| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

東方大冒録

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

最後の希望・「超覚醒」。

 
前書き
はぁ、キャラアレンジとか無理やわ(汗)

はい。今度はレミリアと暗基の戦いでございます。

そして、「超覚醒(オーバーアウェイク)」します。 

 
レミリア・スカーレット。紅魔館の主にして、東方紅魔郷の6面ボス。運命を操る程度の能力を持つ吸血鬼。そのマガイモノが、今まさに暗基達の前に立っていた。暗記を含む、全員でレミリアを睨み付けると、レミリアは悲しそうな顔をした。しかしすぐにそれもまたひとつの楽しみ、といいたそうな顔をして言った。

「あら、私はあまり歓迎されていないようね」
「そりゃあそうだろうな。お前もマガイモノだろう? お前が発している霊力のせいで、お前がそこにいるってだけでおれは吐き気がしそうだよ」
「ふん、誰の前であろうと、それは失礼じゃないのかしら? よりによって、吸血鬼であるこの私に向かってそんな口が訊けるなんて、いい根性してるじゃない?」

レミリアが言う。すると、1人、ブチギレた者がいた。

「……、貴様が吸血鬼を語るな!!!」

咲夜が、怒りを込めて叫んだ。更に咲夜は続ける。

「吸血鬼という種族は、レミリアお嬢様やフランドールお嬢様のように、高貴なる御方の事を言うのよ!! 貴様のような、嘘偽りの塊でしかない屑が、吸血鬼を名乗るな!!」

咲夜は、眼に涙を溜めながら叫び、ナイフを構えた。暗基はそれを見て、十六夜咲夜という人間は、本当にレミリア・スカーレットと、フランドール・スカーレットの従者なのだと、心に響いてきた。それに続いて、

「私が主と認めているのは、貴女ではありません! レミリアお嬢様です!」
「まぁ、あなたは私の友ではないわね」
「お姉様を返せ!!」
「わ……、私だって!」

紅魔館の他の住人も、声を張り上げ、戦う構えをとる。それに対してレミリアは、それさえも楽しむかのような顔をして、

「くっ、ふふふふふふ……。よいよい。それでこそ紅魔館の住人だ」

そう言うレミリアの顔は、妖艶というのが正しいのだろうか。不気味で、それでいて美しさを兼ね備えた、見る者を魅了しそうな、そんな顔をしていた。そして少し浮かび上がると、右手に巨大なエネルギーの槍を出現させた。おそらく、神槍『スピア・ザ・グングニル』だろう。そしてレミリアは言う。

「さぁ、私に対してそこまで言ったのだ。私を楽しませてくれよ?」

その言葉とともに、レミリアは右手の得物をこちらに放った。その速さは異常だった。

「うおっ!!?」
「くっ!?」

咲夜は時間を止めて、暗基は咲夜の能力に便乗して回避することができた。だが、他の、美鈴、小悪魔、パチュリー、フランは、

「ふ、不覚……」
「う……」
「ゆ、油断、したわ……」
「な、なんなの……?」

グングニルが当たってしまっていた。
ダメージ自体はさほど食らっていないように見えたが、

「だめ……! もう……!」
「勝てない……」
「もう、だめだわ……」
「敵わないよ……」
「あら、つまらない。所詮はその程度か」
「そんな!?」
「戦意喪失ですって!!?」

どうやら、レミリアのマガイモノが放つグングニルは、当たった相手の戦意を喪失する効果を持っているようだ。暗基がすぐにみんなの下へ駆け寄ろうとすると、

「あら、人の心配をしている暇はあるのかしら?」
「なに!? ってうおっ!?」

レミリアのその言葉が聞こえたと同時に、暗基の足元を中心に弾幕の嵐が襲いかかってきた。

「くそっ、なにしやがるんだ!! これじゃあいつらに叱咤激励できねぇじゃねぇか!!」
「必要ないわ。今のあいつらには、何をしても届かないから」
「そんなもん、やってみなきゃわかんねぇだろうが!!」
「ほら、質問の答えを聞いていないわ。人の心配をしている暇はあるのかしら?」
「あぁ、暇ね。暇じゃなかったわ」

