ヴォルデモート卿の相棒
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真夜中の決闘
前書き
……まあ原作ではタイトル詐欺ですが、この作品ではちゃんと決闘します。
「まさか」
夕食時、ハリーは二人にマクゴナガル先生に連れられてグラウンドを離れてから何があったかを話した。
罰せられると思っていたハリーだったが、色々と紆余曲折を経てグリフィンドール・クィディッチチームのシーカーのポジションに抜擢されたらしい。
(まあ聞いた話から判断すると確かにこいつの箒の才能は比類ない……しかしあの婆さんが規則をねじ曲げてまでチームに加入させるとはな)
クレスはマクゴナガル先生がどれだけ寮対抗クィディッチに力を注いでいるかを察した。
「シーカーだって? だけど一年生は絶対ダメだと……ここ何年来かな……」
「百年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ」
その後興味が薄れてステーキ(ミディアムレア)にかぶりついているクレスを差し置いて二人で盛り上がっていると、マルフォイがクラッブとゴイルを従えてやってきた。
「ポッター、最後の食事かい? マグルのところに帰る汽車にいつ乗るんだい?」
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」
場に険悪な雰囲気が流れるが、上座には先生達がいるので乱闘に持ち込むことはできない。
「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ-相手には触れない。どうしたんだい? 魔法使いの決闘なんて聞いたこともないんじゃないか?」
マルフォイが挑発するようにせせら笑う。すると今までしかめっ面で睨んでいたロンが。口を挟む
「もちろんあるさ。僕が介添人をする。お前のは誰だい?」
「クラッブだ。真夜中でいいね? トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね……それにしても君が介添人とはね、役に立ちそうにないな。エシャロットに助けてもらわなくていいのかい?」
マルフォイがバカにしたような問いにロンは真っ赤になって噛みつく。
「お前ごときにクレスが戦う必要はないだけだ!」
(頼まれても引き受けねーよ……なんで俺がそんなガキのママゴトみてーな小競り合いに参加しなけりゃならねえんだよ……)
「へえ、そうかい? まあ僕としても、君達ウィーズリーと違って貴重な由緒正しい魔法使いの家系の人間とは、できればことを構えたくないけどね」
捨て台詞を吐いてマルフォイが場を離れると、ハリーはロンに質問した。
「魔法使いの決闘て何? 介添人って?」
「介添人っていうのは、君が死んだらかわりに戦う人……いや、本当の魔法使い同士の本格的な決闘だけだよ。僕達、攻撃魔法なんて使えないじゃないか」
冷めてしまった料理を食べながら気楽に言うが、ハリーの顔色が変わったのを確認し、慌てて付け加えるロン。
「ちょっと、失礼」
いつの間にかハーマイオニーが三人の近くまで来ていた。
「まったく、ここじゃ落ち着いて食べることもできないんですかね?」
ハーマイオニーはロンを無視して、ハリーに話しかけた。
「聞くつもりはなかったんだけど、あなたとマルフォイの話が聞こえちゃったの……夜、校内をウロウロするのは絶対ダメ。もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてよ。それに捕まるに決まってるわ。まったくなんて自分勝手なの」
「余計なお世話だよ」
「バイバイ」
ハーマイオニーか責めるように警告するが二人は取り合わず、さっさと追い払った。ちなみにクレスはこのとき既にデザートタイムに移行していた。
すると今度はモノクルをかけた赤茶色の髪のスリザリン生、ジークフリート・ゴズホークがやって来た。
「腐れスリザリンが何のようだよ?」
「貴様らのような有象無象に構っている暇など無い。用があるのはクレスに決まっているだろうが低脳め」
スリザリン生と見るや、ロンがすぐさま噛みついたが、ジークは虫けらを見るような目で一蹴した。その発言を聞いてハリーとロンの顔が怒りに歪むが、ジークは全く意に介さずクレスに用件を伝えた。
「明日の昼、考案した魔法の実験に付き合え」
「オッケー、天文学と魔法史で手を打とう」
「わかった。……相変わらず座額が嫌いみたいだな」
「お前、俺が机に向かって熱心に取り組んでるところなんか想像できるか?」
「まあ無理だな」
軽口を叩き合ってからジークは去っていった。するとすぐさまハリーとロンはクレスに食ってかかった。
「クレス! なんでスリザリン生なんかと仲良くしてるんだよっ!?」
「汚ねっ!? 唾飛ばすなロン!……んなもん家族だからに決まってるだろ」
「さっきの態度見ただろ! マルフォイと何も変わらないじゃないかっ!」
「お前もかハリー!? 唾飛ばすな殴るぞこの野郎!
