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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第2話:トップは無能でも務まる……部下が超有能ならね

(グランバニア城)
リュカSIDE

ウルフもオジロンも超有能で、しかも努力家だから王様はアイデアだけ出せば何とかなる。
娘2人からは「彼氏を忙しくさせんな。夜がつまらん!」と突き上げを喰らってるが、気にしたら負けだと思うし、子供(ガキ)がハジケ過ぎるのも問題だから軽く無視だ。

そうだ、前々から考えてた“貨幣一新案”も一緒に進行させよう。
俺もマリーも驚いてたのだが、この世界の通貨単位には『シルバー』と言うのもあるのだ。
前世でゲームをすると『ゴールド』と言う単位しか出てこないが、その下に『シルバー』が存在する。

簡単に説明するとUSA(アメリカ合衆国)の『ドル』と『セント』と同じだ。
1シルバーが100集まると1ゴールドと同価になり両替可能となる。
しかし現行する貨幣が1シルバー硬貨と1ゴールド硬貨だけで、大金を持ち運ぶのは重労働なのだ。

だから俺が率先して……つってもアイデアだけ出して実行するのはウルフ等だが、グランバニア発で貨幣を一新して発行しようと思ってる。
と言うのも『シルバー硬貨』は銀で、『ゴールド硬貨』は金で製造されてる為、コストが悪いし偽造も多発する。

何よりシルバー硬貨は慢性的な不足に陥ってるんだ。
で、どの様な事態に陥ってるかと言えば……釣り銭が戻ってこないと言う事なのだ。
そんな馬鹿なと思うだろ!

例えば居酒屋で1本1(ゴールド)20(シルバー)の焼き鳥を購入するとしよう。
小銭(シルバー)が無かったから2(ゴールド)で支払うとして、本来なら80(シルバー)の釣りが戻るハズなのだが……戻ってこない。それに払わなくても文句を言う客はほぼ居ない。

何故なら小銭(シルバー)が店側にも無いからだ。
だから小銭(シルバー)を切り上げて、1(ゴールド)20(シルバー)の会計を2(ゴールド)と請求する店が殆ど。

存在する通貨が使用できない世界。
アンビリーバブルですよ!
銀が無いのなら代わりの物を使えば良いのに、誰もそれを行わなかったんだ。
まぁ面倒臭いからねぇ……

でも今の俺には有能な部下が沢山居るから大丈夫!
俺、全然面倒臭くない。
丸投げOKな部下が居るから超楽勝ですよ!

しかも技術力の高い天空人の王が舎弟として存在するし、軽く恫喝すれば偽造防止技術をふんだんに盛り込んだワンダホーなお金が出来るはず。
だから概要案を提示しなきゃならないけど、それは我が故郷(つってもサンタローズじゃないよ)を参考にすればオールOKだ。

俺の見立てでは、1(ゴールド)が100円くらいの価値だし、日本の貨幣を真似ちゃって大丈夫だと思うね。
それに、その方が使いやすい……俺がね。

即ち、1(シルバー)硬貨・5(シルバー)硬貨・10(シルバー)硬貨・50(シルバー)硬貨……そして1(ゴールド)硬貨・5(ゴールド)硬貨を作る。
更に、10(ゴールド)紙幣・20(ゴールド)紙幣・50(ゴールド)紙幣・100(ゴールド)紙幣を製造する。

これで大金も持ち歩きやすくなるし、コストを落とした素材で作れば慢性的不足に陥る事も無いだろう。
いきなり貨幣が紙に変わったら皆驚くだろうし、存在価値を軽視するだろうけど、そもそも貨幣自体の価値は使用する人々が決める事なのだ。

前世の日本でも電子マネーという通貨が横行したが、それを使用する人々が価値を見出さなければ何を持ってきた所で無価値に成り下がるのだ。
例えるのなら、江戸時代にタイムスリップをし1万円札を振り翳した所で、誰も何も売ってくれないだろう。

だって……江戸時代に1万円札なんて誰も取引してないのだからね。
あんなのゴチャゴチャ絵の描かれた紙切れだ。
尻拭くのにも小さすぎる使えない紙切れだ。手に付いちゃうよ!