そういって暗基は仕方なくレミリアに向き合う。他のマガイモノたちから感じていた吐き気に加え、レミリア独自? といえば良いのか、不思議な力を感じる。

「さぁ、2人とも、まとめてかかってらっしゃい?」

レミリアは人差し指でかかって来いと誘ってきた。

「くっ、なめた真似してくれるじゃないの!? 咲夜、いくぜ!!」
「もちろんよ。私は援護する。前衛は任せたわよ!!」
「了解!! 霊拳『ソウル・インファイト』!」

暗基はスペカを発動し、自分の腕と足に紅い霊力をまとってレミリアに突撃。咲夜は暗基の邪魔をしないように、ナイフを少しずつ投げる。

「ふふっ、自分の役目をよくわかっているようね。だけど、その陣形、いつまでキープできるのかしら?」

レミリアはこの短時間に自分の役目をわかることが出来ている2人に感心しながらも、その陣形を崩す考えをすでに思いついていた。それを実行するため、スペルカードを取り出す。2枚同時に。

「紅符『スカーレットマイスタ』!! 続けて、紅符『スカーレットシュート』!!」

レミリアがスペルを唱える。すると、レミリアの体から、大量の弾幕が襲いかかる。しかし、その襲い方が妙だった。

「なっ!?」

その全てが、咲夜に向かって襲いかかったのだ。
本来スカーレットマイスタはゲームだと全方位を薙ぎ払うように弾幕を飛ばすスペル。スカーレットシュートは拡散弾のように弾幕を飛ばすスペルである。それが一点集中で咲夜へと襲いかかったのだ。

「きゃっ!?」

咲夜が軽く悲鳴を上げ、目を瞑って身体を強張らせるが、来るはずの弾幕の嵐はまったくやってこない。不思議に思った咲夜が恐る恐る目を開けてみると、そこには、暗基の持つファンネルが8つ、立方体の頂点のように咲夜の周りに配置され、それらが咲夜を覆うように霊力で壁を造っていた。

「間に合ってよかった……」

暗基が大急ぎでファンネルを展開し、その全てを咲夜を護るために使ったからだ。

「咲夜、大丈夫か!?」
「ええ、問題ないわ!」
「そうか、よかった」

咲夜の「問題ない」という発言にホッとする暗基。

「ほう、それ(・・)はそのような使い方も出来るのね。面白い」

レミリアがファンネルを見て、本当に面白そうな顔をした。

「お気に召したようで何よりだ」
「もう少し愛想よく振舞ってほしいものだわ」
「そんなのはごめんだ」
「あら残念。それじゃあ、私はここに宣言するわ」

レミリアの言葉に対し、暗基は首をかしげた。何がどうしてそれじゃあ、なのかがまったくわからなかったのだ。それにかまわずレミリアは、高らかに宣言した。

「私の能力『運命を操る程度の能力』は言っている。暗基零、十六夜咲夜は、ここで絶望を味わうこととなる!!」
「嘘よ! でたらめを言わないで!!」

咲夜がそれに対して怒鳴り返したが、暗基が咲夜の傍に近づきながら咲夜に言う。

「いや、あいつの言っていることは本当だ! マガイモノは、優理亜の能力だけじゃなく、本物が持っていた能力も一緒に持つことになっちまうんだ!!」
「それってつまり……!?」
「ほぉら。早速絶望でしょう?」

咲夜が絶望の顔を見せると、レミリアはさも満足そうな顔をした。そんな状況の中、暗基はどうすればこの絶望に満ちた状況を突破できるのかを1人で考えていると、

「零、ちょっと良いかしら?」
「あ? どうした?」
「私が囮になる。その隙に、零が一番強い攻撃をしてもらえないかしら?」
「えっ、何言ってんだよお前!?」
「おそらく今の私は、何をやっても足手まといになるだけ。だけど少しは貴方の役に立ちたい。だから、こうするしかないと思うの」
「ふざけてるのか? そんな事したら、またお前が死ぬかもしれないんだぞ!? そんなのはいやだ!」
「お願い……」

