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神葬世界×ゴスペル・デイ

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第一物語・前半-未来会議編-
  第三章 覇王の会議《1》

 
前書き
~明・灯による前章説明・第二回目~

【明さん】  :『来たわ、来たわ! 二回目よお――!
 さあ、行くわよ。前章はこんな感じよ!』

-前章のあらすじ-
 会議の準備を他人に任せ、馬鹿長ことセーランはネフィアといちゃつく。
 二人の教師がいるのにも関わらずいちゃつく。
 いちゃつき、いちゃつき、いちゃつきまくり……。真面目にやれよ馬鹿夫婦が。
 そんなこともあったが、辰ノ大花の宇天学勢院勢が会議場へと到着。
 この時なんかあったみたいだけど、説明が面倒なので省くわ。
 そしていよいよ会議の始まり始まり。
 前章の終わりを閉めるのは怪しげな者達!
 彼らは一体何者なのか!

【明さん】  :『こんな感じね。特に前半はいちゃつきまくって怒りが込み上げてきたわ。そういうの他所でやりなさいよ、ウザったい』
【ネフィア】 :『誤解が酷過ぎませんこと、その前回のあらすじというのは。まずわたくしとセーランはいちゃついていた訳ではありませんし』
【明さん】  :『言い訳なんてあんたらしくないわねえ?』
【ネフィア】 :『改める気ありませんのね……。それにこの調子で続けて行きますの?』
【明さん】  :『変える気は無いわ。だってこれは私のコーナーだから! ところであんたの間接会話名前|《チャットネーム》、名前のまんまなのね。つまらない女』
【ネフィア】 :『別に何だっていいではありませんか。灯の方も苗字に“さん”付けしただけなんですし』
【明さん】  :『これ見て何も解らないなんて無能過ぎるわね。この“明さん”てのは“ねいさん”→“姉さん”って聴こえが似てるからそうしたの、よっ!』
【ネフィア】 :『一字しか違わないですものね。もう今回はここら辺で終了した方がよろしいのでは? まだ物語始まっていないのに、これだけの文字読ませると皆様、本文読む気無くしますわよ』
【明さん】  :『まだ二回目だから大丈夫よ。全て私に任せなさあい!』
【ネフィア】 :『どうなっても知りませんわよ』 

