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転生者の珍妙な冒険

作者:yasao
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文化系もしくは帰宅部が1番戸惑うもの、それは体育会系のテンション

 
前書き
さて、前話から3日経っている今回の話。
よく考えたらネーナさん既に獅子王が起こした虐殺の跡を見ちまったんじゃねぇかと自分で疑問に思いつつもコロシアム開始です。 

 
『さぁ、皆様お待たせいたしました!!! 只今より、第14回大武闘大会、本戦を開催いたします!!』
司会の男の、魔道具で拡大された声に会場から歓声が湧き上がる。
彼らにとって予選のバトルロイヤルなど、大した見世物ではなかった。
もっとも、


「行けぇ『ザ・ハンド』!!」
『おぉっと! アレが「消撃乙女」ビリオン選手の精霊、「ザ・ハンド」かぁ!!』
『情報によると、あの精霊の右手は触れたものを削り取る能力があるそうですね。』
『成程!! そんな凶暴な精霊の攻撃に誰も近寄れないィィィ!!!!』

や、

「コォォォォ・・・・・・、セイッ!!!」
バキッ
「ぐあっ!!」
『アレは前大会でも本戦に出場したセーナ・フォクス!! 今大会も1発KO、流石です!!』

や、

「オラオラオラァ、退けやァァァァァァァァァ!!!!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ、『千刃覇王』だぁぁぁ!!!!」
『最早「覇王」と称することすら烏滸がましくなるような猛撃!! 前大会準決勝進出の実力者は、今大会でも大暴れだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

や、

「纏めて吹き飛べ!! 闘技・神砂嵐!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「逃げろ、アイツの傍に近寄るなァァァァ!!!」
『なんと凄まじい男だレオパルド・ジーク!! 素手で竜巻を巻き起こし、大量に纏めてKOだァァァ!!!』

や、

「行くぞ『星の白金(スタープラチナ)』! 山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!!!!」
『オラオラオラオラオラァ!!!』
『アレはッ!! 今大会が初出場のセイト・ヨシュア選手だ!! 初出場ながらその力は凄まじい!!』
『彼もビリオン選手と同じような精霊を使っていますね。聞いた話では約2年前に「暴獣」タルタスを制したということですよ。』
『それが本当なら、凄まじい実力者だァァァァァ!!!』

等、それなりに見ものになるシーンはあったが、それでもやはり数多の挑戦者の中から勝ち上がってきた8名の猛者のぶつかり合いに比べたら見劣りする。
彼らは固唾を飲み、決戦が始まるのを待つ。
それを焦らすように間を取った後、司会者の大音声が響いた。
『それでは第1回戦第1試合! 選手の入場です!!』





















「あ~、面倒臭い・・・・。」
俺は今、選手の待合室にいる。
幸いなことに、むっさい筋肉ダルマとかは意外と弱くて予選でゴロゴロ抜けてオッサンだけになった。
だけど面倒な事に変わりはない。
「あ~、ジークの一言で参加決めたけど、何で俺がこんなことしないとダメなんだよ・・・。」
3日前にジークが参加すると言ったからオッサンに会うために俺も参加を決定。
その後は面倒臭い事のオンパレードだ。
まず、参加表明をしたら初参加ってことで謎の講習を丸一日受けさせられ、その後に宿に帰ってマニュアルを読んだらコロシアム用の衣装(パンツとか膝当てとか支給されると思ってた)は自分で用意と書かれていて、そのせいで寝てコロシアム分の体力をチャージしようと思っていた次の日に買い出し。何故か同室のジークからついでにとか言って色々買いに行かされたし・・・。こんななら講習寝なかったら良かった。
で、次こそ寝倒してやろうと思ってた次の日は講習寝てたとかいう理由で追加の講習、訳が分からん。
そんな感じで俺の準備期間は消えた。
自業自得な感じもあるが、まぁそれにしても面倒臭い。

『第一試合の選手、まずは冒険者チーム「ロビンソン」の頼れる前衛!! 巧みな格闘術と強力な精霊を駆使して敵を攪乱させるランクA-冒険者「消撃乙女」のッ! ビリオン・レインだァァァァ!!!!!』
―――ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!

っと、試合か。
にしても歓声凄いなあの娘。
やっぱりランクもA-とかなったら人気出るんだろうな~、顔も悪くないし。
アイツを間接的にボコったってバレたらファンに殺されそう。

『凄まじい人気ですね~彼女は。何でも今回は参加していませんがあの「堅牢」ゾルディックとほぼ互角に戦えるそうですからね、初出場ではありますが試合が楽しみですよ。』
『そうですねッ! 私もあの娘可愛いから大好きですッ!!!』

司会者の言葉に観客はウケてる。
いや、あの声の感じはマジそうだったんだが、大丈夫だろうか・・・・。

『さぁそれは兎も角、そんな彼女と戦うのは!! なんと素性も顔も何も分からない、性別すら不明の人物!! ですがギルドでの功績は目を見張るものがあります! 単騎でのドラゴン討伐、盗賊団の壊滅、そして重病人や大怪我をした人への治療!! どれも素晴らしい結果となっております!! ランクはSッ、ジョブは「聖騎士(パラディン)」ッ、二つ名は「不明騎士」ッ、ボブ・スミィィィィィィィィィス!!!!!』
―――ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!