暗基はあまりソウル・リザレクトを使いたくないこともあり、強めに拒否したつもりだったが、咲夜が言ったたったの一言。それが暗基にはとても強く響いてしまった。おそらくこれは何をいっても無駄だと思った暗基は、

「分かった。死なないでくれよ」
「ありがとう……」

咲夜に一言、死ぬなとだけ告げて、咲夜に囮になってもらうこととなった。咲夜はレミリアの方を向き、ナイフの切っ先をレミリアへ向けると、

「貴様は、私がこの手で消さないと気が済まないわ!! 私と勝負よ!!」

レミリアに一対一の宣戦布告をし、そのままレミリアの答えを聞かずに自分の時間停止能力を使った。そしてすばやくレミリアの後ろに回りこむ。

「このまま一気に決める。決めてみせる!!」

そう叫び、そのまま時間停止を解除した。しかし、それは大きな誤算だった。
時間停止を解除したと同時にレミリアが後ろを振り向いたのだ。そして、バカにするような、がっかりしたような顔をしながらレミリアが言う。

「あなたが時間停止を解除するタイミングは相手をしとめようとする瞬間」
「ぐっ!!?」

咲夜の腹に強烈な一撃が入る。それはレミリアの拳だった。

「そしてあなたはいつもいつも、しとめようとする相手の後ろを取る」
「ぐふっ!!!」

続けてレミリアの膝蹴り。つい先ほどの拳といい、今の膝蹴りといい、その小さいからだのどこから出てくるのか分からないほど強烈なものだった。

「そしてなによりも。あなたはその能力に頼りすぎている。それが貴女の敗因」
「ああああああ!!!」

そしてレミリアはまわし蹴りを咲夜に放つ。咲夜は吹き飛ばされ、壁に思いっきりたたきつけられた。レミリアはさらに一瞬で咲夜の元へと移動し、咲夜の首を掴み、首を絞める。

「さぁ、これで分かったでしょう? 貴女は私には絶対に勝つことは出来ない」
「ぐ……、あ……」
「咲夜!!!」
「ぜ、ろ……! 私に、かまわず……、今のうちに……!!」
「んー?」

レミリアが何事かと後ろを向くと、暗基がすぐそこまで迫っていた。

「霊拳『ソウル・インファイト』!!」
「!?」

暗基がソウル・インファイトでレミリアの腹を思いっきり貫く。レミリアからは血があふれ出ている。そしてレミリアから力が抜け、咲夜が解放される。突然肺に空気が入ってきたことにより、咲夜は大きくむせる。それを見た暗基はレミリアの体から腕を引き抜き、咲夜に話しかける。

「ったく……、変な心配かけないでくれよ?」
「ごめんなさい。でも結果何とかなったし、それで勘弁してもらえるとありがたいわ」
「ふ、ふふふふふふふ!! これで死んだと思われるとは、随分と舐められたものね!!」
「!!!!?」
「う……、嘘でしょ……?」

あまりの出来事に、暗基は思わず悲鳴を上げ、咲夜は先ほど以上に絶望に満ちた顔をした。なんと、レミリアは腹を貫かれたにもかかわらず、まったく問題ないと言うように、顔をぐるんと半回転させ、暗基の顔を笑いながら見る。

「貴方たちがいうマガイモノとは言っても、私は今はレミリア・スカーレット。吸血鬼なの。吸血鬼の肉体再生能力をなめてもらっては困るわ、ね!!!」
「ぐっ……!?」
「うぐあぁ!!?」