 
 日射しを遮るように建つ建物の敷地内に、一つの広場がある。広場には装飾がなされ、その中に人影の組が二つに分かれている。
 今、会議の始まりを知らせる警報が響き渡る。
 並べられた二組の机の真ん中にいる咲は、警報が鳴り終えると二つに分かれている学勢達に告げる。
「これより、日来と辰ノ大花の会議を始めます。双方の覇王会は前へ」
 二つの組は並べられた机を背後に置き、前へと数歩出る。
 それを確認し、
「まずは日来から職務、名前を告げて下さい」
 告げる咲の声に、日来学勢院側に立っていた伊達眼鏡を掛けた少年が一歩、前に出る。
 相手を真っ直ぐ見詰める視線。対して彼方は動揺する様子は見せなかった。
 つまり受けの姿勢で会議に挑んでいるわけではないということが、態度で理解出来た。
「日来覇王会戦術師、レヴァーシンク・ゼム。宜しく」
 短く言い、一歩下がた。
 交換するように、二人の女子学勢が前に出た。
「私は日来覇王会伝達者、岩清水・飛豊だ」
「うちは日来学勢院覇王会伝達者補佐、虎居・空子ネ」
 二人は告げ、後ろへ下がる。
 空子に若干の視線が送られたが、ほんの数秒のことだ。
 他の者とは喋り方が違うことに反応したものと思われる。
 次に金髪の男女が出て来た。
「日来覇王会指揮官、金動・アストローゼ。価値ある話を期待している」
「日来覇王会指揮官補佐のニチア・ワークです。そしてこの子は生霊|《ナビ》のウタタネです」
 ニチアは手に乗っかている狐型の生霊を見せながら、アストローゼは真剣さを表しているが普段となんら変わらない。
 仲間達がそう思うなか二人は引っ込む。
 後に続くのは、白髪の髪をした半獣人族の女子学勢だ。
「わたくし日来覇王会隊長、ネフィア・ルルフと申します。以後お見知りおきを」
 制服のスカートを手で掴み、軽くお辞儀をする。
 その時、背後から体に誰かが絡み付いてきた。
「俺もう自己紹介したからよくね?」
「我が覇王!? あの、離れて下さいな」
「彼方の御仁、女性に引っ付いてるで御座るよ! 羨ましいで御座るなあ……」
 男の本音というものが漏れた。
 直後、辰ノ大花側にいた忍者の足を、隣に立つ女子学勢に目に見えない速度で踏みつけられ、
「――あひん!」
 と、忍者は情けない声を漏らした。
 忍者は痛みを堪えているが、痛みからか両の足が震えている。さっさと進めろ、と言わんばかりの彼方の態度に恐れをなし、セーランはネフィアから離れた。
 はあ、と苦労のため息を吐き、ネフィアは後ろへと下がった。
 前に残るセーランは一人頷いてから、よし、と意気込んでから言う。
「自己解決で自己紹介。日来覇王会会長ヶ長幣・セーランまたまたヨロシク。っておい、何だよネフィア、そんなんで束縛するなよ。
 もしやこれは束縛プレイか! これ束縛プレイだな!?」
 いきなりネフィアが持つ銀色の縄に強く縛られたセーランは、机の後ろの席まで引っ張られ後退した。
 意味が分からないが笑っている長はやはり馬鹿だと思いつつ、ここは覇王会隊長として長を正す必要がある。
 これで変な真似はしませんわね。
 銀色の縄を変形させ、椅子ごと縛る。
 あまりにも長の扱いが雑なその光景を、来訪者達は呆然と眺めていた。
「え、えっと、次は辰ノ大花の皆さん。宜しくお願いしますね」
「咲先生も苦労するね」
 咲の左側に立つ榊は、彼女だけに聞こえる声で同情した。
 言葉には出さないものの、苦労が伺えるような頷きを返された。彼女自身、三年一組の空気にはまだまだ慣れていないのかもしれない。
 自己紹介は終わらず、次に宇天学勢院にへと変わる。
 まず始めに、辰ノ大花のゴーグルを掛けた細柄の男子が前に出た。
「宇天覇王会戦術師の棚部・御茶丸と申します、ええ。今回は宜しくうう」
「何あれ気持ち悪る!」
「黙れよ、ニチア」
 飛豊の注意にニチアは膨れる。
 赤い眼鏡のレンズ越しに、睨み付ける視線を放たれるが飛豊は気にしなかった。
 自分が気持ち悪がられたのも気にせずに、はっはっはっ、と笑う御茶丸は下がっていった。
 今度は忍者が足を引きづりながら、前へ出て来た。の前に御茶丸の先程の怒りが込もった平手打ちを背中に浴びた。
 その見事な音に、恐れる者もいれば拍手を送る者もいた。
 今日はやけに仲間にいじられると感じながら、忍者は足と背中の痛みと共にやってきた。
「自分、宇天覇王会伝達者、葉隠・介蔵と言う者に御座る」
 介蔵は気付いていた。
 建物の中から自分を狙うかのように、視線を自分に向けている誰かがいると。
 誰なのか。それは視線の送り具合で理解出来た。
 古き友の視線を。



