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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編
Chapter-9 新婚生活
  Story9-5 久しぶりの第1層

シャオンside


光の発生とともに、俺たちはアインクラッド第1層始まりの町に降りた立った。

この町に来るのは本当に久しぶりだ。


「さて、2人とも見たことある建物とかある?」

「うー……」

「んー…………」

2人は難しい顔で広場や周囲に連なる石造りの建造物を眺めていたが、やがて首を横に振った。

「わかん、ない…………」

「わたしも.」

「まあ、はじまりの街はおそろしく広いからな」

「色んなものも沢山あるしね」

「あちこち歩いていればそのうち思い出すさ。ゆっくり気長に行こうか」

「そうね。とりあえず、中央市場に行ってみましょ。
何か手がかりがあるかもしれないし」

俺たちは頷き合い、南に見える大通りに向かった。



…………にしても、以前より人が少ないような…………


はじまりの街のゲート広場は、2年前の正式サービス開始時、1万人を収容する程の広さを誇っていた。


ここは案外綺麗で、こんな天気のいい午後には人で賑わっていてもおかしくはない。

でも、見える人影は皆一様にゲートか広場の出口に向かって移動して行くばかりで、立ち止まって話したり、ベンチを利用しているものはほとんどいないと言っていい感じだ。

他の層にある街はもっと賑わっていたはずなんだけどな…………


「なあ、キリト」

「ん?どうしたシャオン?」

「ここってプレイヤーは何人くらい居るか覚えてるか?」

「確か、2千人弱ってとこじゃないか。

今生き残ってるのが、約6千だろ?その中の3割くらいが軍を含めてはじまりの街に残ってるはずだからな」

「の割には人が少なくないか?」

「言われてみるとそうだな…………

とりあえずマーケットの方にでも行ってみるか?」
















しかし、広場から大通りに入り、店舗と屋台が立ち並ぶ市場エリアに差し掛かっても、依然として人は増えず、街は閑散としていた。

やたらと元気のいいNPC商人の呼び込む声だけが通りを虚しく響き渡っていく。





しばらく歩いて、大きな木があるところに出た。そこで1人のプレイヤーを見つけたのだ。

キリトが声をかけたが、男は話すのが面倒そうな趣で口を開いた。

「なんだよ」

「なあ、この辺りで迷子を探しているプレイヤーはいなかったか?それか、迷子に関する情報の得られる施設でもなんでもいい、知っていたら教えてくれ」

キリトは、淡々と述べた、が男はなにやら集中していたところを邪魔された上、キリトの尋ね方がよくなかったのか男は顔色を悪くした。

まずい、と思ったフローラが割ってはいりどうにかその場を取り繕おうと男に話しかけた。

「…………この人がすみません。

私たちはこの子達の保護者を探しにこの町に来たんですが、迷子を探しているプレイヤーを誰か知りませんか?」


男の方は、フローラの丁寧な対応に機嫌を直したのか、知っていることを教えてくれた。

「迷子か、珍しいな。その子に関係するかどうかはわからないが、この先の川辺の教会に子供のプレイヤーがたくさんいるところがあるから行ってみな」

「ありがとうございます。これは私たちからのほんの気持ちです」

フローラはそういってコルがたくさん入った革袋を男に手渡した。

そして、男から離れたあと、キリトとアスナに言われていた。

「フローラ、助かった。ありがとう」

「キリト君口下手だからね…………こういうのは君には任せられないね」

「…………否定できない」

「ま、それは置いといて……今は目的の場所に急ごうぜ」
















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
















15分後



しばらく、歩くとそこには綺麗な小川のそばに教会が立っていった。

「ここ、みたいだな」

一向の目の前には小川に沿って立つ、綺麗な教会が目に映る。

扉を開けて中に入ったがなぜか人の気配がない。

辺りを見回して見る。どうやら隠れているらしい。


すると、奥から1人の女性プレイヤーがやってきた。

「貴方がたは?」

「俺たちは22層から来たプレイヤーだ」

「で、では軍の人間ではないんですね?」

「ああ。軍とは無関係だ」

「そ、そうですか」

俺たちが軍とは無関係だということが分かったらしく、態度がやさしくなった。

「あ、すいません。こんなところで、奥にどうぞ」

「では、お言葉に甘えて」

そういって、俺たちは教会の奥に案内された。

子供達ははすでに眠ってしまっていまっている。

「こちらにどうぞ。今、お茶の準備をしますので」

「あ、すいません」
















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















さらに5分後


