウロスが怒らない筈がなかった。何しろ不義、それもかなり間抜けな形のそれで生まれたからだ。
「死ね。一太刀で済ませてやる」
「じゃあ俺もだ」
男もだ。剣を抜いた。
「イクシロンの御子様と刃を交えるか」
「ああ、来い」
二人は今にも殺し合おうとする。しかしだ。
周りはその彼等を見てだ。すぐにだった。
「おい、止めろ」
「今はめでたい場だぞ」
「それで剣を抜いてどうするんだ」
「何考えてるんだ」
人間達もケンタウロス達もだ。二人を止めようとする。
「とにかく今はな」
「落ち着け」
「ほら、水でも飲んで」
「とにかくな」
「五月蝿いっ」
だが、だ。ここでだ。
酒に酔った人間の中年の男も若いケンタウロスも剣を振り回した。幸いそれで死んだ者はいない。だがそれでもなのだった。
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