東方紅魔語り
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紅霧異変
Part13 充電切れなんて無かったんや……
前書き
遅れまくって申し訳ありません!少々リアル事情が忙しくてですね。
ではPart13、ゆっくり見ていってね!!
「あら、案外早かったわね」
意外そうな表情で此方を見てくる咲夜。
「ええおかげ様で。これなら人間世界に戻った時も、時間を守るしっかり者になりそうですわ」
心臓辺りが超高速で動いている。主に数十分に渡る全力疾走のせいで。
そんな俺の疲れなど知る由もない咲夜の後ろには、宙に浮かぶ謎の球体と空を飛ぶ謎生物二体。
更に、部屋のありとあらゆる場所に謎生物が何体も配置されている。
これは・・・。
「すんません咲夜さん。どう見ても俺いらなくないっすかね?こんなに戦力が集中してるのなら、それこそ俺はいらないですよね」
魔理沙と霊夢。いくら主人公の二人とはいえ、ゲームみたいに突破できるものじゃ無いと思うのだが。
というか、俺って咲夜から『妖精以下』という評価を受けていた気がするのですが、俺が戦力になるのかどうか・・・。
あーいや、恐らく咲夜は一人の戦力どうのなどに興味は無いのだろう。
あくまで数を揃えて、真っ向から押す。
まさに人海戦術!
「貴方の能力を買ったのよ。とりあえず奇襲関係を考慮して、壁の強度を上げてくれる?」
あ、そっち系の仕事ですか。
いや、そっち系の方が不味い気がするな。何故ならば携帯の充電は無いのだ。
簡潔に言うと……oh……。
「えーと……すみません。要望にはお答えしかねます」
「なぜ?」
そんな目に光を宿さないでくれますかね。できればナイフもしまっていただきたい。
「私の能力を発動するための……なんと言うか……補助具のような物が、今はちょっとエネルギー切れで使えないんですよ」
詳しく言えば『補助具』ではなく『核』で、『エネルギー』ではなく『電気』だが。
もっといえば、俺の能力じゃなくて携帯の能力です。
「……冗談はいらないわよ?」
「命をかけた冗談はしませんし言いません、ハイ」
もし今ナイフを投げられたら、まず死ぬかな……。
よし、もし殺られそうになったら、その時は主人公勢に助けを求めて逃げ出そう。うん。
いやでも、そうなったらフランと離れ離れになるから……八方塞がりじゃねェかコノヤロウ。
「うーん……そうなると貴方を呼んだ意味が……」
何か真剣に考えてる。
とりあえず咲夜の脳内では【能力>俺】になっているな……。
どうにかして好感度を上げとかないと、俺の居心地が悪くなりまくるだろう……よし、ギャルゲーで鍛えた俺のフラグ建築能力で……
「じゃあ美鈴呼んできて。多分、門の所で寝てるから」
なん……だと?
なるほど、俺と二人きりのイベントは早く終わらせて本編へ進みたいと。そういうわけか?
ちくせぅ。
「分かりましたよ、じゃあ呼んできま……」
待て俺よ。
同じ過ちを繰り返してはならない。
そう、いま何も考えず去っていけば、また道が分からなくなって困る未来がある。ここは先手を打って……よし。
「あ、咲夜さん。少し……」
踵を返して背後を見てみると、そこには誰もいなかった。
そこにいるのは妖精メイドだけで、彼女?達の親玉である咲夜はどこにもいない。
……いや落ち着け。まだ慌てるような時間じゃ無い……。
「すみませーん妖精メイドさーん」
「jpmg?」
咲夜さんが駄目ならば、妖精メイドに聞けばいいじゃないか。
こいつらだってここで働いている身。道くらい分かるだろう。俺?知らん。
「あの、咲夜さんの言っていた門とやらには、どう行けば辿り着けるんですかね?」
「jt、bjfjpmtj」
うん分からん。
待てよオイ。こいつら俺達の言葉喋れないのかよクソが。
いや……咲夜はこいつらとコンタクトを取っていた。
つまり、どうにかして意思疎通出来る筈だ……!
「は、ハロー?」
「jpdv?」
「ボンジュール?」
「kmjpmja?」
「グーテンターク?」
「kmtgdmw?」
「ドブリジェン?」
「wwwwww」
ダメだこいつ。やっぱ人間と妖精の間には凄まじい壁があるようだな。
……いや意味は分かってるんだろうけどな?最後の方は笑ってるってのがヒシヒシと感じられたし。
俺のロシア語……何か間違ってたか?まさか発音?
「誰かいるか!?」
いきなり背後から扉が開く音とともに、何か聞いたことのある女性の声が響いた。
聞こえたのは日本語。目の前のこいつら妖精と違って、日本語を喋れる誰か。
声だけじゃ分からないが……まあいい、好都合だ!