女性プレイヤーがお茶を持って席についた。

「さて…………って自己紹介がまだでしたね。私はサーシャです」

「俺はシャオン。隣にいるのがフローラ。
そしてこの子がレイ」

「私はアスナ。こっちはキリト君。
そしてこの子がユイちゃん」

お互いに簡単に自己紹介をして、アスナは本題に入った。

「この子たちは、22層の森の中で迷子になっているのを見つけました。
ただ…………」

アスナが小さく俯き言葉を濁すと、キリトがぎゅっとアスナの手を握り、そして、フローラが代わりに口を開いた。

「記憶をなくしてるみたいで…………」

「まあ…………」

サーシャの深緑の瞳が、眼鏡の奥で大きく見開かれる。

「装備も、服以外には何も所持していなくて、上層で暮らしていたとは思えませんでした。

ですから、はじまりの街に保護者、又は知っている人がいるのではないかと、探しに来たんです」

「それで、此方の教会に子供たちが集まって暮らしていると、人から聞いたものですから…………」

「そうだったんですか」

サーシャは両手でカップを包み込むと、視線をテーブルに落とした。

「この教会には、今、小学生から中学生くらいの子供たちが20人くらい暮らしています。

多分、現在この街にいる子供プレイヤーのほぼ全員だと思います。

このゲームが始まった時……」

声は細かったが、しっかりした口調で彼女は話し始めた。

「それくらいの子供たちのほとんどは、パニックを起こして多かれ少なかれ精神的に問題を来していました。

勿論ゲームに適応して、街を出て行った子供もいるんですが、それは例外的なことだと思います」


そういえば、当時はそんな子供たちも…………
いや、子供だけでなく大人にも現実を受け入れられず、壊れていく…………そんな人たちが多かった。


「当然ですよね、まだまだ親に甘えたい盛りに、いきなりここから出られない、ひょっとしたら二度と現実に戻れない、なんて言われたんですから。

そんな子供たちは大抵虚脱状態になって、中には何人かそのまま回線切断してしまった子もいたようです」

サーシャの口許が強張った。

「私、ゲーム開始から1ヶ月くらいは、ゲームクリアを目指そうと思ってフィールドでレベル上げしてたんです。

でも、ある日、そんな子供たちの1人を街角で見かけて、どうしても放っておけなくて、連れてきて宿屋で一緒に暮らし始めたんです。

それで、そんな子供たちが他にもいると思ったら居ても立ってもいられなくなって、街中を回っては独りぼっちの子供に声をかけるようなことを始めて。

気付いたら、こんなことになってたんです。

だから、なんだか、あなた方みたいに、上層で戦ってらっしゃる方もいるのに、私はドロップアウトしたのが、申し訳なくて…………」

「そんなことないですよ。サーシャさんは立派に戦ってます…………俺たちなんかよりも、ずっと。
俺たちはただモンスターと戦っているだけ。
でも、あなたは子どもたちを助け、守ろうとしている。それだけでも、俺たちより立派ですよ」

「ありがとうございます。そんな風に言っていただけてうれしいです。

でも、義務感でやってるわけじゃないんですよ。

子供たちと暮らすのはとっても楽しいです」

ニコリと笑い、サーシャは眠るユイたちを心配そうに見つめた。

「だから、私たち、2年間ずっと毎日1エリアずつ全ての建物を見て回って、困ってる子供がいないか調べてるんです。

そんな小さい子たちが残されていれば、絶対気付いたはずです。

残念ですけど、はじまりの街で暮らしてた子じゃあ、ないと思います」

「そうですか」

アスナはユイをぎゅっと抱きしめた。

そして、気を取り直すように、サーシャを見る。

「あの、立ち入ったことを聞くようですけど、毎日の生活費とか、どうしてるんですか?」

「あ、それは、私の他にも、ここを守ろうとしてくれてる年長の子が何人かいて、彼らは街周辺のフィールドなら絶対大丈夫なレベルになっていますので、食事代くらいはなんとかなっています。

贅沢はできませんけどね」

「へぇ、それは凄いな」

「うん。さっき街で話を聞いたんですけど、フィールドでモンスターを狩るなんて常識外の自殺行為だって言ってました」

「基本的に、今始まりの街に残ってるプレイヤーは全員そういう考えだと思います。

それが悪いとは言いません、死の危険を考えれば仕方のないことなのかもしれないんですが…………


でも、ですか私たちは相対的に、この街の平均的プレイヤーよりお金を稼いでいることになるんです」


なるほどな。

この教会に部屋を借りるには1日あたり大体100コルは必要だろうな。

さっき俺たちが会った男の収入を軽く上回る額だ。

「だから、最近目を付けられちゃって…………」

「誰に、です?」

アスナが問い掛けると、サーシャの穏やかな眼が一瞬厳しくなった。

言葉を続けようと口を開いた、その時。



「先生!サーシャ先生!大変だ!!」

突然部屋のドアがバンと開き、数人の子供たちが雪崩れ込んできたのだ。
















Story9-5 END 
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