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チャンピオン

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第二章

 その彼女がだ、こう言うのだった。
「ではです」
「はい、そのお願いとは」
「代理で戦って欲しいのです」
「代理ですか」
「アイゼナッハ卿をご存知でしょうか」
「アイゼナッハ侯爵家の方でしょうか」
「はい、侯爵家のご嫡男であられますね」
 エリーゼは確認する様にしてだ、ラインマルに言っていく。
「あの方は今決闘しなければならないのですが」
「それはどうしてでしょうか」
「些細な、ご学友とのお酒の場でのいざかいがありまして」
 よくある話だった、貴族達も酒を飲む。そしてその場でついつい言い合いになりそこから決闘沙汰になってしまうのだ。
 そうした事態をだ、侯爵家の嫡男も引き起こしてしまったか仕掛けられたか。どちらにしろそうした揉めごとの中にあるというのだ。
「それでなのです」
「ご嫡男ご自身は」
「それが。先日落馬されて」
 決闘の約束をした後でというのだ。
「それでなのです」
「決闘に赴けないのですね」
「はい、ですから」
 だからだというのだ。
「ラインマル殿にお願いしたいのです」
「わかりました、では」
 即答だった、この時も。
「お任せ下さい」
「こう言って頂けますか」
「その決闘は何時でしょうか」
「二週間後です」
 その時だというのだ。
「場所は侯爵の御料地の一つベルトブルグの城門前です」
「あの場所ですか」
「場所はご存知ですね」
「はい、私も赴きます」
 その決闘の場にというのだ。
「そしてご嫡男と共にです」
「私の戦いを観て頂けますか」
「そうさせて頂きます」 
 こうだ、ラインマルに今にも死にそうな顔で言うのだった。
「それで」
「わかりました、では二週間後」
「はい」
「私は決闘に勝ちます」
 必ず、というのだ。
「そして姫様の憂いを絶ちます」
「そうして頂けるのですね」
「そうです、ですから姫様は何のご心配もいりません」
「二週間後ですね」
「その時は笑顔でいて下さい」
 自分も笑顔を作って言うのだった。
「必ず。約束して頂けますか」
「わかりました、では二週間後は」 
 エリーゼは今は笑顔でいられなかった、だがだった。
 今は無理に笑ってだ、そしてだった。
 彼は二週間後その場に赴いた、そこにはエリーゼと。
 彼女の横に右手をに添え木をして包帯を巻いている若者がいた、見れば左足も怪我をしていて杖を突いている。背は高く逞しい身体をしているが怪我をしていることは間違いない。
 その彼がだ、ラインマルに対して声をかけた。
「すいません、姫からお話は聞きました」
「左様ですか」
「お願いします」
 頭を下げてだ、彼はラインマルに頼んだ。
「私はこの状況なので」
「構いません」
 微笑みさえ浮かべてだ、ラインマルは彼に返した。
「私は騎士ですので」
「だからですか」
「こうしたことも当然のことです」
 主の言葉のまま代理で戦うこともというのだ。
「ですから」
「では」
「はい、そこで御覧になって下さい」 
 冷静なままで言うラインマルだった。
「私が戦う姿を」
「それでは」
 侯爵の嫡男はラインマルの言葉に確かな声で、だが申し訳なさそうなまま応えた。そうしてエリーゼと共に見守つのだった。
 ラインマルは前を見ていた、そこには。
 彼の相手がいた、精悍な騎士が武装し兜だけ脱いでいる姿で馬に乗ったうえで彼に対してこう言って来た。
「卿は代理か」
「そうなります」
「事情は聞いた、卿に恨みはないが」
「それでもこれは決闘ですから」
「遠慮はしない」
 これが相手の騎士の言葉だった。 
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