ヴォルデモート卿の相棒
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クィディッチ
前書き
……というタイトルですが内容はほぼカットしました。
主人公がチームに入ってないのでもう、ね。
11月になり、いよいよクィディッチシーズンの到来だ。
グリフィンドールが勝てば、寮対抗試合の二位に浮上することになる。
ハリーのことはチームの秘密兵器として、『極秘』ということがウッドの作戦だったので、ハリーが練習しているところを見た者は誰も居なかった。ところが、ハリーがシーカーだという『極秘』はなぜかとっくに漏れていた。
はてさて、どこから漏れたのやら。
「それでクィディッチ練習に追われて処理しきれなくなったハリーの宿題をハーマイオニーが手伝っているの?」
「丸写しはさせてもらえないみたいらしいがな。……ハリーはともかくなんでロンも切羽詰まってんだろうな?」
「ジークの天文学とか魔法史の宿題丸写ししてるクレスも人のこと言えないじゃん」
「俺は別に切羽詰まってるんじゃなくて、純粋にやる気が無いだけだ。一緒にするな」
「なおさらダメだよ……」
以前から続けている飛行訓練の自習が終わった後、クレスとアレクは談笑しながら廊下を歩いていた。最初の頃は飛び上がる度にアクシデントを起こしかねないザマだったが、ようやくアレクは飛び方のコツを掴んできた。
「でもよかったよ~」
「あ? 何がだ?」
「ハーマイオニーのこと。グリフィンドールで孤立しちゃうんじゃないかと心配してたんだ~」
「相変わらずお優しいこった」
「それにしても……まさかあなたと仲良くなれるとは思ってなかったよ~。初対面の時点であんなんだったのに」
「人生何が起こるかわかんねぇってことだろ。……お、ハッフルパフ寮の前か。じゃあな、アレク」
「うん、ばいば~い♪」
クレスは図書室で変身術、妖精の魔法の宿題を片付けた後(クレスは戦闘に役立ちそうな教科は座学も割と真面目)談話室に戻った。するとハーマイオニーはロンの宿題を添削していた。
「ハリーはどこ行ったんだ?」
「スネイプに取られた本を取り返しに職員室さ。それよりクレス、【魔導武闘】教えてよ」
「あ、私にも教えて欲しい」
「ダメに決まってるだろうが。秘術だぞ秘術」
クレスはこの秘術については頑なに黙秘を貫いていたが、ハロウィン騒動の後3人にこれでもかというくらいしつこく聞かれ、渋々話してしまったのだ。それ以来3人、特にロンに教えてくれとせがまれている。非常に鬱陶しい。
「……やっぱり秘術って他の魔法使いには教えられないものなの? 本にもほとんど書かれてないけど」
「当たり前だ。秘術を扱う家系は魔法使いの旧家の中でもさらに一握りの家系だけ。その家からすれば家宝みてぇなもんだぞ」
「いいじゃないか減るもんじゃないんだし。なあ頼むよ、僕ら友達だろ?」
「本当の友達なら相手が嫌がってることはすぐやめるべきだろ? だいたいそんなすぐ使えるようになんねえよ。どれだけ才能に恵まれてようが最低12年かかるからな」
「じゅっ…!?……わかった、もう言わないよ」
「諦め早いわね、習得までの年月聞いたとたん……まあ私ももう言わないわ。だって、【友達】の頼みですものね」
「露骨に強調しすぎだろオイ……」
そんな感じで談笑していると、ハリーが真剣な顔つきで談話室に入ってきた。「返してもらった? どうかしたのかい?」と、ロンが声を掛けると、ハリーはひそひそ声で職員室の出来事を説明する。どうやらスネイプはハロウィンの日、ケルベロスに噛まれて怪我をしたらしい。
「ハロウィーンの日、ケルベロスの裏をかこうとしたんだ! 僕たちが見たのは、そこへ行く途中だったんだよ……あの犬が守っているものを狙ってるんだ! 箒を賭けてもいい、トロールは絶対にスネイプが入れたんだ。みんなの注意を逸らすために」
「違う。そんなはずないわ」と、ハーマイオニーが反論した。
「確かに意地悪だけど、ダンブルドアが守っているものを盗もうとする人じゃないわ」
「おめでたいよ、君は。先生はみんな聖人だと思っているんだろう」ロンはハリーに同意した。
それを聞きハーマイオニーはクレスに向き直る。
「クレスは違うと思うわよね?」
「さあな」
しかし興味が無いのか、クレスは適当に返事する。