……まあ、あいつは唯我独尊・傍若無人を地でいく奴だからなぁ。お前らが仲良くなることは、多分無いだろうな……」
ハンカチで顔を拭きながらクレスは冷静に分析する。
「どうして君はそんなのと仲良くやっていけるの?」
「俺もアレクが頑張ってなきゃ今頃険悪のままだったと思うぜ?」
「私がどうかした~?」
心底理解不能と言ったハリーの疑問にしみじみと過去を思い出しながら返答すると、金髪碧眼のハッフルパフ生、アレクサンドラ・マッキノンは後ろからクレスに抱きついた。
「よおアレク。ハッフルパフで友達できたか?」
「たっくさんできたよ~♪ ねえ、ちょっとクレスに頼みたいことがあるんだけど…」
「何だ?」
「飛行の訓練手伝ってくれない? 時間が空いてるときでいいからさ…」
「あいよ。じゃあ明後日の昼な」
「ありがと~♪」
「どーいたしまして。……それにしても、あの人が保護者なのに、よくもまあここまで純粋に育ったもんだ……」
満面の笑みで喜びを表現するアレクに、クレスはちょっとした疑問が浮かぶ。その後いくつか軽口を叩き合った後、アレクは去っていった。
「大方飛行訓練でポカやったんだろうなあいつ。
……あん? どうしたお前ら?」
「君達、どういう育て方されたの?」
「性格バッラバラにも程があるよ…」
「聞かない方がいいぜ? 例えば俺は出会って一時間も経ってないうちにグーで殴られたから」
「マジでどんな人なのルーチェって人!?」
11時半、ハリーとロンとクレス(クレスは「俺達の運命は一蓮托生だ」とのことでついてきた。まあただの野次馬だろう)はディーンとシェーマスが寝息を立ててる中、パジャマの上にガウンを引っ掛け杖を手に(クレスは小太刀も持って)、塔の螺旋階段を下り、談話室に降りてきた。そのまま出口の肖像画の穴に入ろうとした時、一番近くの椅子から声がした。
「ハリー、まさかあなたがこんなことをするとは思わなかったわ!」
その椅子からハーマイオニー・グレンジャーがピンクのガウンを着てしかめっ面で立ち上がった。
「また君か!ベッドに戻れよ」
「本当はパーシーに言おうかと思ったのよ。監督生だから、絶対に止めさせるわ」
「行くぞ、二人とも」
ロンは無視して「太った婦人の肖像画」を押し開け、ハリーとクレスもそれに続く。
ハーマイオニーなお食い下がり、ロンに続いて肖像画の穴を乗り越え、三人に向かって責めるように言い続けた。
「グリフィンドールがどうなるか気にならないの!? 自分のことばっかり気にして! スリザリンが寮杯を取るなんて私は嫌よ! 私が変身呪文を知ってたおかげでマクゴナガル先生がくださった点数を、あなたたちがご破算にするんだわ!」
「大丈夫だ。俺が稼いだ点数で賄うから」
「そういう問題じゃないでしょ! あなたは規則を破るために点数を稼いだの!?」
怒りの矛先がクレスに向くと、クレスは「わかってないなこいつ」と言った感じで肩をすくめ、語り始めた。