レミリアは右手で咲夜の首をもう一度掴み、左腕で暗基を殴り飛ばした。暗基は壁に叩きつけられ、そのまま意識を失ってしまった。

「ぜ、零……!」
「さて、あいつはもう動けない。貴女はここで死ぬ。さぁ、覚悟は出来たかしら?」
「う、ぐぅ……!!」

レミリアは左手も使い、両手で咲夜の首を絞める。

「安心しなさい? 貴女だけを殺すってことだけはしないから。貴女を殺した後、あの子達も一緒に殺してあげるから」
「くっ……」

咲夜は本当に絶望を味わっていた。自分がわがままを言わなければ、もしかしたら違った結果を迎えていたのかもしれない。もしかしたら、紅魔館の誰もが死ぬ様なことがなく話が終わっていたのかもしれない。自分のせいで、この結果を招いてしまった。

(お願い……神、仏、この際誰でもいい)

自分でも勝手だということはわかっている。でも。そうしたくなってしまった。

(私のことは別にどうでもいい。どうなってもかまわない。だから、だから……!!)




























零と、紅魔館の皆を、助けて!!


























(なんだろう……。すごく呼ばれた気がする……)

暗基は1人、呼ばれたと思い、意識を取り戻した。そして、何かしらの力を感じていた。

(やばい、スゲェ力だ。今なら何でも出来そうな気がする!!)

























ドカァン!!!

「!?」

レミリアの後ろで、爆発音が聞こえた。

「な、何事なの!!?」
「…………」

咲夜はもうすでに意識を失っていた。
レミリアはそれを確認して、咲夜から手を離すとすぐに爆発の元を確認する。すると、爆発源に積んであった瓦礫が一気に吹き飛んだ。

「……、面白い……」

レミリアは確認した後、思わずにやけてしまった。なぜなら、その爆発源には、

「ふぅ、名づけるなら、超覚醒(オーバーアウェイク)ってところか?」

暗基零が、身体に青い霊力を渦巻かせ、右手にスピア・ザ・グングニルに負けないほどの、エネルギーで出来た巨大な三叉の槍を持って立っていた。

「まだそんな力を残していたなんてね……。さぁ、私を楽しませてもらおうかしら!!」
「あぁ、いいぜ。たぶん楽しむ前にお前が死ぬと思うけどな」
「ずいぶんと余裕ね? ここじゃあ狭いし、外に出て戦いましょうか?」
「いや、その必要はない」
「!?」

その必要がない。そう聞こえたと同時に、暗基がレミリアの真正面に立っていた。いつの間に移動したのか、まったくわからなかった。そしてそれを考える暇も暗基は与えてくれなかった。

「ほいっと」
「うぐっ!?」

暗基は左手でレミリアの胸倉を掴む。レミリアはどうにかそれを引き剥がそうともがいたが、まるで意味がなかった。その様子を見た暗基は、レミリアに言う。

「あぁ、引き剥がそうとしてるんだろうが、それは無理だぜ」
「!? どういうこと!!?」
「どうやらさ、おれの霊力って、万物の感情によって力が増加するみたいでさ。特に今、咲夜が助けを願ったとき。何かが助けを求めたときに、この力は最大限発揮される。今お前がどんなに力を入れようが、今のおれの前には無力だ」
「そんな、そんなはずはない!! 私はレミリア・スカーレットの力を完全にコピーした!! とても強力な物!! だからただの人間の貴方に負けるはずが!!」

レミリアは必死になって叫ぶが、それは暗基の、

「お前、うぜぇ。見苦しい」
「!!」

それに一蹴されてしまった。レミリアの顔が絶望にゆがむ。

「さてと。『暗基零、十六夜咲夜は、ここで絶望を味わうこととなる!!』だったっけか? お前がおれたちに言った言葉は」
「ひっ!?」
「それを踏みにじられる気持ちはどうだ? 運命を操る程度の能力者、レミリア・スカーレットのマガイモノよ」
「い、いや……!!」
「そして、さっきまでよくもまぁおれたちの仲間をズタズタにしてくれたじゃねぇか? あぁ?」
「くっ……!!」

