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東方紅魔語り

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紅霧異変
  Part12 無双の『妹』

 
前書き
遅れてしまい申し訳ございませんでした!
いえ、別にニコ動を見ていた訳では・・・。

そ、それでは、今回の話も・・・ゆっくりしていって下さいね! 

 
 赤いカーペットの敷かれた廊下の上を、一人の少女が悠々と歩いていた。
 少女、フランドール・スカーレットの目の前には三人の変態が立ち塞がっている。『罪』と書かれた袋を頭に被る男達は、フランドールの姿を見て、お互いに顔を見合わせた。

『どうする?フランだぜ?』

『俺はいいわ。年上好きだし』

『よし、なら俺が』

 そこまでその男達が言葉を発した瞬間だった。

 爆散した。

 三人の男達は何の前触れもなく、肉体の中心から四方八方に破裂したのだ。
 臓器が飛び散るその光景を見ながら、フランドールは無邪気な笑顔を見せてながら笑っている。

「楽しいな楽しいなー。お姉様のお手伝いにもなるし、変な人を殺して皆の負担を減らせるし。一石二鳥だね」

 そう言いながら、フランドールは首を素早く横に動かす。すると、先程までフランドールの頭があった位置に拳が勢い良く割り込んできた。

『ッ!?』

 驚き、息を飲む音が背後から聞こえてくる。
 フランドールは背後から自分を襲った男の腕に、小指で軽く触れた。まるでハエでも追い払うかのような動作で。

 その瞬間、乾いた音が響く。

 そして男は絶叫した。

「あーあ、やっぱ脆いか」

 男は腕を押さえながら大きく仰け反った。その腕は、本来あり得ない方向へと捻じ曲がっている。
 腕の骨を折ったのだ。
 ほんの少し触れただけで。
 屈強な男の骨を。

「『吸血鬼』を甘くみてもらったら困るよ。確かに弱点が多い種族だけど、それと同時にメリットも高いんだから」

 手の指を鳴らしながら、フランドールは言う。

「『鬼の力』と『天狗の速度』、そして『超再生能力』。これが私達『吸血鬼』の力」

 男、罪袋は踵をかえして駆けた。
 曲がり角を右折し、更に奥の十字路を左折。そして紅魔館の窓を突き破って表へ逃げ出す。
 これら一連の動作ができたのは、その無駄に鍛え抜かれた肉体のおかげだろう。

 対して、フランドールは微笑を残しながら

「もう無理だよ。ゲームオーバーだって」

 その口を開いた。

「もう……貴方はコンティニュー出来ないよ」

 右手を握った。
 音は聞こえない。なんの現象も起こらない。
 フランドールは日光に気を付けながら窓を覗いた。
 外を覗くその目は、上空に浮かぶ無数の臓器を捉えた。
 その光景は、ただその場を通りかかっただけの者には理解出来なかっただろう。理解出来るのは、『能力でそれを生み出した』フランドールのみ。
 フランドールは薄く笑い、そして振り向いた。
 振り向いたその先には、複数の『罪』と書かれた男達が。

『我々「罪袋」、その程度ではどうともしないわ!』

『まあリスポーンするし』

 敵がそこまで言った瞬間だった。
 首が内側に潰れた。
 先程まで離れた場所に立っていたフランドールが、その罪袋の首を恐るべき握力によって握りつぶしたのだ。
 接近を許した罪袋達は即座に距離を取ろうとする。
 だが、

「はい残念」

 フランドールの凶悪な笑みと共に、その罪袋達は音もなく爆散した。
 フランドールは一歩も動いていない。

「確かに『吸血鬼』の本質はさっき言った通りだけど、『私』の本質は違うんだよね」

 残された罪袋がフランドールに殴りかかる。その行動に躊躇は無い。
 対してフランドールは口で息を一気に吸い込み、放った。

『ワッッッ!!!!』

 可愛らしい声がフランドールから響くと同時、罪袋に異変が起きた。

 『吸血鬼』。その種族は身体能力がえげつない程高い。
 一瞬で敵との距離を縮める事もできれば、一瞬で敵の命を毟り取る事もできる。
 そしてーー。

 そのような高速運動する吸血鬼は、その肺活量も凄まじい。

 フランドールの口から放たれた空気の塊は、一切の容赦無く罪袋へ襲いかかった。
 その威力は正に『大砲』。
 直撃を許した罪袋の皮膚は消し飛ばされ、次に肉、骨、と無くなっていく。
 罪と書かれた袋に傷一つ無いのは不思議だが、それでもその破壊力は検証された。
 バラバラに、原型を残さず、綺麗に吹き飛ばされる罪袋。その様子を見ながら、フランドールは退屈そうにあくびをした。

「はー。楽しそうだから来てみたのに、これじゃただの『作業』だよね」

 そう言いながら、フランドールは自分の右掌へ視線を落とした。

「もういいや。終わらせちゃお。あの変な生き物達、よく見てみたら『目』が全部一緒だし」

 その手に赤い光が宿る。

「同じ『目』を量産して、と」

 右手を見ながら、フランドールは薄っすらと笑みを浮かべた。

「さぁーーて、せーのーーー!!!」

 掛け声と共に、その右手は天に掲げられる。


 そして、右手は閉じられた。




「おいおい、どーなってんだ?」

 ただいま現在進行形で罪袋達と戦っていた訳だが、どういう事か、全ての罪袋がいきなり爆発した。

「この有波ようやくの活躍時と思ったのに・・・誰だよ、俺の出番とったの・・・」

 いや、まさか非公式で罪袋達は自爆機能でもあったのか?と思ったが、そんな誰得な機能などつける必要は無いだろう。

「はあ・・・まあいいか。とりあえずアプリを切って・・・」

 そこで気が付いた。
 ようやく互角に戦えるレベルの弱い敵に会えてテンションが上がっていたのだが、そのせいで充電への注意が疎かになっていたのだ。
 あと一ミリ程度しかない残量を見て、俺の頭は一気にパニックを引き起こす。