「さあな……ってそんな他人事みたいに!」
「いや、他人事だろ。ダンブルドアが守ってんならなんかあればダンブルドアが対処するだろうし、もしスネイプがそれを狙ってんならいずれ馬脚を現すだろ。まあ放っておけ、ホグワーツで保管している物を守るのは生徒ではなく教師の義務だろ」
そう言ってクレスは寝室に向かっていった。
どこまでもドライな男である。
「なあ、俺帰っていいか?」
「何言ってるんんだよクレス! グリフィンドールとスリザリンがこれから闘うってのにさ」
「そうだよクレス! クィディッチあまり興味無いのはわかるけど、友達の晴れ舞台なんだからしっかり応援しなきゃダメでしょ!」
「とりあえずアレク、何でお前がここにいるんだ?」
クィディッチ競技場最上段で、グリフィンドール生達がハリーの応援に熱が入るなか、空気を読まずに立ち上がって呟いたクレスに、ロンとアレクはその態度を咎めた。
「ハッフルパフ生もレイブンクロー生も見に来てるんだよ? スリザリンが負けるところが見たいんだって!」
「そいつらにしたって寮ごとに固まって観戦してんだろ。なんでお前はグリフィンドール生が熱心に応援してる場所に堂々と居座ってんだよ?」
「ちょっと気になることがあってね」
「気になること?」
クレスは周りのグリフィンドール生を見回してから、再びクレスに向き直る。
「実はハーマイオニーだけじゃなく、クレスも寮で孤立してないか心配だったんだ。多分だけど、もし孤立しても私を悲しませないために黙ってるでしょ? クレスったら、昔から不器用なんだから」
「……そいつは心配させて悪かったな。で、確認結果はどうなんだ?」
ややばつが悪そうに聞くクレスに、アレクはにっこり微笑んで答える。
「大丈夫そうで安心したよ♪……だけど友達の応援はしっかりしなきゃダメだからねっ!」
「……どうやら是が非でも帰してはくれないみてぇだな、仕方ない」
やれやれと肩をすくめた後、クレスは席に腰を下ろす。
その様子を見ていたロンとハーマイオニーは顔を近づけひそひそと話す。
「すごかったねアレク……あのクレスを丸め込んじゃったよ」
「というか、アレクへの対応だけ露骨に違うわね。大切にされてる感じが凄く伝わってくるわ」
「同じような関係のゴズホークとは、結構な頻度で喧嘩してるらしいのにな」
グリフィンドールとスリザリンの試合が始まった。選手
達は鬼気迫る攻防を繰り広げ、序盤はグリフィンドールが一歩リードした。グリフィンドールの大歓声が寒空いっぱいに広がって、スリザリン側からは野次と溜め息が上がった。
「ちょいと詰めてくれや」
「ハグリッド!」
ロン達4人は席を詰めて、ハグリッドが一緒に座れるように広く場所を空けた。
「俺も小屋から見ておったんだが……やっぱり、観客の中で見るのとはまた違うんでな。スニッチはまだ現われんか、え?」
スニッチとは、ハリーのポジションであるシーカーが追いかける、金色の小さなボールだ。これをキャッチすれば150点もの点数が加えられ、試合が終了する。
ちなみに、スニッチ以外では10点ずつしか点が入らないので、だいたいこれをキャッチした方のチームが勝つ。
「まだだよ。今のところハリーはあんまりすることがないよ」ロンが答えた。
「トラブルに巻き込まれんようにしておるんだろうが。それだけでもええ。後でどうしたって攻撃されるからな」
その後は一進一退の攻防が続く。
そんな中、ハリーがスニッチを見つけキャッチに向かうも、スリザリンチームのキャプテン、マーカス・フリントが明らかな反則をしてハリーの邪魔をし、スニッチを見失ってしまう。グリフィンドールからはブーイングが、スリザリンからは歓声が沸き上がる。
その後スリザリンが盛り返し、グリフィンドールは点数を詰められる。
「一体ハリーは何をしとるんだ」
双眼鏡でハリーを見ていたハグリッドがブツブツ言いました。先ほどからぐらりと箒が揺れたように不安定な動きをしたかと思うと、空中をジグザグに飛んだり、箒から振り落とされそうになっている。
競技場の全員が息を飲む。箒はさらに荒々しく揺れ、いまにもハリーを振り飛ばしそうになった。今や、ハリーは片手だけで箒の柄にぶら下がっている状態だ。
「誰かに呪いをかけられたか……?」