誰でも察することが出来る、これから先の運命を感じたレミリアは必死になって離れようともがいたが、やはりはがすことは出来ず。

「お前もマガイモノとはいえ、館を持つ主の立場なら、潔く腹をくくってこいつを食らえ」

そう言うと暗基は右手の大槍を手離す。するとその矛先がレミリアに向きながら、暗基の後ろへとバックしていく。そして暗基は、とどめの一撃を放つべく、スペルを口にする。

「すべてを葬る破壊神の大槍よ、敵の力を打ち砕き、今ここに裁きの鉄槌を下せ。滅槍『スピア・ザ・トリシューラ』!!!」

それは、一瞬でレミリアのマガイモノを貫き、塵にした。























すべてが無となった紅魔館の、地下の部屋。そこに1人、暗基零は立っていた。もうその身体には、先ほどのように霊力はまとわれてはいなかった。暗基は無表情のまま札を取り出し、目の前の塵を札の中に封印した。

「……、咲夜」

暗基は咲夜を抱きかかえる。その身体はまだ体温を持っていて、微かにではあるが胸も浮き沈みしている。どうやら気絶しているだけのようだ。レミリアのマガイモノが放ったスピア・ザ・グングニルの刺さっている部分、つまり他の皆の方を見ると、皆気絶していた。それを見てほっと一安心すると、もう一度咲夜のほうを向き、何か決心する顔をした。

「……、背に腹は変えられないか……。仕方ない」

そして、暗基は咲夜に口付けた。そしてそのまま気を失ってしまった。






































「んっ!!?」

目が覚めると、そこは先ほどまで戦いを行っていた場所ではなく、先ほど美鈴のマガイモノと戦ったあとに運び込まれた、咲夜の部屋の天井と、まったく同じものだった。それと同時に、ようやく紅魔館での用事がすべて終わったことを実感することが出来た。

「そっか、終わったんだな……。1つ目が、ようやく……」
「4日ぶりね。久しぶり、零」
「ん? 咲夜か?」

ボソッとつぶやくとドアのほうから聞きなれた声が聞こえてきた。ドアのほうを向くと、咲夜が立っていた。

「調子はどうかしら?」
「あぁ、ぐっすり眠れてすごくすっきりしてる」
「まぁ4日も眠っていたから、ぐっすりしてないほうが不思議なのだけど」
「うぉ、さっきの4日ぶりは聞こえ間違いじゃなかったんだな……」
「えぇ。お嬢様もつい先ほど目覚めたばかりよ。姿はすぐに元に戻ったのだけどね。あとで案内するから、お嬢様の部屋に来てもらえるかしら?」
「あぁ、わかったよ」
「それじゃ、用件は伝えたから、またあとでね」
「おう」

咲夜は部屋のドアを開けて部屋を出ようとする。と、

「あ、1つ言い忘れてたわ」

そう言うと咲夜は暗基の方を向き、

「人工、呼吸、ありがとね? 少しだけ、ドキッとしちゃった」
「!!!?」

暗基の呼吸を止める発言をし、そして今度こそ部屋から出て行った。

(思い出したおれ確かに咲夜に人工呼吸したっていうか何で知ってんのまさか誰か起きてたとかいうんじゃないよなオイひょっとしてっていうかいやな予感しかしねぇんだけど!!!!!!!!?」

思わず声に出てしまっていた。






























その後、咲夜に案内され、暗基はレミリアの部屋へと向かった。その途中、暗基は自分がしたことがとてつもなく恥ずかしく、咲夜の顔をまともに見ることが出来なかった。そして、これをもし同じ東方好きの仲間に言ってしまったら、俗に言う「咲夜さんは俺のメイド」とか言い出してる輩にボッコボコにされても仕方が無いといわざるを得ないな、とも思っていた。

(まぁ、おれも咲夜LOVEだしぃ~! 得したと思っていればいいか!!)