「や、ヤベェヤベェ!!いま異変中だってのに流石にこれはねェぞ!!」

 思えば『咲夜戦』『魔理沙戦』『罪袋戦』と、立て続けに携帯を酷使してきた。そりゃ切れるだろう。
 ・・・まあ、三回ほど戦って三回とも勝利できていない訳だが。

「クッソ!・・・って、よく考えたら能力使って100にすりゃあいいだろ」

 早速行動。まずはアプリを再度起動して

「充電残量をひゃー」

 そこで、ピーーー!という甲高い音が鳴り響いた。
 携帯の画面が落ちる。
 真っ暗な画面に視線を落とし、同時に気分も落ちた。

「・・・これってさ、もうサボれって事なんだよ。うん」

 もう自室に篭ってサボる事を決意した。そもそもこの状態で参加したところで、今度は自分の首が落ちる事は目に見えている。
 もうこの世界は容赦ない事くらい分かった。そりゃメイドがナイフを投げてくるような世紀末状態。  もっと早くに気付くべきだったか。

「とりあえず、今のところ会いたくないのは咲夜だな。会ったらサボれなく・・・」

 そこまで呟いた直後、背中がゾクリと震えた。
 いる。背後に、彼女が。
 ゆっくりと、恐る恐る振り向いた。
 そこにはメイド服に身を包んだ『十六夜咲夜』が佇んでいた。
 咲夜はおもむろにナイフを手の中で弄びながら、ゆっくりと口を開く。

「気のせいかしら?なんか『サボる』って言葉が聞こえた気がしたのだけれど」

「空耳じゃないですかね?」

 口笛をしながら明後日の方向へ視線をずらす。正直、口笛なんて出来た試しが無いが。
 当然のように空気が空回る虚しい音が鳴る。だがしかし、少しでもバカしてないと素直に咲夜の方を見れない。
 咲夜はそんな虚しい俺を見てか、一息ため息をついてナイフを下ろした。

「全く・・・まあいいけどね、貴方が何のためにここへ居るのか、今一度考え直してみれば?」

 と咲夜は言うが、能力の使えない自分など何の役に立つのか。そうだな・・・某アニメのヤ◯チャみたいに背後で技の解説でもするか?

「・・・あ!そういえば・・・」

 思い出した。ポケットの中に入ってるアレを。

 幻符『ドッペルゲンガー』

 フランから貰った我が家宝。

「これなら使えるか・・・?いや、でも効力が分からない以上・・・」

「どうでもいいけど、サッサと働きなさいよ」

 どうでもいいって・・・俺からしたら命に関わるというのに・・・。
 って、あれ?

「そういえば、咲夜さんはこんな所で何を?別に空気を読んでご降臨なされた訳じゃないですよね」

 空気を読んで来たのなら違う意味で怖いが、その辺りは深く考え込まないようにしておこう。
 対して咲夜は呆れたような表情を見せて、見取り図の端を指差し、

「この『赤い霧』を操作するための『核』がここにある」

 核・・・!?

「この霧はお嬢様の出したものだけど、本来、この霧は長時間その場に留まり続ける事は無くて、短時間で霧散してしまうの。その霧の流れを操作する核が必要ってわけ」

 赤い霧を制御するための核・・・、マザーコンピューターみたいなものか。
 あ、もしかして咲夜が俺の元に来た理由は、

「私と妖精メイド達で防衛中なんだけど、念には念を。というわけで貴方来なさい」

 咲夜直々の命令。しかも内容は『核』を守れときた。
 核・・・つまり敵の注意を一手に受けるであろう部分を任される、という事だ。

「あのですね、咲夜さん。実は私、携帯の充電が・・・」

 無い。と言おうとした瞬間、咲夜の手に握られた銀のナイフが光を放った。
 いや、気がしただけなのだろうが、何故か『断ったらやられる』気がしてならない。

「え、と、その・・・ま、任せて下さい・・・」

「宜しい」

 咲夜はそう言うと、その首元にぶら下がっている懐中時計に軽く触れる。
 直後、咲夜の姿が虚空に掻き消えた。
 残された俺は、とりあえず頭の中で情報を整理し、次にやるべき事を・・・。

「あれ・・・?」

 これはやばい。
 色んな意味で、主に咲夜に刺されるという意味で。

「・・・あ、やっべ。道分かんね・・・」

 さて、もし俺が間に合わなくて、異変解決者達がその核の破壊に成功してしまった場合、間に合わなかった俺に、果たして何本のナイフが襲い来るか。
 充電が無い俺に、そのサウザンドナイフがかわせるのか。

答えは、

「クッソがァァァァァァ!!」

 猛スピードで走った。
 『核』なんて正直どうでもいいが、自分の命は軽視できない。
 床を蹴り、空気を裂き、ただ我武者羅に足を進める。

 自分の命を守るために。
 大事な事だから二回言うが、自分の命を守るために。
 
 

 
後書き
核・異変の重要物<自らの安全。

それでは今回はこの辺りで。
次回も、ゆっくりしていってね!!
 
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