ヴォルデモート卿の相棒
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ハロウィーン
前書き
ハーマイオニーとクレスの相性が悪さを説明致します。
実はこの二人、あらゆることが真逆なんです。
【性格】
ハーマイオニー……お節介が過ぎるところが多々ある
クレス……マイペースで指図や束縛を嫌う
【魔法】
ハーマイオニー……論理派かつ秀才タイプ・まず座学ありき
クレス……感覚派かつ天才肌・修練と研磨によって身につける
【規則に対して】
ハーマイオニー……何があろうと守るべき
クレス……バレなきゃOK
【伝説上のものや存在が不確かなもの、憶測】
ハーマイオニー……確たる証拠が無ければ全否定し、他人の考えにも口出しする
クレス……実在すれば面白いと思うし、どんな馬鹿げた憶測でも完全否定はよほどのことが無い限りしない
【友達】
ハーマイオニー……心の底から欲しているが、いない
クレス……もしいなかったとしても大して気にしないだろうが、結構いる
「エシャロットの奴……! 必ず痛い目にあわせて、僕に楯突けばどうなるか思い知らせてやる! 」
マルフォイはスリザリンの談話室で怒りにうち震えていた。周りのスリザリン生はどうしていいかわからないでいる。
昨日の「ポッターと真夜中に決闘の約束をした後フィルチに告げ口、ポッターは退学」大作戦でクレスの怒りを買い、今朝教師の目の届かないよう男子トイレに連れていかれ、彼の人を殺せそうな眼で睨まれながら「次同じことすれば潰す」と脅されたのだ。余程怖かったらしく、マルフォイの目は充血し、顔には涙の跡がくっきりついている。
凡庸なくせにプライドだけは一級品のマルフォイはその件で大層クレスを憎み、どうしてやろうかと考えを巡らせているのだ。
「やめておけ。奴の逆鱗に触れた貴様に非がある」
ジークがマルフォイに近づきながら冷淡に告げる。興奮状態のマルフォイはクレスの関係者と見るや即座に噛みつく。
「僕に非があるだって!? 確か君はエシャロットと家族のような関係だったよねぇ! どうせあいつに肩入れしてるだけだろ? そんな奴の意見など聞く価値無いね!」
「無知もそこまでいくと笑えるな。奴の、エシャロットという家系がどういうものなのかも知らんのか?」
明らかに見下したような表情のジークに、マルフォイはますます怒りを募らせる。
「奴の、エシャロット家の家柄がイギリス魔法界屈指なんてことは知っているさ! だが! だからといって僕達マルフォイ家が劣っているわけではないぞ!」
「家柄ではなく特徴だ。魔法族の旧家は皆それぞれ主義・信条を掲げている。貴様らマルフォイ家は……というよりスリザリン生の純血の家系のほとんどは、魔法族を尊びそれ以外を排除しようとする純血主義。ウィーズリー家は、言わば反純血主義。私の家系ゴズホーク家は魔法と叡智による真理の探究……さて、エシャロット家はなんだと思う?」
「……なんだって言うんだ?」
ジークの話を聞きながらある程度冷静さを取り戻したマルフォイは、それでもしかめっ面でジークに聞いた。
「戦闘だ。奴らは戦いを何よりも好み、力を求め、常に自らの刃を研磨し、ただひたすら戦場を駆け抜けることを願う。奴らにとって人生とは闘いなのだ。貴様のしたことは、エシャロットの人間からすれば最も許しがたいことだ」
ジークはマルフォイを見据えながら言葉を続ける。
「貴様はするつもりのない決闘を提案し、あまつさえそれを利用して人を嵌めようとした。エシャロット家にとって決闘を侮辱されることは貴様の立場で例えると、そうだな、無理矢理マグルもしくはマグル生まれの女との結婚を強いられるようなものだ」
「……っ!」
マルフォイは雷に打たれたように立ちすくむ。
ドラコ・マルフォイにとって純血主義とは両親に教え込まれた絶対なものであり、誇りでもある。それを穢されるということは想像を絶するほどであるのだ。
「まあ貴様がこれからどうしようと、私の知ったことではないがな」
呆然としたままのマルフォイを捨て置いて、ジークは談話室を後にする。
