ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編 Start my engine and step on blue light in Aincrad
Chapter-4 シリカとピナ
Story4-6 出発の一歩
第3者side
シャオンたちは47層の町を歩いていた。
少し経って、シリカはシャオンに聞いていた。
「あの……シャオンさん。
シャオンさんは、何で、私のことほっとけないって思ったんですか?」
「うーん………」
ぽつりぽつりと話し始めた。
「俺、見てみぬふりするの嫌なんだ。
そこに困っている人がいる。助けられる人がいる。
人は誰かを頼らなければ生きてはいけない。だから……」
シャオンは言葉を止めると、そっとシリカの顔を見下ろした。
「そういうほっとけないやつを助けたいって思うのが俺の中で当たり前になったのかもしれないな」
「優しいんですね、シャオンさん」
一生懸命言葉を捜しながらシリカが言う。
「俺もそう思う。シャオンは本当に優しいからな」
「ははは……
なんだか照れくさいなー」
「あ、そろそろフィールドに出るぞ」
少し前で微笑ましそうに見ていたキリトは2人にそう告げる。
フィールドではもう少し緊張感が欲しい。
「分かった」
「はい!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、ここからが冒険開始だな」
シャオンは街道を離れ、フィールドに出て一呼吸置いた。
「その前に必要な事をしとこうか」
キリトがシリカの方を向いた。
「今の君の装備を見る限り、ここのモンスターを倒せない事は無いし、やられる事もない。
だけど……予想外の出来事は少なからず発生するから、これを持っておいてくれ」
キリトはシリカに手渡した。
手渡したそれは転移結晶。
「これは?」
シリカは少し不安そうな表情で聞いていた。
「フィールドでは、何が起きるかわからない。だから、もし予想外の事態が起きて、俺たちうちの誰かが離脱しろって言ったら必ずその結晶で何処の町でも良いから跳んでくれ。俺たちの事は気にしなくて良いから」
シャオンが答える。
「で、でもっ、あたし……」
――『恩人であるお2人を見捨てろ』そう言われているんだ。
沢山、沢山貰って、なのに………
「俺たちなら大丈夫だ。だから、約束してくれ」
シャオンは少し辛そうな表情を作る。
「俺は、一度人を死なせてる。二度と同じ間違いは繰り返したくない」
「俺もだ。同じ過ちを繰り返したくはない」
「あっ………」
シリカは、なぜ、シャオンやキリトが時々辛そうな表情をするのか、この時わかった。
それを知ったシリカは、もう頷くしかなかった。
だが、二人の先ほどの表情は既に息を潜め、笑顔を作ってくれていた。
――自分に心配をかけまいとして……
「さ、行こっか」
「ピナを生き返らせに」
キリトが後衛を務め、シャオンが前衛。
「はい!」
シリカもこの時は笑顔に戻っていた。
この2人に囲まれたシリカ。
まず間違いなく、危険は無いだろう。
だが………
「ぎゃっ!きゃあああああっ!!なにこれーー!!!」
シリカは、捕まってしまっていた。
フィールドを南に歩いていた時の事だ。
シャオンがまずモンスターを発見した。
まだ、遠くで強さもこの層で一番弱い。
その情報を知ったシリカは気合十分。
短剣を片手に、『任せてください!』と 草むらに入って言ったのだ。
それを、一生後悔することになるなど、この時シリカは分かってなかった。
草むらのせいで、よく姿がわからなかった。
否、草に上手く隠れていたから全体が見えなかった。
その相手は
「やあああああっ!!こないでっ!!こないでぇぇぇ!!!」
短剣をブンブン振り回す。
昨日に練習した事が全く出せないほどに、パニックをおかしていた。
人食いの様な巨大な口に牙、茎もしくは胴のてっぺんにはひまわりに似た黄色い巨大花。
その口の動きはまるで、ニタニタ笑いを浮かべているよう。
無数の触手を振り回していたのだ。
シリカは、その姿を確認したその瞬間。体が固まった。
そして、その触手にシリカは捕まってしまったのだ。
その感触から生理的嫌悪を催させた。
「やっ!やだぁぁぁっ!」
殆ど、目を瞑っている。
その状態で短剣を振っても当たるはずもない。
「コレは見た目より強くない、と言うより弱いから」
キリトは少し離れたところから呆れて見ている。
「そうだって、そいつはほんとに凄く弱い。花の下の白っぽくなっているとこが弱点だ」
シャオンもあまりにもパニックになっているシリカを心配して近づく。
「でもっ!でもっ!気持ち悪いんですぅぅぅ!!!」
シリカは、やっぱり動けてない。
その間に、持ち上げられて頭を下にして宙吊りになり、シリカのスカートが……
「ちょっ!やめっ!!みないでッ!見ないで助けてっ!!」
またまた、パニック。
「絶対無理だ」
「それは無理だよ」
シャオン、キリトはそう言い、手で顔を覆い流石に見ないようにしていた。
その反応が面白かったのか、巨大花は吊り上げたシリカを振り子の様に振り回して遊んでいた。
遊ばれている事に気がついたのか、シリカは目を見開く。
凄く気持ち悪いが、必死に我慢し
「こっ!このっ!!いい加減に、しろっっ!!!」
シリカは、片手でスカートを抑えていたが、それを離し 脚に纏わりついている蔦を叩き斬ると重力にものを言わせ、弱点の部分に向かって短剣を突きたてた。
それは、急所に当たる一撃。
そして、このモンスターは二人が言うとおり、この層で一番の雑魚。
一撃で消滅していった。
無事、着地できたシリカは頬を赤く染めながら……
「見ました?」
シャオンたちにそう聞く。
視点的には、まず間違いなく目に入る。
「見てない」
キリトは左手で顔を隠し
「うん、見てない。見たとしても知らない」
シャオンは直ぐに手で目を覆う。
「む~~」
シリカは少し不機嫌だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後、シリカは、2人のアシストもあり、全く問題なくモンスターたちを倒していった。
そして、レベルも着実に上がる。
経験値は、モンスターに与えたダメージの量に比例する。
シャオンやキリトが剣で弾いたり、回復したりするので、時間がかかっても3人で一番経験値がシリカに入るようになっており、レベルが順調に上がる。
そしてその先には本当に、気持ち悪いモンスターも多々いた。
その度に思い出し震え上がりそうになっていたが、我慢も覚えたようで、何とか撃破。
最後の方にはパターンを読むにまで至り、1人でも善戦以上を出来るほどになっていた。
それでも……
「あうぅぅぅ、キモチワルイ……」
シリカは、げんなりしていた。
「まぁ、あれがこの層で一番だと思う」
キリトはそう言っていた。
シリカは、イソギンチャクに似たモンスターの粘液まみれの触手に全身を巻かれていた。
本気で気絶しそうになっていたのだ。
「触れたくはないんだけどな」
「うう……」
まだ、立ち直れそうに無いが。
「ほら」
シャオンが手を伸ばす。
「あ、ありがとうございます……」
シリカは、この時、気持ち悪いと思っていた気持ちが吹き飛ぶ。
キリトは微笑ましそうに見ていた。
Story4-6 END
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