 外交区域学勢領の建物の会議場が見える窓から、幾人の学勢がそこから会議を覗いている。
 残りの者達は同室の部屋の中で、映画面|《モニター》越しに会議を見学していた。
 窓際にいる一人のポニーテールの女子学勢は、来訪者達の方を見ていた。
 魅鷺だ。
 葉隠・介蔵と言う者を、まるで獲物の動きを観察するような鋭い視線を向けている。
「……介蔵殿」
 ぼそりと、その者の名を口にする。
 すると横にいる小柄な身体に似合わず、大きめの制服を着た女子が話し掛けてきた。
「そう言えば魅鷺ちゃんはくの一でしたね。あの忍者とはお友達で?」
「まあ、そのようなものに御座ろうな。ここに来る以前は拙者、辰ノ大花に所属していたで御座る。その時の仲間に御座るな」
「なるほどですねー。でも今回、敵側みたいな感じですけど……」
「あれはあれ、これはこれに御座る」
 割り切ってますねえ、と関心するロロアを余所に魅鷺は外にいる忍者を見る。
 気付いてるで御座ろうな。
 いざとなれば、武器を交わすことにやるかもしれない。しかし、それは彼方も覚悟はしているだろう。
 仲間達が騒いでいるなか、静かに思った。



 介蔵は建物内からこちらを観察するような、鋭い視線を感じていた。
 幼き自分が追い抜こそうとした、同年代にして忍としての才を持つ一人のくの一。
 魅鷺に御座ろう。
 思ったが振り向きはしない。事実であることに確信を持っているからだ。
 彼は一歩下がり、気を沈める。
 そのなかで、彼は思う。
 今の自分は覇王会の職務を務め、彼女は覇王会には勤務めてはいない。これが知らしめるのは、単純な力の差と信頼の違いだ。
 しかし、彼は知っている。

 ――“彼女は必ず追い付いて来る”と。

 そんなことを余所に、右側に立っていた女子学勢が前へと出た。
 綺麗な足取り、まるで相手を威嚇するような足音。
「宇天覇王会隊長兼指揮官、草野芽・実之芽」
 それだけを言い、後ろへ下がった。
 必要最低限のことを言っただけ。ただそれだけだった。
 早っ! と、ニチアが言ったが周りは気にしていない。その様子が気に入らなかったのか、ニチアはまた膨れた。
 無理も無い。先程の女子学勢は覇王会の役職を二つ持っていた。つまり役職を二つ任せられる程の実力を持つということなのだからだ。
「奏鳴様、前へ」
「……? あ、分かった」
 後ろに下がって来た実之芽に言葉を掛けられ、少し驚いた後でゆっくり前へ女子学勢は歩む。
 その姿はまるで、何かに脅えている小動物のようにも見える。
 最後に紹介するということは、彼女が宇天覇王会会長であることは誰にでも理解出来た。が、あまりにもその風格が無いことに違和感を覚えた。
 辰ノ大花は奥州四圏の一地域であり、神州瑞穂の主力の一つでもある。
 その地域の学勢を仕切る者が、あたりにも弱く皆の目には映ったために。
「私は宇覇王会会長ヶ長、委伊達・奏鳴だ。お互い意味のある会議をしよう」
「そんなのはそっちの返事次第だよねえー」
 さらっと余計なことをニチアは発言する。
 雷の如く、これに即座に反応したのは宇天覇王会の実ノ芽だ。
「それは宣戦布告かしら?」
「何よ、だってそうじゃない。私、間違ってないもん」
「ニチア、今のはお前が悪い。宇天長、申し訳無い。こいつは何かと突っ掛かってくる奴なんだ。今からマジ叱っとく」
「わ、分かった。実之芽、あちらには悪気は無い、そう気を立てるな」