「マグルの学校に通っていた頃、俺はアレクにセクハラを働いた教師の顔を窓ガラスに突っ込んだことがある。その後ルーチェさんにこっぴどく怒られてさ、そのとき言われた言葉を今でも覚えてる」
「…………? なんて言われたの?」
「やるならバレないようにしなさい!……だ」
「いや、おかしいでしょ!?」
論点がずれていると思ったハーマイオニーだが、そんな彼女に対してうんざりしたようにロンは言う。
「あっちへ行けよ」
「いいわ。ちゃんと忠告しましたからね。明日家に帰る汽車の中で私の言ったことを思い出すでしょうよ。あなた達は本当に……」
ハーマイオニーは怒って寮に戻ろうとした。だが肖像画の中に『太った婦人』はいなかった。夜の散歩に出かけてしまったようだ。
「さぁ、どうしてくれるの?」
「知ったことか。僕たちはもう行かなきゃ。遅れちゃうよ」
しかしハーマイオニーも強引についてきた。フィルチに見つかったとき事情を説明して自分は罪を逃れるつもりらしい。クレスに言わせればフィルチやマクゴナガルがそれで納得するはずないのだが。
「誰も来ねぇじゃねぇか!」
トロフィー室に到着してしばらくしてからクレスは声を落として絶叫し地団駄を踏んだ。ちなみに医務室から寮に帰る途中だったネビルも同行している。
「遅いな、多分怖じ気づいたんだよ」
そうロンが囁いた時、隣の部屋から物音がして声が聞こえた。
「いい子だ。しっかり嗅ぐんだぞ。隅の方に潜んでいるかもしれないからな」
マルフォイではなく、フィルチだった。フィルチはミセス・ノリスに話しかけている。ハリーが四人を手招きし、急いでフィルチの声とは反対側のドアへ身を隠した。
「どこかこのへんにいるぞ。隠れているに違いない」
フィルチがブツブツ言う声がする。
こっちだ、とハリーが耳打ちして、5人は鎧の沢山飾ってある長い回廊を這い進んだ。フィルチが近付いているのが分かり、ネビルは恐怖のあまり悲鳴を上げてやみくもに走り出し、つまずいてロンの腰に抱きつき、二人揃って鎧にぶつかって倒れ込んだ。
鎧はすさまじい音を立てて、勿論フィルチにも届いただろう。
「逃げろ!」
ハリーが声を張り上げて、5人は回廊を疾走した。フィルチが追いかけてくるかどうか振り向きもせず、全力で走った。先頭を走るハリーは、何処をどう走ってるのか分かっていないようで、5人が足を止めたのは「妖精の魔法」の教室の近くだった。
「フィルチを撒いたと思うよ」
ハリーは壁に寄りかかりながら息をきらして4人に話しかける。クレス以外の三人はハリーと同じく息切れしていた。
(魔法使い体力少なっ……)
「だから……そう……言ったじゃない……」
クレスがそんなことを思っている中、ハーマイオニーは胸を押さえながら言った。
「マルフォイにはめられたのよ。ハリー、あなたもわかってるんでしょう? マルフォイが告げ口したのよね。だからフィルチは誰かがトロフィー室に来るって知ってたのよ」
(あのガキ……舐めた真似さらしてやがって……!)
