美しき異形達
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第三十六話 古都においてその六
「お白州以外の場所にもな」
「行こう、お池とか」
「いつも夜に人が斬られる場所か」
「そしてあの中に落ちるのよ」
「あそこネッシーいるよな」
「ええ、いるわよ」
正確に言えば怪獣である、決まった時間に水の中から出て来るのだ。
「撮影の時は出て来ないけれどね」
「あそこも行ってか」
「他の場所も行って」
「勉強していくか」
「そうしていきましょう」
向日葵は薊だけでなく他の面々も引っ張る様にして進んだ、そしてだった。
昼飯も食べた、そしてそこからまた映画村の中を巡り今度は吉原に入った。そこに入ると。
鈴蘭と黒蘭がいた、二人がいてだった。
一行にだ、微笑んでこう声をかけた。
「ここでも会ったね」
「本当に縁があるわね」
見れば黒蘭も微笑んでいる。
「私達も映画村に来ていたけれど」
「貴女達もだったのね」
「見ての通りさ」
薊もだ、二人に微笑んで返した。
「あたし達もこうしてな」
「映画村に来て」
「そして楽しんでいるのね」
「そうだよ、ここ面白いよな」
「映画村は京都の観光名所の一つよ」
黒蘭は薊にその微笑みのまま答えた。
「そして遊べる場所でもあるわ」
「だよな、京都にはこんな楽しい場所があるんだな」
「羨ましいかしら」
「羨ましいとは思わないさ、神奈川は神奈川で面白い場所一杯あるしな」
それで羨むことはないというのだ。
「別に」
「そうなのね」
「それにあたしは人を羨むこと殆どないからな」
「そうね、薊ちゃんって羨むとかないわよね」
裕香も薊のこの性格を指摘した。
「人は人でね」
「あたしはあたしだよ」
「そうした考えよね」
「羨んでも仕方ないだろ」
「羨むのならなのね」
「自分でそうなろうって努力しろってな」
そうしてこそ、というのだ。
「老師にも言われてたよ」
「薊ちゃんに拳法を教えてくれた」
「そう、あの人にもな」
言われていたというのだ。
「だから羨むことはな」
「しないのね」
「今言った通りな」
「人は人、自分は自分」
「そして人間は努力ってな」
「老師さんの教えなのね」
「人生で一番大事なこと教えてもらったよ」
そうした気がするというのだ。
「あたしそう思ってるよ」
「成程ね」
「それで京都に凄い場所が幾らあってもな」
「羨ましがらないのね」
「京都は京都でね」
そして、というのだ。
「神奈川は神奈川だよ」
「そういうことね」
「ああ、それでな」
「それで?」
「今はここを楽しんでな」
「後はよね」
「あたし達の宿嵐山だよな」
その場所そのものが観光地とさえ言っていい、風光明媚で心地よい場所である。
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