実際暗基は咲夜が好きである。白羅との勝負に咲夜を使ったのも、暗基が咲夜好きだからである。
と思っていると、咲夜がある部屋の前で止まった。

「着いたわ」

そして咲夜は扉をノックする。

「お嬢様。暗基零をお連れしました」
「ありがとう。入ってもらって」
「失礼いたします」
「失礼します」

咲夜は扉を開け、中に入る。暗基も一緒に中に入る。中には、通称「Z○N帽」という見た目ふわふわな帽子をかぶった、銀髪紅眼の小さな女の子が椅子に座っていた。当然それがレミリアなのだが。そしてその隣においてあるソファには、金髪紅眼のこれまた小さな女の子、フランが座っていた。

「あなたが暗基零ね? もうわかっていると思うけど、私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主よ」
「暗基零。立場上幻想郷を救う希望ということになっています。今後お見知りおきを」
「もっと気軽に話してもらえないかしら? 気取った人は嫌い」
「あら、作ってたってばれた?」
「私を誰だと思っているのかしら?」
「すみませんでした」
「わかればよろしい」

レミリアは若干ドヤ顔をしながら小さな胸を張るが、その姿がかわいらしすぎて。

「ぼそっ……(零。気持ちはわかるけど、鼻血を止めなさい。貴方が鼻血を流していると勘違いされかねないから)」
「ぼそっ……(おぉ、悪い悪い。だけどお前も人の事言えないじゃねぇか。なんだよその鼻血姿は)」
「ぼそっ……(こっ、これは、その……)」
「なに2人でひそひそ話してるの?」
「いえ、何でもございません」
「なんでもないよフラン」
「ふーん、変なのー」

と、こんなやり取りがあった。レミリア本人はまったく気が付いていないようだが。

「さて、零。改めてお礼を言わせてちょうだい。私たちの紅魔館を救ってくれて、ありがとう。霊夢も魔理沙もやられてしまっていたし、貴方が来なかったらきっと、私たちはずっとマガイモノの道具になっていたと思うわ。本当に、ありがとう」
「へへっ、なんか、こそばゆいな」
「私からも。ありがとね、零。お姉様とこうして一緒にいられるのも、零のおかげだよ」
「それはよかった」
「もしまた来たくなったら、いつでも来てくれるといいわ。フランも喜ぶし、私も少しくらいは、嬉しいし」
「おー? お姉様、今日はなんだか素直ね?」
「う、うるさいわよフラン!!」
「ふふ、お姉様可愛い~」
「ば、馬鹿にしないで!!」

フランがレミリアにちょっかいをかけ、レミリアが顔を赤らめながらムキになってそれに答える。咲夜はそれを見て微笑みつつ少しずつ鼻血を垂らしている。暗基が一番望んでいたその光景が、今時分の目の前で繰り広げられている。それだけで、暗基は心が満たされていった。

「あ、そういえば、パチェから伝言があったんだったわ」
「パチュリーから? なんだって?」

レミリアは伝言を暗基に伝える。

「『いいものを見させてもらった。眼の保養になったわ』ですって。何のことなのか、私にはわからないけど」

それを聞いた暗基は、すべてを察し、咲夜を見て、一言言った。

「ま、まさか……!?」
「そう。貴方が考えたとおりよ」
「……、もう道は覚えた。大図書館にいってくる!!」
「あ、ちょっと零!?」

暗基は1人でさっさとレミリアの部屋から出て行ってしまった。

「咲夜、いったいなにがあったの?」
「ふふ、これはお嬢様にも申し上げることは出来ません」
「……、もう、なんなのよ2人とも……」

レミリアは思わずつぶやいた。




























大図書館。今のこの場所は、先日の戦闘の爪跡がまだ色濃く残っており、小悪魔が必死になって本の整理をしていた。そんな小悪魔に軽くあいさつをしてから暗基は大股なおかつ早歩きでパチュリーの元へと向かう。そして紅茶を飲みながら本を読んでいるパチュリーを見つけ、事の真相を確かめるために話しかける。

「パチュリー!!!」
「何かしら? 図書館では静かにしてもらいたいのだけど」
「お前が言ったのか?」
「なっ……、なんの、ことかしら……?」

パチュリーが明らかに不自然に眼をそらした。つまりパチュリーが咲夜に伝えたことになる。暗基が咲夜に人工呼吸するためとはいえ、口付けをしたことを見ていたということを。

「…………、オマエコロシテヤル」

暗基の身体を真っ黒い霊力が纏い始める。それに対して本当に命の危険を感じたパチュリーはとっさに土下座の姿勢をした。

「ごめんなさい悪気はなかったのよ!?」
「シラネェヨソンナコト。ブチコロシテヤル」
「……、私もう終わったかも」

パチュリーが自分の死を覚悟したそのとき、

どすっ!