 長が言うので、分かりました、と実之芽は黙り姿勢を正す。一方のニチアの方は飛豊にマジ叱られており、苦笑いをしていた。
 日来覇王会の面々は長を除き皆、安心したような、呆れたようなため息を漏らす。
 その後ろで椅子に縛られたセーランが、椅子を揺らしながら暇そうな顔をしていた。
「あのさあ、騒いでるとこ悪いけどさっさと会議始めね? 俺達も他に色々やることがあるわけさ、そっちも話し合いの後にやることあるだろ?」
「それはこの御茶丸も思ってました。そろそろ会議を始めてもいいかなあ、と」
「それもそうね。私達は準備が出来てるけど、そちらは?」
「こちらも準備出来ている。咲先生、始めましょう」
 その言葉の後に前へ出ていた覇王会は歩き、後ろの机に用意されていた椅子に座る。
 学勢と言えども覇王会に属する者達。この十一人の学勢達が今後の未来を左右する。
 かの黄金時代から既に学勢院高等部、年齢で言うと十五からは大人、という認識が強くなり常識となっている。
 今後彼らがどのように変わっていくのか、それは誰にも分からない。
 思いながら覇王会の面々が椅子に座ったのを確認した榊は、来訪者側にいる一人の学勢と二人の教員を呼んだ。
「覇王会じゃない学勢と教員はここの席で見学してもらえるかい」
「あ、はい、分かりました。学長、タメさん、行きましょうか」
 肩まで伸びている髪を揺らしながら、彼方の女子学勢が小走りに教員二人の前を歩く。
 彼女は覇王会ではなく付き添いで来たのだろうか。
 先を行く少女に釣られるように、教員らも歩き始めた。
「判治は相変わらずだねえ」
「蓮に言われたくないよ。それにタメナシお前、タメさんってあれ、俺達の代の呼び名だろ。 復活させたのかよ」
「うるさい。あれは今年の高等部三年生達が勝手に呼んだだけであって、復活させたわけではない」
「どうだかなあ」
 榊の横を通り過ぎる数秒のなかで、三人は久しぶりの会話をした。
 自分達がまだ若かった頃を思い出し、同時に生きていく上で犠牲にしてきたものも思い出す。
 黄金時代と言う聞こえのいい戦争の歴史。
 多大な犠牲を払い、それに見合った成長を遂げたためにそう言われるようになった。
 穏やかな現在が、本当に平和だと感じる。
 老けても口数が減らない人だなあ。むしろ増えたんじゃないのか?
 髭をいじりながら、昔のことを思い出した。
 今は昔馴染みで会話出来る雰囲気じゃないのが惜しいと、そう思う。
「それでは、今をもって会議に取り掛かりたいと思います」
 咲の声が日来中に響き渡る。
 会議場の上には双方が会議の内容を確認出来るように、映画面|《モニター》が表示される。
 この時を境に日来の動きは止まり、全住民は映画面越しに話し合いの行方を見守る。
 日来の何処もがそうであった。
 この話し合いで、日来の未来が決まるのだから。
「それでは始めに会議のルールを説明します。先攻は、始めに発言をした側が先攻とします。何を発言するかは自由ですが、場合によっては強制終了させて頂きます。戦闘は禁止とし、発言だけで討論しあってもらいます。
 会議の終了はこれ以上話し合いは必要無い、とここにいる日来学勢院と宇天学勢院の各二人の教員が判断した時です。
 そして、会議の内容は以下の三点のみです」
 手元に表示した映画面をいじり、奏でるように操作音が流れる。
 数秒後。会議場の映画面に三つの文が並ぶ。