クレスがただでさえ鋭い眼を、心の弱い人が見れば卒倒しかねないほど鋭くして軽くキレていると、教室からピープズが飛び出してきた。5人、特にクレスを見ると、色々と恨みがあるのかピーブズは歓声を上げた。
「真夜中にフラフラしてるのかい? 一年生ちゃん。チッチッチッ、悪い子、悪い子、捕まるぞ」
「黙っててくれたら捕まらずにすむよ。お願いだ、ピーブズ」
「フィルチに言おう、言わなくちゃ。君達の為になる事だものね」
ピーブズは聖人君子のような声を出したが、目は意地悪く光っていた。
「どいてくれよ」
ロンが怒鳴ってピーブズを払い退けようとしたが、それが間違いだった。ピーブズが大声で叫んだ。
「生徒がベッドから抜け出した!『妖精の魔法』教室の廊下にいるぞ!!」
ピーブズが大声で叫んだ。
5人はピープズをすり抜け(その際クレスはピープズを昏倒させ)、命からがら逃げ出した。
廊下の突き当たりで鍵つきのドアにぶち当たった。
「アロホモラ!」
即座にクレスが魔法で鍵を開け、5人は折り重なってなだれ込み、すぐさまドアを閉め鍵をかけた。
「フィルチは?」
「大丈夫だ。逃げるときにピープズに金的して気絶させておいた」
「あなた、どうしてポルターガイストに触れたの?」
「企業秘密」
ふとネビルはちらっと後ろを振り向き、直後、青ざめた顔でハリーのガウンの袖を引っ張る。
4人はネビルの見ている方を見て、この場所が禁じられた廊下である事を確認した。正面には首が3つある怪獣のような犬の化け物・ケルベロスがいた。
ケルベロスは6つの眼でハリー達をじっと見ている。5人が急に現れてケルベロスが不意を突かれて戸惑ったからだ。もうその戸惑いは消えたようで、大きな口を開いて、ケルベロスが吠えた。
クレス以外の四人はすぐさまドアを開け蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
「面白ぇ……俺とやろうってのか?」
唯一クレスだけは好戦的な目で怪物を見据えていた。
ケルベロスはクレスに飛びかかり、クレスはなすすべなく巨大な三つの口で食い殺された-
「エアウォーカー……」
-かに見えたが、クレスは空中で制止し、ケルベロスを見下ろしていた。そのままケルベロスに近づき、真ん中の首に手を添える。すると、
「インパクト!」
強い衝撃を頭に受けケルベロスはバランスを崩して転倒した。
「げっ……」
しかし、怒らせただけで大したダメージも受けていないようで、普通に起き上がった。
クレスはケルベロスが決して届かない位置に浮上して思考する。
(アレ喰らって無傷かよ……。、見た目通り……いや見た目以上にタフだなこいつ……となると、)
ケルベロスが吠えまくる中、クレスは腰に指した小太刀に手を伸ばし……踏みとどまる。
(いやいやいや、学校で飼ってるモンスターを斬り殺すのはマズいよな……しかたねぇ、ずらかるか)
「じゃあな」
クレスは諦めたのか、そのまま急降下してドアから去っていたた。
クレスはそのまま合言葉を言って談話室に入ると、4人が心配そうな顔で駆け寄って来た。
「クレス、良かった!」
「もしかして食い殺されたんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたぜ……」
「そりゃ随分心配かけたな。なに、ちょっとあの犬とバトってきただけだ、倒しきれなかったがな」
その言葉を聞いた4人はしばし凍りついた。
一番初めに正気に戻ったハーマイオニーが責めるように怒鳴り散らす。
「あなたなに考えてるのよ!? あんな化け物と闘うなんて、命が惜しくないの!?」
「俺があんな犬に殺されるかよ」
それをクレスは鼻で笑って受け流す。
「おっどろきー……それにしても、あんな怪物を学校の中に閉じこめておくなんて、連中は一体何を考えているんだろう」
やっとロンが口を開いた。ハリーも「世界で一番運動不足の犬だね」と言った。
ハーマイオニー突っかかるように言った。
「あなたたち、何処に目をつけてるの? あの犬が何の上に立ってたか、見なかったの?」
「見てねぇし興味もねぇ」
「床の上じゃない? 僕足なんか見てなかった。頭を三つ見るだけで精一杯だったよ」
クレスはどうでもよさそうに一蹴し、ハリーは一応意見を述べた。
ハーマイオニーは立ち上がって皆を睨みつけた。
「違う、床じゃない。仕掛け扉の上よ。何かを守ってるのに違いないわ……貴方達、さぞかしご満足でしょうよ。もしかしたら皆殺されてたかもしれないのに。もっと悪ければ退学ね」
ハーマイオニーがそう言い捨て、不機嫌そうに寝室に戻るのを見送りながら、ロンは呟いた。
「死ぬよりも退学になる方が悪いのかよ……」
後書き
以上、クレスVSケルベロスの決闘回した。
この無鉄砲さはまさにグリフィンドール!
こうなった理由は、もともとクレスが好戦的というのも
ありますが、マルフォイの件で苛立っていたということもあります。ちなみにマルフォイは後日キッチリシメられました。
クレスの特殊な魔法については、もうすぐ説明します。
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