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ヴォルデモート卿の相棒

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賢者の石

 
前書き
少々忙しくて更新ペースが落ちるかもです。ご了承下さい。 

 
「インパクト!」

クレスの手の平から魔力が衝撃波が放出され、ルーチェはそれをまともに喰らい、後方に勢いよく吹っ飛ばされた……ように見えたが、ルーチェは悠々と地面に着地した。

「なにぃ!? 全然効いてねぇ!?」
「馬鹿者! あれは自分から後ろに飛んだのだ! 貴様のその技の弱点は射程が短いことだろうが!」
「いつも思うがホントに人間か!? 脚力強化した俺より速かったぞ!?」
「おしゃべりとは随分余裕ですね」

ジークがクレスに情況を説明しているがルーチェはわざわざ待つ必要は無い。
背負っている白い十字架型の剣を鞘から抜き、二人に向かって一振り。
すると剣先から深緑の嵐が巻き起こり、二人に襲いかかる。

「っ!? ちぃっ、アップ!」
「プロテゴ・トタラム-万全の守り-!」

クレスはすぐさま脚力を強化して回避を試み、ジークは手持ちの中の最強の防御呪文で身を守る。



しかしジークの張った防御は無惨に破られ、クレスも逃げ切れず、二人はそのまま竜巻に飲み込まれた。











「あ、ルーチェさん。……今回も同じ結果?」
「ええ。ふふ、二人とも、まだまだですね」

台所で料理をしていたアレクは、地下から気絶した二人を背負って上ってきたルーチェを見て苦笑する。どうやら先ほどの模擬戦らしき闘い、一度や二度のことではないらしい。
誤解のないように補足しておくが、ジークとクレスは決して弱くない。ジークは一年生のレベルを明らかに逸脱した上級魔法を既に使いこなしているほど並外れた才能の持ち主であるし、クレスに至っては並の魔法使いでは勝負にならないほどの戦闘力を有している(クレスの戦闘スタイルが魔法使いにとって天敵そのものということもあるが)。
そんな二人をまるで歯牙にもかけず撃破したルーチェが規格外過ぎるのである。

ここはグレート・ハングルトンという村にあるルーチェ・アルトマーレが建てたレンガ造りの一軒家。
一見リビングがそこそこ広い1LDKの家であるが騙されてはいけない。住んでる四人の部屋及び闘技場、ついでに物置などの部屋は地下に建てられている、核シェルターのような構造の家であるのだ。
今はクリスマス休暇なので、三人は休暇が終わるまで家に戻ってきている。

「……いよいよ人間なのかどうか怪しくなってきたぜ(ゴツンッ!!)いてっ!?」
「とても還暦過ぎた婆さんの動きじゃな(ゴツンッ!!)痛っ!?」
「失礼にもほどがあります。殴りますよ?」
「「殴ってから言うなよ!?」」
「あはは……この光景、なんだか久しぶりだな」

昼食を食べながらも不毛なやりとりを続ける三人を、アレクは懐かしむように見物する。ホグワーツ入学前には
毎日のように繰り広げられていたようである。
ちなみにルーチェは動きだけでなく外見もやたら若い。シルバーブロンドのロングヘアーに翡翠色の眼、きめ細かい肌と非常に整った容姿をしていることもあり、よく男性に求婚されたりしているが、実年齢はマクゴナガル先生より上らしい。世の中不思議なこともあるものだ。

「ところで三人とも、学校は楽しいですか?」

昼食が終わるころにルーチェが気になっていたことを三人に尋ねる。このグレート・ハングルトンに住んでいる魔法使いはこの四人だけ。はたしてクレス達が他の魔法使いとうまくやっていけるのか、ルーチェは少なからず心配していた。

「もちろん楽しいよ♪ 皆優しいし♪」
「まあ悪くねぇよ。面白い奴(ケルベロス)とも闘えたしな」
「狡猾が自慢のスリザリンにしてはウスノロもかなりいるが、セオドールやダフネなど、なかなかどうして知恵のある奴もいる。退屈はしていない」
「……そうですか。皆それぞれ、自分の道を歩んでいますね!」