今度の奴も凄い人気だな、そろそろ歓声五月蝿い。
てか名前「ボブ・スミス」って日本で言う「山田太郎」じゃん、もうちょっと考え・・・・・・ん?
「待てよ・・・、それが適用するのって向こうの世界だよな・・・?」
じゃあ違うのか? あんまり無い名前なのか?
だがそんな名前を偽名付けたら目立つ。
「よし、ちょっと見てみよ・・・・・・・うッ!!!!?」
今まで座ってた席から立ち上がり、挑戦者用の覗き窓を見て、驚きのあまり変な声出た。
だってアイツ・・・・・・!!


全身を覆う白い甲冑、兜で顔は全く見えない。
背中にそれなりの大きさの盾をつけ、手にはきっと良い品なのだろう細身の剣と、もう1つ。
あまり高そうではないがよく手入れされた、至って普通の片手剣。
だが、アレは、あの剣は・・・・。
俺が昔、大体2年前に「アイツ」の腰に差してあったのを見た、その剣。


「もしかして、アイツはs『さぁっ!! それでは勝者はどちらかっ!! レディィィィィ、ファイトォォォォォ!!!!!!』!!?」























「よ~し、やっと本戦だ!」
名前を呼ばれ、歓声が響く。
そんなコロッセオの武舞台の中央に立ちながら、ビリオンの心はただただ目の前の戦いが楽しみで仕方なかった。
聖斗との戦いの時にもその面を覗かせたが、彼女はバトルジャンキーである。
加えて、何より自分が勝ちたいと思う。
そんな彼女が聖斗に負けてから初めて挑む1対1、自分の技にもスタンドにも自信がある。負ける気はしなかった。
「おいお前! アタシに勝てると思ってそんな涼しい顔してたら大間違いだからな! もうゴングは鳴った、喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
そう叫ぶやいなや不意打ち気味に飛びかかり膝蹴りを食らわせる。
「・・・・・・・・・。」
対するスミスはそれを甲冑の腕で防いだ。そのまま彼女を弾き、距離を取る。
と、その時。

バキッ・・・・・ガシャァン・・・・・!

防いだ腕の部分の甲冑が砕け、地に落ちた。
「・・・・?」
怪訝そうにビリオンを見るスミス。
それに応えるように胸を張ったビリオンは得意げに説明を始め
「ご明察だ! アタシの破砕掌は衝撃を操って触れたものを・・・・ってうわぁっ!!?」
説明の途中に斬りかかってきたスミスの斬撃を宙に跳んで躱す。
躱されたことを意に介さず両手の剣で連撃を繰り出すスミスだが、ビリオンは全てを空中を蹴ったり、切っ先を蹴ったりして躱していく。
いくら普段が自信満々過ぎて隙だらけとは言え、彼女はA-の冒険者、流石の身のこなしと言える。
だが、運は悪い時は悪い。
「あっ!?」
『あぁ~~~~~!! ここで痛恨のミス、切っ先に足を乗せたビリオン選手が足を滑らせたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
そのままバランスを崩して地に落ちるビリオン。スミスはトドメとばかりに剣を振り上げて首に斬りかかる。

「『ザ・ハンド』ォ!!!!」
「・・・・・・・・!?」

目の前で起こった現象に目を剥くスミス。
首を斬り裂く寸前だったビリオンの体が一瞬で消え、後方に現れたのだ。
『おぉっと、これはどういう事だ!!? 彼女は「瞬間移動」が使えるのかぁ!?』
司会者の言葉にざわつく観客。
それも仕方がない。瞬間移動は「特殊」に分類される「空間魔法」の中で難易度が上位に位置する呪文の1つ。使える者は世界に数名で、その中に彼女の名はない。
すわ新しい空間魔法使いの誕生か!? と浮き足立つ人々を落ち着けたのは、司会者の隣に座る解説者の言葉だった。
『まぁ、確かに瞬間移動には違いないですが、魔法ではないですね。アレを見てください。』
『ん? おぉっ、彼女の隣に例の精霊があぁぁぁぁぁぁ!!!!』
司会者の言葉のとおり、いつの間にか彼女の傍には彼女の精霊(スタンド)、「ザ・ハンド」の姿があった。
それを見て落ち着いたスミスの口から、大会開催後初めての声が漏れる。
「・・・・・『ザ・ハンド』、空間を削り瞬間移動する能力を持つ・・・・。」
「へ~、よく知ってるじゃないか。 だけど、もうアンタに勝ち目はないよ。」
己の能力を看破されても笑みを崩さないビリオン。
と、次の瞬間。

