グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第1話:ヤっちゃってたからデキちゃってた……だから大忙し
前書き
さぁ始めますよ。
リュカさん等を中心に、アノ一家の私生活を!!
(グランバニア城)
リュカSIDE
俺の前を大勢の人間が忙しそうに走り回る。
特にオジロンとウルフが忙しそうだ。
オジロンは歳だろうか……もう息が上がってる。でもウルフは余裕がありそうだ……しかも忙しい事を喜んでる様に見える。
「あの……僕は何をすれば……」
手持ち無沙汰のティミーが申し訳なさそうに話しかける。
「わ、私も……」
隣のアルルも責任を感じて申し出る。
「アンタ等は今いいから! でも衣装合わせくらいは今のうちからやっておいて」
「解りました……」「う、うん。そうするわ……」
凄い勢いで返答してくるウルフに気圧され、二人とも引き気味に反応する。
「アルル……ドレスは大きめで作ってもらえよ」
俺はアルルの腹部を指差しアドバイスする。
「そ、そうですよね……こ、これからですもんね。これから大きくなるんですもんね!」
「よく考えたら、何で何時までも結婚しなかったの? 毎晩ヤりまくりでしょう……デキちゃった結婚になるって想像しなかったの?」
俺は理解できない行動をしてた息子夫婦(仮)に優しく聞いてみた。
「し、仕事が面白くて……何時でも結婚できると思ってたら、先にデキちゃいました」
売れっ子芸能人かお前等は……そんな事を言いそうになりながら、今朝の出来事を思い出す。サザ○さん一家より大人数の朝食風景を思い出す。
俺は何時も通りメイドさんが用意してくれた朝食を食べた。
因みに朝食と昼食はメイドさんが用意してくれる。夕食はビアンカが作る。
普通の家庭に憧れてるビアンカは、夕食だけは自分で作ると言い毎晩頑張ってるんだ。
さて、何時も通りみんなで朝の団欒を満喫してると、何となくアルルの様子が違うのに気付いたんだ。
もしかして~(笑) ってな気持ちで彼女に近付き、『アルル、今日も元気?』と肩に手を乗せました。
そしたらビンゴ(笑)
小声で隣のティミーに『お前、気付いてる?』って聞いたんだ。
そしたら、今朝ベッドで『そんな感じかも……』って会話してたらしく、俺等に話すタイミングを伺ってたんだってさ。
そんな訳で朝食終わって直ぐに、医者とかシスターとか呼んで確認作業。
んで「おめでとうございます。妊娠3ヶ月です」って言われました。
言われた二人も俺等家族も、ものっそい喜んだんだ。
でもね……オジロンとウルフだけがね……なんか怖い顔しちゃったんだよ。
「お゛い゛……一国の王子が、婚礼前に女性を孕ませたのか!?」
「あれ? そう言う話になってるの、気付かなかったウルフ?」
「リュカよ……そうではない。ウルフが気にしてるのは……」
うん。オジロンの説明ではね……
建前を重視する国家ってのは、【婚約→結婚→懐妊→出産】ってのが通常の手続きで、他国や国民に対して面目を保てるって事らしいんだワ。
しかもね、現グランバニアの良心的存在の王子様が、父親みたいな真似をしちゃったら大問題だそうです。(おかしいな……俺、デキ婚じゃないよ)
知った事かそんなん! って言いたかったけど、ウルフが『知った事かそんなん! とか言うなよ』って先手を打たれちゃって……
だから今……グランバニア城は喧噪に包まれてます(笑)
1ヶ月後に“グランバニア王太子殿下婚礼の儀”を執り行う事になったらしく、関係各所が時間の無さに大慌てですよ(大笑)
「もっとゆっくりやればぁ~」って言ったらね「うるせー! 1ヶ月後でも遅いんだよ。対外的に婚礼後の懐妊って事にしなきゃならないんだよ! どうせ手伝わねーんだから、邪魔だけはすんな馬鹿!」ってウルフに怒られちゃった(テヘ)
俺も、もっと早くに気が付いてれば良かったんでけど……触れないと解らないからなぁ。
自分の女じゃない女性にベタベタ触るのは拙いからねぇ……
それにアルルじゃ触っても……ねぇ。
「はぁ……私もとうとうお祖母ちゃんか」
俺と同じく面倒事は有能な人間に任せてるビアンカが、溜息交じりで呟いた。
嬉しい事なのだが“お祖母ちゃん”と言うワードに落ち込んでる。
「おいティミー。僕等を“お祖父ちゃん”“お祖母ちゃん”と呼ばせるな! 呼ばせたらアレだよ……事実を曲げるよ。アルルに僕の子を産ませるよ!」
「わ、解りました! しかし……そうなると、何って呼ばせれば?」
「あ、そうか……う~ん……うん! 名前で呼べば良いじゃん」
「……つまり『リュカさん』とか『ビアンカ様』とかですか?」
何でビアンカの時は“様”なんだ?
「まぁ……そういう事。つーか今後我が一族では『父・母・兄・姉』以外は名前で呼ぶ事にしよう。敬称は任せるけど、各人のパーソナリティーを尊重させよう」
「はぁ……そうですか」
あれ……何かノリが悪いな。
「よし。これを機に、国内全土に通達しよう。各個人・各家庭に『パーソナルネーム(PN)』と『ファミリーネーム(FN)』を付ける様にしよう!」
我ながら良い案だ!