「そんなこたぁない。強力な闇の魔術以外、箒に悪さはできん。チビどもなんぞ、《ニンバス2000》には手出しは出来ん」
クレスの考えをハグリッドが否定すると、ハーマイオニーは突然ハグリッドの双眼鏡をひったくり、ハリーの方ではなく、観客席のほうを気が狂ったように見回した。
それを見てクレスも魔力で視覚を強化して会場を見回すと、向かい側の観客席の真ん中で、ハリーから目を離さず杖を向けて、絶え間なくブツブツ呟いているスネイプが目に止まった。
「っ…! あ、ん、の、野郎……!」
「待ってクレス!」
憤怒の形相を浮かべてクレスが立ち上がろうとするが、寸前でアレクに止められる。
「止めるなアレク! あの野郎、ぶっ飛ばす!」
「仮にも先生なんだよ! そんなことしたらクレスが退学になっちゃう!」
「だったらどうしろって!? このままあいつが叩き落とされるのを黙って見てられるわけねぇだろ!」
「私が代わりに-」
「それこそダメに決まってるだろ!」
「私に任せて。うまくやってみせる!」
口論になるクレスとアレクを仲裁してからハーマイオニーは移動する。ハーマイオニーは観衆を掻き分け、スネイプが立っているスタンドにたどり着く。
途中でクィレルをなぎ倒してしまうがハーマイオニーは歩みを止めず、スネイプの背後に周りマントに魔法で火をつける。しばらくするとスネイプは自分に火がついているのに気づき悲鳴を上げる。
箒のバランスが戻ったと見るや、ハリーは体勢を整え終えた。そしてそのまま急降下し、口から何かを吐き出しながら着地する。
吐き出された物はスニッチ。グリフィンドールの勝利が確定した瞬間だった。
「スネイプだったんだよ」
試合終了後、アレクと別れた後4人はハグリッドの小屋にいた。ロンがハリーとハグリッドに何があったのか説明している。
「僕達見たんだ。ハリーの箒にブツブツ呪いをかけていた。ずっと君から目を離さずにね」
「バカな」
ハグリッドが紅茶を入れながら否定する。ハグリッドはハリーをずっと心配そうに見上げていたので、先ほどのやりとりを聞いていなかったのだ。
「なんでスネイプがそんなことをする必要があるんだ?」
「僕、スネイプについて知ってることがあるんだ。あいつ、ハロウィーンの日、ケルベロスの裏をかこうとして咬まれたんだよ。何かは知らないけど、あの犬が守っているものを先生が盗もうとしたんじゃないかと思うんだ」
ハリーの考えを述べると、ハグリッドは動揺のあまり手に持ったティーポットを取り落とす。
「なんでフラッフィーを知ってるんだ?」
「フラッフィー?」
「そう、あの犬の名前だ。俺がダンブルドアに貸したんだ。守るため……」
「何を?」ハリーが身を乗り出して聞く。
「もう、これ以上聞かんでくれ。重大秘密なんだ、これは」
ハグリッドがぶっきらぼうに言うがハリーは引き下がらない。
「だけど、スネイプが盗もうとしたんだよ」
「スネイプはホグワーツの教師だ。そんなことするわけなかろう」
「ならどうしてハリーを殺そうとしたの!?」
「生徒を手にかけようとした時点で、あいつはもう教師じゃねぇよ」
先ほどの出来事によりハーマイオニーは考えを変えたようだ。無関心だったクレスも表情に怒りを滲ませている。
「ハグリッド。私、呪いをかけているかどうか、一目でわかるわ。たくさん本で読んだから。じーっと目を逸らさずに見続けるの。スネイプは瞬き一つしなかったわ。この目で見たんだから!」
「どわな呪文かは知らんが、奴は間違いなく何かを唱えていた。俺が見間違うはずがねぇ」
「お前さんたちは間違っとる! 俺が断言する!」
ハグリッドも一切譲らない。
「ハリーの箒がなんであんな動きをしたか、俺にはわからん。だがスネイプは生徒を殺そうとしたりはせん。4人ともよく聞け。お前さんたちは関係ないことに首を突っ込んどる。危険だ。あの犬のことも、犬が守ってる物のことも忘れるんだ。あれはダンブルドアとニコラス・フラメルの……」
「あっ!」ハリーはすかさず突っ込んだ。
「ニコラス・フラメルっていう人が関係してるんだね?」
ハグリッドは口が滑った自分に強烈に腹を立てているようだった。
後書き
ちなみにクレスの箒の実力はマルフォイぐらいのレベルです。
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