だから最初は混乱するだろうけど、慣れれば誰もが重宝するだろう。
従って行うのなら今しかない。
ヒゲメガネが俺に負い目を感じており、ウルフを初めとする部下達が超有能かつ、やる気MAXの今しかないのだ!

これでまた娘に文句を言われるだろうなぁ……
そしたら『その代わりお父さんが頑張って家族を増やすよ! 出来れば弟が良いだろうけど多分妹になると思うけど、お父さん頑張るよ!』って笑顔で言おう。

きっと大丈夫。
自分の娘を信じよう(笑)

リュカSIDE END



(グランバニア城・国王主席秘書官執務室)
マリーSIDE

「また……仕事が増えた……」
目の前で彼氏が嘆いている。
私の父親が多忙な彼に仕事を押し付ける為、過労気味な彼氏が嘆いている。

「ま、まぁまぁ……ウルフが有能だからお父さんも仕事を回すのよ。私に手伝える事があるのなら手伝うから、そんなに嘆かないで」
執務机に座り嘆きながらも仕事を熟すウルフに、協力を伝え慰める私。

「私お父さんに直訴してくるわ!」
私と一緒にウルフの執務室へ来てたリューノが、ご立腹状態で隣の国王執務室へ向かおうとする。
でも私はリューノを止める。

「無駄だからヤメなさいよ。お父さんが私達の言葉を聞き入れると思ってるの? 何よりお父さんの提案は正しいのよ……通貨を安定させなきゃ国家も安定しないんだから」
「それは……そうなんだろうけど……でもぉ……」

リューノの気落ちも解る。
私だってウルフが疲れ切ってる姿は見たくないし、夜が寂しいのはイヤだ。
でも、お父さんが行おうとしてる提案も必要だと感じてる。
(シルバー)が無いからって釣りがこないなんて間違ってるわよ!

そんな事を考えてる間にも彼の机には書類が溜まって行く。
この部屋にはウルフの部下が3人居るが、奴等も遠慮無く書類を回してくる。
その書類を見たが、難しそうで私には手伝えそうにない……

今年18になった(DQ4の世界にタイムスリップしてた時間はカウントしない)ウルフには3人の部下が居るのだ。
(いず)れも年上……最年少で20歳。最年長は43歳だ。
でもウルフには敬意を持っており、仕事で手を抜く事はない……らしい。

詳しい事は良く解らないのだが、3人とも仕事内容を変えてある様で、最年長のプロム(男性43歳)は軍事関係の事でウルフの補佐を、次に年長のリック(男性31歳)は軍事以外の政を補佐、そして最年少であるユニ(女性20歳)は城内での事柄に関する補佐をしてるらしい。

ユニの事はよく知っている。
なんせ以前に奴隷としてグランバニアに売られに来たからだ。
その際激怒したお父さんが、ユニを含む奴隷100人ほどを1(ゴールド)で買い取ったのだ。

勿論奴隷商人は拒否ったが、お付きのボディーガード共々ボッコボコにされ商談成立。
今もなお、グランバニアの牢獄にはその奴隷商人が投獄されている。
何時までも殺さないのは、ユニ達の代金が1(ゴールド)+その奴隷商人の命だからだ。

商談が成立した以上、奴等を殺す事はない。
成立しなければ1(ゴールド)も払わずに奴隷を手に入れられたのに……と愚痴ってたお父さんの事を思い出す。
つまり『問答無用でブッ殺せば良かった』と言ってるのだ。

まぁそんな彼女は献身的にメイドとしてグランバニアに……延いては王様に尽くしてきた。
そして城内の事を熟知してる彼女は、ウルフの補佐役として大抜擢。
直属の上司(ウルフ)の為と言うより、その上の上司(リュカ王)の為に日夜頑張っている。

そんな彼女がウルフに渡したのは、2週間後に迫ったお兄ちゃんの結婚式のプログラムだ。
結婚式はグランバニア城1階の教会で行われる。
それが終了すると国民へのお披露目だ。