 その一。
 日来との今後の関係をどうするか。
 その二。
 その後の日来について。
 その三。
 今後の日来の姿勢。

 これは極秘に、今ここにいる教員四人だけで決めたものだ。そのためこの会議の内容を知る者は、ここにいる教員の他には知る者はいない。
 理由は双方、有利不利無く平等に会議をするためだ。
 “その一”の内容は、双方が必ず話し合うことだ。“その二”は日来の問い、“その三”は奥州四圏の問いだ。
 この内容を見て、即座に動く者がいた。
「んじゃ始めるか。会議の順は上の通りで行こうぜ、異議ある人は!」
 日来の長だ。
 椅子に縛られ自由が利かないので、椅子を揺らしながらアピールしている。
 開始数秒のことである。そして、それに怒り似た感情を得た者がいた。
「馬鹿かお前は――!」
「うおっ! 何だよ飛豊。大きい声は会議中ではノンノンノン、ですよ?」
「ネフィア、殺れ……」
「ごめん遊ばせ」
「おふっ!」
 彼を縛っていた縄の一部から拳が現れ、セーランの腹にパンチを食らわす。
 鈍い音の後には、既に彼は身動きを取ってはいなかった。干されているように、ぐったりと上半身を前に曲げていた。
 やけやけという感じで、肩を落とす飛豊。
「全く、こいつは縄に縛っても意味が無かったか」
「まあ、これなら大丈夫だと……いいですわね」
「み、身内殺しに御座る! もし実之芽殿に殺られたら昇天に御座るな」
「そうですねえ、しばらくは昇天コースでバイバイですねえ」
 見ていた介蔵と御茶丸が呑気に笑う。
 恥ずかしい思いをしたかのような感情の揺れが飛豊を襲い、身体が余計に力んでしまうのを感じた。
「いやあ怖い怖い。逆鱗に触れないようにしなければ」
「御茶丸殿、それはフラグというもので御座るよ?」
「馬鹿言わないでくださいよ。フラグ回収したらどうするんですか」
「ははは、さすがに幾ら普段は力で口を封じる実ノ芽殿でもこの場ではしないで御座るよ」
「ですよですよ、そーですよ。幾ら普段から力で口を封じる、鬼のような――」
 言葉を紡ぐ前。
 来訪者の戦術師の伝達者の二人は次の瞬間、仲間であった実之芽からパンチを腹に食らい、身内殺しにあった。



