嵐神の炎
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2部分:第二章
第二章
「この名前でどうか」
「ローゲ、炎ですね」
「嵐の神が炎の神を名付けた」
ここで彼は言った。
「それでどうか」
「いい名前ですね」
ローゲと名付けられた男はここでその笑みをさらに深くさせた。そのうえで、であった。
その笑みでだ。こう言うのだった。
「ではその名前でこれからは」
「知恵を与えてくれるな」
「是非。ただ」
「ただ。何だ」
「若し人間達がです。今はまだ生まれたばかりの彼等が」
「あの者達がどうかしたのか」
「彼等が今以上に大きくなりこの世を治められるようになれば」
その時を仮定するのだった。
「その時はです」
「どうするというのだ、その時は」
「私は炎に戻らせてもらいます」
そうするというのだった。
「そして彼等を照らし護っていきたいのですが」
「私の下から離れてか」
「はい、その時はです」
こうヴォータンに話すのだった。
「それはいいでしょうか」
「神々がこの世を治めるものだ」
これはヴォータンの中では絶対のことだった。だがローゲはそれを否定している。これが彼には理解できないことだった。しかしだった。
それでもだ。彼はローゲに対して告げた。まずは前置きからだ。
「その様なことはだ」
「有り得ないというのですね」
「そうだ、有り得ない」
実際にこう言ってみせたのだった。
「何があろうとも」
「この世が滅びようとですね」
「そうだ、ない」
ヴォータンはまた言った。
「それはない」
「神々が滅んでもですね」
ローゲの今の言葉にだ。ヴォータンの左目がぴくりと動いた。そのない右目も同じだった。微かにであるがそれでも動いたのだった。
そしてそのうえでだ。またローゲに応えた。
「知っているのか」
「はい」
ローゲは穏やかな声でヴォータンに答えた。
「この世の運命を。エルダから伝えられました」
「そうだったのか」
「それをもたらすのは何者か」
ローゲはこのことも話してきた。
「それを常に考えておられますね」
「おそらくはだ」
ヴォータンはその左目を動かしながら述べた。
「巨人、若しくはニーベルングだ」
「巨人か小人ですね」
「あの者達は常に我々に敵意を持っている」
「そしてとって代わろうとしている」
「だからだ。どちらかだ」
「そうですね。どちらも脅威です」
ローゲはここでは神々の側に立って述べてみせた。ここであえてそうしてだ。あたゆることについて考えようというのであった。
「巨人達は力を持ち」
「ニーベルングは知恵を持っている」
「ならばですね」
また言うローゲだった。
「それへの備えもしなければ」
「備えか」
「どうやらその備えを配するのに私が必要ですね」
ローゲはヴォータンのところに一歩出た。そのうえでまた話した。
「それではです」
「来てくれるのだな」
「人が神々の手から離れ彼等だけで生きられるようになるその時まで」
そうすると答えてだ。ローゲは神の一員になった。それから長い年月が経った。
それからだ。備えは築かれた。神々はヴァルハラを築いた。ローゲもその中に入った。
だがある日だ。彼はヴァルハラの門をくぐった。そして何処かに向かおうとしたのだ。
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