(まあ奴は運が良い。ルーチェさんに育てられたからか、歴代のエシャロット家当主と比べるとクレスは大分穏健派の部類だ。……もし過激派なら問答無用で八つ裂きにされていただろうな)
「あの犬は何かを守っている。たぶん僕はその守られてるものを知ってる。多分僕の誕生日の日にハグリッドがグリンゴッツから持ち出した包みだ」
「きっとものすごく大切か、ものすごく危険なものだな」
「その両方かもな。まあ放置しておくのが賢明じゃね?」
クレス達はケルベロスが守っている物について議論していた。しかし引き出してきたという謎の包みについては、五センチぐらいの長さのものだろうということしかヒントがないので、三人はそれ以上なんの推測もできなかった。
あの日からハーマイオニーはクレス達と口も利かなかったが、三人ともハーマイオニーのお節介に辟易していたので、むしろ三人ともそのことを喜んでいた。
決闘騒動から一週間後、いつものようにふくろうが群れをなして大広間に飛んできた。
その中で6羽のふくろうが細長い包みをくわえて飛んでいるのを見つけ、みんなは興味津々でそれを見上げた。
すると、そのふくろうはハリーの前にその包みを落としたので、ハリーは驚きを隠せなかった。そのふくろう達が飛び去る直前に手紙を落としたので、ハリーは急いで手紙の封の開けた。
『包みをここで開けないように。
中身は新品のニンバス2000です。
あなたが箒を持ったとわかると、みんなが欲しがるので、気づかれないように。
今夜七時、クィディッチ競技場でウッドが待っています。最初の練習です。
M・マクゴナガル教授』
二人に手紙を手渡しながら、ハリーは喜びを隠しきれなかった。
「ニンバス2000だって! 僕触ったことさえないよ」
ロンは羨ましそうにうなった。
1時間目が始まる前にその箒を見ようと朝食も食べ切らずに2人は急いで大広間を出たが、興味無かったクレスは
しっかり朝食を摂取した後大広間を出た。
玄関ホールまで来るとマルフォイが怒りと当惑の混じった顔で立っていたが、クレスを見た途端真剣な顔つきになり、クラッブとゴイルを退出させた。
「俺に何か用か?」
「…………すまない」
「あ?」
やや面倒くさそうにクレスは聞くが、マルフォイの謝罪に思わず片眉をつり上げる。
「僕は知らず知らずの内に君の誇りを侮辱していたようだ……本当にすまなかった」
「……!」
そう言ってマルフォイは頭を下げた。プライドの高いマルフォイのその行動にクレスは内心驚いたが、すぐにあっけらかんと告げる。
「まあ気にすんな。俺らはまだガキだ、間違うことだってあるさ」
ニヤリと笑って、クレスは階段を上っていった。
いかにも温室育ちな奴だが名家の次期当主としての矜持はあるみたいだな、と考えながら。
ハロウィーンの朝、ホグワーツの生徒はパンプキンパイを焼く美味しそうな匂いで目を覚ました。
また、「妖精の魔法」の授業でフリットウィック先生が、そろそろ物を飛ばす練習を始めさせた。
既に修得しているクレス(有力な家系は11歳になる前に杖を持つことや保護者の監督のもと魔法の練習することが許されている。まあほとんどの家系は11歳になってから持たせているのだが)は冷めていたが、グリフィンドール生の大半は大喜びした。ずっと待ち望んでいたようだ。。
先生は生徒を二人ずつ組ませて練習させた。
クレスはネビル、ハリーはシェーマスと組んだ。しかしロンは、なんと、ハーマイオニーが組むことになった。ハリーが箒を受け取ってからも、ハーマイオニーは一度もクレス達と口をきいていなかった。
「ありゃりゃ、御愁傷様。じゃネビル、やってみろ」
「う、うん。……クレスは?」
「俺はもうできるから見学しとく」
生徒達は熱心に取り組んだがこれがなかなか上手くいかない。ネビルはちょいちょいクレスが助言してくれるものの、まるで上達していなかった。
……というかぶっちゃけ、クレスの教え方が下手なのである。例を上げると、
「だーかーらー、杖の振り方は最初らへんは小さく、だんだん大きく、だ」