望んでいたような返答を聞いたのか、ルーチェは満足そうに微笑んだ。

「さて三人とも、もうすぐクリスマスですね! 主を賛美する準備は万端ですか?」
「あ、俺パス。興味無ぇ」
「私も辞退する。何かと忙しいのでね」
「何故に!? シスターたる私が一年で一番張り切る行事を欠席!? あなた達に心は無いのですか!?」
「「知るか」」

涙目になりながらも必死に食い下がるルーチェだが、二人はそれを冷たく一蹴して自分の部屋に戻っていく。

「え~ん、アレク~! なんであの二人はあんなマイペースな子に育っちゃったんですか~!?」
(((あんたが言うかソレ……)))

結局参加してくれたのは心優しいアレクだけだったとさ。










「なあジーク」
「なんだ?」

クリスマスの日、リビングで送られてきたプレゼント(アレクに送られてきた量が飛び抜けて多いが、まあ人徳の差だ)の包装を開けながら、クレスは何かを思い付いたように訊ねる。

「ニコラス・フラメルってどんな奴か知ってるか?」

クィディッチ戦の日から、ハリー達三人は図書館に入り浸ってニコラス・フラメルについて必死て調べていた。
その一方でクレスはフラメルが誰なのか、スネイプが何を狙っているのかなど、正直どうでも良かったのでサボっていた。もとより、スネイプが何を狙ってようが関係ないのだ。
クレスは友人を手にかけようとしたスネイプを許すつもりは無いがスネイプは教師、馬鹿正直にぶちのめしても退学になるだけである。だからクレスは言い逃れできない情況になるまで泳がせる、具体的にはスネイプがその何かを手に入れるまで放置すると決めた。
だからこの質問も単なる思いつきに過ぎないのだが、クレスは聞いた相手が相手なので、答えが返ってくることを確信していた。

「世界で唯一賢者の石を創造した錬金術師だな」
「賢者の石ぃ? 錬金術の到達点と言われてるアレか?」
「アレだ。エリクシール(命の水)の源であり、あらゆる金属をも黄金に変える力がある。欲深な人間にとっては喉から手が出るほど欲しがりそうな代物だが、錬金術師にとっては黄金やエリクシールなどさほど重視するものではない。むしろ……(ブツブツ)……とはいえ錬金術で私が興味を持っているのはホムンクルスの方なんだが……(ブツブツ)」

なにやら小難しいことを話しながら思考に没頭し出したジークを放置して、クレスは自分の部屋に戻る。ジークのよくある悪癖なのでクレスもわざわざつき合う気は無い。

「なるほどね、賢者の石か。小悪党が狙いそうな代物だな。……まあ俺には関係無ぇ。容赦なくぶっ潰すだけだ」

クレスは敵には容赦しない。そしてクレスはハリーを手にかけようとしたあの日から、スネイプを敵と認識している。

(けどまぁ、そんな小悪党じゃあ知らねぇだろうな……奴の手がかりは)

クレスの脳裏には、一人の男がちらついていた。
 
 

 
後書き
『エデンの園』……ルーチェの剣。十字架のような彫刻が彫られた1.5メートルほどの白い剣。刀身も鍔も柄も鞘も全て、神が与えた最も固い金属とされる『オリハルコン』でできているため、余程のことが無い限り砕けない。実は中に杖が埋め込まれているためこれを介して魔法ご使える。
また、魔法を飛ぶ斬撃もしくは竜巻状にして発動できるなど応用性も高い。
短所は重量が80kgと超重いこと。日本刀が1.5㎏なことからどれだけキチガイ染みた重さかをご理解いただきたい。剣というよりもはや鈍器である。
シスター・ルーチェはこの剣を竹刀間隔で振り回せます。 
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