「……え」
期待を胸に振り向いた先のものを見た瞬間、自分の心の何かが砕け散った気がした。
そういえば、この世界で聞いたことのある女性の声なんて限られてるじゃないか……。
目の前の女性……いや、そんな表現はもういいか。
霧雨 魔理沙。
俺の撃退する予定の人物が、目の前で息を切らしている。
……命乞いして半殺しで許してもらおうかな。
にしても、少し様子がおかしな気が?
「あ、お前はさっきの!ちょうどいい所に!」
魔理沙がこっちに向かって走ってきた。何故だろう、敵意とか一切感じられない。むしろ別の事を危惧してる表情だ。
因みに殺意、敵意に関しては結構経験あります。なんども咲夜さんに浴びせられてきたぜチクショウ。
ん?……魔理沙の背にもたれかかってる人……どこかで見覚えがあるな……。
「おい!えーと……名前は分からないけど、こいつが戦闘中に倒れて……とにかく大変なんだ!どこか休める場所はないか!?」
……あれ?
確か魔理沙は異変を止めに来たわけだよな?
そんで戦闘になったって事は、魔理沙にもたれかかってる人は異変の首謀者側。つまり魔理沙からしたら敵なわけだ。
その魔理沙が敵である人間を助けてくれと頼んでくる……?
魔理沙の背中にいるのは見覚えがある。『パチュリー・ノーレッジ』という、此方側の魔法使い。
パチュリーを介護したからって魔理沙側にメリットは無いと思うが……罠か?
「……魔理沙さん。貴方にとって、パチュリーさんは『何』ですか?」
ふふふ……俺を甘くみるなよ?
以前、○狼をしまくって騙され騙してきた俺が、そんな分かり易い罠にかかるわけが……。
「敵だ!それがどうかしたか!?」
OK分かった。罠なんて張ってないわコレ。
いやだって、男らしすぎるもの。もうオーラがギンッギンに光輝いているもの。
こうしてみると、疑った俺の心がどれほどドス黒いのか分かるな……ははっ……泣けるぜ。
「いや何でも……休める場所ですか……」
休める場所?この館に保健室みたいな部屋あんのかな?聞き覚えも見覚えも無いけど……。
何度か死の道を掠った事はあるけれど、大抵自室で包帯巻かれて終了だったから分からんな……。
……よく生きてこれたな、俺。
「ところで、どんな症状なんですか?病名とかは?」
これでこの世界特有の病名とか言われたら打つ手無しだな。又は聞いた事も無い特殊な病気とかな。
「多分、『喘息』だ。私と戦った時に結構な埃を吸った筈だし、居た環境も一時的にとは言え悪化しちまったしな」
喘息か……あー聞いたことあるな。ふっつーに聞いた事あったわ。
でも吸引機とかは無さそうだし、専用の薬とかも無さそうだしなぁ……やべ、マジで打つ手なしか?
「とりあえず箒から下ろして、壁に寄りかからせて下さい。喘息の場合は、寝かすよりも寄りかからせた方が息をし易いですから」
「分かった!」
そう言うと、魔理沙はグッタリしたパチュリーを動かした。
そして今気付いたが、妖精達がオロオロしながら空中をあっちこっちに動いている。
恐らく、敵が来たから攻撃しないといけないものの、自分達の仲間が近くにいるせいで攻撃できないのだろう。
いや攻撃してこられても困るけど。今されたら俺が木っ端微塵になる。
「それで?次は何をすればいい?」
パチュリーを壁に預けた魔理沙が、再び話しかけてきた。敵である俺に言ってくる辺り流石だが、少しは警戒してほしいと思う今日この頃。
もし警戒してこれなら、もう手遅れかもしれんね。
「いえ、正確な治療法をしないと駄目でしょうし、今はとにかく動かさない方がいいでしょう」
もしパチュリーの喘息が一時的な環境の急変化によるものなら、清潔な部屋にいるだけでも治るだろうしな。下手な薬を飲ませる訳にもいかんし。
にしても、『友人』の喘息話を聞いていた事が役にたったか。
そういや元気にしてるかな、あいつ。
「そうか……まあいいぜ。じゃあそいつの事、よろしくな」
「了解……へ?」
あれ?核を壊しにきたんじゃねぇの?
「霊夢が誰かと戦っていたのが見えてな。援護でもしてやるかって思ったんだよ」
そう魔理沙は言うと、即座に箒へ跨り、目にも止まらぬ速さで元来た道を逆走していった。
……えー。
「……まぁいいか」
面倒ごとから解放されたのなら別に文句は無いだろう。
何かあったとしても、見ての通りスマホの充電が
『ーー99に』
……ん?何か聞こえた気が……まあ気のせいだろう。見ての通り、スマホの充電が……
「……あれ?」
スマホの充電……ほとんどあるやん。
……え!?
いやいやいやいや、待て待て待て待て。さっきまで充電無かったよな!?なんで回復してんだ!?
「……見間違え、た?」
そんな事は無かったと思うが……まあいい、幸運の神が俺に微笑んだという事だろう。
能力が戻った。つまり俺の死ぬ確率が大幅に下がったというわけだ。
ふふふ……はーっはっは!!