「小さくとか大きくって!何?」
「匙加減は……まあ勘でやれ、何回かやりゃ多分できる」
クレスは多分、教師にはなれそうにない。
「ウィンガディアム レビオ~サ!」
長い腕を風車のように振り回してロンが叫んでいる。浮かせるべき羽は微動だにしていない。ハーマイオニーはは刺のある声調で間違いを指摘する。
「杖の振り方が全然違うわ。それに呪文も間違ってるわね。正しくはウィン・ガ~・ディアム・レヴィ・オ~サよ」
「そんなによくご存知なら、君がやってみろよ」
ロンの怒鳴り声をスルーし、ハーマイオニーはガウンの袖をまくり上げて杖を振り、呪文を唱えた。
「ウィンガ~ディアムレヴィオ~サ!」
羽は机を離れ、頭上1・2メートルまで浮かび上がった。
「オーッ、よくできました!皆さん、見てください。グレンジャーさんがやりました!」
先生やグリフィンドール生の多くは拍手していたが、クレスはやや呆れた目で、ロンはこの上ないほどしかめっ面で、ハリーはその様子を同情するように見ていた。
「だから誰だってあいつには我慢できないって言うんだ! まったく悪夢みたいなヤツさ!」
廊下の人ごみを押し分けながら、不機嫌ここに極まれりといった感じで吐き捨てた。
不意に誰かがハリーにぶつかり、急いで追い越していった。その正体はハーマイオニーだった。ハリーがチラッと顔を見ると、驚いたことに、泣いていた。
「今の、聞こえたみたい」
「それがどうした? 誰も友達がいないってことはとっくに気がついているだろうさ」
「まあ、少なくともその現状をよしとしているわけじゃあないみてぇだな。……棚の近くで寝そべっていたところでぼた餅は降ってこねぇのにな」
ハーマイオニーに出て来なかったし、その日の午後は一度も見かけなかった。
ハロウィーンのご馳走を食べに大広間に向かう途中、パーバティ・パチルがラベンダー・ブラウンに話している内容を、クレス達は小耳にはさんだ。曰く、ハーマイオニーがトイレで泣いていて、一人にしてくれと言ったらしい。
「……ちょっと、悪いことしちゃったかな」
「さあな」
バツの悪そうな顔で漏らしたロンの言葉を、無関心そうな顔で流すクレス。
「さあな、って……クレスは気にならないの?」
「どうでもいい。あいつの心がまだ死んでねぇなら起き上がってくるだろ。そうでなかったら……もう会うことは無ぇかもな」
「君、友達とか家族以外にはかなり冷たいよね……」
「ああ、自覚してる」
ハリーの問いにもクレスは気だるげに返す。その様子にロンは少し顔がひきつるが、やはりクレスは無反応だ。
クレスは聖人でもお人好しでもない。大して仲の良くない同級生が塞ぎこんだからといって、わざわざ慰めに行ってやるようなできた人間ではないのだ。
そうこうしているうちに三人は大広間に着いた。
「「ワァァァァァオ!!」」
「お前らはお前らで現金だなオイ……」
ハロウィーンの飾り付けはまさに圧巻の一言だった。
千匹のこうもりが壁や天井で羽をばたつかせ、もう千匹が低くたれこめた国雲のようにテーブルのすぐ上まで急降下し、カボチャのランタンの炎をちらつかせた。
新学期の始まりと同じように、突如金色の皿にご馳走があらわれた。
生徒達がご馳走を堪能している最中、クィレル先生が全速力で部屋にかけこんで来た。ターバンは歪み、顔は恐怖で引きつっている。みんながそれを見つめる中を、クィレル先生はダンブルドア先生の席までたどり着き、テーブルにもたれかかり、あえぎあえぎ言った。
「トロールが……地下室に……」
後書き
ルーチェ「争いはやめて、話し合いましょう」←その場の争っていた魔法使い全員をとりあえず一旦ぶちのめした直後のセリフ
ジーク「……ルーチェさんは全く関係なかったな」
今話のマルフォイの行動については賛否両論でしょうが、マルフォイは純血主義を尊いものだと考えていることと、家柄を重視していること、ダンブルドア曰く悪には染まりきれないとのことから、こうなりました。
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