「先攻じゃ駄目なんですか?」
 会議場のすぐそこにある建物の一室で、短めの金髪の女子学勢、ロロアが疑問に思った。
 会議の仕方は解っているも、流れが今一掴めていない。だからここは物知りな恋和に尋ねた。
 そうねえ、と悩みながら恋和は言う。
「駄目ってわけじゃないけど有利になりにくいのよ」
「じゃあ、なんで長は先攻を取ったんですかね」
「それは馬鹿長と呼ばれてるからだろう」
 機竜系破族であるトオキダニの答えに、何故か納得している自分がいる。
 そのことに逆に疑問を持つが、考えるのも馬鹿らしいので止めた。
 苦笑いの恋和は馬鹿長ことセーランを庇うように、せめてもの言葉を送る。
「馬鹿長呼ばわりされてるけど、きっとセーランも考えがあってのことだと思うの」
「リュウもそう思うなー。しかし、身内殺しはいけないなー」
「ほうほう、マチョラ君もそう思いますか。いやはや、やはり君とは気が合いますな」
 リュウの意見に頷いたのは、ぽっちゃりした体型である天布の横にいる巨漢の学勢マッチだ。
 しかし、気恥ずかしそうに顔に巻いてある布を、今は目を隠すように上げている。
 長い紺色の髪をした美兎が、会議に何やら詳しい彼女に言う。
「恋和さん教えて下さい、会議のこと。ここにいる殆どの人が分からないと思うんです」
「そうだよ。特にぼく達、機関部の連中は会議なんてしたこともないしね」
「……打ち合わせなら、よくするけどな……」
「ジューセン、会議と打ち合わせは違うだろ?」
 高笑いをしている煙管をくわえた入直は、ふて腐れたような顔をするジューセンを笑う。
 笑われたジューセンからすれば、分かっていて言ったのであって笑われるようなことは言っていない。
 恋和はそそくさと、映画面|《モニター》を表示し説明に入る。
「じゃあ、説明するわね。何故先攻の方が不利なのか、それは簡単」
 彼女は笑顔のまま、右手の人差し指を立てながら言う。
「受け答える側になるからよ」
 その答えに、反応した者はやはり少ない。殆どの者は首を傾げるだけだった。
 だが、その様子を彼女は当たり前だと思い、説明を続ける。
「先攻でこっちが宇天学勢院の方に疑問を投げたら、宇天学勢院はその疑問を答え、そしてこちらに新たな疑問を投げてくる。こちらはその疑問に答えるけど、基本的にこの次に日来学勢院から疑問を宇天学勢院に投げ付けられないの。何故か分かる?」
 彼女の問いに答える者はいない。
 皆は恋和を見て、答えを求めている状態だ。
 答えが出る気配も無いので、仕方が無いので会議の様子が気になるが話しを続ける。
「答えた疑問に対して、宇天学勢院からまた疑問が投げ付けられるからよ。これがかなり厄介でね、相手のペースに填まったらなかなか脱け出せない。だって答えたら疑問がまた投げ付けられるんだもの。これだけでもう先攻は取らないぞ、て普通は考えるでしょ?」
「確かにそうだよね。わざわざ相手の有利になる方選ぶ必要無いもん」
「妹よ、賢くなったな」
 兄のグレイの声に、妹のテイルは自慢気に胸を張った。
 表示した映画面には今説明したことが記入されていた。恋和はまだ説明を続けるために、皆の注目を集める。
 言いたいことをまだ言い終えていないためだ。
「しかしですね、でっかいデメリットを背負う代わりに、貴重なメリットを得ることも出来るんです」
「それは何なのだ?」
 皆から少し離れたところにいる獣人族のルヴォルフが、短く疑問の言葉を投げた。
 ルヴォルフはネフィアと同じ真ノ自由独逸|《エヒトフライハイト・ドイツ》出身で、実戦は幼い頃から経験している。勿論、会議の方法等も経験済みな筈だ。
 彼は解っていてあえて疑問を述べたのだ。
 それはね、と恋和は答える。
「先に発言すると今後の展開を絞れるの。セーラン言ったでしょ? 会議は上に映った通りで行こうぜ、て。これは既に展開を一つに絞ったわけね。
 行きなり会議で宇天学勢院側から、その三から言え! なんて言われたら解答次第で奥州四圏の反応が変わったら困っちゃうものね。セーランはこれが目的だったと思うの」
「でもそれって相手が賛成した場合でしょ?」
「普通はね。でもこれって会議って言ってるだけで、どんな結果を出しても日来が負けなのよ」
「何だそのクソみたいな設定は!」
 突如、ゲーマーが大声を出した。
 皆は部屋の隅に座り、旧世代のゲーム機と呼ばれる物を持つ一人のゲーマーに視線を向けた。
 ゲーマーは立ち上がり、こちらに向かって歩いている。
 影を薄めて今までいた彼は、何処に反応したのか急に身体に火が付いたように騒ぎだした。
「なんだそのクソゲーは! 俺が攻略してやるうう!!」
「サエル、これゲームじゃないのよ。会議って言う三次元のことよ?」
「へ? だってさっき言ってたよね、どんな結果を出しても負けるって」
「言ったよ、でもゲームとは言ってなかったでしょ? 貴方の好きな二次元じゃなくて、これ三次元のことだから」
「クソー! はめやがって――!」
 床に手を付き、嘆きの声を上げる。
 周りから哀れみの視線が一点に彼に向けられた。
 床に向かって叫んだサエルの元に、様子見しにマギトが近付いてきた。
 上半身を大きく動かして右左。顔を覗くように膝を曲げ、それでも見えないが納得した。
「あやや、これ精神ダメージ大だね」
 彼女の言葉に乗っかってグレイが言う。
「マギトよ、大ではない超だ」
 グレイの次はロロアが乗っかり、
「超を突破して即死ですかねー」
 と面白半分に言った。それがサエルの火に油を注ぐ形となった。
 しまったとロロアが思ったが、時は既に遅かった。
「俺を馬鹿にしやがって、許さね――ぞお――!」
「ならマギトは飛ぶ」
「なら私はルヴォルフに助けを」
「え、えええ!? ルヴォルフさん助けるんですか! ぎゃ――! こっち来ないでくださいよ――!」
 サエルの標的が翼人族、変態紳士となり、最終的にはロロアとなった。
 室内のなかで二人は走り回っている。しかし、ロロアがすばしっこいのでなかなか捕まらない。
 彼方は彼方、こちらはこちらで色々と大変だなと恋和は思った。
 会議の雰囲気とは違い、こちらは馬鹿らしく騒いでいた。 
 

 
後書き
 いよいよ会議が始まりました。
 まだ、ほんの少しですが……。
 会議と言っても話し合いみたいなものです。
 文章にしてみると、なかなか物語が進まないと思いました。
 まあ、気長に投稿していきたいと思います。
 次回は会議の討論回です。 
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