能力が戻った記念に、少し大判振る舞いしてやるぜ!
「妖精さん達!パチュリーさんをお願いしますね!!」
首を傾げる妖精達を見なかった事にし、スマホのアプリを起動して、言葉を浴びせる。
「速度を100に!!」
今の俺ならば、主人公勢の戦闘に着いていける気がする!これで勝つる!!
地面を蹴って、いざ参戦!
辺りの背景が、一瞬で切り替わった。
赤く輝く光の洪水が博麗の巫女へ襲いかかった。一つ一つは小さな光の球体だが、それが合わさり、巨大な光の帯へと姿を変えている。
かわせない弾幕は張らない。それが幻想郷のルールだが、一見したらこの弾幕に抜け道は無い。
だが博麗の巫女・霊夢は動じる気配すら見せず、むしろ光へ突っ込んだ。
自殺願望。
見るものからしたらそう見えるかもしれない。
だが、霊夢は光へ当たる直前に身を捻り、光と光の僅かな隙間を掻い潜った。
少しでも躊躇すれば直撃していたが、それを霊夢は当たり前のようにこなしていく。
ただの作業のように。
「真正面から見たら隙間は無くても、横から見たら隙間が僅かに見える……簡単な威圧感だけの弾幕ね」
霊夢は言うが、彼女は横からなど弾幕を見ていなかった。真正面からの弾幕を冷静に分析して、隙間を導き出したのだ。
レミリアはそんな霊夢を見て、薄ら笑いをしながら弾幕を張っていく。
「流石は博麗の巫女ね。でも……」
含みのある笑みを浮かべながら、レミリアは片手を上空に掲げた。
赤い粒子が凄まじい速度でその手に集い、即座に形を形成していく。
「夢符『封魔陣』!!」
霊夢はその完成を待つことは無かった。そもそも待つメリットが無いため、当然だろう。
霊夢より投げられた一枚のカードは、地面に叩きつけられると同時に、白い結界を形成した。結界は肥大化すると上空へ伸びて、上にいるレミリアを巻き込もうとする。
が、レミリアの攻撃の方が早かった。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』」
レミリアは赤い槍を構え、真下へ放った。
恐ろしい風切り音を奏でながら、まるで何事も無かったかのように白い結界を喰らうと、地表近くで急激に曲線を描いた。
グングニル。
それは、主神オーディンが投げたとされる槍で、その槍は……
「封魔針!」
決して、敵を逃さないという。
槍は霊夢から放たれる弾幕を強引に食い破り、ターゲットへ肉薄する。
普通の人間ならばここで終わりだ。そもそも、決して逃げられない弾幕をかわせという方が不可能な話だろう。
だが。
「北欧神話の武器とか、正直どうでもいいわ」
直後、霊夢の左右から青色の牙のようなものが現れ、グングニルを噛み砕いた。
一蹴。
神話の主神が用いた武器を、あっさりと破壊した。
「その武器を持ったオーディンは、フェンリルとかいう狼に飲み込まれた……でしょ?」
「……ふぅん。その牙状の霊力は、さしずめフェンリルの牙を再現したって所かしら?」
「形だけでも力を持つってのが楽よね。『オーディンをフェンリルで喰った。』それだけよ」
「精巧な人間の人形に魂が宿る……精巧な形のものには、それに似た力が宿る……ふふ、中々博識じゃないの、貴方」
「これでも陰陽道に通じてるのよ。そもそも、人形に魂うんぬんは私達陰陽の得意技だし」
霊夢は一息ついて、改めて鋭い目でレミリアを見据えた。胸の前で複数のお札を広げ、ゆっくりと呟く。
「そろそろ付き合うのも飽きたし、終わらせるわよ」
霊夢の闘志に、答えるようにレミリアの妖力が膨れ上がっていく。小さな口から見える鋭い牙がギラリと光る。
「そうね。なら終わりにしましょうか。次こそは、私達『吸血鬼』の力を使って」
「来なさいよ。赤い杭で貫いてあげる」
赤い吸血鬼と赤い巫女。
二つの力は、容赦無く追突した。
次の瞬間、斜め下方向から青色のナイフが放たれた。真っ直ぐな線を描くナイフは、迷うことなく霊夢とレミリアへ向かっていく。
「「!?」」
それを視界の隅に入れたレミリアと霊夢は一つ舌打ちをし、空中でグルリと回転すると、そのまま上空へ飛び上がった。
遥か上空で態勢を整え直した二人は、下にいる人物の姿を見て眉を潜めた。
「メイド……?へぇ、主の戦闘中に現れるなんて、中々忠誠心あるわね」
「あの姿は咲夜?……いや、違う……!?」
そのメイドは、レミリアと霊夢の両方を巻き込むようにナイフの嵐を引き起こした。
後書き
今回、オリキャラは主人公しか登場していません。
では最後に出てきたメイドは……?
さて、それでは次回も、ゆっくりしていってね!
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