「破砕掌底!!」
バッゴォォォォォ・・・・ン
「ッ!?」

『な、なんとおぉぉ!! ビリオン選手、拳を武舞台に叩きつけて破壊したあぁぁぁぁぁ!!!? 一体何が目的なのかぁぁぁぁぁ!!!!』
轟音と共に武舞台が崩壊し、バランスを崩されるスミス。
その隙を見逃さず、自身はバランスを崩さなかったビリオンは「ザ・ハンド」の瞬間移動を利用し一気に接近する。
「どうだ! 地面がボコボコでマトモに動けねぇだろ!! アタシは精霊(ザ・ハンド)があるから関係ないね!」
「・・・・・・・・。」
「チッ、黙りかい!! まぁいいさ、これで終わりィ!!」
一気にスミスの眼前まで近寄ったビリオンが掌底を繰り出す。巨大な武舞台を破壊した一撃を。
「コレで鎧ごと砕けな!!! 破砕掌底!!!!!」
「・・・・・・――――。」
スミスが何かを呟いた。
その声は小さく、ビリオンにすらマトモに聞こえず、それ以外の者が呟いたということすら分からなかった。
だが、そんな事はどうでも良かった。
一瞬の後には、ビリオンの掌底がスミスを吹き飛ばすと誰もが疑わなかった。
だが・・・・・。

「・・・・・・・。」
「何っ!!?」

スミスが、不安定な足場とも思えぬほどの速度で移動し、掌底を躱してビリオンと位置を入れ替えた。
そして、
ザンッ
「ッ、ガフッ・・・・・・!!」
一陣の風のような斬撃により、首を斬られたビリオンはそのまま倒れた。
致死のダメージを負った者を重症まで引き戻し、医療室へと転移させるコロッセオの魔法の青い光が彼女を包み、「消撃乙女」は消えた。
『・・・・・・あっ! しょ、勝者はボブ・スミス!! 「不明騎士」のボブ・スミスでぇぇぇぇぇぇす!!!!! 一体あの状況からどうやって逆転できたのか、全くもって不思議な試合でしたあぁぁぁぁ!!!!』
司会者の言葉を聞き、驚愕の叫びに包まれるコロッセオを眺めながら、勝者のスミスは悠々と、無言で武舞台を去っていった。






















「皆、気づかなかったのか・・・・。」
覗き窓から顔を離し、もう1度椅子に腰掛けながら考える。
最後、アイツの移動した時、移動した経路を描くようにその場所だけ壊された足場が直っていた。
魔法を使ったような形跡は無かったし、俺には見えた。
注視しないと分からないような速度と透明度で、足場を瞬時に修復していく『何か』を。
「アレが、俺の予想通りの物だったら・・・・・。今まで聞いてた『アイツ』に関する噂、それが事実になる。」
やっぱり・・・・・。
「ボブ・スミス、奴は・・・・・・・・・・。」 
 

 
後書き
夜集阿(ヨシュア) 聖斗(セイト):『格闘家』『奇術師』:ランクA+
・波紋の呼吸法【レベル2】
    波紋ズームパンチ
    波紋疾走(オーバードライブ)
    波紋カッター
    仙道・波紋疾走(波紋オーバードライブ)
    銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)
    生命磁気の波紋疾走(オーバードライブ)
    山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)
    稲妻十字空烈刃(サンダークロススプリットアタック)
    クラッカーボレイ
    我流・冷酷な怒りの波紋疾走(ディープブルーアングリーオーバードライブ)
    深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)

・スタンド「タロット大アルカナ」【レベル2】【現在固定:星の白金(スタープラチナ)
    0番『愚者』の暗示する「愚者(ザ・フール)
    1番『魔術師』の暗示する「魔術師の赤(マジシャンズレッド)
    4番『皇帝』の暗示する「皇帝(エンペラー)
    6番『恋人』の暗示する「恋人(ラヴァーズ)
    7番『戦車』の暗示する「銀の戦車(シルバーチャリオッツ)
    8番『正義』の暗示する「正義(ジャスティス)
    9番『隠者』の暗示する「隠者の紫(ハーミットパープル)
    10番『運命の車輪』の暗示する「運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
    17番『星』の暗示する「星の白金(スタープラチナ)
    21番『世界』の暗示する「世界(ザ・ワールド)

レオパルド・ジーク(神風(カミカゼ) 零弥(レイヤ)):『格闘家』:ランクS-
・神砂嵐の流法(モード)【レベルMAX】
   真空竜巻
   闘技・神砂嵐(かみずなあらし)
漢武夷(カムイ)流柔術【初期レベルMAX】
   神砂の拳

セーナ・フォクス:『格闘家』:ランクB
・イヌ科の嗅覚【初期レベルMAX】
・イヌ科の聴覚【初期レベルMAX】
・波紋の呼吸法

ネーナ・チュミン:『アーチャー』『補助魔術師』:ランクA
・魔導弓【レベル2】
  回復型
  威力型
  速度型
 (上から順に使用頻度の高さ順)
・補助魔法
  ヒール(極小回復)
  ホイミヒール(小回復)
  ケンロ(防御小アップ)
  ムッキ(攻撃力小アップ) 
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