チャンピオン
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第一章
チャンピオン
「私は姫様の騎士です」
ラインマル=フォン=ロッセヴァルトはエリーゼに常にこう言っていた。
「これまでも今もこれからも」
「私に忠誠を誓ってくれるのですね」
「はい」
その通りだとだ、エリーゼの前に片膝を折って跪いて言うのだった。
「例え何があろうとも」
「では何かあれば」
「この剣を捧げます」
何としてもというのだ。
「ですからご安心下さい」
「ではそうさせて頂きます」
エリーゼは微笑みラインマルに応えるのだった。
「私にどうにも出来ないことがあれば」
「お護りしますので」
ラインマルも誓いの言葉を言う、そしてだった。
彼は実際に常にエリーゼの傍にいて彼女を護っていた、その彼に対してだ。
主君であるヨハネス公はだ、その彼に言った。
「いつも悪いな」
「いえ、私は騎士ですから」
「エリーゼのだな」
「はい、ですから」
だからだというのだ。
「私はこの剣を捧げます」
「そうしていざという時はか」
「この命に代えても姫様をお護りしますので」
エリーゼに誓った通りにというのだ。
「ご安心下さい」
「わかった、では頼む」
公爵は若々しく端正な、まさに騎士と言っていい彼の顔を見つつ応えた。
「これからもな」
「はい、それでは」
「しかし、卿もな」
公爵はライン丸の蜂蜜色の豊かな髪と青の湖の様に澄んでいるその目も見た、そうして彼にも言うのだった。
「そろそろな」
「結婚をですか」
「私が相手を見付けてくるが」
結婚相手をというのだ。
「どうだ、そのことは」
「いえ、相手は」
「まだよいというのか」
「お心遣い有り難うございます」
このことについてはこう言うだけだった。
「ですが私はまだ」
「そうか、ではそう思った時はな」
「お願いします」
これがラインマルの返事だった、しかしだった。
彼にはそのつもりはなかった、それが何故かも言わずにだった。
彼はエリーゼに仕え彼女を護り続けた、まさに完璧な護衛だった。
その彼女がだ、ある日だった。
暗い顔でだ、自分の部屋にいる時にだ。
まず侍女達を下がらせた、そして。
ラインマルも去ろうとした時にだ、彼を呼び止めてこう言った。
「お待ち下さい」
「私はですか」
「ラインマル殿にお話があります」
暗い、しかしだった。決意している顔で彼に言ったのである。
「宜しいでしょうか」
「そうですか、それでは」
「部屋に残って下さい」
あらためてだ、彼に言ってだった。そのうえで。
実際にだった、エリーゼはラインマルと部屋に二人だけになった。そしてそうなってから彼に言うのだった。
「実はです」
「実はとは」
「貴方に戦って欲しいのですが」
「私にですか」
「私のことではないですが」
それでもというのだ。
「私の為にです」
「姫様のことでなく、ですか」
「私の為に戦って頂けますか」
「姫様のお願いなら」
これがラインマルの返事だった。
「喜んで」
「そう言って頂けますか」
その楚々とした、見事な青い目をたたえた顔での言葉だった。見事な黄金の髪が動くとそれで金の糸が束になって動く様だ。
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