グランバニア城4階北側テラスから、新郎新婦が揃って国民に挨拶をする。
グランバニア城北側は20~30万人程集められる広場になっており、4階テラスからならば大勢にお披露目できるのだ。

そして、お披露目が終わるとグランバニア城大広間で披露宴……所謂大宴会だ!
私も披露宴で歌を披露する。
プリティーに木村カエラの『Butterfly』を歌うのだ。
伴奏してくれるお父さんには曲目を伝えてあるが、他には言ってない。
私の美声で感動的に歌い上げ、会場を感涙のスコールに見舞わせてやる。

プログラムを見ると私の後にお父さんがソロで歌うらしい。
お父さんの事だから歌うのは定番中の定番かな?
『テントウムシのサンバ』とか『CAN YOU CELEBRATE?』だと思う。

だが皆を泣かすのは私だ!
グランバニアの歌姫こと、プリンセス・マリー様なのだ!

マリーSIDE END



(グランバニア城・国王主席秘書官執務室)
リューノSIDE

なんかマリーがトリップしちゃってる。
何を考えてるのか想像できるが……今は放っておこう。
私としてはウルフの負担を少しでも軽減できないか模索中なのだ。

何か手伝えないかな?
チラリとウルフに視線を向けたが、「大丈夫だよ」と優しい目で頷き書類の山に視線を移す。
あぁ……なんてもどかしいのだろうか。

初めてお父さんに怒りを感じる……
今なら、ティミーがお父さんに怒鳴っていた気持ちが解るわ。
以前は父親に反発するムカつく奴だと思ってたけど……
結婚式では心から祝福できそうだ。

ここに居ても邪魔なだけそうだし、トリップ中のマリーを連れて国王主席秘書官執務室から出て行く。
そして隣の国王執務室に駆け込み、大声でお父さんに文句を言う……つもりだったのだが、部屋の手前でビアンカさんに捕まり、グランバニア城内にあるカフェへ連れて行かれた。



(グランバニア城・カフェ)

このカフェは、まだ国民がグランバニア城の1階と地下1階に住んでた時の酒場の名残で、現在は同じオーナーが兵士達の為にカフェを経営している。
勿論、兵士だけでなく城内に勤める者や城外からの客も居り、大変賑わっている。

「貴女達……リュカに文句を言いたいんでしょ」
カフェの席に着き紅茶を注文した所でビアンカさんが図星を突いてくる。
「私は違うわよお母さん! ウルフが大変なのは解ってるけど、お父さんの行おうとしてる事が重要なのも理解してるから」
卑怯にもマリーは自分だけ説教を逃れようとしてる。

「本当かしら? まぁ良いけど」
ビアンカさんも疑ってるが、これ以上の問答を避ける為納得した。
私としては深く突き詰めてほしいわ。

「リューノは“ティミーの結婚式騒動”が巻き起こってる最中に、リュカが国政を進めすぎると考えてるのよね」
「は、はい」
お父さんの事を批判するのは気が引ける……特にビアンカさんの前だと。

「別にリュカもウルフ君を苛めるつもりで仕事を増やしてるんじゃないのよ。考えてもみなさい……リュカは今まで真面目に仕事してこなかった……と言うと語弊があるけど、それ程心血を注いでは仕事をしなかったわ」

「そうです。それなのに突然真面目になって……変ですよ!」
「真面目なのが“変”って困ったもんね(笑) リュカだってね本当は以前から全力を出したかったのよ。だけど出来なかったの……何でだと思う?」

「ふ……不真面目な人だから……」
同じ台詞を他人が言ったら、私はきっと激怒する。
だってお父さんは凄い人だから……本当は偉大な人だから!

「家族以外の人が言ったのなら燃やしてしまいそうな答えね」
ヤバい……ビアンカさんを怒らせてしまったか!?

リューノSIDE END



 
 

 
後書き
この作品では『1ゴールド』=『100円』で計算します。
なので『1シルバー』なる単為も作りました。
そう考えると薬草って800円もするんだね。
一晩2ゴールドって安いね。 
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