そうなんだよね。この世界って大概の人間が名字を持ってないんだよ。
位の高い貴族や王族には家柄を示す為の“ファミリーネーム”があるんだ。
俺だったら“グランバニア”がそれに当たる。
でも一般人は個人の名前しか持ってない。
ついでに国民基本台帳を作ろう。
日本の住民基本台帳みたいなやつで、正確に人口把握や増加率を調べる為にも、グランバニアにも取り入れよう。
そうとなれば行動は早いほうが良い。
「おいウルフ。ちょっとこっち来い」
中身は面倒臭そうだから、概要だけ説明して後はウルフに任せよっと☆
リュカSIDE END
(グランバニア城)
ウルフSIDE
多分、俺は死ぬ。
ティミーさんの結婚式は俺の葬式と同時進行になるはずだ。
あの馬鹿が大忙しな俺を捕まえて、『国民基本台帳を作る。早急に手配しろ』と言ってきた。
何だ“国民基本台帳”ってのは!?
只でさえ忙しい俺に、結婚式の準備という大仕事を増やし、更に何か仕事を増やそうとしてるゾ!
過労死か? 俺の死に様は過労死なのか!?
「今は忙しいから結婚式の件が一段落したら話を聞きます」と、言ったけど「ダメだ。同時進行で……いや、こっちを最優先で処理しろ!」と横暴大王降臨。
仕方ないから国民基本台帳の概要を尋ねたさ……
要は国民リストを作れって事らしい。
とは言え、現在グランバニアには2億もの人口が居る。
俺一人でシステム構築をするのは不可能だし、現状の忙しさじゃ無理!
だからオジロン大臣も巻き込み、一緒に詳しい説明を受けた。
リュカさんの説明をそのまま言うが……
グランバニアに住む全ての人々をリストアップし、住まい・家族構成・職業等を国が把握するのが国民基本台帳の意味らしい。
それに際し、国民の名前も増やすそうだ。
どういう事かというと、“PN(個人名)”と“FN(家系名)”の2つ……それと必要に応じて“MN(副名)”の計3つで構成させる。
例えば……
マイケル・ジャクソンという男性が居たとする。
彼の場合『マイケル』がPNで『ジャクソン』がFNだ。
彼に娘が出来たらジャネット・ジャクソンとなる。
『ジャネット』は彼女のPNな為、親が命名すれば良い。
だがジャクソン家の者と言う事でFNは変えられない。
そしてマイケル・ジャクソンさんがアリシア・フォックスさんという女性と結婚し、アリシアさんがマイケルさんの嫁になる場合は、アリシアさんのFNが変わり『アリシア・F・ジャクソン』となる。
この『F』は結婚前の『フォックス』を表しており、どこの家庭から嫁いだかを解る様にしてる。
だが逆に、マイケルさんが婿に入った場合は『マイケル・J・フォックス』となる。
結婚前……つまり、FN変更前の名をMNと呼び、夫婦の間に出来た子供にでさえ継承させる事はない。
しかし離婚をした場合、引き取った方のFNに変更する。
マイケル・J・フォックスさんとアリシア・フォックスさんの間にサミエル・フォックスさんと言う男の子が居た場合、母親に引き取られれば変更はないが、父親に引き取られた場合『サミエル・ジャクソン』になる。
なお、FNの変更は役所に届ければ変更が可能で、サミエル君も成人(15歳以上)になれば、結婚してなくても変更する事が出来る。
しかし以前のFNをMNとして表記しなければならず、『サミエル・ジャクソン』後に母親のFNに変更しても『サミエル・J・フォックス』になる。
しかも度々変更すると、その全てを表記せねばならなくなり……
『ジャクソン』→『フォックス』→『ウルマン』と変えると、サミエル・J・F・ウルマンとなり、更に『スミス』→『ウッズ』→『ハイマン』と変えたもんなら、サミエル・J・F・U・S・W・ハイマンと無意味に長くなる。
まぁここまでの説明で名前と台帳による国民管理のシステムは理解できたのだが、何の意味があって行うのか解らなかった。
だけど、その後の説明で理解できた。
リュカさんは国民健康保険制度を執行しようとしてるんだ。
増税する事になるのだが、その増えた分から国民の保険料……つまり病気や怪我での治療費や薬の代金を負担しようと考えてるらしい。
その為にも国民の事を把握しなければならず、把握するには国民基本台帳が必要で、国民基本台帳を扱いやすくするには“PN”や“FN”が必要なのだそうだ。
流石リュカさんだと思うよ……国民の事を考え、生活水準の向上を実行するなんて。
でもね……何で今なんだよ!?
アンタの息子が出来ちゃった結婚になるのに、そのフォローをしようとしてる俺等に負担をかけるなんて間違ってるよ!
はぁ~……
文句を言っても始まらないし、オジロン大臣と顔を見合わせ……そして溜息を吐きながら取りかかる。
明日から当分残業だな……
いや、今日からか。
ウルフSIDE END
後書き
細かいツッコミは拒否!
兎も角はリュカ一家を愉しんで下さいませ。
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