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七夕のラプソディー

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第二章


第二章

「だからよしとすべきだ」
「やれやれ。こいつだけはどうしようもねえな」
「手がつけられねえ」
 理由を聞いてお手上げといった顔になるクラスメイト達だった。
「麻美ちゃんも大変だよ」
「全くだぜ」
 そしてこう話すのだった。
「何でこんなのと付き合うのかね」
「っていうか付き合えるんだ?」
 今の言葉の訂正は微妙に弘樹に対する感情が見られるものであった。
「ややこしいなんてものじゃないのにな」
「時限爆弾と一緒にな」
「そうだ、麻美ちゃんのことだ」
 言われるとだった。それで思い出した弘樹であった。
「もうすぐ七夕だな」
「ああ、そうだよ」
「織姫と彦星の日だよ」
 まさにその日だと答えるクラスメイト達であった。とはいっても内心弘樹がまたしでかすのではないかと思いながら話を聞いている。
「それがどうしたんだ?」
「普通の七夕にしろよ」
「よし、やるぞ」
 クラスメイト達の話は聞いていない。やはりこの辺りが実に奇人変人である。
「この世に二つとない七夕にするのだ」
「やれやれだな。また騒動か」
「この変態だけはどうにもならねえな」
 今度は変態である。弘樹も随分と言われるものである。
「まあ麻美ちゃんには迷惑かけるなよ」
「言っても無駄だろうがな」
 言葉は投げやりであるがそれでもその麻美のことを考えてはいるものだった。
「さて、何をしでかすやら」
「本当に困った奴だな」
 そんな話をしながらこれから何をしでかすのか見守る彼等だった。果たして彼は動いた。
「決めたぞ」
「一人で決めるな」
「人の話を聞け」
 皆の突っ込みも当然耳に入らない。
「麻美姫、私は貴女に最高の七夕イブを捧げよう!」
「七夕イブ!?」
「何だそりゃ」
 皆が眉を顰めさせる中でそれははじまった。その時麻美は彼の話を聞いてまずは苦笑いになるのであった。
 麻美は少しふっくらとした顔立ちの女の子で目は垂れ気味である。口ははっきりとしていて大きめである。笑顔が零れそうであり肩のところで切り揃えた黒髪がいい。柔らかそうな頬である。
 背は普通より少しばかり高い程度だ。肉感的な身体だが決して太ってはいない。制服からもそのスタイルがよくわかる。そんな女の子である。
 彼女は弘樹の隣のクラスにいる。入学式でいきなり告白され唖然とした中でそのまま勢いに負けてしまって交際となっている。彼に完全に振り回されているが実は悪い気はしていない。そんな女の子である。
 その彼女が七夕に向けて弘樹が何かをはじめたと聞いて。まずは周りに聞いた。
「それで何をするのかしら」
「わかるわけないでしょ」
「あの奇人変人さんのやることは」
 女の子達は顔を顰めさせて彼女に返した。
「今まで斜め上に突き抜けてばかりなのに」
「今回もそれに決まってるけれどね」
「斜め上なの」
「だからわからないの」
「あいつが何をするかは」
 彼女達はその顰めさせた顔のまま話す。
「それこそ爆弾が歩いているようなものじゃない」
「何したっておかしくないわよ」
「何したって。そうよね」
 これは麻美が最もよくわかっていることだった。
「端午の節句じゃいきなり家に鎧兜で来たし」
「それはわかるわ」
「とりあえずね」
 女の子達もこの奇行はわかるとした。
「そうしたお人形出すからね」
「雛祭りと対比で」
「しかも馬に乗って来たし」
 この辺りが弘樹の弘樹たる由縁であった。
 
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