「うげっ!?」

腹に強烈な一撃を受けた。それと同時に、

「調子に乗らない!」

咲夜の一喝が聞こえた。どうやら咲夜に殴られたようだ。暗基は吐き気を覚えたが、何とか耐えることができた。

「なにもぶん殴ることねぇじゃねぇか……」
「ふん、気絶しないだけましだと思いなさい」
「くそ……」
「た、助かったわ……」

せっかくの処刑タイムを邪魔され、軽くグレている暗基。咲夜はそれを見た後、パチュリーに向かい、注意をする。

「パチュリー様もパチュリー様です! なぜ私に言ったのですか!? 言わなければこんなことにはならなかったでしょう!!?」
「そ、それはね、言ったらきっと面白いだろうなー、なんて思ったからなのだけど……」
「だからといって、レミリアお嬢様にまで仰る必要はないでしょう!!?」
「それはどうせレミィはその手の話には疎いし、伝言としか捉えないだろうなー、なんて」
「……」
「ごめんなさい謝るからとりあえずナイフをしまって!!」

パチュリーが咲夜の前に正座している様子を見て暗基は軽く新鮮さを感じていた。まさかあの忠実な十六夜咲夜が大魔法使いのパチュリー・ノーレッジを正座させてお説教をしているとかウケルーと思っていた。



































そして、そんな楽しいひと時は、あっという間に過ぎた。もう夜になっていた。暗基が出発を夜にした理由は、レミリアとフランのことを気遣ってのことだ。

「さて、もうそろそろ行かなきゃな」
「もう行くの? もう少し位居てもいいのよ?」
「そういうわけにもいかないさ。この状況になっているのは、紅魔館だけじゃないからな」
「そう……」
「零、また来るよね?」

フランがレミリアを押しのけながら暗基に問う。それに対し、暗基はフランの頭をなでながら言う。

「あぁ、当たり前だ。全部終わったら、また遊びに来てやるよ」
「ホントだよね?」
「あぁ。約束だ」

そして暗基は荷物を持ち、紅魔館を後にする。

「じゃぁな!!」

暗基は紅魔館が見えなくなるまで、大きく手を振りながら歩いていった。
紅魔館では、フランが暗基の姿が見えなくなるまで手を振っていた。そしてその隣には、少し悲しそうな顔をした咲夜。

「…………、がんばってね、零」
「さてと、咲夜。早速だけど、貴女には今日からしばらく暇をあげるわ」
「……、は?」

咲夜は今レミリアが言ったことがまるで理解できなかった。

「お、お嬢様? 仰っていることがまるで理解できないのですが……?」
「あら、じゃあ言い方を変えてあげる」

そう言うとレミリアは咲夜のほうを向きながら、こう言い放った。

「あなたも一緒に行きたいのでしょう? そんな気持ちでメイドの仕事に悪い影響が出ても困るから、さっさと準備しなさい。この異変が解決するまで、帰ってきたらだめよ」
「!!」

どうやら、我が主には、すべてがお見通しのようね……。

「……、十六夜咲夜、行ってまいります!! 必ずや、この異変を終わらせます!!」
「えぇ、行ってらっしゃい」

そして咲夜は時間を止め、これから長くなる旅のために準備をし、急いで暗基を追いかけていった。













第一部・紅魔郷~瀟洒なメイドの小さな願い~      終 
 

 
後書き
皆様明けましておめでとうございます。

今年もなにとぞヒラドンだーのことをよろしくお願いいたします。

さぁ、これで紅魔郷編は終了です。次回は軽く暗基の紹介をしようと思います。

それでは! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